真・恋姫†無双  星と共に 第24章
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真・恋姫†無双  星と共に  第24章

 

 

定軍山の戦いから、一ヶ月ほどが経った。

 

「兵士からの要望で圧倒的一位に輝いていた張三姉妹の慰安公演は、予定通りに行えそうだ」

 

一刀は軍議の中、そんなことを話していた。

 

「良くやったわね。なら、一刀はそのまま月や詠達と一緒に調整に入ってちょうだい。時間も無いから、手が足りないところは他の部署にも協力を要請して構わないわ」

「じゃあ会場の設営は、工兵の訓練を兼ねてやって貰うでいいんだっけ?」

「後は指示を出すだけよ……これで兵の士気も十分。ようやく孫呉攻略の準備が整いましたね」

「ええ……」

「あの、華琳様……」

 

孫呉攻略と聞いて、季衣と真桜と錫が華琳に聞く。

 

「なぁに、季衣」

「この間の軍議で、劉備の所と孫策の所、同時に攻めるって言ってませんでした?」

「そう言えば……」

「ウチもそう聞いたんですけど……あれから方針、変わったんですか?」

「そう言えば季衣と真桜、それに錫は、あの後西に遠征に出ていたわね……」

 

真桜達が帰ってきたのはつい先日のことで方針転換の軍議には当然いなかったのだ。

 

「他に分からない者はいる?」

 

華琳がそう言うと皆が一斉に春蘭に視線を集中させる。

 

「な、何で私を見るんだっ!?」

「いえ、別に…」

「なら春蘭、二人に説明してあげてちょうだい」

「はっ。二人とも、先日の定軍山の事件は覚えているな?」

「はい。秋蘭様と流琉を助けると言って一緒に行ったあの時ですね」

「うむ。あの一件で劉備達蜀の側はこちらを必要以上に警戒するようになったようでな。ならばこの機を逃さず、呉を一気に攻め落としてしまえと…そう決まったのだ。分かったか?」

「分かりました!」

 

季衣は元気よく返事をするが、真桜はあまりのことで口を開けたままであった。

 

「………」

「………」

「………」

「だから、何でお前達そこで驚くんだ!」

「春蘭、お主どうしたのだ?」

「頭打ったのか?」

「なんでそうなるのだ!?」

「ちゃんと覚えてたなんて意外……なんてことは思ってないわよ……」

「思ってたんだな! そう思ってたんだな!」

「そうなんだよな」

「北郷ーーーーー!」

「何で俺だけ責めるんだよ!」

「うるさーーーーーーい!!」

「まあ、そう言う事よ。蜀の動きが鈍っている間に、私達は呉を攻め落とす」

「この戦い、とにかく時間が勝負よ。皆、互いに連携して迅速に行動してちょうだい」

「次の議題は……季衣、西方遠征の報告をしてちょうだい」

「はい。えっと、遠征そのものは問題なかったんですが……街で馬超と馬岱に……」

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それから数日経ったある日の夜。

夜でも遠くから歓声が聞こえてくる。それは近くの演習場で天和達が特別コンサートを開いているからだ。

そんな中、一刀と星が城壁を登ってみると真桜と季衣と錫が居た。

 

「どうしたの? 二人とも」

「あ、なんや隊長達かぁ〜」

「張三姉妹の慰安公演、始まっているが? 行けばよいのに……」

「あー。もうそんな時間かぁ……」

「この間の会議から、季衣と真桜、元気ないよな。錫も二人ほどじゃないけど……。自分達がいない間に方針が変わってたの、気にしてるのか?」

 

一刀が二人に尋ねてみた。

 

「そんなんじゃないよー」

「ウチかてそこまでケツの穴小さい女やないで?」

「女の子がケツの穴とか言うな!」

「隊長達こそ張三姉妹の公演、行けばええのに」

「まあ、色々あるんだよ」

「で、三人はどうしたのだ?」

「うん……」

「言うんか?」

「うん。…兄ちゃん、星ちゃん。華琳様には内緒だよ?」

「内緒ねぇー。まあいいさ。とりあえずどうぞ」

「ボク達、定軍山の後、涼州に行ったでしょ?」

「ああ、月や詠から聞いたが、向こうの平定とかが大変だったとは聞かなかったが……」

「……あのね。街で馬超と馬岱で会ったの」

「そんな話もしてたな。馬騰の墓参りって言ってたな。確か」

 

錫が馬超と馬岱に馬騰の墓を教えた後、馬超と馬岱は墓参りに行ったのだ。

錫は二人とは旧友であり、かつての仲間。だが今は敵同士。馬騰の墓参りに行けば確実に互いが会う事になる。

それを承知の上で錫は出て行ったのだが、季衣と真桜はそうではなかった。

 

「それで錫は何を話たのだ?」

「ちょっとした世間話くらいよ。別にお互い自分達の所属してる部隊の構成とかは話してないわ。ただ、きちんと会って話すのは久しぶりだったけどね……」

 

錫は空を眺める。

 

「あの二人と一緒にいたことがまだ昨日のようなことに思えるわ」

 

錫の顔は少し寂しそうな顔をしていた。

 

(まあ無理はないか……)

「ウチら、こうやって無理矢理領地を併合していくのって、ええことなんかなぁ……って」

「ボク達の村は黄巾党や盗賊で困ってたから、華琳様が治めてくれてすごく良くなったけれど……。西涼の人って、特に困って無かったんだよね……?」

「そりゃ、黄巾党の頃や袁紹のところに比べりゃ、華琳様の政治の方がええで? けど、それを無理に押し付けるも、どうなんやろって思うたんよ」

「…………」

「………なるほどな………」

 

一刀は馬騰の亡骸を見た華琳を察した時と同じように手を頭にやり、少し考え込む。

 

「このままじゃ、戦えないか?」

「戦うよ。華琳様のためなら……」

「でもなぁ、何か前ほど割り切れんっちゅうか」

「そっか……」

「俺じゃなくて華琳と話してみればいいと俺は思う」

「華琳様と?」

「ああ。俺よりはこの世界でこの時代で最初っから生きてた華琳の方が良い答えを出すと思う。

俺が事情を言って、話のできる場を作ってもらうさ。華琳と直接話すのが不安なら、秋蘭や風に頼むが……」

「ホンマ?」

「いいの?」

 

そんな時、外からの兵達の歓声が聞こえてくる。

 

「まだ公演は続いてるみたいだな」

「明日はもう呉に出発だから、今日はとりあえず楽しんでおいた方がいいぞ…」

「……うん! 真桜ちゃん、行こ!」

「せやな。隊長、おおきに!」

 

真桜と季衣が城壁から降りて公演会場に向かう。

 

「私も行こうかな」

「行ってきたらいいさ」

「ええ」

 

錫も遅れて二人の後を追う。

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そして翌日になり、呉の遠征の行軍中に一刀は昨日の夜に錫と季衣と真桜と話しておいたことを華琳に伝えた。

 

「……そう。二人が不安がっていると」

「ああ。錫も少しはそんな感じはするが、二人ほどではないかな。馬騰の所は今までとは相手が違ったからな」

 

その違うと言うのは、今までは賊退治は自領の防衛による領地拡大だったが、馬騰の時は華琳の方からの完全侵略であったのだから…。

 

「そうね。二人には見聞を広めてもらうつもりだったけれど……最初から少し厳しすぎたかしら」

「だからさ。この行軍の間にでも、ちょっと話をしてあげてくれないか? 華琳と話せば、少しは安心すると思うからな」

「……良いでしょう。戦場で迷いを持たれても困るしね。呉に着くまでには一度話をしてみましょう」

「頼む」

「あなた達はいいの?」

「あなた達?」

 

一刀が後ろを向くとそこには星がいた。

 

「星……いつの間に……」

「少し一刀殿と話をしようかと思ってきたのですがな……」

「そうか……。まあ華琳、続きを……」

「ええ、あなた達にもあるのでしょう? 迷いと言うのは……」

「無いと言えば嘘になるな……」

「確かにかつての仲間と戦うのは少しばかり抵抗がありますな……」

「とは言ってもここは別世界。俺達が知っている関羽達とは別の関羽だからな……。そう考えると少し寂しいな……」

「そう……。ところで一刀、妙に医薬品の量が多くない? 沙和と稟に指示したのは、あなただと聞いたけれど……どういうつもり?」

「南方じゃ風土病が多いらしくてな。それのせいで軍が崩れたら元も子もないだろ? 稟がそう言うの詳しいから、対応できる薬を出来るだけたくさん揃えてもらった」

「……あなたにしては随分と気が利いているのね」

「俺にしてはは余計だ」

「あの……華琳様」

 

そこに季衣がやって来た。

 

「どうしたの季衣」

「呉に入っていた間諜から報告が来ましたけど」

「分かった。すぐに行くわ。…それから季衣」

「はい?」

「今晩、真桜と一緒に私の所に来なさい。他の仕事があるなら、一刀か他の誰かに代わってもらって」

「あ……兄ちゃん……それに星ちゃん」

「そう言うことだ」

「いいわね?」

「はいっ! 分かりました!」

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魏軍は呉の国境を少し越えた辺りのある城の少し前までに付き、華琳は間諜から届いた報告を聞いていた。

 

「……黄蓋と周瑜が?」

「はい。どうも、降伏するか否かで揉めた後、黄蓋は軍議を退場。それから周瑜に公衆の面前で懲罰を受けたとか……」

「そう……。その割には、向こうの連中はやる気十分のようね。督戦を受けているようにも見えないけれど……」

「恐らく、その報が届いてはいないのでしょう。初戦から最前線の兵に恐怖を与えても、無駄に死兵になるだけでしょうし」

「なるほど……呉の司令官は周瑜ね」

「はい」

「相当な切れ者ね。さすがだわ。……孫策といい周瑜といい、早く戦ってみたいわね」

「華琳様ー。敵の将が出てきたようですが、どうなさいますか?」

「旗は?」

「桃地に孫。恐らく、孫家の末娘ちゃんでしょ〜」

 

孫家には孫策だけでなく、妹の孫権と孫尚香がおり、末娘とは孫尚香のことである。

しかし一刀は……。

 

「いや、違うな……」

「違うってどういう事よ?」

「確かに孫尚香もいるだろうが、恐らくあそこの大将は……孫権だ」

「孫権……」

「何でそう思うのかしら?」

「……何となくだ……」

「……まあいいわ。突出してきたということは、舌戦を交わしたいと言うことでしょうけど……」

 

そして華琳は舌戦のために出て行った。

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華琳はその部隊の大将と会う。その大将は一刀の予想通り、孫権であった。

 

「………」

「………」

 

華琳と孫権はにらみ合ったままであった。

 

「曹操……」

「何かしら?」

「この前合肥を攻めた時、そちらの男の将と会ったのだけれど……」

「あら、それが何か?」

「その者と話がしたいのだけど、呼んでくれるかしら?」

「!」

 

華琳は驚いた。

孫権が出てきた理由は自分との舌戦ではなく一刀と何か話をしたいからであったからだ。

 

「後ろの方に姿があるからいるのは分かってる……」

「……あなた、私に用があるのではなくて?」

「無いわけではないが、大した舌戦にもならないだろう。戦いが始まる前にその男と話がしたくて……」

「………」

 

華琳は考える。

 

「いいでしょう。少し待っていなさい」

 

華琳はひとまず下がった。

 

「華琳様?」

「華琳、どうしたんだ?」

「孫権があなたに話があるそうよ」

「何?」

 

一刀もその事を聞いて驚く。

 

「何で俺なんかと?」

「知らないわよ。あなた合肥の時に孫権に会ったと聞いたわ」

「……ああ……(そのことで何かあるのか?)」

「行くの? 行かないの?」

「……分かった、行くよ」

 

一刀は華琳に連れられて孫権の所に向かった。

 

「連れてきたわよ」

「済まない」

「孫権、俺に話って何だ?」

「それは……」

 

孫権は華琳に目配りをする。

 

「私が邪魔かしら?」

「そう言うわけではないのだが……」

「なら、私も聞きましょう」

「それで改めて聞くけど、話って何だ?」

「お前の名前……」

「俺の名前?」

「ええ。お前の名前、北郷一刀って言うのでしょう?」

「!」

 

一刀は驚いた。

 

「俺の名前……どこで知った?」

 

一刀は誰にも名前は名乗っていなかった。

咲は前に一刀と初めて対峙した際に自分の名を口にしたが、咲の場合は袁紹の配下だったと言う事で自分の名前が知れ渡ることはある。

しかし孫策の方、呉の方では一刀は名前を名乗っていないはずなのだ。

 

「合肥でお前を見た時はすぐには分からなかった。でもそれからしばらくしてお前の名前が頭に浮かんだの。北郷一刀っと……」

「そうか……」

「その合肥の時にこう考えていた。お前とは戦いたくないと……」

「……何故だ?」

「それがよく分からない」

「よく分からないですって?」

「そうだ。ただこれだけは思っていた。お前と戦う事を考えると胸が痛む。お前と私は何か大事な関係……っ!」

 

突然孫権は棒のようにその場に立つ。

 

「孫権?」

「どうしたの?」

「……いや、すまない。突然頭の中がな……」

「頭の中がどうしたんだ?」

「何かの間違いか何かだと思うのだが、私はお前と戦って負けた記憶が……」

「!!!」

 

一刀は先ほどよりも驚いた。

 

(一刀、それって……)

(ああ、前の世界で起こったことだ)

 

華琳とこそこそ話す一刀。

 

(だがこの世界と前の世界は別物はずだ。一体どういう事なんだ?)

「それで戦いたくないと?」

「そうではない。確かにこの男と戦う事はしたくないが、曹操、お前となら私は戦うぞ」

「そう……」

「ただ、少しその男と話して確認したかっただけだ」

「つまり降伏の意志は」

「無い!」

「そう、分かったわ」

 

そう言うと華琳は後ろに下がる。

一刀も一緒に下がろうとすると……。

 

「一刀!」

 

孫権が一刀の名を呼ぶ。

 

「あなたは私の何なの!?」

「……さあな……」

 

一刀はそう言って下がり、孫権もまた下がった。

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「お帰りなさいませ、華琳様」

 

春蘭が華琳を迎え入れた。

そして一刀は星が迎えた。

 

「一刀殿」

「星」

「孫権と一体何を話されておったのだ?」

「実はな……」

 

一刀は星に孫権との会話内容を全て聞かせた。

 

「確かにそれはおかしいですな。前の世界とこの世界はつながりのない世界の筈……」

「ああ……。孫権はあの場に華琳がいたから全部話そうとはしなかったけど、恐らくは前の世界で俺と一緒にいたことを知っている……、いや覚えてるはずだ」

「覚えている……」

「そうでないと俺と戦いたくないと言う理由が思いつかない」

「う〜む……。しかし仮にこの世界が前の世界とつながりがあるとしたら何故突然孫権が前の世界の事を思い出したのであろうか?」

「分からん……いや待てよ……」

「どうしたのだ?」

「いや、少し前に朱里……この世界の諸葛亮が病で倒れたって聞いたよな」

 

実は呉への侵攻を始める少し前に、蜀に放っていた斥候が伝えたのだ。

その時は諸葛亮の策とか、孔明の罠だとか少しばかり騒ぎになっていた。(特に黒美が一番動揺していた)

 

「前の世界じゃ朱里が病気になることなんてなかった。もしかしたらそれと何か関係があるかもしれない」

「しかし、前の世界は徐州に留まってましたが、この世界の蜀は成都にありますぞ。成都の風土病にかかった可能性も……」

「無いとは言えないな。しかし色々知ってる朱里がそんな失敗はしないだろ。まあ、たまにはわわとか言うけどな……」

「まあ、それは……」

「何かあるかもしれないな……。それこそ白装束の連中が何かをしているとか……」

「一刀殿は何でもかんでも白装束の者どもの仕業と考えますな。ゴルゴムやジュラル星人ではあるまいし……」

「あいつらのせいで色々酷い目にあったからからな。『白装束の仕業だ!』って言いたくなるんだよ」

「そう言うものですかな?」

「そう言うものだ」

「……」

(となると俺がこの前倒れたことにも何か……)

 

そんな時であった。

 

「総員、攻撃準備! 江東の連中は散る気十分なようだから、遠慮なく叩き潰してやりなさい!」

 

華琳の檄の言葉を聞いて魏軍は突撃していき、戦闘が始まった。

 

「ふんっ!」

 

一刀は城壁に登ろうとする兵士達の援護を中心に黒と白と破偉派を巧みに使いこなし、敵兵達を撃つ。

撃つと言っても氣弾なので死ぬことはない。

 

「俺も登るとするか……」

 

一刀は城壁に掛けられている縄を伝っていき、城壁を登りきると……。

 

「!」

 

一刀の横から突然、剣が振られる。

一刀は紙一重でその攻撃を避ける。

 

「今のは……」

 

そこにいたのは剣を構えていた孫権であった。

 

「孫権……」

 

孫権は戦う気があるように見せていた。

 

「孫権……どうしてもやるのか?」

「本当はやりたくない。だが、姉様の願いのためにも……」

「そうか……」

 

一刀は満月を抜く。

 

「俺が相手をしよう」

 

一刀と孫権は対峙する。

 

「ここは少し目立つから、少し移動するけど良いか?」

「ええ……」

 

一刀と孫権は構えを少し解きつつも構えは完全には解いていない。

そしてそのまま二人は可能な限り人目の付かないところに移動した。

 

「さてとここならいいか……」

 

一刀は構えを解くが、孫権は解かない。

 

「? 何だ。また俺と話がしたいんじゃなかったのか?」

「違う!」

「そうか……」

 

一刀は再び構える。

 

「一つ言いたいことがある」

「何だ?」

「俺が勝ったら俺の質問に答えてくれ」

「……良いだろう……」

 

二人はしばらく硬直状態になる。

 

(蓮華はそんなに戦闘は得意……というわけではなかった筈だ。となると、勝負は一瞬だ)

 

一刀は満月を鞘に納め、居合の構えに切り替える。

 

「何だあの構えは?」

 

孫権は不審がり、さらに構えをきつくする。

 

「行くぞ!」

 

孫権がそう言うと走り出す。しかし一刀もほぼ同時に走り出した。

 

「はあああああああ!!」

「でゃああああああ!!」

 

孫権が斜め上から剣を振り、一刀は満月を勢いよく鞘から引き抜く!

そして勝負は一刀の予想通り一瞬で決まった。

勝負は一刀の勝ちであり、満月が孫権の刀を宙に舞いあがらせ、孫権の剣は地面に刺さった。

 

「俺の勝ちだ」

「そうね。一体何を聞きたいの?」

「……俺と一緒に街を歩いた記憶はあるか?」

「……あるわ」

「それで俺はお前に……服を買ったと思うが……」

「………その通りだ……」

「やはりな」

 

一刀は満月を納める。

 

「どうやらその記憶、俺の知っている孫権のもののようだな」

「? どういうことだ?」

「俺は別の世界から来た」

「それは知っている。天の国からだろ?」

「……少し違うがな。そして俺はその天の国やこの世界とは別の世界に一度行ったことがあり、俺はその時その世界の孫権と知り合った」

「それって……」

「君が俺の事を知っているのは、その世界にいた孫権のものだ」

「何だと?」

「俺も詳しいことは分からないが、何故かそうなってるようだ」

「……そうか……」

 

二人はしばらく黙りこむ。

 

「さてと、これからどうするか……」

 

一刀が頭をかいていたそんな時であった!

 

「はあああああああ!!」

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一刀と孫権の間に割って入るように、上から一人の少女が飛んできて、一刀を攻撃してきたのだ!

 

「っ!」

 

一刀は満月を抜き、何とかその少女の剣を受け止める。

 

「戒刀乱魔!」

 

一刀が新月を抜いて、下から上に何度も振り上げようとするが、その前に少女は剣を下げ、後ろに下がり体勢を立て直し、孫権の前に立った。

そして一刀はその襲撃してきた少女をよく見る。

一刀の前には金髪で翡翠のような深い緑色の瞳をしたまるでフランス人形のような綺麗な顔をした少女が長い剣、言うなればフランベルジェを手に持って、そこにいたのだ。

 

(誰だ? この子は……)

「咲耶!」

 

孫権は咲耶とその少女の名(?)を口にする。

 

(咲耶? 真名のような名前……と言うより真名だな……となるとこの子は一体……)

 

一刀はそう考えつつも、満月と新月を手に持ったまま、新月を持つ左手を前にして新月を横に向け、満月を持つ右手を後ろに向けて、その場に立つ。

 

「安心してください、蓮華様! この凌統が命に代えても蓮華様をお守りします!」

(凌統か……)

 

一刀は先ほどよりも鋭い顔つきで、凌統を見る。

 

(なら、なおさら油断はできないな……。俺は凌統の戦い方を知らないからな……)

 

そんな一刀をよそに凌統は孫権に耳打ちをする。

 

(蓮華様、私があの男の隙を作ります。蓮華様はその隙が出来たらお逃げを……)

(しかし咲耶は……)

(私なら、大丈夫です。必ず……)

(……分かった。だが二つ言っておく)

(何でしょう?)

(一つは必ず生きて帰ってこい。そしてもう一つはあの男は殺すな)

(え?)

 

孫権の思わぬ言葉に凌統は驚く。

 

(あの男から聞きたいことがいくつかあるからな……。だから死なすな。だが、油断はするな。

死なすなと言っても倒す気でやれ。それくらい相手は強いからな……)

(分かりました)

 

二人の耳打ちは終わる。

そして凌統も一刀の方に向かって真剣な顔で剣を構える。

 

(あの武器は一気に勝負を決めると言うより、傷口からじわじわと敵を痛ませるものだ。

となると……この戦いも一撃で決めた方が良いな)

 

二人は静かに対峙する。

そして先に駆けだしたのは凌統であった。

 

「はああああああああ!!」

 

凌統は長いフランベルジェを上から振り下ろす!

 

「ならばこれだ!」

 

一刀は自身の体を横に素早く回転させ、新月でフランベルジェを受け止めたと同時に満月で凌統の腹部を直撃させる。

 

「がふっ!」

「北郷流……受横撃(じゅおうげき)……」

 

受横撃(じゅおうげき)とは名前の通りの技であり、両手に刀を持っている時に使える北郷流の技。

自身の体を高速に回転させ、その回転させた力で相手の武器を受け止め、もう片方の剣で相手を斬る技である。

この技は極めたものであれば銃弾も斬り、完全な防御技としても使えるのである。

 

受横撃をもろに食らった凌統はその場に当てられた部分をふさぎこむようにうずくまる。

 

「ふぅ……」

 

一刀が周りを見ると孫権がいないことに気付く。

 

「逃げたか……」

「……う……うぅ……」

 

一刀はうずくまる凌統に駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

「……何故……殺さな……」

「俺は人殺しはしたくないんだ」

「なん……だ……っと……」

「さっきも孫権を殺す気はなかった。ただ二人で少し話してただけだ」

「そう言えば……」

 

凌統は先ほど孫権に言われたことを思い出す。

 

「だが私は……」

「………」

 

一刀は黙りながら、凌統の体を上げて、凌統の体を静かに抱きしめる。

 

「命は投げ捨てるものじゃない……。命は一つしかないんだ。いくら忠誠を誓っても命は大事にしろ……」

「…………!」

 

凌統は驚き、まだ手に握っていたフランベルジェの柄をその場に落とす。

そして凌統の目から涙が流れていた。

 

「……どうした?」

「いえ、少し父上に言われたことを思い出して……」

「お父さんに?」

「はい……。あなたが言ったようなことを言われました。命は大事にしろ。そしてこんな風に抱きしめられました……」

「そうか……。じゃあ、俺の話を聞いてくれるか?」

「はい……」

 

一刀は先ほどの孫権との会話を凌統に説明し、さらに自分の事についても話した。

その間に凌統は一刀から離れていた。

 

「そうでしたか……」

「信じられるかどうかは別問題だ」

「信じます」

「何でだ?」

「あなたには父上と同じ暖かさを感じました……」

「……」

「ところでこれから私は……」

「逃げたければ逃げればいい。俺は追わん。適当にごまかしておく。まああまり戦いたくないと言うのが本音だがな……」

「………分かりました」

 

凌統はフランベルジェを背中に背負う。

 

「逃げさせてもらいます!」

 

そして凌統は急いでその場を去っていった。

 

「さてと……ますますやりづらくなったな……」

 

戦闘は魏軍の勝利で終わり、呉軍は撤退し、城を放棄した。

そしてその城を魏軍の前線基地として使うことになった。

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おまけ

 

 

作者「久々の星と共にだ!」

一刀「本当に久々だな」

作者「何とか最新話がかけたから投稿できるようになったぜ」

一刀「そうか」

作者「それで引用した部分なんだが、これだ。

 

『金髪で翡翠のような深い緑色の瞳をしたまるでフランス人形のような綺麗な顔をした少女が長い剣』

 

これは海皇さんの作品の『真・恋姫無双(無印関羽エンド後)第十五話』の8ページ目の4行目にある部分を引用した。

ちゃんとメールで許可は貰っているぞ」

一刀「どんな風に?」

作者「俺が「あなたの作品の文の引用させてもらてもいいですか?」と送ったら、「いいですけどどの部分?」って言われたからこの部分と送った。まあその後の返事は返ってきてないけどな」

一刀「本当に大丈夫なのか? 今日のヤフーニュースでも盗作問題が出てきたが……」

作者「返事は返ってきてないが、最初の時点で一応の許可は貰ったんだ。いいと解釈しておくよ。

そして凌統も海皇さんの作品のキャラだ。まあ性格が違うかもしれないが、一応性格チェンジの事についてもメールして許可は貰っているから大丈夫だろ」

一刀「本当にそれならいいのだが……」

作者「何か言ってきたらすぐに修正かなにかするさ。

それと次の連載もの三国志のゲームをしてるんだがな……」

一刀「どうした?」

作者「プレイ中にとても悲しい事があってまた最初っからプレイしなおした」

一刀「一体何があった?」

作者「それは言えないが、最低でもいえる事は本当に悲しい事だ。しかし小説のネタとしてはおいしいという事だ。その悲しい出来事は小説のネタと言うか核心の部分として使わせてもらう」

一刀「……」

作者「しかしその悲しい部分で俺はディケイド激情態に変身する士の気持ちが分かった気がした。

俺も新プレイの時、思わず「俺は全ての破壊者だ。俺はそれを受け入れた」って言ったほどだからな」

一刀「でもお前、作品に出てるじゃん」

作者「その部分はお前に任せる。そしてその新プレイ中、愛のために自分の主君というか何と言うか親族を裏切った人が何人か出てきたんだよね」

一刀「何してんだよ!」

作者「誰かは小説が出来てからのお楽しみに。それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
今回はインスパイア元の作者から許可を貰い、一部の文章の引用とオリジナルキャラクターが出てきます。
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コメント
星はブラックとチャージマン研視聴済みか…華蝶仮面ブラックとRXってそのうち名乗りそう…w(はこざき(仮))
他の外史からの記憶の流入でしょうか?これがどんな結果に繋がるか楽しみです!(深緑)
自分の作品のキャラを使っていただいて光栄です!・・・しかしこれから一刀と星はどうなっていくことやら・・・。(海皇)
まったくいきなり敵の女の子を抱きしめるとか相変わらずの全身精液男ですな!もげればいいんだ!(PON)
ジュラルwwまぁ気にするなってことですね。(茂夫)
ネタがわからない!?ついでに新たなキャラ参戦どうなる外史からの別の外史?(黄昏☆ハリマエ)
ゴルゴム、だと!?(よーぜふ)
ジュラル星人wまたえらい所からネタ引っ張ってきましたなw「チャー研」知ってる人がTINAMIにどれだけいるやらw(村主7)
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真・恋姫†無双 一刀 真・恋姫無双  恋姫†夢想 第24章 

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