真・恋姫†無双〜覇天之演義〜 第四章・雷帝 |
雪蓮「―で、私たちは何進将軍や他諸候と共に本隊にあたり、これを撃破せよ、だって。」
現在、孫策こと雪蓮率いる孫呉は軍議を開いている。
最近大陸のそこいら中に出没する賊たちが結集し、極めて大規模な軍勢に成長しているのだ。
その対応に、皇帝の禁軍を率いる天下無双、大将軍何進が当たっていたが、
そのあまりの数に対処もままならなくなり、周辺諸候に檄文がまわった。
内容は当然、賊討伐のための援護の要請。
これを受けて、孫策を客将として雇い入れている袁術は雪蓮を呼びつけた。
袁術「孫策よ、最近出没している賊共を知っておるであろ?」
張勲「大陸全土に展開している、衣服の何処かに白い布を纏った人たちですね〜。」
袁術とその近衛の長、張勲が孫策に言葉を投げかける。
当然、何度も賊にあたってきた雪蓮である。
その言葉に、肯定の意を告げ、先を促す。
雪蓮「ええ、知っているわ。それで?」
袁術「先だって、何進様から檄が届いての?奴らを一掃するのに協力して欲しい、とのことじゃ。」
張勲「現在、何進将軍が本隊に当たっているそうなんですが、その数約六十万。流石に厳しいらしくて〜。」
聞いた言葉に首をかしげる雪蓮。
雪蓮「あら?私は九十万って聞いてたけど?」
張勲「すでに三十万は何進将軍の軍が撃破したらしいです〜。」
雪蓮「三十万も!?将軍の軍の規模は?」
袁術「約十二万と聞いておるのじゃ。」
雪蓮「は〜。大したものね。さっすが大将軍。」
袁術「まぁの!」
雪蓮「なんであなたが誇らしげなの…?」
袁術「なっ、なんでもないのじゃ!気にしないでたも!」
急に赤面し、あわててはぐらかす袁術。
雪蓮のいたずら心がすこし騒いだが、ここは自重。
張勲「まぁ、それだけの激戦をした後なだけに、すこし兵たちの士気が下がっているようでして〜。」
袁術「それで、諸候に檄を飛ばし、合力してこれを討つ、というわけじゃの。」
雪蓮「ふぅん。でも、そんな大規模な戦に連れて行けるような兵力、うちにはないわよ?」
先立って、こういう大規模な戦に自分たちがあてられた時、どう対処するか。
それを、周瑜や陸遜たちを交えた軍議ですでに話し合っていた。
いずれ自分は楽をするから、代わりに大変な役をやれ、とか。
そういう無茶を袁術が言い出すだろう、ということは予想していた。
そうした場合、自分たちがあたる代わりに兵と資金を回すように交渉する、ということになった。
ちなみに、この計画の発案者は地の御遣いこと白童、つまり葎。
なかなか鋭い切り口に、孫呉の智将・武将ともに感嘆したものである。
今回はその時の軍議の内容そのままの話であったため、どうやってその話に乗せるか、
雪蓮は油断なく袁術の反応を見ながら話を進める。しかし―
袁術「そこは問題ないのじゃ。兵と金子は妾の軍のものを分ける。」
雪蓮「えぇ!?」
袁術「何をそんなに驚いておるのじゃ?」
雪蓮「い、いえ!なんでもないわ!!」
話に乗せるまでもなく、自分から兵と金を都合すると言ってきた。
今までの袁術では絶対しないような行動に、やや疑念を抱きつつも、話を続ける。
雪蓮「まぁ、そこはわかったわ。それで?袁術ちゃんたちは?」
袁術「できることなら、妾も本隊の討伐に向かいたいところじゃが、
それでは妾の領地周辺の守備がままならぬであろ?
それでは、いたずらに民を怯えさせてしまうだけじゃからの。孫策、お主の領地も含め、
周辺の守備と、もし賊の別動隊なんぞが出てきた時の対応に回ろうと思うのじゃ。」
雪蓮「………。」
開いた口が塞がらない雪蓮。
自分が知っている袁術は、こんな奴だっただろうか?
袁術「それでじゃの、孫策よ。妾が行けぬ代わりに、この者を同行させてやってはくれぬか。」
雪蓮「え?」
張勲とは、玉座に座る袁術を挟んで逆側。いつの間にか、そこに一人の男が立っていた。
その男から感じる気配は、まるで霞がかっているようにはっきりとしない。
羽のような形の、ヘッドセットのようなバイザー型の兜で顔を覆い、その相貌は見えない。
だが一見して、その男が武将であることは、雪蓮の卓越した感覚で見抜ける。
しかし、前線で戦う者にしては、胴体を守る装備が見えない。
せいぜい、心臓を守る「心」と描かれた板金一枚である。
対して、後方で弓兵として働くには、その腕と脚に装備された武装は似合わない。
引き裂く事に特化した爪のような手。
斬る事も、突く事も可能な、奇怪な形状の刃付きの脚あて。
特に目立つのが、囚人につける手枷のような手甲に取り付けられた、中折れ式の刃。
この時代に、こんなスタイルで戦う武将はなかなかいないだろう。
曹魏に最近仕えたと聞く楽進ですら、もう少し重装である。
雪蓮「!」
たった今、自身が考えた人物の戦闘スタイルによって、雪蓮は理解する。
装備と腕と脚だけに絞り、重荷になる鎧を脱ぎ捨てた戦士。
つまり男は、徹底した 超近接格闘戦士(インレンジファイター)なのだ。
袁術「この者の名は雷薄烙旋(ライハクラクセン)。妾の軍"最強"の将じゃ。」
その男、雷薄から感じる闘気に、雪蓮は心が疼(ウズ)く。
この男と手合わせしてみたい。
ことに戦いが好きな雪蓮は、そう思わずには居られなかった。
雪蓮「ふぅん。見たところ細身だけど、本当に強いのかしら?足手纏いはいらないわよ?」
抑えきれない疼きに、思わず挑発してしまう雪蓮。
その左手はすでに、腰の南海覇王の鞘をつかんでいる。
好戦的な言葉と表情の雪蓮に、袁術は応える。
雷薄への絶対の信頼と、その実力に対する自信を乗せた、強い笑顔で。
袁術「そんな妄言は、せめて反応し、身動きできるようになってからのたまうがよいわ。」
雪蓮「………え?」
先ほどと同じ、ふと気づけばいつの間にか、雷薄はすでに雪蓮の正面、懐に入っていた。
肘(ヒジ)から曲げて突きつけられた右腕の枷刃(カジン)は、まっすぐなまま雪蓮の首に添えられていた。
左腕の枷刃は半ばでたたまれ、雪蓮の腹に突きつけられている。
更にその左手の爪は、そっと添えるように、雪蓮の脇腹に当てられている。
しなやかに伸ばされた右脚は、その刃を雪蓮の左ふくらはぎに添えている。
右脚は雷薄の重心を支えているが、その位置は雪蓮の正面中央であった。
雷薄は、その挙動だけで雪蓮を詰んだ。
右腕を動かせば、雪蓮の首は胴と泣き分かれるだろう。
左腕を突き出せば、雪蓮の腹を切り裂き、貫き通すだろう。
左腕を引き戻せば、雪蓮の脇腹を引き裂き、そのはらわたを抉り取っていくだろう。
右脚を払えば、雪蓮は両足首から先を失い、二度と自力で立てなくなるだろう。
左脚は体制を崩してでも振り上げれば、雪蓮は股間から頭頂までまっぷたつになるだろう。
袁術軍"最強"は、たった一瞬、たった一度の挙動で、五つの「強さ」を雪蓮に突きつけた。
そう、この男、雷薄烙旋は――
袁 術 軍 ” 最 強 ”
なのである。
袁術は、確かにそういったではないか。
そして雪蓮は、その位置こそ客将とはいえ、"袁 術 軍" なのだ。
つまり、答えは最初から出ていた。
この男、雷薄烙旋は、雪蓮を凌ぐ武をもっているのだ。
そして、ようやくまともに感じることが出来た雷薄の殺気。
身動きひとつ取れない。震えることすら叶わない。
それは雪蓮をすっぽりと包み込み、無条件に安心させるような、
しかし完全に動きを封じ、成す術無く圧殺するような、そんな圧倒的な気配。
雪蓮(…ッ。なんて気。下手すると葎と張れるかも…!!)
孫呉独立の計画は、この男の登場により、確かな遅延を見せただろう。
そんなことなど露も知らず、袁術は雪蓮に最後の命を伝え、その場を締めた。
袁術「孫策、各地に散っている孫呉の将たちの招集を許可する。
しっかりと戦力を整え、何進将軍のお力になってきてたも。
孫呉と名門袁家の力を大陸に見せつけ、皇帝陛下にその功を捧げるのじゃ。」
冥琳「誰だ、そいつは。」
雪蓮「でしょ!?冥琳もそう思うわよね!?」
穏「まるで別人みたいですね〜。人違いじゃないですか?」
冥琳「雪蓮が幻覚でも見ていたんじゃないの?」
雪蓮「ひっど!本当のことよ!現に蓮華たちも呼ぶことが出来たじゃない!」
冥琳「そういえばそうだな。先だって、賊の被害を受けた村々の救済の時にも許可が出ていた。」
雪蓮「あの子、いったい何があったのかしら。」
冥琳「さてな。以前の袁術とその周辺に関する変化といえば、その雷薄殿くらいだ。
となれば、雷薄殿の影響と見るのが妥当だろう。葎、どう思う?」
と、葎に話を振る冥琳。
対し、葎は真剣な表情で考え込み、黙して何も語らない。
冥琳「葎?」
雪蓮「ちょっと葎〜?どうかしたの?」
伺うように覗き込んでくる二人に、ようやく葎が言葉を返す。
葎「雪蓮。その雷薄って人、俺と同じくらいの強さに見えたっていったよな?」
雪蓮「…。ええ、私ですら動けなくなるような殺気を放ったのは、今までで葎くらいだわ。」
真剣な表情で問うてくる葎に、雪蓮は応える。
その言葉に、葎はまた少し考え込んだ後、言った。
葎「琢県の北郷が、俺の友人だって話はしたよな?」
雪蓮「ええ。葎と一緒に鍛錬してたって子ね。」
冥琳「先日公孫賛の軍を援護して、賊を撃退したを聞くな。」
葎「ああ。そのことも交えて、ちょっと話してなかったことを伝えようと思うんだ。」
穏「どうしたんですか〜?」
葎「この世界に来た御遣いと呼ばれる存在、もう一人いるかも知れない。」
全員『!!』
葎の言葉、もう一人の御遣いの可能性に、全員が驚く。
葎「この世界に俺たちが来た経緯については話したと思う。
俺たちがこの世界に来るきっかけとなったのは、ある男が盗み出そうとしていた鏡だ。
あんな銅鏡なんていくらでも発見されてるんだ。盗むに値する価値があるとは思えない。
多分、この男はその鏡についてなにか知っていたから、盗み出そうとしたんだと思う。
なら、この男がこの世界に来たとしても、御遣いなんて呼ばれる存在にはならないと思う。」
ここで葎は一旦区切り、周りを見渡す。
周囲の人物たちは、葎の話を真剣な表情で聞くだけで、なにも言わない。
葎は続ける。
葎「この時、銅鏡のそばに居たのは、その男を除いて三人いた。
よくよく三人で行動を共にした連れ合いの三人でね。
幼少のころから、同じ道場で汗を流し、打ち合いをした三人だ。
ひとりは俺。孫呉は孫策の客将。地の御遣い、白童葎。
もう一人は琢県の県令。天の御遣い、北郷一刀。
そして最後の一人。俺が人生で唯一"師匠"と呼んだ人間。
差し詰め、獄(ゴク)の御遣い。神出鬼没、名を獅子神湊瑠だ。」
雪蓮「獄の御遣い…。」
穏「獅子神湊瑠さん、ですか…。」
冥琳「なぜ獄なんだ?」
葎「あの人は敵対する者に対して容赦ってものが無い。
正攻法で攻めるんじゃない。反則で攻めるんじゃない。
正攻法、反則、そして裏技や隠し技まで、全てを同時に仕掛けてくるような人だ。
真っ向から対峙していても、正面からの攻撃。さらに死角からの攻撃。
そして、さらにその裏をかいた攻撃、その裏、その裏、きりがないほど。
どれだけ裏を想定しても、それに対処していても、更にその裏をかいてくる。
まるで、どこまでもあの人の手のひらの上、鳥かごの中でさえずっているような錯覚。
あの人は敵を牢獄に陥れる。だから獄。獄の御遣いなんだ。」
そう語る葎に、渋い顔を向ける冥琳と穏。
当然である。どんなに裏をかいてもその上を行かれるのでは、軍師として勝てないという事である。
雪蓮「そういえば、あいつの気配を感じた時、まるであいつの中に閉じ込められてるみたいだったわね。」
葎「純粋な強さなら俺の方が上だろうけど、まともにぶつかっても勝てるとは思えないな。」
冥琳「つまり葎は、雷薄殿がその獄の御遣いではないか、と考えているのか?」
冥琳の問いに、しかし葎は首を振る。
今までの流れではおかしいその葎の反応に、一同は首をかしげる。
穏「違うんですか〜?」
葎「いや、わからないんだ。」
雪蓮「ん?どういうこと?」
葎「禁軍の大将軍何進。彼の戦略や、圧倒的な武力、そして派手好きな思考。
その性格や行動が、いちいちあの人にかぶる。最初は何進将軍があの人かとも思った。
でも、公孫賛軍にいる公孫越将軍の話を聞いてわからなくなった。」
冥琳「公孫賛の白馬義従に対して、雄騎隊と呼ばれる騎馬部隊の将だな。それで?」
葎「その人が取った策、囮で敵を釣り出し、退路を断って奇襲する、釣り野伏せって言ってね。
俺たちが通っていた道場の源流にいる島津って人が得意としていた戦術なんだ。
そして、この間一刀から文が来てね、雄騎隊と白馬義従の戦いの話を聞いたんだけど、
俺たちが修行した流派にしか存在しない、鋭撃閃っていう技を使ったらしくてね。
一刀は、公孫越が湊瑠なんじゃないか、と言っていたよ。」
穏「ちがうんですか〜?証拠が出たみたいですけど〜。」
葎「うん、俺もこれは決定的かな、とも思ったんだ。
示現北星流の技を使った訳だからね。でも、ほかにもいた。
雪蓮。確認だけど、雷薄って人は、気づいたら懐にいたんだよな?」
雪蓮「そうね。」
葎「少し距離があいた、正面にる相手が自分の懐まで入ってくるんだ。
現実的に考えて、その過程が視認できない、なんてことはまず有り得ない。
相手に自分たちが一瞬で移動しているように錯覚させる縮地方ってあるだろ?
示現北星流には、気を用いることでこれを地で行う技がある。こんな風にね。」
全員『!?』
その声とともに、いつの間にか、葎は雪蓮の背後にいた。
その一瞬前まで、雪蓮の正面にいたはずだ。全員の注目を受けながら。
雪蓮「これよ、これだわ!あいつがやって見せたのは!」
葎「示現北星流奥義・移拠(イコ)という。」
◆示現北星流奥義・移拠
縮地や瞬動と呼ばれることもある。
つま先を擦るように歩き、踵(カカト)を地面につく一瞬で気を放ち、
大きく開いている距離を、視認できないほど一瞬で移動する技。
習得には、気をほぼ完璧に使いこなせるような才能と、
膨大な時間を修行に費やす必要がある。
ちなみに、葎や湊瑠はこの技を使えるが、一刀は使えない。
一歩手前の、速いが見える、くらいのレベルである。
冥琳「その移拠というのを雷薄殿も使ったから、確定ではなくなったというわけだな。」
葎「そういうこと。」
結局、本当の湊瑠は誰なのか。
そもそも、本当に湊瑠はこの世界に来ているのか。
その真偽が判明するのは、いつになるかしれない。
そろそろ孫権率いる部隊が到着すると聞き、葎は自分の陣の天幕から孫呉の陣へ移動する。
何故、孫呉の陣の中に天幕が無いのか?
それは、葎が孫呉の客将としての扱いであり、当人の希望でもあったからだ。
葎の希望した形、それは傭兵集団である。
実はこの目論見、葎の想定外に大当たりだった。
入団志望者を募り、武力訓練を葎自らが一騎打ちの形式で対応。
目利きの聞く葎の的確なアドバイスにより、個々人の強さが伸び、欠点は減る。
各自が依頼を受ける形で、好きなとき、好きな仕事を請け負う。
依頼は、何かしら困ったことがある町民の手助けや、国の運営の手伝いなど、内容を問わず仕事を出す。
依頼の内容によっては複数人数で受ける物もあり、連携力も鍛えられる。
実力が重視されるので、個人の質としての上昇量が、軍の調練と比べて非常に大きい。
依頼内容は文武どちらも充実させることで、団員が文官武官のどちらに分類されるかを判別できる。
結果として、非常に能力の高い、軍師級の文官や将軍級の武官が育つこともある。
団員の情報を葎が管理し、団員の中でも特に目を引く人物を見受ければ雪蓮に打診。
まだ独立はしていないが、国として雇い入れられる用意をする。
あとは葎から話を通し、団員が希望するのであれば、国の官吏として雇用する。
国として動くには向かない仕事は傭兵集団が請けることで解消。
中でも特に質の高い者は、雪蓮と提携し、国の文官武官として雇用。
早い話が、国家管理直営のギルドである。
故に、葎は孫呉の将として参戦しているのではない。
義勇軍任務を請けて動く、傭兵ギルド"鷲緋爪(シュウヒソウ)"軍の大将として、参戦している。
ちなみに、鷲緋爪というのは団員たちが勝手に名乗りだした名前であり、葎は命名していない。
雪蓮「あ、来た来た。葎〜〜〜〜!!」
葎を確認し、笑顔で手を振ってくる雪蓮。
葎も手を振り替えそうとして―
葎&雪蓮 「「 ! 」」
嫌な予感。あるは虫の報せ。
感じた違和感に、雪蓮は顔をしかめ、首をかしげる。
対し、葎は雪蓮より性格に察知していた。
葎「賊かな。どこかの軍が襲撃されてるみたいだ。規模は…二万くらい。」
雪蓮「そう。この時期、もしかしたら蓮華たちに…。」
葎「確かその娘が孫権だったな。」
雪蓮「ええ。」
それを聞くなり、葎は持っていた刀のベルトを肩にかける。
葎「俺は援軍に向かう。雪蓮は兵をいくらかまとめてから来てくれ。
影爪(カゲ)を何人か周囲に哨戒に回している。賊がきたらそっちにも知らせが入るから、
周囲への警戒は最小限でいい。警戒よりは援軍を優先してくれ。」
雪蓮「わかったわ。」
◆鷲緋爪・格付け
影爪とは、鷲緋爪の中でも隠密行動に特化した者たちを指す。
鷲緋爪では、団員のことを爪(ツメ)と呼ぶ。
その中でも武を誇る者を武爪(ブソウ)、智を誇るものを智爪(チソウ)と呼ぶ。
速さを誇る伝令は風爪(カゼ)、守戦に長けた者は翼(ヨク)と呼ぶ。
その後は、文官武官を問わず、○○爪と呼ばれる。
現状、翼の名を持つ者は鷲翼を冠する者のみである。
階級高 葎副将(葎補佐) :王爪(オウソウ)・鷲翼(シュウヨク)
↑ 軍師・将軍格 :鷲爪(シュウソウ)
↓ 隊長格 :緋爪(ヒソウ)
階級低 一般兵格 :爪(ツメ)
葎「それじゃ、先に行く。」
いうなり移拠を交えて走り出す葎。
一瞬で見えなくなった葎に苦笑し、陣の中に取って返す雪蓮。
雪蓮「普通は一人では無謀だって止めるところなんでしょうけど…。
本当に一人で援 "軍" たりえるんだから、末恐ろしいわ。ふふ。」
そんな人材が、客将とはいえ孫呉にいる事に、雪蓮は天に感謝する。
いや、葎は地の御遣いであるから、地に感謝するべきか。
そんなことを考える頭を切り替え、雪蓮は冥琳に告げる。
雪蓮「付近の軍が賊の別働隊に襲われているわ。
蓮華かも知れない。動くわよ。冥琳、兵を編成して。」
戦いの気配を感じる方へ走る葎。
風の如き速度で走る葎の隣、いつの間にか枷の男が併走している。
葎「お!あんたが雪蓮の言ってた雷薄さんか。」
雷薄「いかにも。雷烙旋、以後見知り置きを。現状を報告します。」
どうやら、すでに戦陣を偵察してきたようだ。
葎ですら気づいてもまだ向かっている最中。脅威の速さだ。
葎「ああ。よろしく。」
雷薄「御意。敵は賊の別働隊。その数は約二万五千。」
葎「うわ、思っていたより多かったか。」
雷薄「お味方は孫権殿、配下に甘寧殿、周泰殿、朱治殿。兵数は約四千。」
葎「兵力差は六倍強か…。」
雷薄「御意。長くは持ちますまい。拙者は先行します。」
言うや否や、移拠を使っている葎ですら追いつけない速度で、雷薄は先に行ってしまった。
葎「うおぉ。なんつー速度だ。移拠って結構体力使うはずなんだけどな…。」
葎も少しだけ速度を上げ、雷薄を追った。
思春「はぁぁあああああ――――!!!」
明命「てやぁぁああああ――――!!!」
群がる賊を、裂帛(レッパク)の気合で一閃。切り伏せる。
だが、六倍強の兵力差は如何ともしがたく、斬った端から次の賊が現れる。
明命「うぅ…、きりがないです!」
思春「くそっ、蓮華様の下へ行かねばならぬというのに…!」
歯噛みする思春。もはや外内関係なく敵味方が入り乱れ、乱戦の様相である。
分断された自分たちの大将を救援に向かわなければならないが、道が開けない。
二人ともが一対一で戦うスタイルなので、数で圧されると対応が追いつかないのだ。
このままでは蓮華様が、と焦る二人。
そこに―
『移拠迅雷(イコジンライ)』
バヂン、と。二人の周囲の敵全員がほぼ同時に切り伏せられ、崩れ落ちる。
崩れ落ちた賊はビクビクと痙攣し、たまにバチっと放電している。
二人の左前方に、切り伏せられた賊により道が出来ていた。
『孫権殿はあちらに。あちらの賊も一掃されています。急ぎ合流されたし。』
蓮華に危険は無いことを知り、二人は安堵する。
姿が見えないが、自分たちの手助けをしてくれたことに礼を言う思春と明命。
思春「かたじけない!助太刀感謝する!」
明命「ありがとうございますです!」
走り出す二人に、また声が投げかけられる。
『合流後、急ぎ軍をお退き、再編成を。孫権殿の許に孫呉最凶の戦略兵器が援軍に来ております。』
二人 「「 !! 」」
ふたりは、それが何を示すのかを悟り、思わず笑顔になる。
これで勝ったも同然、そういう自信にあふれた笑みだ。
思春「急ぐぞ、明命!」
明命「はい!」
道に向かって、二人は駆け込んでいく。
その背後、切り開かれた場所に、バヂッという放電音と共に、雷薄が現れる。
体が暗い紫色に放電を繰り返す、まるで体自体が紫電になったような姿である。
賊「な、なんだコイツは!?」
賊「なんか光ってるぞ。」
賊「ビビッてんな!殺せ殺せ!」
『次は舞(マイ)の援護、か。あの子の武技は一対多もできる。問題はなかろうが…。』
バヂン、という音と共に、雷薄の姿は消える。
賊『ぎゃぁぁぁぁぁああああああ――――!!!』
賊を数十人単位で、斬り捨て、感電させながら。
??「そらそら!かかってこないのですか!?朱治君理(シュチクンリ)の首はここですよ!」
そういいながら、少女は自分の得物を振り回す。
朱治君理。真名を舞。
長柄の先から鎖が伸び、その先に船の錨のような、刃が突いている。
その威容、賊たちは迂闊に接近できない。
すでに接近を試みた賊が、何人も切り刻まれて骸を大地にさらしている。
朱治「さぁさ…っ!?そこ!」
雷薄『危ないな。』
がし、と。鎖と刃の連結する柄のような形状の場所をつかむ。
しかし、今の雷薄は紫電の状態。当然、鎖でつながる先は―
バチン
朱治「あ゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙や゙!!!!」
感電し、少女のからだがビクンビクンと震える。
すぐさま長柄から手を離し、涙目で雷薄に抗議する。
朱治「湊瑠様!ひどいですよぅ!舞をビクンビクンさせてどうする気ですか!!」
雷薄『雷薄と呼べ。悪いのは相手も見ないで錨鎖刃(ビョウサジン)を投げてきた舞だろう。』
舞「あう。」
指摘されて、しんなりしてしまう舞。
錨と長柄を回収し、雷薄は舞に歩み寄る。
雷薄『孫権殿が孤立していたというのに、こんなところで何をしている。』
舞「うぅ、舞の部隊の兵を全員蓮華様のもとへ送りましたもん。だから舞は足止めを…。」
雷薄『六倍強いる敵の一部をお前一人で足止めして、何か意味があるのか?』
舞「あう。」
指摘されて、更にしんなりしてしまう舞。
雷薄は紫電化を解いて、舞の手を取り、立ち上がらせる。
雷薄「紅鷲殿が来ている。ここにいると巻き添えを食うぞ。離脱してさっさと合流しなければ。」
蓮華は葎が居る場所からは500m以上離れた場所に居るが、それでも雷薄は危険だという。
雷薄は、右腕を舞の背中、左腕を膝の裏に入れ、舞を抱えあげる。
俗に言うお姫様だっこで。
そのまま、移拠で移動を開始。急速に戦場から離脱する。
舞「やん!湊瑠様ってば大胆なんだから!みんなが見てますよ?」
雷薄「雷薄と呼べ。賊だろう。あまり騒ぐなら、もう一度紫電化してやろうか。」
舞「ひぃ!ごめんなさい!」
雷薄「よろしい。おとなしくしていろ。」
舞「…ん。」
きゅっ、と。雷薄の首に腕を巻きつけ、胸に顔をうずめる。
その顔が真っ赤なのはご愛嬌。
騒いでいたのも恥ずかしかったからだろう。
そのことを知ってか知らずか。
バイザーでかろうじて見えている口元には苦笑が浮かんでいた。
葎「…よし、そろそろ向かうか。
全軍、出撃用意!突撃はするなよ。
俺が単騎で敵を殺しつくす。討ちもらしを残さず狩れ。
我らの大将の許へ生かして通すな!」
兵『オォォォォォオオオオオオオ!!!』
出陣しようとする葎を蓮華が止める。
蓮華「やめなさい!馬鹿なの貴方!?相手の軍勢が見えないの!」
葎「………。(ノータイムで馬鹿て。)」
思春「蓮華様、白童は先の賊討伐で三万の賊を単騎で足止めし、約二万弱を一人で殲滅しております。」
蓮華「な!あの噂は本当だったのか。てっきり流言だと。」
明命「たしかに信じられませんが、本当ですよ。
なので、諸侯には紅鷲と呼ばれていますが、この周辺では紅魔と呼ばれています。」
蓮華「…で、でも!あの中には舞もいるのよ!その話が本当なら巻き込んでしまうじゃない!!」
葎「ああ、朱治って人のことだな。放っておいて問題ない。」
蓮華「舞を見捨てろというのか!」
古錠刀を振るおうとする蓮華を、思春と明命が慌てて止める。
思春「ちょ、蓮華様!落ち着いてください!」
明命「そ、そうですよ!あちらにも援軍が行ってるはずです!」
蓮華「それがどうした!この大群の中に一人で向かって何の意味がある!」
葎「問題ないだろ。雪蓮曰く、袁術軍最強らしいし。」
蓮華「貴様!姉様の真名を!」
葎「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!うるせぇなあ!!」
ジジジ、と。
賊討伐の時に見せた殺気を開放する。
途端に動けなくなる蓮華たち。
余波を受けて、賊たちや、孫権たちの兵も身動きが取れなくなる。
もはや無様にガタガタ震えるしか出来ない蓮華に、葎は言う。。
葎「浅慮よりは考えたほうが良いけどな、孫仲謀。お前は考えすぎだ。
反対意見ばかり出すが、ならばお前は今、何とかできる案を出せるのか。
お前みたいに、然るべき行動もとらずに喚いてたって何も始まらない。
今は少しでも朱治たちを狙おうとする賊の目を、
こっちに引き寄せて、隙を作らなきゃならない。
そうすれば、あとは雷薄さんが何とかしてくれるはずだ。
袁術軍最強ってことは、雪蓮よりもずっと強いってことだ。
活路が無いなら俺が開いてやる。信用しろ。黙って俺の背中を追って来い!」
自信満々な笑みを浮かべて。
それだけ言うと、葎は賊に突撃した。
いつの間にか、蓮華たちの震えは治まっていた。
自分たちを包む、この圧倒的な気配。
最強の盾にして、最凶の矛。地の御遣い、白童鷲王。
その安心感と、見える大きな背中は、孫呉に大きな士気を与える。
蓮華「…なによ。…安心しちゃうじゃない。…信用しちゃうじゃない。…でも。」
見ろ、あの殺気を受けた賊共は恐慌状態に陥っているではないか。
彼こそ、一騎当千の器にすら収まらない、孫呉の力の象徴。
さぁ、その背中を追え!その先にこそ、勝利がある!!
蓮華「孫呉の兵よ…。勇敢なる、我らが精兵たちよ…。」
俯いた蓮華。立ち上がる思春と明命。
強い意志をその瞳に宿し、蓮華は顔をあげ、高らかに叫ぶ。
蓮華「我らが勇者に続け!力に恐れをなし、無様に逃げ出す賊共を駆逐せよ!
我らの尊き民から略奪を繰り返す外道に、明日など与えるな!全軍、抜刀!!」
思春「全軍抜刀!甘寧隊は右翼に展開する!雑魚共を逃がすな!」
明命「周泰隊は左翼です!白童様にだけ良い顔させてはなりませんよ!展開!!」
蓮華「孫権隊、朱治隊の兵は我に続き中央に布陣するぞ!
白童鷲王!認めないわ!私は断じて認めない!
黙って追うだけなど、私は認めない!
孫呉の兵よ!堂々と我らの雄を謳い、我らが勇者の背に続け!!!」
六倍強の兵力差がなんだというのか。
孫呉の誇る、鷲の双爪は、瞬く間にその数を減らして見せよう。
今ここに、孫呉の反撃が始まる。
賊「くっぉぉおおおお!!なんだ!なんなんだあいつはぁあああああ!!!」
賊「あいつを殺せぇぇえええ!!でないt『ザシュ』ぅごぁああっ!!」
賊「こっちは二万以上いたんだぞ!?なんで勝てないんだ!!」
葎「足りねぇよ、本気を出すまでも無い。
数で俺を圧したいなら、その百倍はつれて来い。」
一刀、名前使わせてもらうぜ。
腰を低く、右手を鞘に、左手を柄に。抜刀の構え。
自分よりも、この世界で大きく名を上げる親友に呟きながら、葎は奥義を放つ。
葎『大和百万両大花火(ヤマトヒャクマンリョウオオハナビ)』
ずしゃっ、と。
たった一瞬で賊の前曲三千の命の炎が吹き消された。
形を保たぬサイコロステーキになって吹き飛ぶ仲間を見た賊は、捨て鉢な特攻すらやめてしまう。
賊「冗談だろ?こんなの勝てるわけ無い!」
賊「もうやめだ!!こいつらにゃ勝てっこねぇ!逃げろ!!」
葎への突撃をやめ、賊たちはこの戦場から逃げようとする。
葎はそれらも狩りとろうとするが、自分から離れようと動く賊たちだ。
自然、討ちもらしが多くなり、葎の背後に控える孫呉の部隊への負担が増えはじめる。
葎「っち!ん?」
右方向に感じた気配に、葎はすぐさま、思春へと指示を飛ばす。
葎「甘寧隊!右翼を空けろ!中央と左翼の援護に回れ!朱治隊は右翼に展開する準備だ!!」
思春「!承知した!!甘寧隊!左へずれろ!周泰と孫権様の援護に向かうぞ!!」
蓮華「朱治隊!お前等の隊長がお帰りだ!準備に移れ!!」
兵『オォォォォォオオオオオオオオ!!!』
開いた右翼に、逃げ出す賊があふれかえる。
この戦場からいち早く逃げ出すために。
この死地から一秒でも早く逃げ出すために。
しかし、その判断は誤りである。
今この瞬間。
右翼に開いたこの道こそが、一番の死地であった。
『雷刃(ライジン)』
右翼に開いた道を、放電する巨大な紫の刃が走り抜けた。
その一瞬だけで、右翼にいた賊たちは、地面に焼きついた焦げ跡と化した。
舞「あはははは!さっすが、雷薄様!えげつないですね〜!」
雷薄『褒めてるつもりかそれは。』
舞「どうなんでしょうね?」
雷薄『…。いいから、さっさと戻れ。兵たちが待っている。』
舞「は〜い。」
雷薄『…かはっ!楽しいねェ!!!』
バヂン、と。
舞を促し、陣に戻すなり、雷薄は短い放電を残して再び賊の中へと飛び込んでいった。
そこからは阿鼻叫喚。そこらじゅうで雷刃が発生し、百万両の火花が飛び散る。
舞「朱治隊!私はあの群れの中から今こそ帰還しました!
紅鷲と雷帝に守られた我らに、負けの目などありません!
朱治隊、抜刀!我らも勢いに乗るのです!」
そして、朱治は自分の兵たちと合流するなり、兵の士気を奮い立たせて指揮を執る。
呉の宿将朱治の帰還により、朱治隊だけでなく呉軍の士気は一気に上昇。
だがしかし、快進撃はこれだけにとどまらない。
雪蓮「孫呉の兵よ!我が最愛の妹を、その仲間を傷つけんとしたゴミ共を一掃せよ!
全軍抜刀!我らが勇者に戦功を独占させるな!行けー!!」
更に、雪蓮の援軍の到着により、戦局は完全に反転。
二万五千あった賊の兵力は今や六千程度。
対して、四千いた孫呉の軍は八百の被害を被るも、援軍の加勢により二万ほどに。
あっという間に三倍強の兵力差をつけた孫呉は、もはや留まるところを知らない。
一刻を待たずして、賊の別働隊は鎮圧された。
葎・雷薄 「「 勝ち鬨をあげろぉぉぉおおおお――――!!! 」」
兵『オォォォォォオオオオオオオ―――――――!!!!』
雪蓮「久しぶり、蓮華。大変だったわね。」
蓮華「お久しぶりです、姉様。援軍、感謝します。」
雪蓮「相変わらず堅いわねぇ。いいのよ。葎が自分から行ったんだし。
それに、個人で援軍たりえる化け物なんて葎くらいだしね。」
葎「言うに事欠いて化け物はないだろ!」
雪蓮「でも、間違ってはいないじゃない?」
葎「だが断る!」
楽しそうにふざけあう二人に、蓮華の機嫌がどんどん悪化していく。
それを横から見て、思春と明命の顔色が悪くなっていく。
そして、それを見て呆れたように溜息を吐き、冥琳が言う。
冥琳「ご助力、感謝します。貴方が噂に名高い雷帝だったのですね。」
冥琳の言葉で、皆の関心が雷薄に向かう。
雷薄「礼など。此度、拙者は孫策様の配下にございます故。」
雪蓮「それでもよ。蓮華はいずれ私の後を継ぐ身。大事無くてよかったわ。」
蓮華「姉様…。」
雷薄「勿体無きお言葉。感激の至りで御座います。
では、拙者は所用g「え〜?もう行っちゃうんですか?」…所用がありますのでこれで。」
舞「ぶ〜!ぶ〜!」
ぶ〜たれる舞を完全に無視し、雷薄は一瞬で消える。
無視されたことに落ち込み、舞はうなだれる。
雪蓮「知り合いなの?」
舞「…ええ。昔、まだ私が馬鹿みたいに血気盛んだった頃に初めて会いました。
堅様以外には負けたことが無かった私は、その頃から名を上げ始めた雷帝に挑みました。
結果は惨敗。一合も打ち合うことなく、一瞬も持ちませんでした。
気がついたら勝負がついていた。そんな感じです。」
雪蓮「は〜。さすがね。私もそんな感じだったわ。」
舞「策様もですか?なるほど、それは勝てないで当然でしょう。
朱治に勝った奴がどれ程のものか!と挑んだ堅様ですら、私と全く同じ結果でしたから。」
雪蓮「母様ですら一瞬だったのね…。そりゃ勝てないわ…。」
蓮華「母様に正面から勝ったことのある人っていたんですね…。」
葎「あの人速度異常だしな。俺でも追いつけないぞアレ。戦ったら多分、良くて五分五分だな。」
冥琳「そこまでか。さすがは雷帝といったところか…。」
舞「武を見込んで堅様が勧誘もしましたけど、今は時期じゃないからって断られてました。」
穏「時期じゃないってなんでしょうね〜?」
舞「ん〜、さぁ?」
雪蓮「母様が臣下に出来なかった人が、今私の下にいるんだから、奇妙な縁ね。」
舞「そうですねぇ〜。」
穏「まぁ、客将さんみたいなものですねど〜。」
雪蓮「そんな人が、なんで袁術ちゃんのところにいるのかしらね?」
冥琳「さてな。」
雪蓮「う〜ん。そんな人がいるんじゃあ、独立の計画を見直さなきゃならないわね。」
冥琳「そうだな。なにより袁術が馬鹿じゃなくなっていたのが痛い。」
穏「やっぱり、雷薄さんの影響なんでしょうかね〜?」
冥琳「そうだとしたら、あの我侭な袁術を変えたのだ。余程の食わせ者かも知れんな。」
真剣な話し合いを始める軍師たちの傍ら、葎たちはというと。
蓮華「葎。ちょっと私の鍛錬に付き合ってくれない?」
葎「ん?ああ、構わないけど。」
思春「御供します。」
明命「します!」
蓮華「うっ。あ、あなたたちは休んでいても…。」
思春「問題ありません。(申し訳ありませんが、蓮華様。抜け駆けなどさせません。)」
明命「わ、私も平気です!(はぅ〜。葎様と一緒にいられる絶好の機会。逃せません!)」
蓮華「う、うぅ…。(邪魔者が…。こんなはずじゃなかったのに…。)」
葎「?」
痴話げんかみたいなものを展開していた。
これを嗅ぎ付けた雪蓮は、当然面白がり突撃する。
雪蓮「あ!私をのけ者にして面白そうなことになってる!私も混ぜなさい!」
んぎゃあ!だからいきなり抱きつく癖はなおせとうわおまえなにをす
姉様!はしたないですやめてくだちり〜んわぁ葎様の首がおかしな角度に〜!?
おおなんということじゃ葎よ死んでしまうとは情けなお前のせいだろうが〜!!
一気に騒がしくなった葎たちを眺める軍師たち。
いいぞ〜もっとやれ〜とか言ってる穏を他所に、冥琳は深い溜息を吐くのだった。
説明 | ||
*旧作 第四章仕上がりました〜。 どんどん歴史が混乱していきます。 白い布のくだりは間違いではありません念のため。 しかしアレですね。 葎さんの戦法はパワーゲームすぎて敵を何人用意しても一人で消化してしまうから困ります。 P.S.舞たんは祭さんと同じ頃の武将さんなので、 あのしゃべり方は若作りが過ぎゅぶッ!? ………。 |
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コメント | ||
神出鬼没にも程があるだろうにw(2828) 三人目!?もう頭がアアアア、もう!!!続きが気になるw(sink6) |
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