相部屋の規則
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 理樹は、自分の耳が信じられなかった。

「男女同室でも構わないのよ」

 クドに頼まれ、相部屋の規則を聞きに行っただけなのだが、なかなかルームメイトが見つからないというクドに、あーちゃん先輩が告げた言葉だった。

「ええっ、それって、俺とクドで住めってことですか」

 理樹の声が、裏返っていた。

 隣のクドは、顔をゆでタコにしていた。

 あーちゃん先輩だけが、平気な顔をしている。

「それが、一番、手っ取り早いんじゃない」

「でも、でも、でも、でも……」

 何回言っただろう。覚えていられる回数でないことだけは確かだ。

 クドが、蚊が鳴くより、小さな声で言った。

「でも、寮規則では、みだりに異性を入れてはならないって……」

 それが、当たり前だと思うが、

「入れるのはダメだけど、一緒に住むのはダメって書いてないわよ」

 どこまで本気で言っているのか。冗談にも聞こえないのだが、

「ねえ、クドちゃん。寮の規則がOKなら、理樹クンと一緒に住んでも良いって、思ったでしょ」

 あーちゃん先輩のツッコミが、クドを直撃した。

「ウソっ、ウソっ、そんなの、アンビリーバブルですぅ」

 ゆでダコが、さらに膨れあがり、脳みそが飛び出しそうだった。

「理樹クンだって、これだけ熱心に協力しているくらいだから、もちろんOKよね」

 あーちゃん先輩が、理樹の胸元に指を立てる。

「ク、クドと同居だなんて、そんな、そんな……」

「あら、理樹クンのほうから断るの。クドちゃん、こんなにかわいいのに」

 理樹は、クドと目が合った。

 言葉が出ない。このままじゃいけないと思っているのに、何も言えない。胸だけがギンギンと高鳴り、爆発しそうだった。

「寮長が風紀を乱して、どうするんですか」

 あーちゃん先輩の背後で、佳奈多が腕組みをしていた。振り向きざまに、佳奈多の両手を取って、握り締めるあーちゃん先輩。

「ああ、良かった。誰か止めてって、思っていたところなのよ」

 はてなマークに包まれる理樹とクド。

「だって、あなたたち。マジになっちゃっうんだもの。冗談だって、言う機会がなくなっちゃった」

 あーちゃん先輩が舌を出した。

 最初から、からかわれていただけなのか。

 理樹とクドが、もう一度、ゆでダコになったのは、言うまでもない。

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「それじゃあ、いいルームメイトが見つかると良いね」

 女子寮の入り口で、理樹がクドに手を振る。

「理樹クン、今日はありがとう」

 クドは、遠ざかる理樹の背中を、いつまでも追い続けていた。

(おわり)

説明
ルーメムイト探しに苦労をするクド。協力を申し出た理樹があーちゃん先輩から聞いた言葉は……
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