蜀の武将で一刀攻防戦! |
「・・・・・・・・・・・・」
俺は今、すごい場面に遭遇している。どんな場面かって?蜀の名将達が、ある者は雄雄しく、ある者は可憐に、ある者は不敵に、俺を奪おうとしたりしているのだから・・・。
事の発端、それは昨日のこと。いつものように事務仕事を終えた俺や桃香、朱里といった事務組がメシでも食おうと町へ出ている道中の世間話。
「ねぇねぇご主人様。」
いつものように腕を取り、垂れかかりながら上目遣いで桃香が訊ねてきた。本人無自覚の超甘えポーズだ。いつもの事だと思いながらも毎回毎回反応してしまう俺は初心なんだろうか。否、男子なら誰だってそうなるはずだ。なにせ、超特盛の・・・いや、皆まで言うまい。何故かって?もう片方からこわぁいオーラが出ているからさ。朱里さん、手が痛いです。今度大きくなるようにいっぱいマッサージしてやるからな。
「ん?なんだい桃香?」
努めて、普通を装いながらそう返す。OK,パーフェクトだぜぇ・・・。
「ご主人様が子どもの時ってさ〜。どんな遊びが流行ってたの?」
人が理性と戦ってるのも知らないで・・・しかし、いきなり変わったこと聞いてくるなぁ。
「子どもの時?う〜ん、そうだなぁ。ここにいる子ども達とそんな変わらないかなぁ。かくれんぼとか鬼ごっことかチャンバラごっこ。どこもそんなもんだと思うけど・・・なんでまたそんなことを?」
TVゲームとかもやるけど、そんなこと言ってもわかんないだろうしなぁ、割愛。
「う〜ん。この間ね。城下の子ども達と遊ぶことになったんだけど、微妙に遊ぶ内容が違うんだよね。」
「ふ〜ん。どんな風に?」
「それがさ、皆でおままごとしましょうってお話になってね、普通おままごとっていったら夫婦の真似してそれになったつもりでするものじゃない?」
「まぁ、普通はそうだよな。そうじゃなかったのか?」
「夫婦の真似いったら真似なんだけどね・・・。例えば、昨日はこの女と寝てたんだから今日はあたしよ!何言ってるの?貴女だって先週皆に隠れてよろしくやってたじゃない!知らないと思ったら大間違いよ!」
「「ぶぶっ!」」
「ね?変わってるでしょ?私が子どもの頃ってそんなのじゃなかったからさ。ご主人様のいた天の国だったらもっと変わってるのかなぁと思って。」
「う〜ん・・・。」
その子らが変わってるのでは?それ以外考えられないし・・。
「あ・・・あのですね。桃香様、その原因のことなんですけど・・・。」
「え?朱里ちゃん理由わかるの!?教えて教えて!」
おお、流石に朱里だな。でも、なんでどもったりしてるんだ?なんか顔も真っ赤だし・・・・。
「それは・・・ご主人様です。」
「「えええっ!?」」
お、俺ぇ!?そんな遊び教えた覚えなんかないぞ!?
「ご主人様ぁ〜〜・・・?」
「違うよ!俺何も知らないから!」
ジト目で睨まないで!腕の感触も柔らかいものから痛いものにいいいっ。
「あ!?ご主人様だけが原因というわけではなくてですね・・・その桃香様にも原因があるかと・・・。」
「あ、ああああたしっ!?」
「というより、蜀の皆・・・ですかね。ご主人様が第一原因であるには違いないんですけど・・・・・・(こんな風にイチャイチャしてて何も思われてないほうがおかしいもの)。」
あー・・・、そういうことか。結構の町の名物になってるのかも、気をつけよう・・・・・。
「「「・・・・・・・・」」」
皆も同じ事思ってるんだろうな。気恥ずかしさのあまり空気が重い・・・・。話題転換話題転換、話のネタは転がってないか?
「あっ!」
桃香が何かに気づいたみたいだ。視線の先に目をやってみると・・・愛紗、鈴々といういつもの組み合わせに星と翠が加わった見回り組だ。どうやら向こうも夕食らしい。
「おーい。愛紗ぁ〜。」
恥ずかしさから逃げ出すように前を歩く愛紗たちに声をかける。
「ああ、これはご主人様に桃香様、それに朱里。」
「愛紗ちゃんもこれから御飯?」
遅れて桃香も愛紗たちに話し掛ける。
「そうなのだ。鈴々もうお腹ペコペコでお腹と背中がくっつきそうなのだ!」
「というわけさ。丁度、星が美味いラーメン屋を知ってるっていうから、そこに向かってる途中なんだがご主人様たちもどうだ?」
「ありがとう、翠。是非一緒に行かせてもらうよ。桃香達もいいよな?」
「うん♪問題な〜し。」
「・・・・。」
「ん?主よ。朱里はなんだか元気がないようだが・・・・?」
俺と桃香は切り替え出来たけど朱里はまだ出来てなかったみたいだ。
「実はな・・・・・・・・。」
星の行き着けのラーメン屋に向かう道中さっきまでの経緯を話してやった。
「そ、そのようなことが・・・。」
「うわぁ・・・。」
「照れるのだ・・・・・。」
「まぁ、それでそれで・・・・・。」
星を除いて、皆やっぱ同じ反応になるよな・・・。何故に星はまんざらでもなさそうなんだ?人気があれば手段は選ばないんだろうか。まぁ、そうでなければ仮面被って〜・・・なんてことはしないか。ていうか、これじゃさっきと同じじゃないか!?気まずっ!
「そ、そういえば、さっきの話で思ったんだけどさ、天の国の遊びでこっちにはないようなものってないのか?」
翠さんよ、それはちょっと無理のある話題転換ではないかい?とはいうもののここで会話をぶったぎってはまた重たい空気に逆戻りだ。何か無いか何か・・・。そうだ!
「そうだなぁ。ここの人から見ると、かわったおいかけっことか流行ったよ。」
「へぇ〜。どんなのなのだ?」
「天の国のおいかけっこかぁ、興味あるなぁ。」
よし、鈴と翠が食いついてきたぞ。
「うん、おいかけっこには違いないんだけど。ただ、おいかけるだけじゃつまらないから目標物を置いてそれを手にしたら勝ちって方法だね。俺の時は空き缶、まぁゴミを置いてつかまらず蹴ったら勝ちかな。これは大人数になればなるほど盛り上がってね。おいかける側、逃げる側に分かれて、缶を蹴る。どうやって掻い潜るか。向こうも考えて阻止してくる。この駆け引きが面白いんだ。」
「ほう、そのような遊びが・・・。」
「なかなか興味深いですね。」
星の目が名前の通り星のように輝いてるよ、まぁ駆け引きとか好きそうだもんなぁ。朱里に至っては軍師の顔になってるよ。
「考えるのは面倒そうだけど、嫌いじゃないな、あたしは。」
「鈴々もなのだー。」
これはまた意外!と言ったら失礼だが、直感思考タイプの2人までまんざらでもない様子。愛紗はどうかな?
「愛紗はどう?こういう遊び。」
「そうですね。良いと思いますよ。普段から遊びとして駆け引きの手管を学んでおけば戦場においても役に立つかもしれません。」
「愛紗さんの仰る通りだと思います。戦場においてはもちろんですが社交の場においても駆け引きは重要ですし、ひいては生きていく上においても損はしないと思いますよ。」
2人とも真面目だなぁ。なんだか話が大きくなってきたし。こういう時って良い経験した覚えはないんだが・・・・・・・。
「ふむ。ならば皆で競ってみるか?その缶けりとやらを。」
「ほぅ。面白そうだな。」
「やるやる!」
「鈴々が1番なのだ!」
「では、私も参加させてもらいます。」
それにしてもこの将軍達ノリノリである。桃香以外。さっきから無言だしな、のけものってのも可哀想だ。話しかけてみよう。
「桃香は嫌い?こういうの。」
「うーん。嫌いってことはないんだけど。私、そういうの苦手は方だし。」
確かに、そういうの得意はイメージはないよなぁ。素直で優しい娘だからなぁ。他人と出し抜いてというより皆仲良く・・・うん、そんな感じだ。まぁ、それが桃香の良いところではあるが。
「おやおや、では桃香様は不参加ですかな?」
「うん、悪いけど今回は・・・。」
「それは残念です。優勝者は主を1日独占す・・・『参加します!』る権利を・・・、桃香様も参加、と。」
出たよ、良くないこと!そんなことだろうと思ったけどさ!そして桃香、心変わりはやっ!さっきの考えを一部修正する必要がありそうだ・・・。それはまぁおいといて、だ。
「星〜。なんで俺が景品なんだよ!?」
一応、俺主だよ?太守だよ?扱いひどくね?
「まぁ、良いではありませんか、主よ。そのほうが気合が入るというもの。皆もすっかりそのつもりのようですぞ?」
さらりと怖いこと言ったね、今。確かに何か様子が変だ。
「わ〜い、お兄ちゃんとお出かけなのだ〜。」
「ご主人様と2人きり、ご主人様と2人きり、ご主人様とご主人様とご主人様・・・。」
「あ、新しい房中術を試す機会かも・・・。」
駄目だこいつら。早くなんとかしないと。そうだ!愛紗なら、きっと愛紗ならなんとかしてくれる。一縷の望みをかけて愛紗を横目で見やると丁度、目が合った。そして、コクリと1度頷いた。
「ご安心ください。ご主人様。」
流石は愛紗、言わなくてもお見通しというわけか。
「皆があのような感じなら仕方ありません。私が1番になれば良いだけのことです。」
全くわかっていなかったー!?
「うぅ・・・。何でこんなことに。」
その後、食事の間は彼女達から缶けりとはなんぞや?と、終始質問責めに遭ってしまい、味をよく覚えてない・・・今度1人で来よう。
ということがあったのが昨日のこと、一晩明けていつものように玉座に来てみれば噂が噂を呼んだのか、ほとんどの将軍クラスに知れ渡ってしまっている始末だ。
最初から賛同していた桃香や愛紗に星、鈴々、翠、朱里は言うに及ばず。
「ご主人様と一緒に・・・お昼寝。」
「おお、恋殿が燃えている!これは勝ちましたな!」
「ご主人様を1日独占だって・・・頑張ろうね、詠ちゃん。」
「ボクは別にあんな奴のことなんか・・・。まぁ、でも?月がそんなに言うなら頑張らないでもないわよ?」
「詠ちゃんったら・・・・クスッ。」
「ちょ・・・。あんな奴ことなんか本当にどうでもいいんだからね!?」
「しょうがないなぁ。詠ちゃんはぁ・・・。」
「ハッ。皆燃えておるな!こうもあてられては武人としての血が滾るのぉ。」
「そうですね。桔梗様!」
「脳筋のくせに何言ってんだか・・・・・ププ。」
「よし、一番最初におまえを倒す。」
恋とねね、詠に月、蒲公英、さらには桔梗や焔耶までもが参加しているとは・・・。あとで焔耶にはもう1度ルールの確認しておく必要がありそうだ。が、これはまだ可愛い方だ。
「わーい。鬼ごっこだ鬼ごっこだ!」
「フフフ、一緒に頑張りましょうね。優勝したら璃々の弟か妹を授かってくるからね。」
「お母さんホント?絶対だよ?」
「お母さんが嘘をついたことある?」
「なーい!」
「腕がなるなぁ、見てろよ斗詩ぃ〜。1番になってアニキを捕ってきてやっかんなぁ。」
「ご主人様は物じゃないよぉ、文ちゃん。それにその言い様だと私が欲しいみたいになってるじゃない。」
「え?違うの?」
「違・・・・わないけど。」
「そーだろ、そーだろ。アニキ捕ってきて、そんでもって結婚しような!」
「ええぇええええぇぇぇ。何でそーなるのよ!?」
「そりゃ、アニキと斗詩が結婚して、アタシも結婚すれば晴れて、斗詩と結ばれることになるからさ!」
「そうじゃなくて、もし勝利して1日独占権得たしても、何故結婚に繋がるのかわからないんだけど・・・・・。」
「そりゃ、あれだ。斗詩の色気で迫って約束させれば完璧だ。」
「えええええええっ!?」
「とにかく、頑張ろうぜ!幸い、麗羽様も朝からいないしこの機会を逃す手はないって!」
「うーん、結婚はともかくご主人様でおでかけはしてみたいし頑張ろうかな。」
「そうこなくっちゃ!」
唯一の良識者派がかんらーく!?しかし、やっぱりいたな。良からぬことたくらんでる連中・・・・・・。
「「「「「ご主人様と結婚・・・」」」」」
飛び火したぁ!?まだ青春を謳歌したい俺としては結婚なんてしたくねぇ!
「あー、コホンコホン。盛り上がってるところ悪いんだけど、こんな大人数で缶けりは無理じゃないのか?流石に政務に滞りがでるよ。」
「それには及びませんぞ、主。」
「どういうこと?」
「この中に居ない者が我らの代わりを務めております故。」
この中にいない・・・。あ!白蓮と雛里がいない!
「そう、主が今思い浮かべた者達です。元々は1国の太守であった伯珪殿なら、普通に政務もこなしましょう。雛里もついていることですしな。それにちょっと自由時間をもらうだけです。大丈夫でしょう。」
何故、この2人なんだ、とは怖くて聞けない。以前の騒動のことを持ち出されると勝ち目ないし、ごめんな2人とも、生きろ・・・・・・・・・・。
「そんなわけで主。いい加減、腹はくくってもらいますぞ。」
「んー。まぁ、それはもう諦めてるからいいけど、チーム分・・・あー、組分けとかどうするんだ?追いかける側と逃げる側がいないと始まらないだろ?」
「その点については抜かりはありません。なぁ朱里。」
「はい、朝議の時に公平になるよう皆で決めましたから。」
ゎぁぃ。うちの将軍達ってこんなにアグレッシブだっけ。
そんなわけでチーム発表。
攻撃側
星、翠、蒲公英、紫苑、璃々ちゃん、月、詠、恋、ねね、猪々子、斗詩
守備側
桃香、愛紗、鈴々、朱里、焔耶、桔梗
ふむふむ、なかなか悪くない構成・・・・・あれ!?
「なぁ。俺の名前がないんだが、どういうこと?」
これが噂のハブりってやつか!?
「ああ、主には大切な役目がありますからな。」
「大切な役?」
「ええ、これがないことにははじまりません。」
これがないと始まらないって、攻撃側も守備側も決めたし、残るは・・・・あ!
「MA★SA★KA★!?」
「はい、主には缶の役をやってもらいます。」
すげぇ嬉しそうだよ、畜生。賞品うんぬんはおいとくにしても結構楽しみにしてたのに・・・クスン。まくら投げゲームの得点係並みにせつないぜ。
「では、半刻後に開始としよう。二刻の間、主を守りきればそちらの勝ち、それまでに奪えばこちらの勝ち、攻撃側、守備側共に刃物などの殺傷能力のある物の使用は禁止。守備側に触れられた者は不正を行わぬように縄に縛られること、この内容で相違ないな?」
「ああ、問題無い。健闘を祈る。」
「そっちこそな。」
さわやかに会話しながらも、星も愛紗も目は真剣そのものだ。漫画とかだったら背景に龍と獅子が見えるんだろうなぁ。
それから俺たちは場所を移して、今は皆でよく水浴びなんかするおなじみの場所だ。
「なぁ、朱里。ここだと俺らの位置がバレバレなんじゃないか?」
「いえ、今回の戦いは勝つ必要がないですから。」
勝つ必要がない?どういうこっちゃ。
「つまりですね。私たちはご主人様さえ奪われなければいいんです。勝つ必要はない、負けない戦いをすればいいのです。」
「朱里の言うとおりです。なまじ相手を倒そうと策を弄してしまうと、それが裏目に出てしまう危険性もあります。水場を背にただ迎え撃つだけ、単純ではありますが相手に取ってはやりにくいことでしょう、こちらは全く動かないわけですから。」
愛紗と朱里がわかりやすく説明してくれた。負けない戦いか、深いなぁ。それにしても昨日ちょっと話しただけでもうここまで考えてくるんだから流石は蜀1番の軍師と将と言ったところだろうか。
「ところで、鈴々と桃香の姿が見えないんだけど。」
「ああ、鈴々には罠を仕掛けにいかせてます。」
「罠?こんな短時間にか?流石に難しいんじゃないのか?」
「ええ、それも作戦のうちです。それから桃香様には・・・・・朱里、時間だ。」
作戦のうち???意味がわからないが彼女らのことだ、何か意味があるのだろうか、はぐらかされたまま静かに火蓋は切って落とされた。
「おーい、愛紗、朱里〜。今戻ったのだ〜。」
それから、少しして鈴々が戻ってきた。
「おかえり、鈴々ちゃん。どんな様子だった?」
「んとね、あっちはまっすぐこっちに向かって進んでるみたいなのだ。桃香姉ちゃんは予定どおりだって。」
「ありがとう鈴々ちゃん。どうやら相手の方もこっちの思惑に気づいてるみたいですね。」
「そうみたいなのだ。相手に気づかれたわけじゃないのにこっちに向かってるのだ。」
「普通なら、相手の奇襲を警戒しながら進むものだが、『真っすぐ向かって』というところが証拠だな。流石じゃのぉ。なぁ焔耶・・・。ん?焔耶はどこにいった。」
「焔耶なら桃香様の傍を離れぬといって聞かなくてな、ついていってしまったのだ。」
半ば呆れ顔の愛紗がそうつぶやく。
「あの、バカ者が・・・・・・作戦を何だと思っておるのだ。すまぬ皆、うちのバカ者が迷惑かけてしまって。」
「大丈夫ですよ桔梗さん。どの道、桃香様1人では心もとないので誰かつけてもらう予定ではありましたから、桃香様と一緒に行動することで焔耶ちゃんもいつも以上の力を発揮してくれるかもしれませんし、このままで行きましょう。」
「そう言ってもらえると助かるが・・・朱里よ、最初からこうなることがわかっていたのではないか?」
「薄々ではありますが、なのでみなさんにはそれぞれ個別の指示を出していますがお互いに確認しないようにお願いします。狙いは・・・言うまでもありませんが。」
すいません、俺にはなんのこっちゃさっぱりです。皆は言わずもがなみたいな顔して、持ち場に散って行った。今は、俺と朱里を真ん中に置いて、愛紗と鈴々と桔梗に囲まれ三角形みたいになってる、桃香と焔耶は謎だ。しかし、缶の身なので動くわけにもいかず、暇なので傍にいる朱里にさっきの意味を聞いてみた。
「なぁ、朱里。さっきの話なんだけど・・・。」
一瞬、キョトンとしたかと思うとすぐに合点が言ったようで解説してくれた。
「それにはいくつかの理由がありますが、まず1つめ。相手に全体像を悟らせないことです。味方に共通の指示出しておくと、それぞれがそれに合わせて動こうとしますからそれによって悟られることを防ぐのが狙いです。いくら相手にわかっているからといって細部までバレているわけではありませんからね、用心しておくに越したことはありません。2つめはそれに関連したことになるのですが、味方がそれぞれあわそうと動く、でも私たちはさっき朝方決まったばかりでこの遊びは初めてです。急ごしらえの組み合わせで連携がしっかり出来る可能性は未知数です、それよりかは個別に指示与えておいてそれぞれの持ち味を発揮して活躍できる可能性の方が大きいと見たからです。」
それ遊びとかの域じゃない気がする。もうね、戦略だよ、うん。・・・にしても相手が来ないと暇だなぁ・・・。
一方の攻撃側はと言うと・・・・・・。
「ふむ、動く気配が感じられないところから察するに向こうは防衛に徹するようだな。。主を背にして背水の陣といった感じだろうか。」
「まぁ、それが無難だよなぁ、ご主人様に張り付かれちゃどうしようもないからなぁ。星、どうする?」
翠め、わかっておらんな。そんなものは決まっている。
「わからん。」
「はぁ!?わからないって・・・・どうするんだよ!敵はもうすぐそこだぞ!?」
「翠ちゃん落ち着いて。星ちゃんもそんな意地悪なこと言わないの。」
ほぉ、流石に紫苑はわかっているようだな。
「なんで紫苑はそんなに落ち着いていられるんだよ。何か策でもあるのか?」
「策なんてないわ。正しくは必要なんてないのよ。だから星もちゃんもわからないと言ったの、それもあながち間違いじゃないから。ただもうちょっと言い様があったと思うけれど。」
紫苑よ、それでもわからんと思うぞ。翠にこの手の駆け引きは・・・。
「策が必要無い・・・?どういうことだ?さっぱりわからない・・・。」
「お姉さまぁ〜。しょうがないなぁ、蒲公英が教えてあげるね。背水の陣で構える敵、それに対する私たちの取るべき道は!」
「道は?」
「突撃!粉砕!勝利!なのだ!」
蒲公英のほうが姉よりしっかりしているようだな・・・。
「鈴々かよ!!そんなのは策でも道でもなんでもねぇ!」
「いや?蒲公英の言ってることのほうが正しい。相手が意固地にも殻に閉じこもっておるのだ。こじあけるしかあるまい?」
「・・・・・うーん。なんだかなぁ。」
「いいねいいね!あたい、そういう単純なの大好き!いよっしゃあ!見てろよ、斗詩。見事アニキを生け捕って見せるからなぁ。」
「ハイハイ・・・。怪我だけはしないでね?」
「うむ、その調子だ。翠も考えるなど性に合わぬことなどやめてしまえ、いつもの猪ぶりはどうした?今回はそれが一番だ。」
「うっせ。まぁ、そういうことなら一暴れするとすっか!いくぞ蒲公英!!」
「おー!」
ふっふっふ、楽しくなってきたぞ、これは。
「あ、あのこれは遊戯なんですよね?戦争じゃないんですよ?」
「無駄よ月。こういう人達にそういうこと言っても無駄。馬の耳に念仏よ。そういう人達なんだから。」
「詠ちゃん・・・そんな言い方しなくても。」
「いいのよ、それよりもいかに、ああいう化け物どもをだしぬいて勝利するか考えるのよ。」
「化け物って・・・。まぁ、詠ちゃんがはりきってるなら頑張らなきゃね。ご主人様のためにも。」
「あ、あいつは関係ないでしょ!月が頑張るっていうから仕方なくボクは!」
「はいはい。そういうことにしといてあげるから頑張ろうね、詠ちゃん。」
「月ぇ〜。」
向こうは微笑ましいことだな、それはそうとこの美貌を捕まえて化け物とは失礼な、後で念を押しておかねば。
「みんな・・・・静かに・・・敵、来る・・・・。」
「ああ。わかっているぞ、恋。それにしてもわかりやすいな。あれで隠れているつもりなのか。桃香様は。」
「そういうなよ、星。あたしら武将と素人じゃ格が違いすぎ・・・うわああ!」
「翠っ・・・!ちぃ。桃香様は囮だ!皆、足元に気をつけろ。罠が仕掛けられているやもしれん!」
「へう〜。詠ちゃん。」
「大丈夫よ、月。罠といってもそんな短時間にいくつも仕掛けられるわけないんだからここで慌てたらそれこそ奴らの思うツボよ。」
「詠ちゃん・・・・。カッコイイ・・・。」
「はぅ・・・!よぉし!見てなさい。月!この賈?文和が敵地のところまで・・・きゃっ!」
「詠ちゃ・・・・へうぅ〜!」
「なんでこんなところに罠があるのよおお。バカアァァァァ・・・。」
「おかあさああああん!こわいよ〜!」
「よしよし、良い子だから泣き止んで、ね。大丈夫だから。」
「うえええええええええん。」
「困ったわねぇ・・・。悪いんだけど星ちゃん。先に行ってもらえるかしら。」
「ああ、仕方ないな。」
くっ。たちどころに4人が戦線離脱とは・・・流石に朱里だ。敵にまわすとここまで厄介とはな。しかし、解せん。何故奴らはこんな短時間にここまで罠を・・・。
「うっひょお!見たかよ斗詩!面白くなったきたぜええ!」
「ちょっと文ちゃん!気をつけろって言われたばかりじゃない。もっと慎重に行こうよ〜。」
「嫌だ!そんなのはあたいに合わない。アニキに向かってまっしぐらだぜええ!」
「って!敵の居るところにつっこんでいってどうするんだよ〜!」
「バッカだなぁ。斗詩。敵が自分のところに罠なんか仕掛けるわけ無いだろ!だから、これでいいんだよ!」
「それはそうだけどさぁ・・・。」
「そうだろそうだろ。おっし!アニキのところまで競争だ!」
ふむ。猪々子の言う事も一理あるが、果たしてそんなに単純なことだろうか。大切な事を何か忘れてるような・・・・。
「ふっ・・・・馬鹿な奴なのです。まぁ競争相手が減れば、より恋殿の勝利は間違いないです。」
見た目はあれでも軍師は軍師か。敵の行動が読めているようだな。
「流石だな。相手の行動が読めたか。」
「そういうおまえも勘付いてはいるようですな。武将にしてはやるですね。」
「軍師殿に褒められるとは光栄の極み。ただ、勘付いてるだけで相手を読むには至ってはおらん。是非、敵が何を企んでいるのか解説願いたいものだ。」
さぁ、手の内を明かせ。
「ふっ。そこまで言うなら教えてやらんでもないのです。まず、奴らの狙いはこちらに消耗を強いり、時間を稼ぐこと。そのもっとも効率の良い方法は罠です。ここまではわかりますか。」
「ああ、言われるまでもない。」
宙吊りになった皆を助け出すに労力がいる。刃物でもあれば別だろうがそれは今回は禁止されている、縄を解こうとすればたちまち奴らがやって来て一網打尽にするだろう。
「そこで、次はどのような方法で効率的に罠を仕掛けるか、です。その方法とは、自分たちの居場所を知らせまっすぐに来させること、です。」
「なんと、正々堂々と待ち構えているかに見えて、それすら罠とは・・・。」
「そうです。後は、自分達から見てもっとも近い道に、罠を数個置けば、ほぼ確実にかかります。その後は、混乱のまま走り回って散り散りになるか、罠のない方へと逃げ惑うか、そして、その先にこそ罠を仕掛ける、兵法の基本ですな。」
「ふむ、しかし猪々子は逃げ出すところが突貫していったようだが・・・。」
「そこにあえて罠を置くところこそ朱里が伏竜と呼ばれ恐れられる所以ですな。」
「のわああああああああ。」
「きゃああああああああ。」
「どうやらそのとおりらしいな。全くもって恐ろしい作戦だ。」
さて、どうしたものか。とりあえずはいま少し様子を見たほうがいいか。とりあえずは現状の把握だ。猪々子達がどうなったか確認しておかねば。
「桃香様、見ててくれましたか?」
「見てた見てた!焔耶ちゃん、すごぉ〜い!」
「くそぉ。絶対いけると思ってたのにぃ〜・・・・。」
「文ちゃんの嘘つき〜。やっぱりこうなる運命だったのね。トホホ。」
追いついてみれば、桃香様に縛られる猪々子と斗詩。2人とも触れられてしまったか。見た感じだと桃香様の他にもう1人伏せておいたか。さて、どうするか。向こうはまだ気づいては居ないようだが、かといって迂回は罠の危険もあるし、慎重にすすんでいると時間切れだぞ、突破しかないか・・・?それは早計か?むぅ〜冷静になれ趙子龍。
「どうした。まだ近くに隠れているのだろう。出て来い!それとも怖気づいて出て来れぬのか!」
焔耶め。好きに言ってくれる。やはり突破しかないか!・・・っと裾を蒲公英が引っ張っておる。何か妙案でも浮かんだか?
「ねぇねぇ星姉様、私が焔耶をひきつけるからその隙に行って。」
「よいのか、蒲公英。」
こっちにとっては願ってもないことだが。
「良くはないけど、あいつに活躍されるのは癪だしね。その代わり・・・。」
「その代わり?」
「勝利した暁には私も混ぜてね!」
・・・かわいさのあまり抱きしめそうになったぞ、蒲公英め。そうだな、出し抜くだのしておる場合ではないな。向こうは一丸となって守ろうとしておるのだ。こちらも協力せねばな。
「ふふふ。承知した。2人で主を喜ばせよう。」
「じゃあ、決まりだね!」
蒲公英と誓いの握手をする。やはり友情とは良いものだ。
「どうした!誰もおらんのか!」
「ここにいるぞー!」
「なんだ、貴様か。貴様なんぞより星や恋の相手のほうが何倍も楽しそうだ。」
「ふん。あんたみたいな脳筋は私で十分・・・いやもったいないぐらいだもんね〜。」
「ほざけ!おらああああ!」
「本当のことだからって怒らないでくれる、これだから脳筋は・・・。」
「絶対コロス!うおおおおおおおおおおおおおおお。」
「やれるもんならやってみれば?」
「わわわ。2人とも喧嘩は駄目だよ。って待ってよぉ〜!」
よし、うまいぞ蒲公英。その道なら我らが最初にいた道だ、しばらく時間は稼げよう。しかも、桃香様までひっぱっていってくれてる、好機!
「・・・・行く。」
いつのまにいたのだ。恋よ。
「おぬしも協力して3人で主を喜ばせるか?」
それもまた一興だ。少しでも成功率を高めるためにここは協力しておかねば。
「・・・・・(コクリ)。」
「ふふ、ではいくぞ恋よ。」
「2人でご主人様・・・・喜ばせる。」
「2人ではない、協力してくれてる蒲公英も含めて3人だ。」
「わかった。」
待っていてくだされ。主!
「・・・はぁはぁ。急においていくなんて星も恋殿もあんまりなのです・・・ってすでに走りだしているのです!?待ってくだされ〜〜〜。恋どのぉ〜。」
戻って、守備側
「あえて言おう、暇である。と」
缶けりが始まって1時間ぐらい経っただろうか。なんの変化もなくただ地蔵よろしく座らせているだけだ・・・放置プレイ?
「はわわ。暇なのは我々にとってはいいことなのでもう少し我慢していてください。」
「そうは言うがな大佐・・・。」
「はい?たいさ?」
「ごめん、忘れて・・・。しかし、こっちは缶けりに参加しているようでしてないようなもんだから、つい・・・・。」
「はう〜・それは申し訳なく思いますけど・・・・・。」
そんな泣きそうな顔するなよ、朱里。こっちが悪いみたいじゃないか・・・・。まぁ悪ノリするけどな!
「そうだなぁ。せめてこっちに何か利があればなぁ。まだ納得できるんだけどなぁ〜。」
「はうあ!?」
そんなつもりはないけど、言ってみてる。言ってみただけ・・・ホントだよ?
「わ、わかりましゅた!ででででは、その見返りに新しい房中術をつかって・・・ごごご御奉仕させていただきましゅ!」
でたぁ!朱里さんの十八番「房中術」だあ!しかし、俺の利=性的なアレっていう構図が切ない。・・・・間違ってないけどね!
「ほほう、朱里よ。我らの目の前の抜け駆けとは良い度胸だな。」
じぇ・・・じぇらいしゃ!遊びすぎたか!
「まさか、我らとの約束を反故にする気ではあるまいなぁ?」
前門のじぇらいしゃ、後門の桔梗・・・朱里終了のお知らせ。しかし気になることがひとつ。
「約束って何のことだ?察するに缶けりつながりだよな、俺にも関係すること?」
「秘密です。」
一言でピシャリですか。
「え〜。いいじゃんかぁ。教えてよ愛紗ぁ〜。」
「っ!秘密だといったら秘密なんです!ご主人様には教えられません!」
取り付く島なくそっぽを向かれてしまった。よほど気に障ったのか顔も赤い。悪いことしたかな。
「ごめん、愛紗。怒らせるつもりなんてなかったんだ。本当にごめん。」
「う〜。そのようなお顔をなさらないで下さい。これではこちらが悪いみたいじゃないですか。怒ってなどいません。ただ恥ずかしいというか、なんというか・・・そのぉ。」
怒ってはいない、どういうことだ。さっぱりわからん。
「御館様よ。これ以上は無粋というもの。何、御館様にとってみても悪いこと何一つありはせんよ。ただすごく疲れるかもしれんがな。はっはっは。」
「はわわ!桔梗さん、それはもう答えに等しいですよぉ・・・。」
朱里まで真っ赤になってしまった。皆が真っ赤になって、すごく疲れるようなこと・・・か期待しちゃっていいの!?
「ソウカ、ソレハシカタナイナ。ザンネンダケドタノシミニシテオクヨ。」
とりあえず取り繕っておこう。うん、バレてないバレてない。しかし、皆で疲れるようなことかぁ。ウフフフフ。
「桔梗!どうみてもあれはご主人様にバレてしまっているぞ(ヒソヒソ)。」
「いずれにせよバレるのだから良いではないか(ヒソヒソ)」
「早いか遅いかの問題ではないですよぅ(ヒソヒソ)」
「朱里の言うとおりだ。うぅ、ご主人様にどんな顔をすればよいやら(ボソボソ)」
「では愛紗は、今回の皆で御館様を守って等しく愛してもらおう戦線から離脱。ということでよいのかな(ボソボソ)」
「んな!そうはいってないだろう!」
「ちょっと、愛紗さん。声が大きい(ボソボソ)」
おっと。妄想の海を漂ってら愛紗の大声で呼び戻されたぜ。
「ん?どうかしたのか皆。」
「な、な、なんでもありま・・・せんよ?ホントウです、よ?ほん・・・」
ん、どうした。突然に怖い顔になって。
「ご主人様、お話はまた後で。桔梗!敵の来たようだ。迎え撃つぞ!」
「ようやくか。朱里、御館様を頼む。」
え?どこ?姿なんて見えないぜ?
「はい、わかりました。お気をつけて。」
「へへ、朱里は心配性だな。心配しなくても大丈夫なのだ!」
え、何!?俺の足元から声がする!怖っ!
「馬鹿者。伏兵で喋るやつがあるか。大人しくしていろ。」
「ぶ〜。退屈なのだぁ〜。大暴れしたいのだ〜。」
「ごめんね。鈴々ちゃん。勝つためだから我慢してね。」
「う〜。早くするのだ!もう我慢の限界なのだー!」
「だから、そのためにも大人しくしてろといっている!」
「いい加減にせんか!敵に悟られるぞ。」
「すまん、桔梗。」
悪いと思っているのだろうか。鈴々も無言になった。しかし、よく考えるよなぁ。俺の足元に潜ってていたなんて全くわからなかったぜ。さっきまで横にいたのに、どこの妖術使いだよ・・・。
「愛紗さん、ちょっと耳をお借りしていいですか。あのですね・・・(ボソボソ)」
「ふむ。やってみよう。」
ん?朱里が愛紗に何か言った?
「さて、と。」
愛紗が一息ついたと思ったら、顔が違う。あれは、そう。いつも俺に見せてくれる女の子の愛紗じゃない。蜀の武神、関羽雲長の顔がそこにはあった。何をするつもりなんだ?
「星よ!恋よ!その辺にいるのだろう。隠れてないで出てきたらどうだ?それとも我等に臆して出てこられぬか?」
挑発!?この時間帯で挑発とな!
「時間を稼いだ方が有利なはずなのにどうして挑発するような真似をするんだ!?なぁ、教えてくれよ。朱里。さっきの助言と何か関係があるんだろう?」
「え?ああ、はい。これは相手に罠の存在に気づいてもらうためです。」
「なっ!そんなことしたら罠の意味がなくなっちゃうんじゃないのか?」
「いえ、そんなことはないですよ。言わなくても星さんたちは罠の存在には気づいているでしょうから。むしろ堂々と罠の存在を見せ付けることに罠の意味があるのです。」
「すいません。どういうことなのかさっぱりなのでわかりやすくいってもらえると大変助かります、はい。」
「あ、これは失礼しました。えーとですね。まず星さんたちが隠れて様子を伺っている、この意味は当然伏兵を存在を警戒しているからですね。そこで、愛紗さんがここに伏兵がいるぞ。それが怖くて隠れて恥ずかしくないのか。ということで相手に圧力をかけるんです。そうすることで、さらに警戒して膠着状態が続く・・・のが理想です。しかし誇り高い星さんたちのことですから一気呵成に短期決戦を挑んでくるでしょう。そのまま伏兵の餌食になれば僥倖。そうでなくても敵が全員この場に集結して固まっているのは守備側としてはこのうえなく守りやすい好条件になります。奇襲の心配がなくなりますからね。愛紗さんたちの感じですとどうやら星さんと恋さんぐらいで他の人たちが来てないようですから、桃香様たちが一定の戦果を挙げていると見てよいでしょう。つまり、ここに潜んでいる人たちをあぶりだせば限りなく高い確率で勝つことができる。というわけです♪」
な、なるほど。ここまで解説してもらってようやく理解できた。朱里さんパネっす。
「・・・。」
朱里の言ったとおりだ。星が木陰から出てきた・・・の割にはえらい余裕そうだな。
「愛紗よ。その言葉そっくりそのまま返してやろう。主を盾にひきこもらなければ我等と対峙することもできぬとは、お主らのほうがよほど臆病ではないか。」
そうか。挑発には挑発か。愛紗も同様に誇り高い娘だ。有効かもしれないな。
「ふっ。どんなことをしてでもご主人様にためとあらば負けるわけにはいかんのだ。卑怯だ!恥知らずだ!臆病者だ!と罵られようとも甘んじて受けよう。さて、それでどうするのだ星よ。かかってくるのか?こぬのか?」
流石に武神モードにスイッチした愛紗は強いな。安い挑発には乗らないか。それどころか逆に星を煽ってきた。
「言われるまでもない。お主らを排して主をいただくまでだ!行くぞおおおおおお!」
「来い!うおおおおおおおおおおおおおおっ!」
今、両雄が激しくぶつかりあう!・・・わけはないんだよね。触られたら星の負けだし。
気合のはいった口上とは裏腹に互いに冷静だ。愛紗が星を捕まえようと動けば蝶のようにひらひらとかわしていく。時折、隙をぬってこっちに迫ろうとするぐらいだ。しかし、そうはできない。なぜならそこには・・・。
「星よ。愛紗だけならともかくこのわしがいて2枚!易々と抜けると思わんことだな!」
桔梗が睨みを効かせているからだ。
「ちぃ!流石に2対1では分が悪いか。っと危ない。」
星の動きが鈍ってきたように思える。鬼気として迫ってきたのに、じりじりと俺から遠ざかっていく。焔耶らの奇襲を回避して且つ2対1でやりあっては疲れの色は隠せないか。
「よし!いけるぞ桔梗。挟み撃ちだ。」
「任せい。愛紗は左から。わしは右からいく。」
「わかった。さぁ星!覚悟しろ!」
「くっ・・・。」
流石の星もこれまでか。・・・星が笑っている?
「かかったな!愛紗!桔梗!行けぃ!恋!」
「行く!」
突如、恋が現れてこっちに突っ込んできた!思ったより近い!挑発のやりとりの最中に移動していたのか。あっちはあっちで考えてるなぁ。
「なるほど。お主らも個人ではなく組んでいたのか。てっきりバラバラでくるものと私は思っていたんだがな。」
「お主らが組むのが読めたからな。まぁ途中から組んだばかりだが。ところで、こんなところで喋ってる暇などあるのか?愛しの主が盗られてしまうぞ?」
「言っただろう。バラバラでくるものと『私は』は思っていたと。我等の軍師は、かの諸葛孔明なのでな。」
「流石に朱里の目は欺けなかったか。しかし、恋なら!あるいは・・・。」
愛紗と星が何か言ってるようだけど聞こえないな、にしても恋が目の前だ。しかし恋はあの呂奉先なんだよなって再認識した。すごい迫力だ。あのままぶつかったら俺死ぬんじゃね?どこぞのバイキン星人のように星になりそうだ。いやー!止まってぇぇぇ!
「?」
祈りが通じたのか。鬼の顔からかわいらしいキョトン顔に変わった。何故?
「そこまでなのだー!」
突如として伏兵として身を潜めていた鈴々飛び掛ってきた!恋は減速しきれていない!
「っ!」
止まろうとしても流石に間に合わないと踏んだのか。無理やり、体を右に流して勢いを逃がそうと試みるが、勢いを殺しきれず恋は転がっていった。あの状況で回避できるとは流石だな。
「もらったのだあああああああ!」
これを逃す鈴々でもないか。追い討ちをかけていく。
「っ!・・・危ない。」
すげぇ。立て直して回避しやがった。何て勝負だ!
「恋殿おおおおおおおおお。こうなったらねねが恋殿の敵を取るのです。覚悟しろです!」
恋に続けとねねも突っ込んできた!ってあの構えは!
「ちんきゅ〜キーッ・・・」
ちょ・・・蹴るな!
「おい。バカやめ・・。」
「させません!」
おお!頭脳労働者の朱里も果敢にねねを食い止めに行った!
「おのれ〜!邪魔するなです!」
「いくらねねちゃんでもこればっかりはさせません!」
「ぬぬぬぬ・・・。」
膠着状態にはいった。が守備側が1人多いだけあって時間の問題か。
今、両雄が激しくぶつかりあう!・・・わけはないんだよね。触られたら星の負けだし。
気合のはいった口上とは裏腹に互いに冷静だ。愛紗が星を捕まえようと動けば蝶のようにひらひらとかわしていく。時折、隙をぬってこっちに迫ろうとするぐらいだ。しかし、そうはできない。なぜならそこには・・・。
「星よ。愛紗だけならともかくこのわしがいて2枚!易々と抜けると思わんことだな!」
桔梗が睨みを効かせているからだ。
「ちぃ!流石に2対1では分が悪いか。っと危ない。」
星の動きが鈍ってきたように思える。鬼気として迫ってきたのに、じりじりと俺から遠ざかっていく。焔耶らの奇襲を回避して且つ2対1でやりあっては疲れの色は隠せないか。
「よし!いけるぞ桔梗。挟み撃ちだ。」
「任せい。愛紗は左から。わしは右からいく。」
「わかった。さぁ星!覚悟しろ!」
「くっ・・・。」
流石の星もこれまでか。・・・星が笑っている?
「かかったな!愛紗!桔梗!行けぃ!恋!」
「行く!」
突如、恋が現れてこっちに突っ込んできた!思ったより近い!挑発のやりとりの最中に移動していたのか。あっちはあっちで考えてるなぁ。
「なるほど。お主らも個人ではなく組んでいたのか。てっきりバラバラでくるものと私は思っていたんだがな。」
「お主らが組むのが読めたからな。まぁ途中から組んだばかりだが。ところで、こんなところで喋ってる暇などあるのか?愛しの主が盗られてしまうぞ?」
「言っただろう。バラバラでくるものと『私は』は思っていたと。我等の軍師は、かの諸葛孔明なのでな。」
「流石に朱里の目は欺けなかったか。しかし、恋なら!あるいは・・・。」
愛紗と星が何か言ってるようだけど聞こえないな、にしても恋が目の前だ。しかし恋はあの呂奉先なんだよなって再認識した。すごい迫力だ。あのままぶつかったら俺死ぬんじゃね?どこぞのバイキン星人のように星になりそうだ。いやー!止まってぇぇぇ!
「?」
祈りが通じたのか。鬼の顔からかわいらしいキョトン顔に変わった。何故?
「そこまでなのだー!」
突如として伏兵として身を潜めていた鈴々飛び掛ってきた!恋は減速しきれていない!
「っ!」
止まろうとしても流石に間に合わないと踏んだのか。無理やり、体を右に流して勢いを逃がそうと試みるが、勢いを殺しきれず恋は転がっていった。あの状況で回避できるとは流石だな。
「もらったのだあああああああ!」
これを逃す鈴々でもないか。追い討ちをかけていく。
「っ!・・・危ない。」
すげぇ。立て直して回避しやがった。何て勝負だ!
「恋殿おおおおおおおおお。こうなったらねねが恋殿の敵を取るのです。覚悟しろです!」
恋に続けとねねも突っ込んできた!ってあの構えは!
「ちんきゅ〜キーッ・・・」
ちょ・・・蹴るな!
「おい。バカやめ・・。」
「させません!」
おお!頭脳労働者の朱里も果敢にねねを食い止めに行った!
「おのれ〜!邪魔するなです!」
「いくらねねちゃんでもこればっかりはさせません!」
「ぬぬぬぬ・・・。」
膠着状態にはいった。が守備側が1人多いだけあって時間の問題か。
「どうやら星。おぬしの策もこれまでのようだな。」
「ぬぅ。万事休すか・・・。」
得意顔の愛紗に苦渋に満ちた表情の星。勝負あったな。心が折られては・・・。
「諦めては駄目よ!」
その声は!
「紫苑!」
いち早く、桔梗が叫ぶ。
紫苑のやつ!いつのまに水辺に潜んでいたんだ!?
「ちぃ!愛紗はここは任せる!やらせんぞっ!」
桔梗が決死のダッシュで阻もうと迫る。距離的には紫苑のほうが有利だが・・・どうだ!?
「っ・・!」
「間に合ったか。紫苑め。相変わらず油断ならんな。しかし水辺に潜んでいたのが間違いじゃったの。水を吸ったその服では動きにくかろう。」
「まぁ、そうかもしれないけど。まるまる損というわけでもなさそうよ。」
「?何を言っておるのだ。まぁ良い。わしの手で捕らえてやる。」
やる気満々の桔梗に余裕の笑顔の紫苑。その顔はこっちをみている。こっちの・・・股間!?
あっ。いつのまにかジュニアが興奮していたようだ。まぁ、仕方ないだろう。水に濡れてスケスケな紫苑がところ狭しとかけめぐり、胸とかお尻をぷるぷるさせてどうもしないほうが男として終わってる。
しかし、本当にすごい攻防だな。可憐に2対1という状況でありながらも迫った星や、ここぞというところで雄雄しく迫る恋に、不敵にもいつのまにか水辺で耽々と俺を狙ってた紫苑か。そして、見事にそれを阻んだ愛紗に紫苑に鈴々。あと、涙ぐましく体を張ってくれた朱里にねねにも拍手を贈りたい。皆、それぞれ1対1にわかれ対峙しあっている。愛紗対星、鈴々対恋、朱里対ねね。桔梗対紫苑。力量は互角!どうなるこの勝負!
「ごしゅじんさま。つ〜かまえ〜た〜!」
決して、この場ではそぐわない優しい声でそのまま肩を叩かれる。もしかしなくてその声は・・・。
「璃々ちゃん!?」
「「「「「「「なにぃ!?」」」」」」」
皆が皆、その場で腰を落とした。1人を除いては。
「紫苑。お主は瑠々をあやし終えてここに来たのではなかったのか?」
皆の気持ちを代弁して星が訊ねた。
「ええ。それは本当よ。その後、璃々もやる気になってくれたから、こっそりと様子を探り潜んでいたのよ。」
「なんと・・・・。」
ここまで驚く星も久々だな。愛紗とか鈴々は口が開いたまま固まってるし。
「くくく・ハーハッハッハッハ。流石に紫苑だな。完敗だ。」
桔梗は悔しさというよりもう笑いしかこみあげてこないようだった。
「くやしいのです!くやしいのです!」
「ねね、落ち着く。」
「恋殿おおおおっ。」
ねねをあやす恋の構図・・・微笑ましいなぁ。皆それぞれに悔しいみたいだ。あとなんか黒い塊1つ発見。あれは・・・朱里!?
「ワタシノサクガワタシノサクガワタシノサクガ。」
駄目だ。掛ける言葉が見つからない。そっとしておこう。
「ねぇねぇごしゅじんさま〜。」
「ん〜。なんだい璃々。」
無邪気な璃々の無邪気な問い。う〜ん癒される。
「あたしがかったからごしゅじんさまをいちにちじゅう、どくせん?していいんだよね。」
そんな子からの無邪気な核爆弾投下。ぅゎぁぃ。そんな約束してたっけ。
「「「「「「「ギン!!!!」」」」」」」
なんか皆に邪気が宿ったよ!?まずい!?
「なぁ、璃々。ものは相談なんだが・・・。」
「駄目ですよ。ご主人様。勝利したのは璃々なんですから余計なことを吹き込むのはなしです。他の娘もわかったわね。」
有無も言わさぬ母親の迫力。皆もたじたじだ。
「さぁ、璃々。なんでもいいなさい。ご主人様が願いを叶えてくれるわ。」
「ホント?なんでも!ヤッター!」
ヤッター。どんなお願いされちゃうんだろう。ここで、弟か妹が欲しいなんて言われたら・・・。ハッ!まさかそれが紫苑の作戦なのか!?
「チラリ。」
「?」
ニコニコ顔で何を考えてるのかわからないぜ。でもでも結婚したいとかそういうこと言われたりなんかしたら・・・!やばい。幼女好き君主として後世に名を残すことになってしまう。さりげに北郷一刀史上最大のピンチかも?
「んーとね。ごしゅじんさまとー。」
ごしゅじんさまと!?『と』だと!?結婚!?結婚なのか!?皆も同じような心境なのか。それぞれに絶望の表情を浮かべている。
「みんなでー。」
みんな!?みんなで結婚なのか!?それともあれか子作りなのか。大量生産しちゃうのか!?
「いちにちじゅうた〜っくさんあそびたいな!」
「ハッ?」
「だからぁ〜、ごしゅじんさまやみんなでたくさんあそびたいんだけどだめかな?」
「い、いや。全然かまわないよな?な?みんな。」
「え、ええ。勝利者がそういうのですから是非もありません。」
「といいながら、ほっとしている愛紗であった。」
「チャンチャン。なのだ。」
「星。鈴々。」
「ん?なんだ。愛紗。」
「そういうおぬしらも震えておるぞ。」
「ぬぅ。」
「あう〜、バレちゃったのだ。」
「まぁまぁ、璃々ちゃんもこういってることですし、遊ぶとしましょう♪」
「ふむ、軍師殿の了解も得られたようだし、決まりだな。確かにわしらも忙しすぎてかまってやれなんだ。こういう日があってもいいかもしれんな。」
「桔梗・・・。ありがとう。良かったわね璃々。皆遊んでくれるそうよ。」
「やった〜!うんとそしたらね、おままごとやってみたい!ご主人様はご主人様で璃々がお嫁さん!」
おままごとかぁ。初々しいねぇ。まぁ、おままごとの夫婦なら喜んでやってあげないとな。
「それでね〜。他のおねえちゃんたちは〜愛人たち〜!」
「「「「「「「「ぶっ。」」」」」」」」
皆、一斉に吹き出した!これはあれか昨日城下の子どもたちがやってたあのおままごとなのか!
「なんだ。普段と変わらないのだ。」
空気読め。鈴々・・・。みんな引きつってるぞ。
「ま、まぁ、璃々がいうなら仕方ない。わたしがご主人様の愛人1号ということで・・・。」
「待て待て。勝手に決めるな。お主より私のほうが主の1号にふさわしい。」
「待て。それはどういう意味だ。」
なんか1号とか2号とかで争い始めた。え?なに?もうはじまってるのこれ。
「はぁ・・・。とりあえず先につかまちゃった人たちを呼び戻してきますね。」
「うん、よろしく朱里。」
にしても、璃々ちゃんには今度正しいおままごとを教えてあげよう。情操教育上あんまり良いとも思えないし・・・。まぁ1日あるんだし、しっかり教え込んでおこう。にしても何かいろんなものを忘れてるような気がするが気のせいだろうか?
おまけ 〜途中から離脱した人と忘れ去られた人たち〜
詠、月、斗詩、猪々子、翠の場合
「ふん。あんたみたいな脳筋は私で十分・・・いやもったいないぐらいだもんね〜。」
「ほざけ!おらああああ!」
「本当のことだからって怒らないでくれる、これだから脳筋は・・・。」
「絶対コロス!うおおおおおおおおおおおおおおお。」
「やれるもんならやってみれば?」
「わわわ。2人とも喧嘩は駄目だよ。って待ってよぉ〜!」
・・・行ったみたいね。
「詠ちゃん。どうしよっか。」
「そうねぇ・・・。」
月を勝たせてあげるつもりが、まさか最初のうちに遅れを取ることになろうとは・・・。しかしまだあきらめるには早い。何か手はないだろうか。縄の揺りかごの中で手がかりを探し始める。
「そういえば、他の連中はどうしたのかしら。翠とか斗詩、猪々子がまだ付近にいたと思うんだけど。」
それとなく辺りを見回してみる。ちょっと離れたところに斗詩と猪々子が確認できた。向こうはこっちに気づけてないようだけど、こっちからはよく見える。
「あーあ。捕まっちゃったか〜。ごめんな斗詩〜花嫁にしてやることが出来なかったよ。」
「ううん。いいんだよ。花嫁とまでは考えてなかったし、ご主人様のは残念だったけど、文ちゃんが怪我とかしなくて良かったって思ってる。」
互いに背中を向ける形で縛られてる斗詩と猪々子がそんなことを言い合ってる。本当に仲いいのね。
「くう!斗詩〜結婚してくれぇぇぇ!」
「なななな何いってんだよ、文ちゃん!」
「なんかもう萌えた。アニキに可愛がってもらえなかったかわりにあたいが慰めてやるからな。」
「バ、バカなこと言わないでよ。だいたいこんな格好でどうやって・・・。」
「体の向きをかえるぐらいならなんとかなる・・・さ!」
「ちょっと。無理やりねじまげないで!痛い痛い痛い!」
え?なんかありえない動き方してるけど、どうなってるのアレ?
「もうちょっと・・・・。よし出来た。さて、可愛がってやるからな。斗詩。」
「お願いやめて・・・。あ、どこ触ってるのよ。あっ、駄目だったら・・・あふっ。」
うわっ・・・・・・すごっ。斗詩抱きかかえたまま、そんなところまで・・・ゴクッ。
「詠ちゃん、何を見てるの・・・?」
「ひゃい!なななな、なんでもないなんでもない。そ、それよりもさどうやって脱出するか考えないと。ね?」
「う〜ん。気になる。後で教えてね。それと脱出方法なんだけど翠さんに相談してみたらどうかな。」
「そうね。おーい翠〜。聞こえる?そっちは脱出できそうかしら。もし出来そうならこっちも助けて欲しいんだけどぉ〜。」
ちょっと声を大きめに聞いてみる。幸い、翠と私たちのいる距離はさほど離れているわけでもなく互いに視認できる距離にあった。
翠には翠なりの何か考えがあるのだろうか。さっきから全く微動だにせずじっとしている。
「ごめん。ちょっと無理かな。」
そんな姿から出たとは思えないようなか細い声。
「え?ごめん。聞こえないんだけど〜。」
「だから、無理だって・・・。」
何をボソボソいってるんだろう。翠らしくもない。イライラする。
「だぁかぁらぁ〜。聞・こ・え・な・い・っつてんのがわからないの!?」
「漏れそうだから無理だっていってんだ!!!あっ・・・。まずい、近くなってきた・・。」
「ご、ごめんなさい。悪かったわ。なんとか脱出して助けてあげるからそれまで頑張って。」
そう、お漏らししそうだったのね。だから声もあんな小さかったのね。刺激を与えないように・・・・・・。
「2人で頑張って脱出するしかないみたいだね、詠ちゃん。」
「そうだね、月。」
助けが無理なら自力で罠を抜けるしか方法はないが、どこかに綻びはないだろうか。下は・・・駄目ね。私たちの体重もあってか結び目もしっかりしててとても解けそうにない。となれば・・・上はどうかしら・・・・見つけた!幸い、短時間でこしらえた罠だったせいで上のほうまで気が回らなかったようだ。これなら、なんとか1人ずつなら抜けられるかもしれない。縄も木にぶら下がってるだけだしそこに手が届けば!早速、そのことを月に相談してみた。
「流石は詠ちゃん。私が下になるからそこで一気に・・・。」
「いやいや、ここは私が下になるから月が先に行って。」
「でも・・・。」
「いいから!それに縄をもう少し解いて1人分が抜ける穴にしなくちゃいけないの。自慢じゃないけどそういった繊細なことは月の方が向いてるわ。だからお願い。」
「うん。わかった。そこまでいうならやってみるよ。でも、絶対2人で脱出しようね。」
「約束する。ほら、早くしないとアイツを誰かに盗られちゃうわよ。急いで。」
といって月の足を自分の肩に乗せる。・・・重い。でも頑張らなくちゃ。アイツを捕まえたらせいぜいこき使ってやろう。そう、それだけなんだから!
「本当にごめんね・・・。んしょ。爪先立ちだけどなんとか届きそう。あ、綻びってこれだね。うん、これならなんとかなりそうだよ。」
「え?ホントっ!」
嬉しくなって思わず上を見てしま・・・
「わっ。わっ。」
「どうしたの?詠ちゃん、変な声だして。」
「な、なんでもない。なんでもない。ちょっと体勢を崩しそうになっただけだから。」
「そっか。無理だけはしないでね?」
「うん、大丈夫だから、続けて。」
それならと、月はまだ罠解除の作業に戻る。
ふぅ、危ない危ない。月に悟られるところだったわ。私が月の下着を見ていたことに!
「んしょ、んしょ。」
上で月が苦戦してるんだろうか。それにあわせて縦に横に純白がフリフリが動いてる。見たら駄目だってわかってるけど、視線をはずせない。それにしてもアイツが選んだものだっていうのが癪だけどよく似合ってて、それでいていやらしい・・・。
「・・・。なんだか視線を感じるんだけど気のせいかな?」
まずい。バレる。
「えーと。気のせいじゃ・・・あっ、もしかしたら。ホラ、あれかな。早く脱出できないかなぁってボクが見てるせいでそう感じたのかもっ?うん、たぶん、きっとそうよ!」
「う〜ん。そうなのかなぁ。そういったのとは違ってなんか邪気がこもっていたような。」
「気のせいよ、気のせい。ほら、変なこといってないで早くしましょう。」
「はーい。」
渋々と言った感じだが作業に戻ってくれた。かなり際どかったけどバレてないわよね。しかし際どいといえばその食い込みのほうがやばいわよ。爪先立ちのせいですごくそう見える。しかし、もどかしいわね、もっとよく見えないかしら。んしょ。
「わわ、ちょっと詠ちゃん、動かさないで。落ちちゃうよ。」
おお、フリフリ動く・・・。もっとよくもっとよく。
「も、も、もう駄目ぇ〜。」
そうそう、よく見えるわ。というか迫ってき・・・ギャー!
「ごめん。詠ちゃん。大丈夫。」
ああ、眼前に広がる、月のいけないところ、いけない香り・・・・もうダメかも。
「ちょっと、詠ちゃん。返事をして。詠ちゃ〜ん!!」
華雄将軍、今貴女のいるところに行くわね・・・ガクッ。
「詠ちゃああああああああああん。」
蒲公英、焔、桃香の場合
「はぁはぁ、脳筋のくせにてこずらせてくれたわね。」
「フン、うるさい。それよりも守備側が罠を仕掛けるなんて卑怯じゃないのか?」
焔耶を釣り上げて、そのままワタシが自前で仕掛けてある罠でまさに焔耶吊り上げ状態。
「残念でしたぁ〜。これは私が以前から仕掛けておいた対アンタ用の自前の罠だからなんの問題も無し!」
「んなっ!貴様ぁ!武人としての恥を知れ。」
「うっさい。脳筋。そんなことよりわかってるの今の状況。あんた宙吊りにされてるんだよ?
生殺与奪は私の手にあるんだよ?口の利き方には気をつけなさいよ。」
「黙れ!貴様に命乞いをするなら死んだほうがましだ。大体、ワタシに触れた段階でお前の負けなんだぞ?わかっているのか?貴様のほうがよほど脳筋ではないか。アッハッハッハ。」
あ・・・・。なんかもうどうでもよくなってきた。コイツをギャフンと言わせないと気がすまないな。
「そう、そんなに言うなら死んだほうがましっていうの見せてあげようじゃない。ア、コンナトコロニトリノハネガー。」
「なんで、棒読みなんだよ、持参してるくせに・・・って。お、おい。バカな真似はよせ。」
もうだめ。何もかもが遅い。この羽毛で焔耶を・・・・。
「アッー!」
さぁ、調教開始よ・・・。
・
・
・
・
・
・
「ほらほら、まだまだこれからよ。」
「あう、んは・・・・いや・・・!」
それからちょっと経ってからだろうか。桃香様がようやく追いついた。
「ハァハァ。2人とも速すぎ・・・って何してるのー!?」
「あ、桃香様。何って焔耶を気持ちよくしてるんだよ。一緒にどう?」
「ふぇ・・・・。み、見ないでください。桃香様。」
「うーん。蒲公英ちゃん。可哀想だし離してあげなよ。」
「いやいや、桃香様。こう見えて喜んでるから問題無し。」
「ええっ。そうなの!?」
「お、おい、蒲公英。何をバカな・・・・こ・・と・をいってる!」
「本当にぃ〜。ここではいっていったら桃香様に骨の髄まで可愛がってもらえるよ。そうですよね、桃香様。」
「え?アタシ!?・・・ん〜、焔耶ちゃんがいいなら。」
「だそうよ、どうするの?焔耶。」
「是非、お願いします。この疼き、もうどうすることも出来ないしな。」
「即答かい!ということらしいので、2人で可愛がりましょう。」
「うん、そうだね。頑張るよ!」
「おい、蒲公英。おまえはいいとはいってな・・・・あひゃう!」
さて、まだまだこれからよ・・・。
忘れ去られた人たち
「だー!桃香たちはいつになったら帰ってくるんだぁ!」
「あわわ。白蓮さん、お、落ち着いてください。怒ったところで案件は減りません。」
「う!そうだな。すまない雛里。おまえも辛いだろうに。」
「いえ、気にしないでください。この量を見ると白蓮さんの気持ちもわかりますから。」
各将軍の今日中に済ませなければならない案件たち。兵の調練や見回りなどの肉体労働なんかは副官の人たちでまかなうからどうにかなったもののその分、書類仕事にツケが回ってしまった。将軍級で見なければならない案件が副官の分も合わせて倍増。しかし肉体労働ばかりは人手を減らすわけにはいかずこれが今のところの最善の策だ。これでどうにか凌ぐしか方法はない。でも、やっぱり多すぎるよぉ・・・。後はもう何もないことを祈るしかない。
「はぁ・・・。」
つい、ため息をついてしまう。ため息をつくと不幸を呼び寄せるというが出るものはしょうがない。ため息でもつかないとやってられない。
「はぁ・・・。やるか雛里。」
「はい。・・・はぁ。」
白蓮さんも同じ気持ちなのかなって思うとまたため息をついちゃった。
「公孫賛様!鳳統様!緊急事態です!」
え?ため息ついたから不幸を呼び寄せちゃった・・・。あうー。
「ええい。何事か!」
ただでさえ滞ってる政務に白蓮さんもイラだちが隠せないみたいで声を荒げて問い正してる。本当にどうしたんだろう。やっと平和になったというのに。
「ハッ。町中に突如として『むねむね団』が往来を練り歩き、付近の住民に多大なる迷惑をかけてる様子。数は増える一方で町は大混乱です。見回りの兵だけでは手に負えません。何卒、御指示を!」
「だああああああああああああ。このくそ忙しいときに何考えてやがるんだ。畜生っ!事態は了解した、白馬隊をもって鎮圧にあたるからおまえたちは付近住民の避難を見回りの兵達と行え。わかったな!」
「御意!」
兵隊さんが一礼して、部屋を去っていった。しかし、これはまずい。
「というわけで、すまない雛里。私は鎮圧に向かわねばならなくなった。後は頼む。」
白蓮さんも部屋を出て行った。全将軍の書類を2人で終わらない終わらないっていってたのに増えちゃった・・・・。ぐすん。
「おーっほっほっほ。おーっほっほっほ。」
「むむねなのにゃー。」
「むねむねにゃー。」
「むねむねだにゃー。」
「むねむねれすにゃー。」
居た。あいつらだ!
「白馬隊!例のやつらだ。一斉にとりかかれー。付近住民は全て逃がしてあるから遠慮することはなにもないぞー!」
「「「「おー!」」」」
よし、つぶせる!
「まぁ!白蓮さんのくせに生意気な。皆!やっておしまい!」
「「「「「「「「「むねむねにゃーにゃーにゃーにゃー。」」」」」」」」」」」」」」
うわぁ、何匹いるんだよ。あの虎?達・・・・。
「皆、ひるむな。かかれー!」
「おっ、おおー!」
・
・
・
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・
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・
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・
「ハァハァ・・・。」
やっと、終わった。もう何も出来ない。しかし、このまま休むわけにはいかない。部屋に置いてけぼりにしてしまった雛里のことを考えると一言侘びねば・・・。
やっと、部屋だ。いつもと違って鉛のように扉が重く感じる。
「ひな・・・り。だいじょう・・・・ぶ・・か?」
もう目も満足に開けられないが、それでもよくわかった。あまりにもむごい惨状だった。どういうことかって?もう日を落ちるというのに誰1人として結局は誰も戻ってきてなかったからだ。不幸中の幸いとして仕事だけはこなしてはあるようだ。1人の少女を犠牲にして・・・・・・。
「ひな・・・り。」
真っ白になって動かない戦友に呼びかけてみるが反応はない。そうか、おまえもか。安心しろ、今わたしもそちらへいく・・・からな。
そう、考えるとなんだか体が軽くなっていくな。アハハ・・・。
あとがき
というわけで、久しぶりの新作いかがだったでしょうか?お楽しみいただけました?
察しのいい方ならチームのメンツ見ただけで大体想像ついてたでしょうけど・・・w
蜀フルメンバーといいながら、どうしても活躍できる子とそうでない子が出てきてしまい、自分自身の好みが出てしまったように思えます。
1人称なんかもこれまでと違いめまぐるしく変化してしまい、違和感なんかあったりしないかなんてドキドキしながらの投稿です。
あと、あまりにもひどいおまけとかw
詠ちゃんのファンには石とか投げられそうです・・・。
この作品を読んで、リクエストとか要望やご意見なんてありましたらドシドシ書いてやってください。
そのほうが私にとっても励みになりますのでw
まぁ、リクエストや要望がなかったら、また蜀であまりかかれないようなキャラたちにスポットをあてて書いていくことになりそうですけどw
ではでは、長文に付き合ってくださってありがとうございます。さらば!
説明 | ||
次回予告をしてから恐ろしく時間が過ぎてしまいました。蜀愛の伝道者もけもけです。今回は、とりあえず全員登場させて見せ場つくってやりたいなと思いながらもモチベーションがあがらなかったり、かといって投げ出すのも嫌でちょっとずつちょっとずつ進めていたらこうなった次第です。楽しみにしてた方、本当に申し訳ない。そうでないと思った人もごめんなさい。こんな私ですが懲りずに作品は書いていきたいと思っていますので見捨てないでいてくれたら嬉しいです。 ←これより3本はリトバスコンテスト用短編なので要注意。 |
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コメント | ||
詠!そっちに目覚めたら駄目ーw(深緑) 将のほとんどが政務ほったらかして缶蹴りに夢中って……(東堂) ご指摘ありがとうございます。修正しました。(もけもけ) おもしろかったです。でも「璃々」が瑠々になっちゃってる所が結構あったね。(kingdom) この国・・・・大丈夫か?(sasaru) |
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