真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第十六話
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 徐州・下?城。

 

 その謁見の間にて、一刀は膝をつき、頭をたれて拱手していた。

 

 その一刀の前に立つのは、華雄。

 

 「徐州の牧にして、左将軍・劉北辰に勅を伝える。心して聞くよう」

 

 「は」

 

 この日、華雄は皇帝劉弁の勅使として、徐州を訪れていた。

 

 「勅。劉北辰は豫州を荒らす賊徒討伐に向かうべし。賊徒平定後は、豫州刺史として、かの地の治安維持に尽力するよう」

 

 「御意。勅命、確かに承りました」

 

 勅使である華雄に答える一刀。

 

 「・・・さて、堅苦しいのはここまでだ。劉翔、元気そうで何よりだ」

 

 勅書を一刀に渡すと、とたんに口調を普段のものに戻し、にこりと微笑む華雄。

 

 「ありがとう。華雄さんも元気でよかったよ」

 

 立ち上がり、同じく微笑む一刀。

 

 その笑顔を見て、なぜか顔を赤らめる華雄。

 

 「あ、いや、その、・・・そ、そうだ!劉翔、私のことは呼び捨てで良いと言っただろう?なんでいまだに”さん”をつけるんだ?」

 

 「華雄さんが俺を真名で呼んでくれるなら、すぐにでもやめるけど?」

 

 華雄の質問に、にやにやしながら答える一刀。

 

 「う。・・・その、か、カズ・・・ト?こ、これでいいのか?」

 

 さらに真っ赤になって、一刀のの真名を呼ぶ華雄。

 

 (まさか、華雄さんも・・・?)

 

 (むう。さらに恋敵が増えようとは)

 

 (カズくんてば、相変わらずモテモテ〜)

 

 (本人は自覚がないんでしょうけどねぇ)

 

 「うん。さてみんな、軍議をするから、合議の間にいくよ」

 

 一刀に言われ、謁見の間を出て行く一同。

 

 「あの、か、一刀?」

 

 「あなたも参加してくれるかな?華雄」

 

 「!!あ、ああ。もちろんだ!!

 

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 「それにしても、なぜわれわれなのでしょうか」

 

 下?城の合議の間。

 

 勅命である賊討伐のための軍議を、一刀たちは開いていた。

 

 「確かに。豫州であれば、?州、もしくは荊州に勅が下ってもよさそうですが」

 

 愛紗に続いて、柊がいう。

 

 柊の発言に、その隣に座る翡翠が、

 

 「私のほうで調べたところ、?州では陳留の曹家と、濮陽の曹家とが、?州の支配を巡って対立しているそうだ」

 

 「・・・同じ曹家が争っているのか」

 

 「華琳ちゃんがいなくなったせい?」

 

 「多分な。華琳―曹孟徳という指導者がいてこそ、?州は纏まっていたんだろうな」

 

 「曹操さん一人がいなくなっただけで、身内すら割れるんですねぇ」

 

 のほほんとした口調で話す琥珀。

 

 「・・・ねえ、琥珀さん?その格好、・・・なに?」

 

 「おや、何かおかしいですか?ただの掃除着なんですけど」

 

 一刀の質問に首をかしげる琥珀。

 

 「掃除着・・・ねえ」

 

 「ほら、こうすればお掃除中でもほこりを被らないんです」

 

 そう言って背中のフードを被る。

 

 「最近流行の掃除着で、”割烹着”っていうんですよ」

 

 ニコニコ顔の琥珀。その手にはなぜか箒が。

 

 「・・・話が進まんので、とりあえず姉さんの格好云々は無視する方向で」

 

 「がーーーん。・・・くすん。翡翠ちゃん冷たい。お姉ちゃんさみしい」

 

 机にのの字を書く琥珀。

 

 「・・・おほん!荊州ですが、州の牧である劉表どのは重い病にかかっており、明日をも知れぬ身とのこと。なので」

 

 「後継問題でもめてるの。長子のg君を推す譜代派と、次子の宗を推す新参派にね」

 

 翡翠に続くのは輝里である。

 

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 「つまり、どっちもよそに兵を出せる状況じゃあないってことか」

 

 一刀が腕組みをして言う。

 

 「・・・愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。すぐに動かせる兵隊さんはどの位?」

 

 桃香が愛紗と鈴々の二人に問う。

 

 「騎兵が一万。歩兵が五千に、義兄上の発案で組織した例の隊が五千」

 

 「鈴々が訓練していた”超・鈴々隊”ももう使えるのだ」

 

 「こら鈴々!またそんな勝手な名前をつけて!!」

 

 「でもおにいちゃんが良いって言ったのだ」

 

 「本当ですか?」

 

 鈴々の台詞を聞いて、一刀に尋ねる愛紗。

 

 「うん。部隊名に関しては任せてあるよ。愛紗も例の隊、好きに命名して良いから」

 

 「はあ・・・」

 

 「・・・ほんと、すぐに話が脱線しますね。華雄どの、豫州の賊軍の戦力は?」

 

 愛紗と鈴々のやり取りにあきれながら、華雄に話を振る柊。

 

 「細かい数字は不明だが、少なく見ても五万。ただ、州全体に活動が広がっていることから、もう少し多めに見たほうが良いかも知れん」

 

 そう答える華雄。

 

 「華雄がつれてきた五千を入れて、こっちは合計三万か。・・・協力してくれるということで良いんだよね?」

 

 「ああ。陛下からとは別に、月さまから劉しょ、あ、いや、一刀に協力するよう言われてる。好きに使ってくれていい」

 

 「月が。・・・そっか」

 

 「まあ、詠はあまりいい顔をしていなかったがな」

 

 肩をすくめる華雄。

 

 「詠ちゃんらしいね」

 

 

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 「さて、それじゃあ、三日後に豫州に向けて出陣する。留守は柊さん、琥珀さん、翡翠に任せます」

 

 「「「御意」」」

 

 「まずは汝南へ向かい、拠点を設けるとする。その後、州内に斥候を放ち、相手の情報を調べることにします」

 

 一刀が次々に指示を出す。

 

 「先鋒は鈴々と愛紗。輝里は俺と一緒に本陣を。華雄は自身の兵を率いて、遊軍としていつでも動けるように待機」

 

 「「「「応(なのだ)!」」」」

 

 席を立ち、次々と部屋を出て行く一同。

 

 「柊さん」

 

 ふと、柊を呼び止める一刀。

 

 「はい。なんでしょうか」

 

 ちょいちょい。

 

 手招きする一刀。柊が一刀の傍による。

 

 「あとで俺の部屋に来てくれる?頼みがあるんだ」

 

 「・・・一刀さまのお部屋に、ですか?」

 

 「うん。・・・それじゃ、後で」

 

 柊にそれだけ言って、一刀も部屋を出る。

 

 「お部屋に・・・?・・・!!まさか!!ついに私にお声がかりが?!ど、どうしましょう!?二人きりになったところで、あんなことやこんなことを・・・!!」

 

 一人、妄想に身悶える柊。

 

 「そんなわけあるかーーーーーーーー!!!!!」

 

 ばっしーーーーーん!!

 

 「はうあ!!」

 

 後方からハリセンで突っ込む、五月であった。

 

 「てか、五月さま、いたんですね」

 

 「ずっと居たわい!!」

 

 誰かさんのように、存在感の薄い五月であった。

 

 

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 同じころ、洛陽にて。

 

 「月、詠。おるか」

 

 「杏さま。どうされました?」

 

 部屋に入ってきた女性、漢の大将軍である馬騰に問う月。

 

 「悪い知らせだ。涼州に匈奴が進攻してきたそうだ」

 

 「匈奴が?!」

 

 五胡と呼ばれる異民族の一つ、匈奴が国境を越えて西涼に進入してきたと、馬騰の下に急使が訪れた。その数は二十万。

 

 「長安のあざみは既に五万の兵で出陣したそうだ。私もこれから二万を率いて西涼に向かう。翠と蒲公英は残していくから、好きに使ってくれ」

 

 「わかりました。杏さま、御武運を」

 

 杏―馬騰に拱手する月と詠。

 

 「二人も十分に気をつけるようにな。なにやら不穏な動きをしている者も居る。用心するに越したことはない」

 

 「わかってます。月も陛下も、協殿下も、僕たちが守って見せます」

 

 そう胸を張って言う詠であった。

 

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 同じころ。洛陽近郊のとある場所。

 

 「そうか。仕込みはうまくいって居るか」

 

 「はい。?州・荊州に続き、近いうちに冀州でも事が始まりましょう」

 

 元は煌びやかであったろう、絹の衣をまとった老人に、男が答える。

 

 「涼州にも嵐が襲いかかっておるころじゃ。機は熟しつつある」

 

 「洛陽の戦力が各地に散ったときこそ、貴方様が元の地位に返り咲く、その時」

 

 「そうじゃ。このわしがこの様な所に隠れ続けるなど、けしてあってはならぬことなのだ!!」

 

 こぶしを握り締め、歯噛みする老人。

 

 「そのとおりです。貴方様こそ、大陸を統べるにふさわしきお方。天は必ずやお味方しましょう」

 

 「かっかっか!!よいぞ!実によい!!期待しておるぞ、仲達よ!!」

 

 「おまかせを。・・・張譲様」

 

 頭を下げ、拱手する、仲達と呼ばれた男。

 

 その顔には、邪悪な笑みが浮かんでいた・・・・。

 

 

説明
刀香譚、十六話です。

ここより新章の開幕です。

徐州の一刀たちの下を朝廷の使者が訪れる。

そして、水面下で動き出す陰謀。

では、外史の扉を開きましょう・・・。
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コメント
哀れな妄想爺もアレですが、仲達が何を企んでいるか気懸りですね。洛陽の面子が無事ですむと良いのですが・・・。(深緑)
某割烹着の悪魔wwwww(シルヴェ)
西湘カモメさま、般若なんて可愛いものでは・・・www(狭乃 狼)
で、月と詠が原作どうり一刀君の下へ行くのか?桃香の後ろに般若が見えるような気が・・・(西湘カモメ)
moki68kさま、そこが鈴々らしさでしょ?^^。(狭乃 狼)
鈴々…部隊名が真名でいいのか?w(moki68k)
夜の荒鷲さま、・・・・・え?(汗汗)ナンノコトデショウカ?(狭乃 狼)
hokuhinさま、華琳がどう行動するか。そこがきもです。(狭乃 狼)
超・鈴々隊……黒色槍騎兵が頭に浮かんだww(夜の荒鷲)
危険な二人が組んでしまったか・・・ 月達がやばそうだが華琳が居る事がまだましか。(hokuhin)
SeeeeDさま、御忠言ありがとうございます。文中での人物表記は、真名じゃなく姓名の方がいいでしょうかね?台詞以外。(狭乃 狼)
村主さま、「おぬしも悪よのう」「いえいえ貴方ほどでは」てな感じですかねwww(狭乃 狼)
紫電さま、多分演義のイメージが強いんでしょうね。敵役っていう。(狭乃 狼)
sink6さま、アニメ、わたしんところでは放映されてないんですが、そんなおちですかww仲達は・・・、さてさて。(狭乃 狼)
一話から読み直させてもらいました。読んでて思ったんですけどオリキャラ多くて混乱したのでページの最初にオリキャラの紹介(真名)を入れておいてくださると読みやすいと思いました。途中で誰が誰だかわからなくなってしまったんで…よかったら検討してください。でも物語は面白いですね。これからも応援します。(種)
前のコメで書き忘れてましたがここでの張譲はアニメではなく宦官Verでしたか まさかの仲達さん登場!?会話見るとまんま悪代官・悪徳商人のノリですなw(村主7)
一難去ってまた一難、今度はアニメで鼠にされた莫迦宦官ですか、だが、仲達・・・こいつが一番気になる(sink6)
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