恋姫無双 3人の誓い 第三十一話「ただ突き進むのみ!」 |
「フッ・・・案外、やるではないか夏侯惇・・・!」
「お前も、なかなかやるではないか関羽・・・うおおおおおおっ!」
戦場の中心・・・二人の女性の激しい剣戟が敵をなぎ払う。この二人が互いの背を預け、共に戦う姿を見れるのは二度はないだろう、と思うほど珍しい光景なのだ。
しかし、
「くっ・・・だが、この数を一斉に相手にするのは骨が折れるな・・・!」
数の差は、戦場では優位を表す絶対的条件・・・華琳達の兵数と桃香達の兵数を合わせた連合軍でさえ、五胡の兵数よりも少ない。だから、苦戦するのは目に見えている。
「そんな弱音を言うなんて愛紗らしくないのだ!鈴々達が頑張らなきゃ、一体誰が頑張るのだ!!」
「鈴々・・・・・そうだったな!」
愛紗は義理とはいえ妹の鈴々に喝を入れられ、一瞬呆気に取られる。しかしすぐに気を取り直し、ひたむきに戦っていく鈴々の姿を見つめる。
その瞳には、少し成長した妹を微笑ましく見る姉の目をしていた。
「「はあああああああああああああああああっ!!」」
姉妹は同時に勇ましい雄たけびを上げ、敵前線を切り開いていく。
「我々も負けてはいられないな・・・季衣、秋蘭!関羽達に続くぞっ!」
「あはは・・・春蘭さまぁ・・・それは無理かもぉ。」
「どうしたっ!?」
「周り・・・囲まれちゃいましたぁ・・・」
辺りを見渡すと、周囲には五胡の兵士達がズラッと春蘭達を囲んでいた。
「くっ・・・」
「・・・次から次へと、よくもまぁ湧き出てくるものだな。」
「ああ。だが、邪魔立てするなら容赦はせん・・・遠慮なくいかせてもらうぞっ!」
春蘭は手に持った大剣をブンッと素振りをし、相手を威嚇する。その姿はまるで野生の狼そのものだ。
「へへっ・・・久しぶりに三人で大暴れしましょ♪」
「そうだな。これほどの数を一気にあいてにするのは、そうそうないだろう・・・存分やらせてもらうぞ。」
秋蘭と季衣も各々の武器を構え、戦闘の準備をする。三人から溢れ出る闘気に、敵兵士から微かな動揺が走る。
「準備はいいな。秋蘭、季衣!」
「はーい!ボクの方は準備万端ですよ♪」
「ふっ、無論だ。・・・背中はこの私が守ってやる。」
「ならば我等に敵はなし。・・・フフッ。」
二人の準備が整ったことを知った春蘭は、突然クスリと笑い出す。
「なにを笑っているのだ?」
「なに・・・華琳様と秋蘭。二人と共に戦乱を治めるために起った日のことを、ふと思い出してな。」
戦乱を治めるために乗り出したあの日・・・あの日から数々の困難を乗り越えたからこそ、今の自分達がいるのだと春蘭は感じていた。
「なるほど。フフッ・・・あの日の血の滾り、久しく忘れていたな。」
「ああ・・・斬り殺した敵の血をすすり、苦悶の悲鳴を浴びながら邁進した日々・・・それを思い出す。」
「フッ・・・残忍な顔をしているぞ、姉者。」
「私は魏武の大剣。・・・残忍こそが我が誇りよ。」
「やーん♪かっこいいです、春蘭さまぁ〜!ボク、惚れ直しちゃいました♪」
「私もだ。・・・さすが我が姉者・・・頼りになる。」
「その言葉・・・この包囲を突破してから聞こう。・・・行くぞ!秋蘭!季衣!」
秋蘭達を呼びかけると、春蘭は持っている剣を敵が大勢いるところへと剣先を向け、こう言い放った。
「聞けぃ!妖に魅入られし兵どもよ!我が名は夏侯元譲!魏武の大剣なり!・・・人としての誇りを忘れ、外道へと成り果てた貴様らの命、羅刹となりて食らい尽くす!覚悟せい!」
チャキと金属の鳴る音が声と共に響く。
「いざ・・・参るっ!」
春蘭の号令より、味方の兵士達は一斉に突撃していった。
一方右翼側では、蒼介と一刀が春蘭達や愛紗達にも負けず劣らずの戦いを繰り広げていた。
「けど、ハァ・・・こんなに水みたいに、ハァ・・・湧き出てこられると、キリがないな。」
みんなの活躍により、敵勢力はかなり減ってきてはいるが、それでもこちらが不利なのは変わらない。
「・・・だな。こりゃあまり兵士には構わず、頭を狙っていった方が、効率がいいな。」
「そうだな・・・さぁ、行くよ蒼介!」
「言われなくても・・・うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
最低限の敵兵を潰し、中央へと活路を開いていく。二人の剣戟により、次々と敵兵士が切り伏せられ、吹き飛ばされ・・・と数を減らしていく。
そうしながらしばらく進んでいくと、敵の中に一際目立つ身長をした黒い装束姿の者がいた。
「・・・来たか。」
声の太さからするに男、それもけっこう歳のある人の声だ。そして、男は頭に被っていたフードのようなものを取る。
フードから現れた顔は、声の太さの通りごつい顔つきをした男だった。そして、そのごつさから岩のように頑丈な印象を受ける。
「・・・某の名は牙猛。環の命によりここにはせ参じた。・・・二人が天の御使いでよろしいだろうか。」
「あ、ああ・・・」
男から流れ出る包み込むような気圏に、押し潰されそうな感じが伝わってくる。まさに岩が乗っかってくるように。
「そうか、ならば・・・」
そう言いながら男は背中に担いでいた斧を取り出し、ゆっくりとそして勇ましく、仁王立ちをする。その構えからは、そこにあの有名な毘沙門天像がいるのではないかというくらい、威風堂々した姿に思わず息を呑む。
「参る・・・っ!」
「(・・・っ!こいつはぁ・・・)」
「(かなり、やばい・・・全身からそんな声が伝わってくる・・・!)」
牙猛の闘気に、二人は全身の細胞から危険な信号が伝わってくる錯覚に陥る。しかし、それでも二人は恐れず、ジリジリと間合いを詰め、攻撃の機会を待つ。
「来ないのか?・・・ならば、こちらからいかせてもらうとしよう。・・・ぬんっ!!」
「うおっ!?」
牙猛は手に持った斧を素早く振りかぶると、それを思いっきり二人に目掛けて叩きつける。
「くっ・・・!危なっ_______________________。」
「これで終わりだと思うなああっ!」
かろうじて後ろに下がり攻撃を避けたが、斧はそのまま無人の地面に叩きつけられると、そこから大きな地震が起きる。グラグラと揺れる地震により、体勢を崩してしまった蒼介を牙猛は、瞬時にもう一度攻撃を開始する。
「ぐおおっ・・・!!」
回避が間に合わず、蒼介は葬刃を盾に牙猛の重い一撃を辛くも防御する。
「蒼介っ!?・・・はああああああああああああああっ!!」
その蒼介の姿を見た一刀は、体勢を立て直し、蒼介に攻撃を集中させている牙猛のわき腹を斬ろうとした。が、
「甘い・・・っ!ふんっ!」
「「ぐはっ!」」
一刀の攻撃をまるで分かっていたような牙猛は、防御していた蒼介ごと斧を振り払った。
蒼介はそのまま一刀の方へと吹き飛ばされていき、お互いをぶつけ合う。
そして傷つき倒れている蒼介と一刀へと、牙猛はゆっくりと歩を進めていく。それを見た一刀は、
「(くそっ・・・もう少しってところなのに・・・ここまで、なのか・・・)」
もはやこれまでだと思い、かろうじて開けていた目を閉じようとした。
その時、
「む・・・!はあっ!」
突如、牙猛に向かって一本の剣が飛んできた。その剣を見た瞬間、思わず目を見開いた。
「この剣って・・・!」
「もしかして・・・!」
牙猛にとばされ返された剣は、その持ち主の目の前の地面にザシッと突き刺さる。それをゆっくりと引き抜き、剣先を牙猛に向ける。
「・・・よっ。危なかったな青年達。」
手を挙げて軽く挨拶するその人は、二人がよく知っているあの人だった。
「おっさんっ!(龍玄さんっ!)」
「・・・お主、何者だ。」
「通りすがりの鍛冶屋兼用心棒だっ!よく覚えとき・・・なっ!」
「・・・っ!ぬおおおお・・・!早い・・・!」
龍玄の鋭い一閃に、牙猛はかろうじて防御する。あと一歩遅れていれば、腕か首かどっちかが吹き飛んでいたであろう。
「おお・・・今のを防ぐとは。・・・あんさん、かなりの腕してるねぇ。」
「ぐっ・・・!これほどの隠し玉を持っていようとは・・・っ!仕方ない・・・全軍一時撤退だ!撤退っ!」
牙猛はこのままではヤバイと感じ、すぐ味方の兵士に撤退命令を出す。
「あ!おい、ちょっと待ちなさいっての!逃げるなぁぁぁ!」
龍玄は牙猛を追いかけようとしたが、敵兵士に肉の壁を作られ思うように追いかけられなかった。
「あー、逃げられちゃったよ・・・」
「りゅ、龍玄さん!何であなたがここにいるんですかっ!?」
「そうだぞおっさん!来るんだったらもちっと早くなあ・・・!」
がっくりと肩を落とす龍玄に、二人は思わず質問の雨を降らす。
「あ〜あ〜うるさいぞ〜!もう少し静かに話せっ!」
「ですけど・・・!」
「はいはい・・・事情の説明は後でするから、今はすぐあいつらを追いかけるぞっ!」
「あ、ちょ!?」
そう言うと龍玄は急ぎ足で走っていく。二人は味方の軍に追撃命令を出し、慌ててあとを追いかけていった。
※どうもお米です。今回は全部戦闘描写という回でしたが、どうでしたか?何かおかしな点がありましたらドンドンコメントお願いします。さて、今回は再び龍玄現るっ!ということで登場しました。けど、やっぱり龍玄さんって強いね・・・チートだよチート。書いてる自分が言うのもなんですが。それでは失礼します〜。
説明 | ||
第三十一話目となります。毎日みなさんのコメントを見直していると、不思議と心が温まります・・・(´ω`) | ||
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コメント | ||
春蘭の獰猛でいて鋭い気迫が響きました。しかし龍玄さん、貴方はどこのヒーローですかw(深緑) >茶々さんコメント有り難うございます!春蘭のカッコよさが伝えられて本当に嬉しいです!(お米) 春蘭のカッコよさに思わず惚れそうになったw (茶々) |
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