真・恋姫†無双‐天遣伝‐(11)
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・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

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曹操軍と両袁家軍が洛陽に到着してから更に3日後の事。

既に幾度か付近の黄巾党退治に乗り出していた、一刀は西涼軍と共に今日も出撃した後、風と稟が仲間になった時の茶屋にやって来ていた。

初めて来た時は閑古鳥が鳴くどころか、死神が吼えている様な雰囲気だったが、今ではそれなりに緩和されているのが救いだろう。

一刀は今ではここの常連になっている。

何故なら、この茶屋はかなりレベルが高いのだ。

何でも、代々―まだ洛陽が帝都と呼ぶに相応しい物であった頃から―洛陽で茶屋を営んでいるらしく、出て来る茶や菓子等もとても美味しい上に、値段も手頃。

繁盛していないのがおかしい店だ。

因みに、一度華琳と華蘭、それから曹操軍の主な武将達がやってきた事もあり、その時華琳は本気で自国に店を移転させようとした。

 

そんな訳で、今日もやってきたという訳である。

但し一人では無い。

 

 

「はい、咲さん。

店長に頼んで胃に優しいお茶、淹れて貰ったから」

 

「あぁ、ありがとう一刀君・・・グスン」

 

「咲さん、気をしっかり持って下さい」

 

 

袁術軍の紀霊将軍、袁紹軍の顔良将軍と一緒なのである。

何故こんな事になったかと言うと。

それは、三日前の炊き出しの時に偶然話をしてみた所、思い切り同情したくなってしまった為であった。

その際に軽く慰めの言葉を掛けたら、懐かれた。

少なくとも、一刀はそう思っていた。

実際には違うのだが。

 

 

「グスッ・・・何でなのよ〜、何で美羽様あんな捻くれ者に育っちゃったのよ〜?

昔はもっと素直で正直で、人の痛みとかもちゃんと分かってあげられるいい子だったのに・・・」

 

 

愚痴り愚図りながら、泣き上戸の様に茶を飲み干している。

それを見て、困り顔で顔を見合わせる一刀と斗詩。

もう何も言えない。

二人とも咲の戦闘力と、美羽への忠誠心の高さは良く知っているし、常々良い方向へと導いて行こうと努力している事も、よ〜く知っている。

 

だがしかし、効果が上がらないのだ。

色々と策を講じてみても、七乃が甘やかしてしまう。

そこを注意してみても、無視されてしまう。

口だけの約束でもいいから結んでみても、あっさり破られてしまうというのもある。

今日も、考え無しに突撃を指示した美羽の所為で多数の犠牲を出してしまったのだ。

・・・無論味方の。

その事についての反省を促したのだが、結果は今の咲の姿を見れば一目瞭然だろう・・・

 

 

「無様ですね、袁術軍にて唯一堅殿に認められた勇将の姿とは思えませんよ」

 

「こらこら、湊。

いきなり毒舌かましてんじゃないわよ」

 

「!?」

 

 

斗詩は茶屋の入口へと慌てて視線を向ける。

一刀は最初っから気付いていた為に、至って平静。

その為、入口に立つ褐色肌の美女に眼を付けられたのだが。

 

 

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真・恋姫†無双

―天遣伝―

第十話「発動」

 

 

今、茶屋内は異常にピリピリとした空気になっていた。

茶を運んできた店主が、危うく気を失って盆を取り落としそうになった程に。

斗詩の気遣いの御蔭で何とか無事だったが。

 

先程までの弱々しさを嘘の様に取り払った咲が、真正面に座る張昭―湊と、孫策―雪蓮の二人を睨み付けながら言う。

 

 

「何故洛陽に、と言うのの理由は分かりますが。

何故、この茶屋に? ここは結構穴場みたいなんですが」

 

「あら? べっつに〜? 私は唯母様と湊が懇意にしてる茶屋だって、聞いただけだもの」

 

 

口笛を吹きながら、素知らぬ顔で告げる雪蓮。

見る者にはムカつきを抱かせる態度だが、一刀は別の意味で身構えていた。

何と言うか・・・肉食獣チックな気配を感じるのだ。

しかも、それらの全ては雪蓮から一刀へ向けて迸っている。

少しでも気を逸らせば、ガブッ、とヤられる。

そんな確信があった。

「や」の字がおかしいとか突っ込んではいけない。

 

 

「まぁ、構わないではありませんか。

私達が何処で茶を飲もうが、貴女方には迷惑をかける訳ではありませんし」

 

「そーそー・・・でもね―――」

 

「何ですか、孫策?」

 

「貴女、何で私達の事嫌いなのよ?

私は貴女の事全然嫌いじゃないんだけど?」

 

「簡単です、貴女達は近い将来美羽様の仇となりますから」

 

「あらら、まだあんな我が侭蜂蜜っ子に忠誠誓ってるんだ」

 

「美羽様は名君の器だっ!!!」

 

 

バァン! と、テーブルに両手を叩き付けながら、勢いよく立ち上がる咲。

当然、茶と茶菓子が宙を舞うが、一刀が瞬間的に保護した為、何とか零れたり地面に落ちたりといった、悲惨な事態は避けられた。

猛獣の様に呻り声を上げつつ、雪蓮を本気で睨む。

だが、雪蓮はまるで応えた様子も無い。

 

 

「名君の器とて、ちゃんと機能するまでに民に見捨てられなければ、唯の暴君ですよ」

 

 

我関せずを貫き、茶を啜っていた湊が、此処で漸く話に加わった。

余りの正論に、咲は思わず言葉に詰まる。

だが、湊は全く容赦しない。

 

 

「そもそも、名族袁家の威光だなんて、この御時世では雀の涙ほどの価値も力もありはしませんよ。

だから、今まで「田舎者」だとか馬鹿にしてきた私達に、自らと同等以上の勢力を創られてしまうんです」

 

「!」

 

「うわ、湊、エグイやり方するわね・・・・・・私にゃ無理だわ」

 

 

俯き、プルプルと身体を震わせる咲。

 

 

「おや、もう反論も出来ませんか?」

 

「そこまでだ!」

 

 

そこで、一刀が横入りする。

そのまま、咲の肩を支える様に身体を滑り込ませる。

直後。

咲の口から真っ赤な鮮血が迸り、全身から力が抜けた。

一刀の肩にズシリとした咲の重みがかかる。

 

 

「・・・成程、私に言われるまでも無く、ですか。

そこの殿方、どうかすみませんが、彼女が起きたら「済まぬ事をした」と張昭が言っていたとお伝え下さい。

後、お詫びとしては不足やもしれませんが、ここの会計は私が責任を持ちましょう」

 

「・・・・・・分かりました、必ず伝えます。

斗詩、咲さんを袁術軍の陣まで運ぶから、咲さんの武器と薬入れ持ってきてくれ」

 

「はい! 任せて下さい、一刀さん」

 

 

一刀は咲を背負い、陣までの道を走り出す。

その後を追う斗詩。

だが一刀の方が、圧倒的に足が速い為、どんどん引き離されていく。

それを更に斗詩が必死に追うという、何とも可愛げのある光景がそこにあった。

 

そんな二人の後ろ姿を面白そうに見ながら、菓子を口に運ぶ雪蓮。

湊は小さな、本っ当に微小な自己嫌悪を抱きながら、自分も菓子に手を伸ばした。

 

 

「ねぇ、湊。

あの男、欲しいわ」

 

「やれやれまた勘ですか、策殿?」

 

「ええ、そうよ♪」

 

 

心底面白そうに笑う雪蓮に、呆れ顔の湊。

この後、陣を敷いてやってきた大蓮と祭が、一刀の事を聞いて頻りに残念そうにしていたのは、また別の話。

 

 

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―――夜

 

 

西涼陣において、蒲公英と一刀の鍛錬。

と言うよりも、一刀による蒲公英の指導が行われていた。

 

 

「はい、握りが甘い」

 

「あぁっ!!」

 

 

また、蒲公英の手の内より影閃が弾き飛ばされた。

かれこれ八度目になる。

見物をしていた碧は、最初の方は普通に立ったまま見ていたが、今では布の上に寝っ転がって欠伸しながら見ている。

それは当然蒲公英の癪に障る訳で。

その所為で、いいところを見せようと躍起になっては、隙を露呈し易くなるという悪循環に陥ってしまっているのが、一刀の悩みの種だ。

 

 

「たんぽぽ、決めに行くのが早過ぎる。

効果が無くたって、積み重ねってのは重要だぞ?」

 

「え〜、でもさ、お兄様達級の猛者と打ち合うんだったら、早目に必殺しなくちゃたんぽぽに勝ち目無いじゃん」

 

 

唇を尖らせてブーたくれる蒲公英。

それに一刀は溜息を吐いて言う。

 

 

「だったら、別に正攻法じゃ無くたっていいだろ」

 

「ほへっ!?」

 

 

仰天して一刀の方を、信じられない物を見る目で見る蒲公英。

一方の一刀は、何時も通りに言葉を繋ぐ。

 

 

「相手が隙を見せてくれないなら騙せばいいし、直情的な相手ならば極簡単な挑発で判断力を乱せるし、わざと負けた振りして罠に嵌めればいい」

 

「ちょ、ちょっとお兄様?」

 

「そもそも、正々堂々ってのは、相手にとっての正々堂々だ。

わざわざこっちが相手に合わせてやる必要なんてないだろう?」

 

「・・・あ、そっか、そういう考えも出来るんだ」

 

 

蒲公英は、漸く合点が行ったように頷く。

しかし、同時に思い付く事もある。

 

 

「お兄様は、そう言う事って出来るの?」

 

「勿論、大体俺が習ったのは武術のみじゃなくて、戦術もだぞ。

・・・思えば爺ちゃん、俺がこういう所へ来る事知っていたのか?

今考えると、あの修行の数々は、今この時の為?

・・・・・・・・・いやいや、流石にそんな事・・・いや、あの爺ちゃんならもしや・・・・・・」

 

「お兄様ー? おーい、聞こえてるー?」

 

 

いきなり考え事を始めてしまった一刀に呼び掛ける蒲公英だが、一刀は一向に思考の海から戻って来ない。

それを機と見たのか、蒲公英はにししと笑いながら影閃を手に取った。

そして。

 

 

「隙あり!」

 

「無いよ」

 

「はぅんっ!?」

 

 

襲い掛かったものの影閃の一撃をあっさりと躱された上に鉢金に裏拳を叩き込まれ、地面に寝っ転がる事になった。

額を押さえ、涙目になってしまう。

一刀は悪い事したかなと少し思うが、それ程でもないかと思い直した。

因みに見学者の碧は、とっくに夢の中であった。

 

 

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―――朝

 

毎朝恒例の戦技訓練・・・は、今朝は休み。

何故ならば、命令文が送られた諸侯が全て洛陽に揃ったからである。

つまり、件の『天の御遣い』がデビューする日だという訳だ。

 

その為、西涼陣には朝から皇甫嵩将軍―円がやって来ていた。

一刀はフランチェスカの制服を着込み、腰に暁を携える。

円は満足気に一度頷き、一刀の前に立って右手を差し出す。

不思議に思った一刀だが、戸惑いながらも円の手を取る。

 

円はニッコリと笑う。

が、直後手を離し、その場に跪いた。

無論一刀はうろたえるが、肩に手を置いた朔夜の真剣な表情に諭され、自身も気を引き締める。

 

北郷一刀はたった今、大将軍何進にも認められた『天の御遣い』その人となった。

故に、何進の腹心たる皇甫嵩が敬意を払うのも道理。

だから、跪く。

自覚を促すための行動とは言えやり過ぎだと、一刀は円に言ってやりたかったが、円には頑として譲る気配は無い。

 

 

「『天の御遣い』、北郷一刀様。

これより、諸侯の元へと案内いたします。

どうか、私の後に」

 

「分かりました」

 

「いけません、目下の者に敬語など・・・!」

 

「・・・分かった」

 

 

その一言で、空気が一変した。

正に言葉に圧がある、と言った所だろう。

円は慄くと同時に、頼もしいと感じた。

 

だがしかし、それを見ていた西涼勢は、円とは真逆の感想を抱いていた。

即ち、危うく、脆いと。

彼女達は知っている。

本来北郷一刀と言う男は、人を斬る等まるで向かない根っからの平和主義者であり、お人好しだという事を。

今の一刀は、皆の期待に応える為に自身を演じている。

そう見抜けた。

 

だから、碧の自己嫌悪はここに至って最大の物となっていた。

あの優しい一刀を此処まで変えてしまったのは自分だと、そう悔やんでも悔やみ切れない程に自分を責めた。

そして決めた。

もう迷わない。

何が何でも一刀が満足して笑って暮らせる世界を創る。

その為ならば、自身が血に濡れる等何だと言うのか!

 

 

「(あたしの罪は、それ程に・・・重い!!)」

 

 

こんな歳にもなって、恋してしまった男の背を見ながら、碧は三度誓った。

 

葵は自分に初恋を教えてくれた男をずっと見ていた。

どんな時も必ず。

初めての出会いは最悪と言っていい物だったが、笑って許してくれた。

今思えば、そこでやられてしまったのだろう。

葵は断言出来る自信があった。

一刀への想いを自覚したのは自分が一番であると。

大好きになってしまったのだ。

自分の人生を全てあげてしまいたくなる位。

一緒にいられるだけでは物足りなくなってしまったのだ。

他の女性が一刀に近付くだけで胸を槍で貫かれた様に苦しくなる位。

だから、護りたい。

心も、体も、北郷一刀の総て「を護りたい(が愛しい)」。

自分の想いが過剰かもしれないとは理解しているが、どうにも止まらない。

だから。

 

 

「(貴方は私が護ります、必ず)」

 

 

朔夜は最初、北郷一刀という男を信用してはいなかった。

『天の御遣い』として立てるにも、どこか頼りない。

そう、思っていた。

だが、その考えはあっさりと駆逐されてしまった。

街の区画整備、警邏組織の提唱、鐙の発明、etc…etc…

一刀の御蔭で西涼はこれまでにない程の発展を遂げ、反乱も全く起きない地へと変わった。

何時の間にか碧達は愚か、自分さえも依存しかかっている事実に、朔夜は少し恐怖を抱いていたが、今ではそうでもない。

いや、それどころか、何処か心地好さを感じてしまってさえいる。

そして、その心地好さを愛だと理解するのに、然程時間はかからなかった。

故に。

 

 

「(私にも、お前を此処まで連れて来てしまった責がある。

だから、私は全霊でお前の力になってみせよう)」

 

 

そう思う事は当然と言えた。

 

蒲公英が一刀に懐いた理由は、実は打算的な物だった。

上手い事利用して自分を育てさせ、何時も自分を侮っている従姉妹親子を見返してやろうと思っていた。

それがそうでなくなったのは、何時のことだったか。

少なくとも一刀の初陣前であった事は、覚えている。

だが、肝心な理由が思い出せない。

まあそれでも、蒲公英には別によかった。

唯、大好きな「お兄様」と一緒にいられる。

それだけでいいのだ、彼女にしてみれば。

確かに、一刀の一番になりたいと言う欲求はある。

それでも、見返してやりたいと思っているとしても、やっぱり家族が一刀以上に大好きなのだ、蒲公英は。

だから。

 

 

「(お兄様が私達の本当の家族になるまで、たんぽぽが護ってあげるからね!)」

 

 

彼我の戦力差を考えてみても、そういう結論に辿り着いた。

 

 

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―――洛陽城門前

 

数多くの諸侯、合わせて五十万にも届こうかと言う大軍勢が、門前に集まっていた。

その兵達は、大将軍の命で集まったにも拘らず、雑談だの何だのを繰り返している。

最も、曹操軍や孫堅軍、董卓軍に西涼軍の様なモラルある軍は、しっかりと整列しているのだが。

 

美里は大軍勢を見下ろしながら、心中で溜息を吐いた。

何故かと言えば、これまで自分が率いてきた官軍の内にも、そういったモラルの無い奴がいる事に嘆息せざるを得なかったのだ。

流石に、美里や円直属の兵達はかなりしっかりしているが、元々兵役など嫌がっていた人々を半ば以上強制的に、兵役を課した側としては強くは言えない。

それが、美里の悩みの種であった。

しかも官軍内で厳しく育成しても、優秀な兵に成るや否や宦官によって中央に召し上げられ、禁軍入りさせられるという悪循環。

美里達は、宦官の身を護る為に兵を鍛えている訳ではない。

だからこそ、歯痒いのだ。

宦官によって政権の中枢を喰い荒らされている現状では、全てが宦官の私腹を満たす為の物に摩り替ってしまう。

それを打破する為、今回のこの策だ。

 

美里は振り返る。

そこには宦官が一人。

先程から、あくどいニヤニヤ笑いを浮かべて美里を見ていた。

この宦官、張譲の小間使いとして美里を監視しに来たのである。

美里の武器、鉄扇『芭蕉』を握る手に力が籠る。

次の瞬間、畳まれていた芭蕉が開く。

そしてそのまま宦官の頸を薙いだ。

芭蕉が振り抜かれたその場所には、首無死体が一体立っているのみ。

だが、切断面より鮮血を噴き出してすぐに倒れた。

美里が視線を移せば、振るわれた開いた芭蕉の上に未だ首が切られた事にすら気付かずにニヤけている宦官の頸があった。

心底スッキリした表情となった美里は信の置ける部下を呼び、宦官の死体を片付けさせた。

 

 

 

それから20分程後。

 

円が、一刀を伴って現れた。

美里は一刀の姿を認め、すぐさま一刀の下に跪く。

臣下の礼である。

円もそれに倣い、再び礼の形を取る。

そしてそれと同じく、周りに立つ美里直属の兵達も、多少困惑を覚えながらも将軍二人に倣った。

居住まいを正した美里は城壁の縁まで歩いて行き、城門前に集結済みの軍勢を見渡しながら大声で言い放った。

 

 

「聞けい!!」

 

 

と。

それだけで、軍勢の内にあった騒がしさが抑えられ、皆が美里を見上げる。

美里は反応を待たず、次の言葉を述べる。

 

 

「ここ最近、天下を騒がす大逆賊共は言う、『蒼天既に死す、黄天正に立つべし』と!

そして彼奴等も、己こそが正義と嘯いている・・・不遜にも!!

だが、そんな事は断じてありえぬ! 彼奴等は無辜の民を脅かし、殺し、奪い去り、暴虐の限りを尽くしている、そんな愚者共に天の加護等非ず!!」

 

 

何故そんな事を言うのかと、あちこちから疑問が小声で飛び交い始めた。

 

 

「諸君らも知っているであろう! 『天の御遣い』の噂を!!」

 

 

ざわめきがどよめきに変わる。

まさか、という感情が行き場を無くして高まっていく。

 

 

「そう、彼こそ・・・」

 

 

円に押され、一刀も城壁の縁に立つ。

眼下を埋め尽くす大軍勢に多少気圧されるが、何とか抑えて胸を張る一刀。

その日光を反射して輝く聖フランチェスカ学園の制服に、思わず見惚れてしまう者が数多いる中、行き場を無くしていた感情は。

 

 

「『天の御遣い』、北郷一刀様その人である!!!」

 

 

その一言で。

 

 

『オ、オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!』

 

 

歓声と言う形で大爆発した。

 

 

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―――西涼軍

 

 

「遂に始まったわね、碧」

 

「・・・・・・ああ、なあ朔夜」

 

「何かしら?」

 

「あたし、この乱が終わったら一刀に謝んなくちゃ。

あたしの所為で、あいつはこんな事をやらなくちゃいけなくなったんだ」

 

「・・・そうね、でもその責は私にもある。

だから、生き残らなきゃ」

 

「ああ」

 

 

「一刀・・・」

 

「葵姉様、大丈夫だよ、きっと」

 

「そうならいい、けれど・・・・・・私はあの人の力に必ずなってみせる」

 

「違うよ葵姉様。

【私】が、じゃなくて、【私達】が、でしょ?」

 

「そうね、その通りね」

 

 

「やれやれ、風の夢と言うのも存外外れてはいなかった、と。

今の一刀殿の御姿は、正に日輪を背負っていらっしゃると言っても過言ではありませんし」

 

「むー、失礼ですね稟ちゃん。

風は今までおふざけで夢を語った事なんて無いのですよー?」

 

「・・・・・・あら? そう言えばその通りかも・・・」

 

 

 

―――曹操軍

 

 

「・・・馬騰の奴、やってくれるじゃない」

 

「? なあ秋蘭、『天の御遣い』って何だっけ?」

 

「姉者、陳留でも噂になっていただろう?

この乱世を鎮める為に、天から遣って来ると言う者さ」

 

「ふん、あんたの脳味噌はそんな簡単な事も覚えられないのね」

 

「なんだとー!!」

 

「何よ!?」

 

「騒がしいぞ貴様等、少し静かにしろ。

・・・・・・一刀の姿が見辛い」

 

「「ごめんなさい」」

 

「なぁ、秋蘭。

何で華蘭はあんなに怒ってるんだ?」

 

「ふむ、華蘭は最近一刀という男に惚れたらしいからな。

あそこにいる『天の御遣い』がその男なんだろう」

 

「はぁ!? 華琳様の閨への御誘いを断り続けておいて、あんな胡散臭い男なんかに靡いたっていうの!?

ぐぎぎ・・・・・・・・・華琳様の守護でさえなければ、追い出してやるのに」

 

「奇遇だな桂花、今私も同じ事を思った」

 

「脳筋馬鹿と同じ考えに至るなんて、屈辱ね」

 

「なんだとー!!」

 

「何よ!?」

 

「だ・か・ら、黙れと、言っているだろう?」 ”ビキビキ” "ジャキン”

 

「「ごめんなさい!!」」

 

「・・・・・・・・・・・・そう言えば華琳様は」

 

「あーはっはっはっはっはっは!!

成程そう言う事ね、天というのも中々に興を心得ていると見える!

・・・待っていなさい、北郷一刀。

必ず貴方を、天を私の足下に跪かせてみせるわ。

そしてその時こそ、我が悲願が成就する時。

私は、私達は、決して貴方を逃がしはしない」

 

「華琳様・・・楽しそうで何よりですよ」

 

 

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―――董卓軍

 

 

「これから、やな。

ウチ等も、大陸も」

 

「・・・”コクッ”」

 

「大丈夫ですぞ霞殿! 恋殿がいる限り、我等に負け等ありえませぬぞー!」

 

「ねね、あんたね・・・本当に軍師の自覚あるの?

どんなに恋一人が強くたって、持久戦に持ち込まれて糧食が尽きでもしたら、負けも同じよ」

 

「うっ・・・」

 

「・・・ご飯食べられないの・・・大変」

 

「恋殿はこれで御座いますからの、糧食が尽きれば自然動けませぬさ」

 

「真理さん、その、言っては悪いんでしょうけど、その喋り方似合っていませんよ?」

 

「ゆ、月様、しかし手前はこうでもせぬ限り、何時しか消え行く定めにある気がヒシヒシと感じられるのであります」

 

「何にしても、私に比べれば遙かに幸運であろう?」

 

「華雄さん・・・」

 

「ああ、良いのですよ董卓様。

確かにかつては、呂布や張遼を妬みもしました、自身が最強である等と嘯いてまで。

だが、私には私にしか成し得ぬ強さがあると、北郷に教えられました。

それを極めれば、私は今までの驕りを返上して余りある、とも」

 

「確かにな〜、前やったら10度に2度位しか負けへんかったのに。

今やったら引っ繰り返って、10度に3度勝てればええ方やしな〜」

 

「"コクッ”・・・華雄・・・・・凄く強くなった」

 

「どうしよう、もしかしなくても私いらない子になりかけているのでは・・・?」

 

 

 

―――孫堅軍

 

 

「成程な、雪蓮」

 

「なぁに?」

 

「お前の勘、やはり宛てになる様だな」

 

「あら、今更気付いたの?」

 

「かっかっか! 堅殿、これは策殿の言っておる方が正しいわ!

その策殿の勘の御蔭で、荊州では黄祖の罠を躱せたのだろう」

 

「全くですね、あの日の事は今でも我々の夢見を脅かしますよ。

もっと反省して下さい、そして前線に出るのを控えて下さい」

 

「だが断る!!」

 

「・・・瑠香に相談しましょうか」

 

「そうしておくべきじゃな、紘殿の方が堅殿には効果があるじゃろう」

 

「え゛っ!?」

 

「母様、御愁傷様♪」

 

「何故そこで嬉しそうに言う!?」

 

「ほら、良く言うじゃない、『他人の不幸は蜂蜜の味』って♪」

 

「ぐぐぐ、娘なのに母を助けようと言う気は無いのか!」

 

「無い!」

 

「断言しおって・・・ええい!

説教でも何でも受ければいいんだろ!

さあ来い! 耐え切って魅せるわ!」

 

「今ここには瑠香がいないのですがねぇ」

 

「堅殿、そこまで紘殿が苦手じゃったのか・・・・・・」

 

 

モラルある軍の感想であった。

 

 

 

 

第十話:了

 

 

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後書きの様なもの

 

ああ超展開だよ、悪いかよ!!

 

と、イミフな逆切れをぶちかましまして。

 

レス返し

 

 

mighty様:家の子はやれん! ・・・冗談です、キャラ的な意味でなら、どうぞ。

 

2828様:無理ですねー、一途ですから。

 

赤字様:一刀君はまだ発展途上です、まだまだ強くなります。 因みに今んとこの格付けは、恋>仁王立ち時の鈴々、現時点の華雄>一刀>霞、葵、翠、って感じになります。 恋姫本編では、結構恋以下が拮抗しているように描かれますし、こんな感じに。

 

うたまる様:ああ、でもやっぱり・・・家の子瑜先生はそれと比べてもぶっ飛んでるかと。 後、戦闘描写の事、上手いって言ってくれてありがとうございます!

 

はりまえ様:駄名族、と言ったら「ああ袁家か」と真っ先に出て来ます、少なくとも自分は。

 

瓜月様:美羽は可愛い! 萌将伝でも結構優遇されてるみたいですしね。 一刀を主様と呼ぶか・・・ありだな!!

 

poyy様:デスヨネーwww

 

砂のお城様:性格印象は、確かに三国無双です。が、外見は別の所、ぶっちゃけるとメルブラからです。

 

睦月ひとし様:華琳は意外と、勘を信じる傾向にあると思ってたり。 咲はこれからも苦労します。が、何時か、きっと、必ず、救いの手を・・・差し伸べられると思います、多分・・・

 

 

では、これにて今回は終了です。

感想をくれる人が増えて嬉しい限り。

まだ伸びてくれるかな―、とか無責任な期待をしながら、また次回に会いましょう!

 

 

説明
これからは週刊ペースになるのでしょうか?
個人の都合で更新していくので、定まりはしないでしょうが、どうかこれからもお願いします。
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コメント
良いなあ。(readman )
各軍とも色々な意味で楽しそうな現状ですな・・・一部胃がやられそうな方がいらっしゃいますが・・・一刀が遂にお披露目されましたな、今後どう推移するか楽しみです。(深緑)
確かに、桃園姉妹がこの時点で出ていないことで大きく差を付けられましたが、これから後に登場してどこまで巻き返せるか。そして、一刀を天の御使いにした馬謄たちの運命はいかに!?次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし)
華雄が覚醒した?!w10戦2勝が10戦7勝ってどんだけw(2828)
咲さんがかわいそうでしょうがない。(poyy)
さてさて、どう動くのかなぁ♪(うたまる)
人増えてきましたね〜。苦労してる娘たちを一刀と絡ませてやってくださいw(FALANDIA)
おや?“自分”の嫁の華蘭があんまり出番ないぞ!?次回の彼女の活躍期待してます♪(mighty)
今回も面白かったです、続き楽しみにしてます・・・所で円さんと美里さんは死にませんよね、お願い死なないと言って、普通どおりだと早々に退場してしまうから気がかりです。とても(赤字)
足りなかった言葉が、咲さんもうストレスで穴だらけじゃないのか?しかも何か体調が悪く討ち死になんて聞けそうで高ワインですけど・・・・kadaさんの治療もう一回しなければならないのでは(黄昏☆ハリマエ)
待ってました。次回討伐編かな(黄昏☆ハリマエ)
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