八陣・暗無 |
八陣・暗無
プロローグ『2046年の状況』
西暦2046年、世の中の流れが大きく変わった。
とはいっても、第三次世界大戦なんて物騒なものも起きなければ、車が空を飛ぶ時代も未だにやってこない。ガソリンを使わないソーラーカーが主流になるものの、そんな技術は誰もが予測していた。
なら、一体何が変わったのか?
それは、新しい職業が世界各国で生まれつつある。
いや、それはもう90年代から存在しているのかもしれない。
そう。
その職業、それは―――殺し屋。
2046年、殺し屋の人口は世界各国でどんどん増加しつつあった。当然、個人ではなく、あくまで企業の一つ。人を殺して利益を生む会社が増えているのである。
とはいえ、法律を破るのはもちろん、国家自体が許可を出したわけではない。
そうなると力のない会社は国にどんどん潰されていくが、証拠を残さないよう上手くやれば国相手とはいえ大した問題ではないのも確かではある。
だが、ここで勘違いしないでほしいのは、国は全ての殺し屋を嫌っているわけではない。当然、表向きに公認などするわけもなく、与党、野党といった政治家は元より一般市民はその存在さえも知らされてはいない。
国という膨大な組織は、色々大変である。少子化、高齢化、税金、核。昔から何一つとして解決されない様々な問題に予算を当て、試行錯誤しながら運営する。
現在、核の問題は2010年に比べれば随分とマシにはなったが、そこに新たに殺し屋の問題がでたら、国としては非常に困る。
警察の信憑性が失われ、国の偉大さが軽減。法律という巨大な壁を乗り越える企業を認めてしまえば、世界のバランスは大きく傾くのである。
そこで国は大きな殺し屋の組織とは手を組み、逆に今から出てくる小さな組織は巨大な組織と国が一緒になって潰していくという手を提案し、それを実地した。
そして、それから4年。
今現在日本国で容認されている暗殺組織は3つある。
一つは近年、国に潰されずにどんどん大きくなった世界ランク9の『ニアリング』。数では間違いなく世界トップで、兵器類、財政力にかけては一級品を誇る。
二つ目は90年代からすでに成り立っている『日本平和貿易連合』。元世界最高、現在は世界ランク6位に位置づけられている。この会社では表向きに貿易の仕事をこなし、裏では人を殺して多額の金を得るという寸法を使い、90年代から生き残ってきたのである。過去は莫大な軍事力、殺人者のレベルと他を寄せ付けない圧倒的な会社だが、現在、どんどんランクと共に社員、資金と大幅に減少している。その理由は内部崩壊らしいが、何しろこの業界では謎が多い。やはり細かな詳細は闇の中へと包まれている。
そして―――
この話の舞台となる、ハイツ・プロトコル。
通称―――『ハプネス』
本来、兵器・射撃・暗殺の三つを重点を置く暗殺会社とは異なる点を見せる。
ハプネスではスナイパーライフルを用いる射殺、ナイフを主流とする暗殺。その他にもスパイを目的とした変装から完全にIT社会と化したこの時代に必須のクラッカーまで、様々な分野で活動を広げている。
そして、各分野のエキスパート達が、それぞれ見事に活躍。そうなるともう手が付けられない。駒を多彩に扱えるハプネスは、他社を寄せ付けずに様々な角度から破壊していく。
それは必然。何故なら、ハプネスでは孤児の人間を主流として育成していくのである。つまり、あいうえおを覚えると同時に人の殺し方を伝授するという善悪をひっくり返す方法を行う。
どんなに時代が流れようと、どんな発明が開発されようど、自然の法律だけは揺るぐことはない。
――――弱肉強食。
敗者は、敗者のまま生涯を終えるか、又は生き抜くことはできない。
ハプネスには、大きく分けて6つのランクがある。
ランクの後に数字が付いており、4〜6ならば給料も一流企業に少し上乗せした辺りで、個々人の能力もそんじょそこらのエリートとなんら変わりはない。
まず、最上位の社長。ハプネスを建設し、一代で巨万の富を築き上げた天才である。
次に、ランク1『上部』と呼ばれる社長の右腕。巨大なハプネスでは、会社のポリシーはあれど全てをまとめて指示はできない。いわば社長の代理である。ただ、代理とはいえ決して私情は挟まず、まるで機械のように社長の指示に従う操り人形であり、そうでなければならない。己の私欲を抱いたら即死刑。だが、この位置まで来れば、私欲など考えず思想のみで動く人間ばかりである。
そして、ランク2の八陣。
先程紹介した各分野のNO1のみがこの座を手にすることができる実力者である。つまり、この八陣全員がハプネスを裏切れば、すぐに崩壊するということである。
八陣・暗殺部最強、もとい世界暗殺部最強、風間神海。
産まれたときからハプネスに属する風間はエリート中のエリートで、加え、その才能は底が知れない。現在15歳で八陣に入る最年少の風間。
まるで存在していないかのように姿を消し、暗黒の世界に生きる。音も無く確実に獲物の命を奪う風間は、世界中の裏の人間にこう呼ばれ、忌み嫌われていた。
八陣・『暗無』と――――
そんな風間に、新しい任務が入った。
『元日本平和貿易連合・軽部の抹殺』
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昔書いた作品をアップしてみました。 | ||
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