〜魏志恋姫伝〜6 |
第一幕、第一章 六話
俺たちは襲撃を受けた村に向かっていた。
一刀「華琳、そろそろ休憩をさせよう。結構強行軍でここまで来たんだし。」
華琳「そうね。全軍、ここで一旦休憩をとる。各部隊長は軍議を始めるから天幕に来て頂戴。」
部隊長「御意。」
天幕には華琳、俺、秋蘭、各部隊長、計8人がいた。
俺たちは、地図を広げ今回の策について話し合っていた。
一刀「さっき伝令がきてた。春蘭が村の軍と合流したそうだ。」
華琳「そう。じゃあ私たちはこのまま春蘭と挟撃する。
秋蘭は、右曲からこの一帯の小高い丘に兵を隠し、頃合いを見て横撃しなさい。」
秋蘭「御意。」
華琳は地図の上に碁石をおきながら説明をした。
その後も細かい事について決議がされ、軍議は終了した。
次の日の早朝、
秋蘭「では、行ってまいります。」
一刀「気をつけてな、秋蘭。」
秋蘭「北郷も華琳様の事頼んだぞ。」
一刀「ああ。」
秋蘭が先頭を走り、その後を騎馬隊が駆けていく。
華琳「そろそろ私たちも行くわよ。聞け!民を虐げる賊を決して許すな。全軍、突撃っー!!!」
うおおおおおおおおおーーー
曹操軍は黄巾党を飲み込んでいく。
ただ前にしか注意を払っていなかったのか、あっという間に黄巾党は瓦解した。
春蘭との挟撃、秋蘭の横撃と確実に敵を打ち取っていく。
華琳「深追いはするな。向かって来るものだけを打ち取りなさい。」
そこに敵軍の将と思われる男が躍り出た。
?「貴殿は将とお見受けする。我が名は波才。尋常に勝負。」
一刀「俺がお相手しよう。我は天の御使い北郷一刀、いざ参る。」
華琳の前に立ち、波才の太刀を残月で受け止める。
賊に比べると確かに強い。しかし俺の相手をするのには、弱すぎた。
俺は抜刀術で横薙ぎに掃った。波才の首が落ち、残ったのは首の無い死体だけであった。
一刀「敵将波才。天の御使い、北郷一刀が打ち取った!!」
これを見ていた黄巾の兵は
兵「波才殿がやられた。にげろー。」
ちりぢりになって逃げ出した。
そのあと約3刻ほどで戦闘は終結した。
一刀「やっと終わったか。」
華琳「ええ。でもまだ村の復興の手伝いがあるわ。家屋の修繕、民への炊き出し、やる事はまだ沢山有るわよ?」
一刀「そうだな。この村はこれから先、重要になってくるからな。」
華琳「これから?まったく何をたくらんでるのかしら?」
一刀「秘密かな?おっ、春蘭たちが帰ってきた。」
俺が向けた視線の先には、こちらに向かって来る春蘭達が映った。
春蘭「華琳様、村の北側の討伐が終わりました。」
秋蘭「こちらも、東側の討伐完了しました。」
華琳「そう。二人とも御苦労さま。」
一刀「華琳、疲れたから先に休むぞ。何か起こったら直ぐに起こしてくれ。」
華琳「しょうがないわね。」
俺は宛がわれた天幕に入り直ぐに横になった。
余ほど疲れてたらしく、俺は夢におちた。
しかし、俺は夜中に目が覚めた。ゆっくり体を起こし伸びをする。
もう一度寝ようと体を横に倒すが、一向に寝れそうにない。
それどころか、眠気が冴え完全に覚醒してしまった。
―何なんだ、この違和感は。
何か悪い事が起きる前兆ではないかと思い、俺は残月を腰に差し華琳の天幕に向かおうとした。
天幕から出た瞬間、何かが俺にぶつかった。
一刀「ん?どうした華琳、そんなに血相かえて?」
華琳「大変よ、陳留の街が三万の賊に襲われたと伝令が入ったわ。春蘭達は軍の再編成をしてもらってる、直ぐに出るわよ。」
一刀「分った。」
俺は華琳と共に、春蘭達の待つ天幕に向かった。
春蘭「遅いぞ、北郷」
一刀「すまない。それで、準備の方は?」
秋蘭「完了している。」
一刀「そうか。村の警備はどうする?」
華琳「そうね。村には警備及び復興支援に千五百残して行くわ。
じゃあ、行くわよ。」
俺達は、陳留への道をひたすら走った。
俺達を迎えた陳留の街は、変わり果ててた。
数日前の賑やかな面影は何処にも残ってなかった。
建物は焼け落ち、敵味方の亡骸が横たわっていた。
言葉にするのであれば、“絶望”といった所だろうか。
華琳「すぐに母様と合流するわよ。一刀は私と来なさい。春蘭と秋蘭は残党を討伐して。
春、秋「「はっ。」」
華琳「行くわよ。一刀。」
一刀「ああ。」
俺は、華琳と並走しながら、城に向かい駆け抜けた。
城に近づけば近付くほど、死体の数が増えていく。
俺の脳裏に最悪の展開が映し出された。俺は縁起でもないと頭を振って否定する。
華琳「一刀、母様なら大丈夫よ。私より強いんだから、そう簡単にまけたりしないわ。」
一刀「ああ、そうだったな。俺達の母さんは強いからな。」
華琳「ええ、そうよ。」
そのあとすぐに、城の門の前に仁王立ちしている母さんを見つけた。
華琳「母様、大丈夫だった?」
曹嵩「ええ、少し疲れたけど大丈夫よ。」
一刀「良かった。母さんが無事で。」
曹嵩「春蘭ちゃん達は?」
華琳「もうすぐ来ると思うわ。」
そこに春蘭、秋蘭が駆けてきた。
春蘭「曹嵩様よくぞ、ご無事で。」
曹嵩「私も春蘭ちゃんや秋蘭ちゃんが無事でよかった。」
俺達は母さんが無事だった事に安心してしまった。皆の気が緩んだほんのわずかな一瞬だった。
殺気に気付いた時には、もう遅かった。
視線の先には、華琳の後ろの物陰から数人の賊が弓を放った後だった。
曹嵩「華琳!!」
華琳「え?」
咄嗟に母さんは華琳を庇っていた。
母さんの体が傾き、華琳に覆いかぶさった。母さんの背中には数本の矢が刺さっていた。
秋蘭「くそっ、貴様らー!!」
春蘭「きえろー!!」
直ぐに秋蘭が弓を射り、その後すぐに春蘭が切り込む。
華琳「母様、母様―!!」
曹嵩「全く、我が娘ながら・・・何という顔をしてるの。」
一刀「早く医者を呼べ。」
曹嵩「一刀さん、華琳の傍で支えてあげて。」
一刀「何を言ってるんだ、母さん。」
華琳「そうよ、何を言ってるのよ。」
曹嵩「矢じりが・・奥深くまで・・・刺さって・るの。これじゃ、・・・もう助から・・ないわ。」
華琳「そんな。」
春蘭「曹嵩様。」
秋蘭「曹嵩様、お気を確かに。」
曹嵩「春蘭ちゃん、秋蘭ちゃん・・華琳の・事・・・お願いね。」
母さんの手がわずかに上がり、華琳がその手をつかむ。
曹嵩「華・・琳・・・・幸せに・・・・・なっ・・・・。」
母さんの瞼と手が重力に従いゆっくりと落ちた
華琳「母様・・・・?母様・・・・?嫌ぁーーーー!!」
春蘭「くそぉー!!賊の残党を撃つ。」
秋蘭「ああ、姉者。曹嵩様の仇を撃つぞ。」
二人が走りだそうとした時、声が響いた。
華琳「賊の討伐は・・・後回しよ。今は、・・民の安全を・・・・優先する。
・・・・・いいわね?」
春蘭「しかし、今なら曹嵩様の仇が撃てます。」
華琳「・・・駄目よ。まず民の安全を・・優先する。・・母様なら、・・きっとそうすると思うから。」
一、春、秋「「!!!」」
俺達は華琳の目を見た時、彼女の覚悟を悟った。
華琳の目は、まっすぐ未来を見据えた王としての目だった。
そう今ここに乱世における奸雄、覇王曹孟徳が誕生した瞬間だった。
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漸く6話ですね。まあ、暖かい目で見ていただけたらと思います | ||
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コメント | ||
覇王誕生と言うことはこれからタカビーになるんですね(ぉ p3 下から2行目:「首の無い死体」かな?(moki68k) | ||
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