真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第十二話 |
「では、曹操よ。すべての罪は自身にある、そういうのだな?」
「御意」
洛陽の謁見の間にて、皇帝・劉弁の前に跪く曹操。
「いかに偽の勅に踊らされたとはいえ、それを利用し、己が名声を得ようとしたことは罪以外の何物でもありません。いかようにもお裁きください。されど、袁本初をはじめ、他の諸侯には寛大なるご処置を」
「・・・ふむ。相国は如何に思う?」
劉弁はそばに立つ少女、相国である董卓に意見を求める。
「曹操どのも張譲に利用されたということを鑑みれば、被害者であるとも言えなくもありません。ですが、先ほどの本人の言葉どおり、罪は罪です。官位の剥奪あたりが妥当かと」
そう答える董卓。
「わかった。ならば曹操よ、本日を以ってそなたの地位はすべて剥奪する」
「御意」
「しかし、その才をこのまま捨て置くのも損失。よって、曹孟徳にはこの洛陽にて、警備部隊の長として働くことを命じる」
「・・・御意に、御座います」
頭を下げる曹操。その頬に光るものがあったことは、誰も気づかなかった。
皇帝から直接、偽勅の出所を聞かれた曹操は、張譲の名を告げた。
もと十常待筆頭で、前大将軍、何進を殺害した首謀者。
その男が偽勅を持って曹操の下を訪れた。そして、それを渡すとすぐにその場を立ち去った。本人いわく、各地に同じ勅書を届ける為と言っていたが、実際にはそのまままた雲隠れしてしまった。
例のうわさが流れたのが同じ頃であった事から、流したのも張譲であろうとの、結論だった。
曹操に対する処罰が決した後、袁紹、袁術、陶謙に対する通達も行われた。
袁紹は噂を利用しようとした点では、曹操と同じであったが、民が苦しんでいるのを見過ごせなかったのも、また事実であろうということで、州牧から南皮太守への降格とされた。
袁術は、実際は何も考えていなかったらしい。旨い蜂蜜をかなりの量袁紹から送られて、それで参画を決めただけだった。しかし、仮にも一郡を預かるものとしては軽率な行動であるとして、南陽太守の地位は剥奪。長沙城・城主に格下げとなった。
陶謙は、処罰が言い渡される前に、自ら徐州牧の位を返上。野に下ることになった。
続いては論功である。
今回の戦で最も功のあった一刀は、徐州の牧に封じられた。
そして、同時に、左将軍の位までも賜ることになった。
一刀自身は、
「あまりにも身に余りすぎる賜り物。臣はそこまでの功は為しておりません」
と、最初は断ろうとしたのだが、白蓮から、
「これは勅命だぞ?受けなきゃだめじゃないか」
と、いつぞやの意趣返しをされ、最終的に受けることとなった。
次に、途中から西涼側についた孫堅だが、揚州の刺史の位だけを望んだ。
「なんと欲のない」
と、劉弁は褒めたが、刺史であれば自身の判断で、州内を自由に兵を動かせる。
そのことを一部のものは理解していた。
最後に白蓮だが、本人の希望もあって、領地は現状維持。官位のみ、鎮北将軍を賜った。
他の者も何がしかの褒美や、昇格を受けた。
以上で、論功行賞は終了である。
「じゃあ、華琳もはっきり記憶は無いと?」
「ええ。張譲が来たことは確実よ。けど、どんなことを話したのかと言われると、ぜんぜん思い出せないのよ」
論功行賞が終わったあと、一刀は中庭で桃香、白蓮、そして曹操−華琳を交えて、茶会をしていた。
「何か術でもかけられた?」
桃香が華琳に問う。
「わからないわ。張譲がいなくなった後、わたしは、なんて言っていいのかしら、自分のすることは全てがうまく行くものだと、疑いもしなくなっていたわ。今思うと自分が情けなくなってくるけどね」
「・・・張譲か。そんな術が使えるような奴だったのかな?」
白蓮が疑問を呈する。
「さあね。・・・確かなのはまだ張譲はどこかで生きていて、何かを画策してる。それは間違いないだろうな」
「・・・そうね」
沈黙する一同。
「・・・いまは考えても仕方ないでしょう。ところで、話は変わるんだけど」
「なに?」
「桃香。お兄ちゃん病は直った?」
ぶっ!!
お茶を思わず吐き出す桃香。
「な、なに言い出すの、華琳ちゃん!!」
「・・・どうやらまだみたいね」
「華琳、何の話だ?」
一刀が首をかしげて問う。
「な!なんでもないの!!あ、あたし、愛紗ちゃんたちの様子を見てくる!!」
走り去る桃香。
(・・・そ。まだなんだ。ならまだ諦めなくて良さそうね)
走り去っていく桃香を見ながら、ほくそえむ華琳。
「????」
頭の中に疑問符を大量に浮かべる一刀。
そして、肩をすくめる白蓮であった。
中庭を走り去った桃香は、自分にあてがわれた部屋に戻っていた。
「・・・華琳ちゃん、なんて事言い出すかな、もう・・・」
ふう、と。ため息を一つつく。
「・・・やっぱり、まだ諦めていないんだ」
桃香は昔のことを思い出す。
まだ兄とともに私塾に通っていた頃の事を。
世の中のことなど何も知らず、勉学に、遊びに夢中になっていたあのころを。
「・・・白蓮ちゃんも、たぶんお兄ちゃんが好きなんだろうな・・・。蓮華ちゃんも・・・・」
白蓮と、久しくあっていない、もう一人の親友の顔が頭によぎる。
(・・・あたしは、お兄ちゃんが好き。愛してる。その腕に抱いてもらいたい。愛してるって、言って貰いたい。たとえ禁忌だとしても)
寝台に倒れこむ桃香。
「お兄ちゃん・・・。一刀・・・。ふ、う、く、〜〜〜〜〜〜っつ」
声が漏れないよう、布団をかぶり、思い切り、泣く。
その感情を、心の中に押し込めるために。
愛する人の顔を、思い描きながら。
その日一晩を、泣いて過ごしたのであった。
説明 | ||
刀香譚、十二話です。 短いです。すいません。 洛陽にて、皇帝による反西涼軍への裁きはどうなるのか。 では、どうぞ。 |
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コメント | ||
影で蠢く奴って、やっぱ怖いです;後、桃香は悩んでますね〜どんな決着になるのやら^^(深緑) 弐異吐さま、残念ながら?またばらばらになります。(狭乃 狼) 一刀は序盤からハーレムだな(弐異吐) たすくさま、一瞬何のことか分からなかったです^^。えじぷと・・・。まったく頭になかった発想ですわ。(狭乃 狼) 中国のエジプト化ですね。ツタンカーメンの妻は実姉ですし。問題は(ry(たすく@蒼き新星) 紫電さま、張譲は二番目の中ボスってとこですね。(つまりやられキャラww)桃香の恋は・・・、ん〜、でもな〜。近親はな〜。(狭乃 狼) hokuhinさま、大体そんな感じですね。あと孫家は、いまのところは・・・です。(狭乃 狼) はりまえさま、それって変わりやすいって意味ですよね?・・・誰の何が?あ、ご指摘部分は直しました。(狭乃 狼) ナックさま、あなたもですかww・・・やばい、揺らぎ始めてる・・・。いかんいかん!!近親は駄目です!!いくら萌えても。(狭乃 狼) たすくさま、しでかしますよー。近い将来。(狭乃 狼) 村主さま、ごねたらもっと立場が悪くなりますしね。華琳は、確かに。ほんとにすぐでしょねww(狭乃 狼) 華琳様は誘導催眠でもうけたのかな。会話内容覚えてないなんて・・・ 話し変わりますが、呉は孫堅が生きているから、袁術とは関係持ってないですよね?(hokuhin) ウム、乙女心と秋の空とはよく言ったものだ(現実は夏真っ盛りだけど)あと蓮華=蓮花になってますよ?(黄昏☆ハリマエ) 桃香よ、泣くことは無いぞ。近親婚オーケーの帝国を作ってしまえ。(ナック) みんな大好き張譲ちゃん(違 何しでかすか気になるw(たすく@蒼き新星) ま た 張 譲 か w まあ恋姫で悪役と言えば・・・ですし 処罰査定が結構甘め?まあ華琳なら簡単に昇格しそうですが 駄名族達ももっとごねるかと思いきや、まあ皇帝相手では仕方無いですわなw(村主7) |
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