真・恋姫?無双 悠久の追憶・第四話 〜〜英雄三人〜〜
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第四話 〜〜英雄三人〜〜

 

 

――――――――公孫賛の号令により、城の正面に構えた二千の兵は走り出した。

 

 「待ちくたびれたぞ。 兵士たちよ、私に続け!共に賊どもを討ち果たすのだ!」

 

 「オォーーーーー!!」

 

先頭をかける趙雲の声に、後に続く兵士たちが雄たけびを上げる。

 

そしてそれに応えるかのように、黄巾党のいる城からも声が上がり始めた。

 

 「敵襲だーーー!」

 

 「相手は少数だ。 返り討ちにしてやれ!」

 

一万もの敵が巨大な人の波となって突っ込んでくる。

 

だが対する二千の兵も臆することなく、黄色い大群に向かって突進する。

 

そしてついに、二千と一万が城の前でぶつかった。

 

 「聞けぃ!黄巾党の賊どもよ、わが名は趙子龍!この槍を恐れぬ者あらばかかって来い!」

 

乗っていた馬から飛び降り、趙雲は一万の敵に向かって叫ぶ。

 

その声にこたえるかのように数人の賊が一斉に斬りかかってきた。

 

 「でやぁぁ“ー−−!」

 

 「甘いっ!」

 

“ザシュッ!”

 

 「がぁ“っ!」

 

賊の剣が振り下ろされるより早く、趙雲は槍で斬りはらった。

 

血しぶきが舞い、斬りかかってきた賊たちはまとめて地に倒れこむ。

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 「!・・・・」

 

その光景に、周りを囲んでいる賊たちはひるんで後ずさる。

 

 「どうした?来ないのならこちらから行くぞ!はぁっ!」

 

“ズバッ!”

 

 「ぎゃぁっ!」

 

 「ふっ!」

 

“ザシュッ!”

 

 「ぐぁ“っ!?」

 

趙雲は次々と賊を切り捨てていく。

 

その顔はどこか笑みを浮かべているようで、まるで戦場を駆けることを楽しんでいるようだった。

 

そして味方の兵たちも、趙雲の武勇を前にして一万もの敵を相手に善戦していた。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 「・・・・・・っ」

 

 「ご主人様・・・大丈夫?」

 

 「うん・・・なんとかね。」

 

明らかに顔が青ざめている一刀に桃香は心配そうに問いかける。

 

本当はもう何度吐きそうになるのをこらえたか分からない。

 

見つめる視線の先ではところどころで血しぶきがあがり、数えきれないほどの悲鳴が聞こえる。

 

それは、つい先日までいた日常とはあまりにもかけ離れている光景で、今にも頭がおかしくなりそうだった。

 

この光景がもしも夢や幻だったならば、どれほど心が救われることだろう。

 

できることなら、戦場を見つめている目を閉じてしまいたい。

 

できることなら、今すぐ後ろをむいて全力で走り去ってしまいたい。

 

しかし心に決めた覚悟が、一刀をこの場にとどまらせていた。

 

 「・・・目を背けちゃ駄目なんだ・・・これからの戦いのためにも。」

 

 「ご主人様・・・・」

 

 

―――――――――――――――

 

 「はぁっ!」

 

“ズバッ!”

 

 「ぐぇ“っ!」

 

気がつくと、趙雲の周りは赤く染まっていた。

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彼女が槍を振るたびに、血しぶきと悲鳴が上がり、周りにはいくつもの死体が積み重なっていた。

 

しかし、ここまで数百人の賊を斬ってきた趙雲の顔にも、少しずつ疲労の色が浮かんでいた。

 

 「・・・はぁ、はぁ、さすがにきりがないな。 こちらの兵もかなりやられている・・・合図はまだか。」

 

最初こそは勢いに乗っていた兵たちだったが、さすがに自分たちの五倍もの数の差に圧倒され、戦いが始まってからそう経たないうちに押され始めていた。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 「・・・そろそろいいかな?朱里ちゃん。」

 

 「うん、そうだね。 では、合図を出して下さい!」

 

 「はっ!」

 

朱里の指示で、待機していた兵士が銅鑼を叩く。

 

“ジャーーン!ジャーーン!”

 

 

 

―――――――――――――――――

戦場に銅鑼の音が響き渡った。

 

 「合図か!? よし、全員撤退だっ!」

 

趙雲の号令で、兵たちは一斉に後退し始めた。

 

そしてそれを敗走だと思い込んだ黄巾党は、作戦通りその後を追ってきている。

 

 「よし、それでいい。」

 

 

 

―――――――――――――

 「上手くいったみたいだな。」

 

 「・・・・はい。 趙雲さんの隊が頑張ってくれましたから。」

 

 「だいぶ城から引き離しましたね。 では、もう一度合図を出して下さい。」

 

 「はっ!」

 

“ジャーーン!ジャーーン!”

 

 

――――――――――――――

 「!二度目の合図だ。皆のもの、ゆくぞ!」

 

 「オォーーー!!」

 

 

――――――――――――――

 「やっと鈴々たちの出番なのだ!皆、鈴々に続くのだー!」

 

 「オォーーー!!」

 

――――――――――――――二度目の銅鑼の音が鳴りやまないうちに、岩壁に隠れていた愛紗の隊と鈴々の隊がほぼ同時に飛び出してきた。 

 

千人と千人の塊が、荒野に広がって行く。 

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二隊は即座に黄巾党の後ろに展開し、完全に城への退路を塞いだ。

 

 「ゆくぞ鈴々!一気に賊どもを突き崩す!」

 

 「合点なのだ!」

 

合流した二隊は黄巾党の背後から一気に突撃した。  

 

ろくに訓練も受けていない黄巾党の賊たちは、いきなり現れた後方の的に対応できず、浮足立っている。

 

 「よし、今が好機だ!我らも行くぞ!」

 

後方の様子を確認し、後退していた趙雲の隊もすぐに反転して混乱する黄巾党の正面に突撃した。

 

完全に挟み撃ちにされた賊たちは、混乱と焦りでもはやまともに動けていない。

 

そんな敵の様子などおかまいなしに、愛紗たちは的中を駆けぬけた。

 

 「はあぁーーー!」

 

“ズバッ!”

 

 「ぐぁ“っ!?」

 

 「でやぁぁーーー!」

 

“ザシュッ!”

 

 「ぎゃあっ!」

 

 「どうした賊ども!こんなものか!」

 

 「ずっと我慢してたからその分暴れてやるのだっ!」

 

彼女たちが槍を振るう数より何倍も多く、敵がどんどん倒れていく。

 

 「関羽殿、張飛殿!」

 

 「おお、趙雲殿!」

 

まるで邪魔な草をかき分けるように敵をなぎ倒しながら、槍を振るう二人の前に現れたのは趙雲だった。

 

 「趙雲殿、良くやってくれた。」

 

 「なに、二人の手並も見事なものだったぞ。」

 

 「とーぜんなのだ!」

 

 「フフ・・・おっと、こんなところで話をしている場合ではなかったか。」

 

気がつけば、三人は賊たちに囲まれていた。 

 

だが、そんな状況でも三人の表情は変わることはない。

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お互いに背中を預け合い、周りを囲む賊たちとにらみ合って槍を構える。

 

 「やはり私の目に狂いはなかった。 お主たちに背中を預ると真に心強い。 二人になら私の真名を預けられる。 私の真名は星だ、よろしく頼む。」

 

 「私の方こそ、お主のような強者とともに戦えて幸運に思う。 私の真名は愛紗だ、星よ、こちらこそよろしく頼むぞ。」

 

 「鈴々の真名は鈴々なのだ!」

 

お互いに真名を名乗った後、顔を見合わせて同時に頷いた。

 

 「よし、では一気に決めるぞ。 愛紗、鈴々!」

 

 「応!」

 

 「応なのだ!」

 

三人は一斉に三方向に駆けだした。

 

 「はぁーーー!」

 

的中を駆ける少女たちの姿は、まさに歴史に名を残す三人の英雄そのものだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――挟撃によって乱れた黄巾党は、もはや一万という数も意味を成さなくなり、三隊が合流してから決着がつくまでそう時間はかからなかった。

 

 「・・・なんとか終わったな。」

 

 「うん。」

 

勝利に胸をなでおろす一刀たちのもとに、戦いを終えた愛紗たちが戻ってきた。

 

 「ご主人様、ただ今戻りました。」

 

 「ただいまなのだ!」

 

 「ああ、二人ともご苦労さま。 怪我はない?」

 

 「はい。 ご心配をおかけしました。」

 

 「そっか、良かった。 趙雲さんもお疲れ様。」

 

愛紗たちの隣に立っていた趙雲にも声をかけた。

 

彼女の白い服は半分以上が返り血で赤く染まっており、それが一刀の表情を少しだけ曇らせた。

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 「いえ、大したことではございませぬ・・・と言いたいところですが、さすがに今回は少々骨が折れましたな。 そう言う御遣い殿こそ、怪我がないようで何よりです。」

 

 「あぁ、皆が頑張ってくれたおかげでね。」

 

 「さてと、なにはともあれ我が軍の勝利だ、城に戻るとしよう。 桃香たちも、今日はウチで休んで、明日帰るといい。」

 

 「うん♪それじゃあ行こうか、ご主人様。」

 

 「ああ。」

 

 

――――――――――――――――――――――

 

その日の夜は公孫賛の城で勝利を祝う宴が開かれ、一刀たちも参加した。

 

趙雲に無理やり酒を飲まされて、酔った桃香がいきなり暴れ出すという事件もあったが、それはそれで楽しい時間だった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――そして夜が明け、公孫さんに別れを告げた一刀たちは自分たちの町へと向かっていた。

 

 「うぅ“〜〜〜、頭痛い・・・・ちょっと二日酔いかも・・・・。」

 

馬に乗りながら、桃香頭を押さえて唸っている。

 

 「あはは、桃香は飲みすぎだよ。」

 

 「えぇ〜〜、私そんなに飲んでないよ〜!」

 

桃香はハムスターのように“ぷぅ”と頬をふくらまして反論する。

 

だがやはり顔は青いままだった。

 

 「いいえ、桃香様はもう少し控えるべきです。」

 

 「うぅ“、愛紗ちゃんまで・・・」

 

二人から責められて桃香がガックリと肩を落としてうなだれていると、隊の後方にいた兵士から報告が入り、朱里が慌てて伝えに来た。

 

 「ご主人様、どうやら私たちの後ろから、馬が一騎追ってきているようです。」

 

 「一騎で!?」

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急いで隊の後ろへ回り遠くを見ると、確かに馬が1頭、人を載せてこちらに走ってきているのが見えた。

 

 「あれって・・・趙雲じゃないか!?」

 

徐々にはっきりしてきたその人影は、ついさっき城で別れたばかりの趙雲だった。 

 

趙雲は一刀たちのそばまで駆け寄ると、馬を下りた。

 

 「やぁ、御遣い殿。」

 

 「趙雲さん、一体どうしたんだ?まさか何か問題でも・・・」

 

 「いえ、ただ個人的に、御遣い殿に一つ頼みがありましてな。」

 

 「・・・俺に頼み?」

 

 「はい。 この趙子龍、天の御遣い北郷一刀殿の将として、隊に加えていただきたく参りました。」

 

 「えぇ!?俺の将って・・・」

 

趙雲のまさかの申し出に、一刀は声を上げる。

 

 「私はこれまで、旅をしながら自らの主となるにふさわしい人物をずっと探しておりました。 そして今回の戦でのあなたを見て、私が命をかけて槍を振るうにふさわしいお方だと思ったのです。」

 

 「いや・・・そりゃあ、君みたいな子が仲間になってくれたら心強いけど、伯珪さんはいいの?」

 

いくら本人の申し出であっても、今趙雲は公孫賛の客将だ。

 

断りもなしに連れていくわけにはいかない。

 

 「伯珪殿にはちゃんと断ってまいりました。 先日も申した通り、私があの方のもとにいたのは旅の路銀が尽きた故客将として仕えていただけです。 あの方は確かに良い人間ではあるがそれだけです。 天下をとれる器ではない。 それとも御遣い殿は、私などでは不満ですかな?」

 

 「・・・いいや、そういうことなら歓迎するよ。 趙雲さん。」

 

 「フフ、結構。 では改めて、我が名は趙子龍。 真名は星と申します。 これからともにこの乱世を治めましょう、我が主よ。」

 

 「ああ。 よろしくな、星。」

 

――――――――――――――――――――――――――――

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〜〜一応あとがき〜〜

 

これで最初の戦いは終了です。

 

戦闘シーンっていうのは本当に難しいですね (汗

 

次回はちょっとした拠点話みたいなのを書きたいと思っています。

 

またよろしくお願いしますww

説明
連続投稿二つ目ですww

飽きずに読んでいただけると嬉しいです。
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コメント
超雲がまさかの早期参戦。これは楽しくなってきそうです。(マフェリア)
タグ
真・恋姫?無双 一刀 愛紗 桃香  

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