真・恋姫†無双‐天遣伝‐(10) |
・Caution!!・
この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。
オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。
また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。
ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。
それでは、初めます。
―――曹操軍
西涼軍及び董卓軍が洛陽到着を果たしてから、二日目の朝。
「漸く到着だな・・・しかし、黄巾党共も中々にしつこかった」
「すまないわね、華蘭。
道中防御に専念させて。
後で何か褒美をあげなきゃね」
「いらん、私の存在意義はお前を護る事なのだからな」
「ふふ、そんな無欲な所も素敵よ、華蘭。
隙さえあれば、貴女も私色に染め上げてあげるのに」
「戯れを・・・私に女色の気は無いと、何度言えば分かってくれる?」
「さてね、貴女が私と閨を共にするまで、かしら?」
背が高く、身体の半分を覆うような大盾を持ったポニーテールの女性が、華琳と話す。
名を曹仁、字を子孝、真名を華蘭(ふぁらん)。
華琳の血の繋がらぬ従姉であり、彼女の現親衛隊長を務めている。
クールなその出で立ちに、男よりも女からの人気の方が高い人でもある。
貞操に関わる会話だというのに、二人はとても楽しそうにクスクスと笑い合っている。
それを後ろからジェラシービームを放ちながら見る女が二人。
春蘭と桂花であった。
因みに、秋蘭は春蘭の嫉妬する姿を見て「姉者は可愛いなあ」等と思いつつ、見守っていた。
金銀の袁旗が彼女達の後ろから現れる、ほんの15分程度前の事である。
真・恋姫†無双
―天遣伝―
第九話「遭遇」
華琳達が洛陽に丁度到着した頃の西涼陣では。
毎度お馴染、朝の戦技訓練が行われていた。
今日は葵vs一刀である。
葵は双戟を持って馬に跨り、同じ様に暁を構える一刀を見据えた。
揺ら揺らと身体を揺すり突撃のタイミングを測るが、全く同じタイミングで揺れる暁の刃先に止められ続けている。
既にこの遣り取りが10分近く続き、千日手染みてきていた。
最早根比べだ。
当然ギャラリーは、蒲公英と碧。
それから、西涼に(正しくは一刀に)仕える事となった風と稟も。
まだ二人の域に武が到達していない蒲公英は不満そうだが、碧は充分に楽しんでおり、風と稟は武に関しては何が何だかさっぱりなので、主君の雄姿を見ようと思った次第。
硬直を先に破ったのは、葵。
先を焦って飛び出したのでもあり、同時にその中に活路を見出す為に。
だが、その動きは当然一刀に読まれていた。
後狼を擦れ違い様に振るが、暁の切っ先で微妙に攻撃のベクトルを逸らされ、後狼の重さの所為で生じた遠心力に身体が泳ぐが、持ち前の膂力でもって無理矢理刹那の間に立て直す。
が。
その刹那で充足。
前虎を振るう為に振り向こうとした葵の頬に、鞘が当たった。
よくある悪戯の、「誰だ」振り向いた頬に指を当てる奴の要領だ。
一瞬の間の後、笑いが湧き起こる。
葵は頬を赤くして下馬し、同様に下馬していた一刀の胸をポカポカと叩きながら、不平を口にしていた。
しかし、その顔が何処か綻んでいたのは決して見間違いではない。
―――朝飯時
葵手製の美味しい炒飯を口にしながら、碧が口を開く。
「一刀、今日あんたは一日休んどけ」
「え? でも、俺が兵を率いるって、何進大将軍にも言われてたんじゃないですか?
そこんとこの勉強をしておいた方が・・・・・・」
「無駄なのよ」
「? どういう事ですか、朔夜さん?」
一拍置いて、朔夜は言う。
その言葉の端々に、口惜しさの様なものが浮かんでいるのが、結構付き合いのあるこの場の皆には分かった。
「今回、貴方を『天の御遣い』として立たせる為には、生半可な事では説得力が無いわ。
貴方の立場に決定的な説得力を持たせる為の大将軍の目論見は、自軍を貴方の配下に加える事。
言い換えれば、貴方が率いる部隊こそが、対黄巾党連合軍の本隊に等しい」
「・・・マジですか・・・・・・?」
「少なくとも大将軍は本気よ。
後、あの方の腹心である皇甫嵩将軍もね。
分かったでしょう?
貴方自身が部隊を指揮する意味が無いの。
名代として『天の御遣い』を立てる方がずっと得なのだから」
慄きながら言葉を返す一刀に、バッサリと切って捨てる朔夜。
容赦のない物言いに、碧達は少し渋い顔をしたが、それ以上は突っ込んで来なかった。
「・・・ま、そういう訳だから、あんたは洛陽の悪い部分を徹底的に見ておいて欲しい。
んで、その結果を後で大将軍に教えてやってくれ」
「はぁ、分かりました」
不承不承頷いた一刀であった。
そして今。
一刀は、見るも無残な街の様子を見ながら、王宮に向かって歩いているところである。
因みに、フランチェスカの制服は着ていない。
街の入り口付近では、生きているのは鼠位しか見当たらず、人影は皆無に等しい。
街の中頃まで来ると、ちらほらと人はいるが、此方に向けて来る視線は怯えと警戒以外を含んでおらず、近寄れば逃げ出していく。
そして、街の中枢まで来ると。
先程までの街が嘘の様に、綺麗な街並みとなっていた。
但し、兵がその境を護っている、が頭に付いているが。
一刀は自然と気付く。
此処から先は、宦官達の縄張り(テリトリー)であると。
自らの私腹を肥やす為に必要なモノを集める為の空間であると。
一刀は、自分の腸が煮えくりかえるのが分かった。
だが、ここでは至って平静に。
ここで暴れれば、碧達にも迷惑がかかってしまう。
だから、兵達の目が届かぬ場所まで、必死に怒りを堪える。
そして、恐らく公園として機能していたと思われる空き地に辿り着き、一刀は怒りに震える手で暁を抜き放って構え、一瞬で脳天を冷やした。
最早条件反射の域になっている、刀を構える際のリラックス。
その御蔭で、頭の中がクリアになる。
ふぅ、と溜息を一息。
落ち着いた気を再び整え、暁を仕舞う。
そうした所であった。
“パチパチパチパチ・・・・・・・・”
その様な拍手がしたのは。
一刀は別段驚いた様子も無く、拍手がした方を見る。
そこに立っていたのは、似た輝きの金髪を持った二人組の女性。
華琳と華蘭である。
一刀は、華琳から強い覇気を感じた。
そしてそれと同様に、二人も一刀から強者の気配を感じていた。
「面白いわ・・・貴方、名は何と?」
「・・・北郷一刀。
姓が北郷、名が一刀、字と真名は無い。
一応西涼の将だ」
「へぇ? 馬騰の所の・・・」
華琳は興味深そうに目を細める。
その目は、一刀をジッと値踏みしていた。
「しかし、不思議な名ね。
我が名は曹操、字は孟徳。
好きに呼ぶといいわ」
「! そうか、あんたが・・・道理で凄い覇気な訳だ」
「あら? 私の事を知っているの?」
「ああ・・・英雄の器だ、って聞いてるよ」
「へぇ・・・本当に面白いわね、貴方。
先程の剣といい、私の事を知っているといい。
ふむ・・・貴方」
「ん、何だ?」
何かを決めたかのように、笑みを漏らす華琳。
一刀は背筋が粟立つ様な感覚を味わった。
「私の下に来なさい」
「はぁ!?」
驚愕。
華琳は当然本気の目であった。
「一つ聞きたい、何故俺を?」
「理由なんて無いわ。
敢えて言うとすれば、貴方が欲しくなったから、かしらね」
「欲しい? そんな事で。
お前、何様のつもりだ?」
「あら? 私の事を知っているのだから、てっきり私がどういう人間かも知っているものと思ったのだけれども。
買い被り過ぎだったかしら?」
「・・・!」
咄嗟に身構え、暁に手をかける一刀。
それを見た華琳は、非常に嬉しそうな顔へと表情を変えた。
途端に溢れ出す闘気。
殺意は籠っていないのが、唯一の救いか。
「華蘭、貴女が往きなさい」
「ふむ・・・致し方無し。
すまぬな、北郷とやら。
我が主の命とは言え、力づくというのは些か好む所では無いが・・・諦めて貰おう。
我が名は曹仁、往かせて貰うぞ」
華蘭が前に出、右腕に装着した巨大な盾を構える。
「せめてもの償いだ、我が真名を受け取れ。
我が真名は、華蘭という」
「いらない」
その言葉に、華琳と華蘭は心底驚いた。
真名を教えるとは、正に命と想いを相手に預ける事と同義に近い。
つまり・・・
「・・・・・・そうか、この曹仁。
この世に生を受けてから、今に至るまで」
そこで一度言葉を切り、眼を瞑ってから見開いた。
そこに宿っていたのは、まごう事無き怒気と殺気。
一刀は、瞬間的に「殺す為の」集中に切り替えた。
「華蘭! 待ちな・・・・・・」
「これ程までの侮辱を受けた事は無い!!」
華琳の制止の言葉も、今の華蘭の耳には入らない。
地面を蹴って恐るべき加速を見せ、7mはあった距離が一瞬で零に変わる。
そのままの勢いで盾を、首を刎ねる軌道で右へと振り抜く。
咄嗟にしゃがんで躱すが、ほぼ同時に放たれていた左前蹴りを躱す事は出来ず、腹を蹴られて大きく吹き飛ばされる。
「ぐっ」
「死ね!!」
怒りのまま、吹き飛んだ一刀を追って、盾の下端から突き出た杭で刺突の体勢を取る。
だが。
蹴り飛ばされた直後、一刀は既に一つアクションを起こしていた。
膝立ちに姿勢を変え、左手を暁の鞘の鯉口に、右手を暁の柄に。
身体を捻り、加速を生み出す。
姿の勢い、故に姿勢。
右手が動くと同時に、閃光が奔った。
その闘いを見ていた華琳は心底驚愕した。
間に合わない。
一刀が抜刀する前に、華蘭の刺突が決まり、一刀は死ぬ。
そう確信していた。
勿体ないとも思ったが、真名を預ける事の意味を甘く見た一刀が悪いと、諦めていた。
だというのに、今の光景は何だ!?
華琳は自分の目に幻術をかけられたのでは無いかと危惧した。
決まったと確信した時。
一刀の右手が動いたかと思えば、既に刃は振り抜かれており、華蘭はギリギリ踏み止まった御蔭で、盾に一筋の斬り疵を残すだけに留まった。
見れば、華蘭の表情も華琳と同じく、驚愕が張り付いていた。
その為か、さっきまでの怒りの支配が消えていた。
だが、それ以上に。
あんなものは初めて見た、それが華琳と華蘭の嘘偽らざる思い。
抜刀行動がそのまま攻撃になる等、誰が思うだろうか!?
あの曹仁の盾を、あんな細い刀で、折る事も無く疵付けた等、誰が信じるだろうか!?
華琳の表情から驚愕が徐々に引き、代わりに抑え切れない程の喜悦が立ち昇って来る。
華蘭の目も同様に、純粋な、新しい玩具を前にした童の様な色を帯びた。
この時点で、華琳と華蘭の心に浮かんだ言葉は、奇しくも同じ。
「(もっとこの男の底を見てみたい!)」
多少の硬直を見せた闘いの場を破ったのは、またしても華蘭。
既に暁を上段に構え直した一刀に襲い掛かる。
但し、今度は万全の、常の曹子孝のまま。
右腕を直進させ、盾による刺突をはっきりと放つ。
それを、一刀は華蘭の右腕の後ろ側まで滑る様に移動する。
全身が全く動きを見せないまま。
華蘭からして見れば、静止したまま動かれた様に見え、途轍もなく不気味に映った。
そのまま振り返る動きで、首の後ろを狙う。
華蘭はしゃがみこんで避け、左手を地面に置いて支点とし、逆サマーソルトとも言うべき奇妙な蹴りを放ち、一刀の顎を狙う。
一刀はほんの少しだけスウェーバック。
それだけの動作で、蹴りは顎を掠りもしないが、スレスレを通過。
着地し、今度は左腕を置き上がる際の遠心力を利用して鞭の様にしならせて、打撃を狙う。
そして、それがそのまま勝負の分かれ目となった。
華蘭は選択ミスをした。
流れる様な連撃は確かに有効だ。
だが、それは。
相手が北郷一刀では無かった時に限る。
「「なっ!?」」
遠くと間近で同時に驚愕の声が上がる。
遠くは華琳。
間近は華蘭。
何故そんな声を上げたかと言えば。
一刀が、暁を既に首筋に向けて突き出している。
そしてその刺突が、寸分違わず、左腕を華蘭が振り切った際の首の、大動脈の位置にピタリと合っているのだ。
このまま腕を攻撃に向ければ、首を貫かれる。
そうでなくとも、掠っただけで大出血は間違い無い。
そう一瞬で判断した華蘭は、全力で身体が軋むのを無視して動きを無理矢理止める。
尋常ならざる力で以って限界ギリギリで停止し、暁が掠る直前で何とかやり過ごす事に成功した。
一刀の思い通りに。
「うわっ!?」
「・・・だあっ!!」
更に一歩懐まで踏み込んできた一刀の左掌が、華蘭の顔面を鷲掴む。
咄嗟に抵抗しようとする華蘭だが、次の瞬間、地面にへたり込んでしまった。
正座する様に膝が折れて地面に付き、上半身は後ろに向かって倒れる。
しかも、力が入らない。
どんなに自身の顔を掴む男を握り潰してやろうと左手に力を籠めても、盾で薙ぎ払ってやろうと右腕に力を籠めても、どちらもうんともすんとも言ってくれない。
まるで自分の身体で無くなってしまった様だと、華蘭は感じていた。
そしてそれ以上に、己の顔面を鷲掴む男の眼に射竦められてしまっていた。
何故なら、指と指の隙間から見える男の眼は、どこまでも優しかったからだ。
「(何故だ、何故そんな眼が出来る!?
まるでこれでは、私が労られているようではないか!?)」
だが華蘭は何故か、屈辱を感じる前に何処か嬉しさを感じていた。
そして、その感情の正体に気付き、華蘭は思わず笑ってしまった。
一刀が不思議そうな顔をするのも気にせず、口を開く。
「北郷、どうやら私はお前に心奪われてしまったようだ」
「はぁっ!?」
一刀は思わず手を離した。
華琳は驚いてばかりだった。
此度攻めていたとは言え、あの華蘭に完勝するとは!
益々欲しくなってしまった。
最初は唯興味を満たすという意味しかなかったが、今の華蘭との決闘を見て純粋に自軍の将として欲しくなったのである。
そしてそれと。
「北郷、どうやら私はお前に心奪われてしまったようだ」
嫉妬の思いがあった。
自分がどんなに誘っても靡かなかった華蘭を、この僅かな間に傾けさせた一刀に、どうしようもなく嫉妬してしまったのだ。
だから、この男を自分の爪先に屈服させたいという支配欲も、今では湧き出ていた。
二人の方へと歩み寄っていく。
「見事ね、狙ってやったのかしら?
『私の』華蘭の心を奪うだなんて」
思い切り皮肉と嫌味を籠めて言葉を発した。
だが、一刀は動揺しているばかり。
その様に、奥歯を噛み締める。
こんな無様な男に華蘭は靡いたのかと、本気で悔しさが浮かぶ。
一方の華蘭は、純粋に男を想う眼で一刀を見ていた。
それが益々華琳の苛立ちを募った。
だから、思いっ切り高圧的な笑みを浮かべて言う。
「北郷一刀、貴方、私のモノになりなさい」
「断固拒否する」
動揺が一瞬で治まっている。
どうにも華琳には理解が出来なかった。
この男の不安定さは一体何なのか。
今度は其方への興味が湧いた。
この男を自分好みに育てられたら、どんなに楽しいだろう。
いや、下手をすれば、自分が彼好みに染められるかもしれない。
知らず、覇王では無く、華琳個人としての笑みが口元に浮かぶ。
さっきまでの嫉妬感情が吹き飛び、代わりに沸々と湧いて来るのは、尽きせぬ眼前の男への興味のみ。
「何故かしら? 私は確かに、今は弱小勢力と言っていいわ。
けれど、私は何れ天下に覇を唱える。
将来を預けるのならば、決して落胆させない自信がある」
傲然と言い放つ。
だが、一刀は変わらない。
「それは無理だな、今の俺は西涼の将だ。
もし、俺を屈服させたいのなら、西涼を落としてみせろ。
但し、俺の大切に想う人が一人でも死んだりすれば、俺はお前には絶対屈しない。
どんな手段を用いてでも、お前に覇道は歩ませない」
視線を逸らさずに互いの覇気と闘気をぶつけ合う両雄。
一刀は理解する、眼前の相手は何れ雌雄を決せねばならぬ難敵だと。
華琳は夢想する、眼前の男は自身が何時か抱いた覇道を共に歩める者かと。
華琳は先に覇気を収め、一刀に背を向ける。
「まぁいいわ、今は、ね。
機会は幾らでもあるんだもの、また逢いましょう、一刀。
だけど、覚えておきなさい。
私は何時か必ず貴方を手に入れる」
「俺は物じゃない、そんな事を言う奴には絶対に従ってやらない」
「ふふふ、その言葉、しっかりと覚えておくといいわ。
何れ、貴方の方から私に従いたいと思わせてあげる」
色っぽく笑う華琳に、少しドキッとしてしまう一刀。
当然自己嫌悪に襲われたが。
「帰るわよ、華蘭。
身体に異常は無いのでしょう?」
「ああ、仔細無い。
北郷が手加減してくれたようだ。
ではな、北郷。
改めて我が真名を受け取ってくれ。
華蘭だ、いいな?」
「解ったよ・・・華蘭、でいいんだな?」
「!! ・・・・・・ふぅ、愛しい相手に真名を呼ばれるだけで、ここまで満ち足りた心地になれるのか、愛とは素晴らしいな!」
とっても晴れ晴れとした表情で、華琳の後ろをスキップの様な足取りで離れていく華蘭。
一人残された一刀は、重い溜息を吐いたのであった。
―――晩
一刀がすっかり暗くなった、洛陽の通りを通って西涼の陣に帰ろうとしている所で、人だかりを見付けた。
何かと思って見てみれば、飯を炊く煙が濛々と上がっているのが分かった。
その他にも、以前紹介された皇甫嵩と、何進がいるのも見て取れた。
二人を含めた多くの人が走り回っており、如何にも忙しそうである。
一刀のボランティア精神が疼いた。
思い立って、即実行に移す。
まずは皇甫嵩―円の元に移動する。
「円さん、炊き出し手伝いましょうか?」
「おお、みつか―もとい一刀様、滅相も無いです。
ここは私達にお任せ下さい」
「いや、そう言う訳にも・・・後、敬語何とかなりません?
背筋がむず痒くてしょうがないんですけど」
「いえ、此方こそそう言う訳にも。
一刀様こそ敬語なんていりません。
どうか、円、と呼び捨てにして下さいませ」
「いや、だから・・・」
無限ループになり掛けた辺りで、空気をぶち壊す甲高いキーキー声が炊き出しサイドから上がる。
「なぁ〜んで、名族たるこの私が下々の者達の食事を作らねばならないんですの!?」
「そうじゃそうじゃー!」
「あああああああああ、姫〜お願いですから自重して下さい〜。
皆さんが凄い眼でこっち睨んでますから!」
「美羽様も止めてーーー!! 私の胃にまた穴を空ける気ですかー!?
旅の名医に折角治療してもらったのに、治る前に悪化しちゃいます―――うぅっ! また胃が・・・・・・」
「あぁ、咲さん大丈夫ですか?」
「シクシクシク・・・もう私の味方は貴女だけよ、斗詩ちゃ〜ん」
クルクル金髪で、胸が御立派で、見るからにバカそうな女性。
金髪にティアラ乗っけたちっちゃい女の子、よくよく見れば何処か利発そうな部分が垣間見える様な気も。
クルクル金髪を諫めていたおかっぱの女性、ティアラ乗っけた子を諫めようとして急に胃を押さえて蹲って泣き出した・・・何と言うか、社長秘書みたいな雰囲気の眼鏡の女性。
そんな奇妙な四人組が、一刀の視線の、そして声の上がった方にいた。
「なんなんだ、あの混沌は・・・・・・」
「あ、あの、アホ名族共・・・! 美里様の顔に泥を塗る気!?」
円が米神をヒクヒクさせ、怒りも顕わに騒動の大元を睨む。
今にも宝雷刀を抜いて斬りかかりそうだ。
一刀は円を止めるべきかと思い悩んでいたが、その必要は無かった。
「こ〜の〜駄名族共が!!」
“ガヅンッ!!!”
「痛ッ!? な、何をするんですの? 美里さん!?」
「痛いのじゃ〜、七乃〜、助けてたも〜」
「はーい、はいはい、美羽様、七乃はここにおりますよー」
「また増えた!?」
何やらいきなり現れたバスガイドか婦警モドキな女性。
一刀は結構混乱していた。
結局、混乱は美里が無理矢理収め、ぶつくさ言いながら、全員で炊き出しを行う事となった。
因みに、先程の騒動を起こした連中の名前を教えて貰った一刀だが、さして驚かなかった。
だって、ダメな名族と言ったら、三国志では超有名なのである、無論駄目な意味で。
袁紹、袁術、顔良、紀霊、そして張勲。
一刀としては、別段名前知らなくても良かったかなとか思っていたりした、洛陽のとある一夜であった。
第九話:了
オリジナルキャラ紹介
名前:曹仁
字:子孝
真名:華蘭
武器:天魔
設定:「曹家の盾」を自負する、一途な武人。
一途なのは何に対してもであり、逆を言えば融通が利かぬとも。
華琳に散々誘われていたが、一度も閨を共にしていない、無論他の誰とも。
背がかなり高く、一刀より4,5cm低い程度(因みに一刀の身長は170cm後半)。
「防御」を主点に置く戦いならば、恐らく大陸一の錬度を持つ。
曹家に拾われた恩を、一生をかけて返す為に、曹家の跡取りの絶対的な守護者となる事を曹嵩(華琳の母)に誓っている。
名前:紀霊
真名:咲
武器:玉龍
設定:袁術に仕える有能な将軍で、美羽が今よりもっと小さい頃から仕えている忠臣でもある。
なのだが、七乃が色々と吹き込んでしまった事で美羽が歪んで育ってしまった事から、神経性胃炎を発症。
つい最近、旅の五斗米道の医師の診察と治療(現在進行形)を受け、多少の元気を取り戻しているが、既に再発しかけている。
袁紹軍の顔良―斗詩とは苦労人友達。
住んでいる場所が離れている為、滅多に会えないが、親友と呼べる間柄。
少なくとも、文醜が嫉妬する位には仲良し。
関羽と互角級の武の腕を持ち、袁術軍で唯一名前持ちの武具を有しているが、胃炎の所為で現在は七割程度の力しか出せない。
後書きの様なもの
・・・超展開じゃねーか!!
セルフ突っ込みです。
読み辛い・・・・・・
今回は色々とガチで訳解らん展開になってしまった・・・首括るか?
レス返し
poyy様:自分も大好きだー!!
2828様:呉は次回です、蜀は次次回かな?
うたまる様:おっそろしいカオスですねw見たい様な・・・やっぱり見たくないかな?
家の子瑜先生は、見たらそちらの翡翠さんが穢されるかもしれません・・・
睦月ひとし様:本作では、恋姫ではスポットライトの当たらなかった名将達を登場させるのが第一目的ですから、そう言って貰えると嬉しいです。
瓜月様:正史とは乖離が続きます。 これだけしか言えません・・・
砂のお城様:フラグを立てなきゃ北郷一刀の名折れじゃぜ。
say様:こっからですよ、予想もつかない流れを狙ってますし。
mighty様:風と稟が仲間になった事で、自動的に恋姫本編には出なかった名軍師が魏勢力に登場するものと、御思い下さい(ニヤリ)。
それでは今回はここまでです。
クオリティとうだつの上がらない自分に、付き合ってくれてありがとうございます!
完走目指して書き続けます! ではまた次回で
説明 | ||
さぁ! 前回は過去最大の量の感想を頂けましたが、今回はどうでしょうかねー。 クオリティは相変わらず低いどころではありませんが、どうかよろしくお願いします。 |
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コメント | ||
一刀の「俺は物じゃない、そんな事を言う奴には絶対に従ってやらない」。痺れますね〜。正直私は華琳そのものは好きなんですが、彼女の最初に会った時のあの上から目線というものがどうしても好きになれないんですよね。(ハーデス) 咲と斗詩の胃に穴が開かないことを;(深緑) 最初に手を出したのは華琳ですか・・・、まぁお約束ですね。紀霊さんご愁傷様です。応援したいですね。次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし) さすが駄目の代名詞袁家だな。(poyy) 咲さん、不憫すぎる・・・・袁家ってそこまで駄目族なのか(黄昏☆ハリマエ) 袁家の扱いに吹いた(w いやぁ、戦闘表現が上手くて羨ましい限りです。 ちなみに、うちの子瑜は皆が思っているようなキャラじゃないんですけどね(w なにせ草案時の一番最初のイメージが月姫の琥珀ですから(w チラと述べましたが、一刀と住む前の八●一での作品のエグさは発禁寸前です(汗(うたまる) 一刀つぇ〜、いいぞもっとやれ〜・・・・恋より強いのか?(赤字) 華蘭落としたけど守護者になるのを誓ってるから引き込みは無理かな? (2828) ヤヴァイ、華蘭が自分の中でど真ん中ですwwwすいませ〜〜ん、彼女もらっても良いですか?♪♪(mighty) |
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