真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第十三・五話 
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 「ここか、もと孤児院だった建物は」

 

 「何か出そうなのだ」

 

 白蓮と鈴々は、洛陽にある一軒の建物の前に来ていた。

 

 先日の茶会の席で、孤児院を作ると宣言した白蓮は、たまたまその場に訪れた劉弁から、直接許可をもらい、幽州へ戻る前に、下見のために以前あった孤児院の跡地を訪れた。

 

 「ずいぶん寂れているな。・・・ふむ。前の持ち主が亡くなった後、誰も管理を引き継ぐものもおらず、そのまま放置された、か」

 

 「とりあえずなかも見てみるのだ」

 

 「そうだな」

 

 鈴々に促がされ、敷地内へと足を踏み入れる二人。

 

 その時だった。

 

 「まて!貴様ら!!誰の許しを得てここに立ち入ろうとする!!」

 

 突如、女の声が辺りに響く。

 

 「だ、だれだ!?」

 

 「ゆ、ゆーれいさんなのか!?」

 

 周囲を見渡す二人。

 

 「この屋敷は誰にも渡さん!!おとなしく帰れ!!」

 

 「私たちはここに、もう一度孤児院を再建したくて来たのだ。誰かは知らんが、邪魔をしようというなら、この公孫伯珪が相手をしくれる!!」

 

 「そーだ!!鈴々の邪魔をしないでほしいのだ!!」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・本当か?」

 

 突然、声が二人の後ろからする。

 

 あわてて二人が振り向くと、そこに一人の女性が立っていた。

 

 「そなたは?」

 

 「あたしの名は孟達、字は子慶。ここの持ち主だ」

 

 そう答える女性。

 

 「ちょっと待て!!ここの前の持ち主は確かに、孟子慶となっている。だが、すでに五年も前に死んだとも書いてあるのだぞ!!」

 

 「ほ、ほんとーにゆーれいさんなのか?!」

 

 震える二人。が、

 

 「ああ、それ。死んだのはあたしの姉貴だ。けどおかしいな、ちゃんと引継ぎの申請はしといたはずなんだが」

 

 「・・・じゃ、なんでこんなに屋敷が荒れてるんだ。引き継いだんならきちんと手入れぐらい、していて当然だろうが」

 

 白蓮が孟達に問う。

 

 

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 「姉貴が死んだあと、あたしは暫くこの地を離れざるを得なくなったんだ。だから申請の書類だけ提出しておいて、益州に向かった。久しぶりに暇がもらえたんで、掃除のためにここに帰ってきたんだが、ここまで荒れてるとは思わなかった」

 

 建物を見ながら孟達が寂しそうにいう。

 

 「・・・前の持ち主・・・あんたの姉さんか?その人が亡くなった後、ここにいた孤児たちは別の場所に引き取られていったそうだ。それ以来、ここは閉鎖されて久しいそうだ」

 

 白蓮が孟達にそう説明する。

 

 「それで、あんたたちがここを再建することになったってことか。そうとは知らず、驚かせてすまなかった。このとおりだ」

 

 二人に頭を下げる孟達。

 

 「そういうことなら仕方ないさ。となると困ったな。ちゃんとした持ち主がいるんなら、ここは諦めるしかないな。いこうか、鈴々」

 

 そう、鈴々を促がし、立ち去ろうとする白蓮。

 

 「待ってくれ。もしあんたたちがここを再建してくれるというなら、あたしはここをあんたたちに譲ってもいい」

 

 「本当か?」

 

 「ああ。見たところ、あんたたち、結構な身分の人のようだが、差し支えなければ教えてもらえないだろうか」

 

 「ああ、これはすまない。私は幽州にて牧を務めさせてもらってる、公孫賛、字は伯珪だ。こっちが」

 

 「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ!」

 

 「ほう、幽州の・・・。それで、どのくらいでここを再建できそうなのだ?」

 

 「そうだな。庭も荒れ放題だし、建物もかなり傷んでそうだしな。私も後五日もしたらここを離れねばならんし、職人を雇って、建物の補修の手はずを済ませて、子供たちを世話するものを雇って、と。・・・実際に孤児たちを受け入れられるのは、半年後くらいといったところか」

 

 「そうか。・・・なら、わたしもそのころにもう一度くるとしよう。公孫賛どの、権利譲渡の手続きはそちらで行って頂けるだろうか。もう今日の昼には、ここを立たねばいけないのでな」

 

 白蓮の説明を聞いた孟達が、懐から印を取り出して白蓮に渡す。

 

 「わかった。・・・道中気をつけてな」

 

 「ああ。では、また半年後に」

 

 「おねーちゃん、元気で、なのだ!」

 

 二人に見送られ、その場を去る孟達。

 

 それから白蓮は役所へ顔を出して、所有権の移譲の手続きを行い、屋敷の手入れと補修を行う職人たちを募集する手配を済ませた。

 

 孤児院で働くものたちの手配も済ませたところで、白蓮は幽州へ帰還の途についた。

 

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 それから半年後、白蓮は孤児院の準備が整った知らせを受け、洛陽へと足を運んだ。

 

 そこには鈴々も来ていた。

 

 そして、孟達の姿も。

 

 「子慶殿、お久しぶりだ。元気そうで何より」

 

 「おねーちゃん、久しぶりなのだ!!」

 

 孟達に挨拶をする二人。が、

 

 「・・・どちらさまで?」

 

 「「・・・は?」」

 

 「当孤児院に何か御用でしょうか?」

 

 「いや、その、孟子慶どの・・・ですよね?」

 

 「はい。確かに私は孟達子慶にございますが。・・・あ、もしや、あなた方が公孫伯珪殿と、張翼徳殿で?」

 

 会話がかみ合わない。

 

 確かに二人の前に立つのは、あの日に出会った孟達本人だ。

 

 だが、なぜか彼女はこちらと初対面のような風である。

 

 「・・・このたびは姉が運営していた孤児院を再建していただき、ありがとうございます。亡き姉が夢で言っていたのは本当だったようですね」

 

 「亡き姉が・・・夢で?」

 

 冷や汗が二人の背中を伝う。

 

 「えっと。おねーちゃんは、洛陽に来た事あるの・・・だ?」

 

 「いえ?私は姉と幼いころに別れてから、益州を一度も出たことはありませんが?」

 

 「・・・・・・・・・そ、それじゃ、あの日ここで会ったのは・・・・」

 

 懐から印を取り出し、顔を真っ青にする、白蓮。

 

 「あら?それは姉の印では?なぜあなたがそれを・・・」

 

 「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

 その場にぺたりと座り込む。そして、屋根の上に、二人はそれを見た。・・・見てしまった。

 

 屋根の上に座る、あの日、孟達と名乗った、女性の姿を。

 

 (ふたりとも、ありがとな。あたしもこれで、気兼ねなく逝けるよ。こっちにきたら酒でも飲もうな)

 

 にこりと微笑み、そして、すう、と。消え去る女性の姿。

 

 ぱた。

 

 と、白目をむいて倒れる白蓮。

 

 「・・・ゆーれいさんて、ほんとにいるのだな・・・」

 

 

説明
刀香譚の拠点をお送りします。

白蓮と鈴々による孤児院騒動。

オリキャラも一人登場です。

では。
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コメント
ぜひ愛紗もその場にいて欲しかった^^(深緑)
sionさま、愛紗なら、後から話を聞いて、その場で倒れましたよww(狭乃 狼)
紫電さま、孟達はまた後ほど登場予定です。お楽しみに。(狭乃 狼)
リョウ流さま、そんなに怖かったですか?・・・ヒヒヒ。(狭乃 狼)
もし愛紗が居合わせてたらきっと生涯におけるトラウマになってたでしょうねw(Sirius)
hokuhinさま、風「・・・zzz」<寝てます。思いっきり。宝慧「おうおう。ゆーれいねーちゃん。おいらとあそばね?」・・・こら。(狭乃 狼)
村主さま、恋・・・は、無関心そうだし。華琳様は無視しそうですしね。雪蓮・・・も駄目かな?(狭乃 狼)
恋姫世界では珍しいオカルト話か・・・ 朱里は霊の知識は有るけど怖がりだから、恋姫一不思議っ子の風なら普通に会話しそうだなw(hokuhin)
かの仲達さんも「幽霊には勝てんさ」(「死せる孔明、生ける仲達を走らす」より)と申されたらしいので 恋姫でオカルトに強そうなキャラ・・・誰ですかね?(村主7)
たすくさま、勝てる人は少ないと思いますww(狭乃 狼)
さすがの白蓮ちゃんもゆーれーには勝てなかったw(たすく@蒼き新星)
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恋姫 刀香譚 白蓮 鈴々 

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