〜魏志恋姫伝〜7 |
七話 決意。
華琳Side
今回の戦いで、母様が死んだ。
倒れ行く母を見ながら私の中をさまざまな感情が駆け廻った。
最期の最後で油断してしまった私に強い怒りが、母様の命を奪った賊に百世の憎しみが、
そして乱世に生まれた自分自身の運命に酷い悲しみが。
私は負の感情で埋め尽くされた。
華琳「母様・・・・?母様・・・・?嫌ぁーーーー!!」
私はただ現実が受け止められなかった。いや、受け止めたくなかった。
春蘭「くそぉー!!賊の残党を撃つ。」
秋蘭「ああ、姉者。曹嵩様の仇を撃つぞ。」
二人の言葉を聞いた時、復讐の衝動に駆られた。
―いや、違う。こんな事、母様は望んでいない。母様なら、きっと・・・。
そう思った時には、言葉にしていた。
華琳「賊の討伐は・・・後回しよ。今は、・・民の安全を・・・・優先する。
・・・・・いいわね?」
春蘭「しかし、今なら曹嵩様の仇が撃てます。」
華琳「・・・駄目よ。まず民の安全を・・優先する。・・母様なら、・・きっとそうすると思うから。」
一刀達は、驚いた顔をしている。
華琳「何をしているの?春蘭、秋蘭、早く行きなさい。」
春、秋「「はっ。」」
二人が駆けだしていく。
二人が見えなくなると、私はその場にへたり込んだ。
華琳「これでいいのよね?母様。」
やはり、返答はなかった。
実感した。これが現実なのだと。
私は泣くまいと必死に涙を堪えた。
一刀「華琳。」
一刀に呼ばれるのと同時に抱きしめられた。
華琳「ちょっと、何するのよ?」
私は暴れようとしたが、思いの外一刀の力が強く動けなかった。
抵抗しても無駄だと悟り、抵抗をやめその胸に体を預けた。
一刀「華琳。今は誰も見ていない、だから泣いて良いんだ。」
その言葉に私は、声をあげて泣いた。こんなに泣いたのは、ほんと久しぶりだと思う。
その間、一刀はただ何も言わずただ抱きしめてくれた。
華琳「ねえ、一刀。」
一刀「ん?どうした?」
華琳「私はずっと、みんなと笑ってられれば良いと思ってた。天下を誰が治めようとそれでも良いって思ってた。それが腐敗した朝廷であったとしてもね。でもそれじゃ駄目なんだって思った。この国にはもっとたくさんの人が苦しんでる。その人たちを救うために、この乱世に名乗りを挙げようと思うの。」
一刀「それは、とても辛く厳しい道のりだよ?」
華琳「そんな事、百も承知よ。どんなに辛かろうと、苦しかろうと、私は自分の信念を曲げたりしない。それが私、曹孟徳の覇道よ。」
一刀「そうか。」
一刀は腕をゆっくり解き、私の前に跪いた。そして胸の前で手を合わせて
一刀「華琳。俺が君を大陸の王にして見せる。辛い時や苦しい時は、俺が傍で君を支えてやる。」
彼はそう微笑みながら言った。
Side out
あの誓約から一年が経った。
華琳は、号を魏とし拠点を陳留から許昌に移した。
許昌は、1年前に賊の討伐をしたあの村である。復興も進み今は、かつての陳留に劣らないほどである。
俺は、警備隊の隊長として警邏をしている。
親父「御使い様、新しく店で出す品を作ったんです。兵のみなさんもどうぞ食べてくだせぇ。」
一刀「いつも貰うばっかりで悪いね。」
親父「とんでもない。こうして店を出せるのも、曹操様や御使い様のおかげですから。」
一刀「そう言ってもらえるとうれしいよ。うん。やっぱり、親父さんの肉まんはうまいよ。」
親父「いえいえ、お粗末さまです。」
そんなやり取りをしていると、子供達が走ってやってくる。
子1「御使い様、あそぼ、あそぼ」
子2「御使い様、また天界の遊び教えて。」
親父「お前達、御使い様は仕事の途中だ。今日は諦めな。」
子2「えー。嫌だよ。」
子3「久しぶりに御使い様と遊びたいよ。」
一刀「あははは・・。」
最近、俺は華琳の手伝いなどでほとんど子供たちと遊んであげられなかった。
遊んであげたいのだが、今日は街の視察も兼ねている。
抜け出して遊んであげる事も出来ないのだ。
そこに、兵達から提案が上がる。
兵1「御使い様。警邏ももうすぐ終わりますので、子供達と遊んであげてください。」
兵2「後は俺達だけでも大丈夫ですよ。」
一刀「悪いね。今度、埋め合わせするから。」
俺は後の事を兵にまかせ、子供たちに手を引かれながら広場へ走った。
この笑みが絶えない事を願いながら。
説明 | ||
今回は華琳sideを入れてみました。 | ||
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コメント | ||
誤字 春蘭「くそぉー!!賊の残党を撃つ。」秋蘭「ああ、姉者。曹嵩様の仇を撃つぞ。」 撃つ→討つでは。(なっとぅ) | ||
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恋姫 一刀 華琳 | ||
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