〜魏志恋姫伝〜8 |
第八話 王佐の才
ようやく朝廷が重い腰をあげた。
先の戦いで官軍が大敗したせいで、朝廷の衰退が公になった。
これを見た黄巾党は今まで以上の勢力を持つようになった。
朝廷は各諸侯に檄文を飛ばしたのだ。
これを受けた華琳は
「ようやく黄巾党の討伐の命を下すなんて、宦官も無能ね。」
届いた文を見ながら、不機嫌オーラをまき散らしていた。
「皇帝が十常侍の言葉を鵜呑みにしてるからだろ?国が平和だって信じ込んでる。」
「そのせいで、黄巾党の勢力が上がってるのよ?被害に合うのは民達なのよ?」
「そうだな。皇帝が今の現状を把握していれば、少しはましだったかもな。
まぁ、十常侍にとって霊帝は“隷帝”でしかなかったってことだろ?」
華琳はため息をついて戦の準備を再開した。
「一刀。」
「どうした?」
「兵糧の最終点検をしたいから、帳簿を貰って来てくれる?」
「なんで俺が?他のや「そう。行ってくれるのね?ありがと。」はぁ。」
俺はため息を付きながら兵糧庫に向かった。
―俺、監督官の顔知らねぇ・・・。まあなんとかなるだろう。
俺は兵糧庫の前に居た猫耳?フードをかぶった女の子を見つけ声をかけた。
「仕事中にすまないが、監督官知らないか?」
「・・・・」
彼女は黙々と仕事を続ける。
「ちょっといいか?っておい。」
「・・・・」
彼女は兵糧庫に足を向けた。
「おい、返事くらい返せよ。」
「うるさいわね。何度何度も・・・一体何の要件?」
「監督官に会いたいんだが、知ってるか?」
「私が監督官よ。」
「まじかよ。恨むぞ、華琳。」
俺のぼやきに彼女が反応する。
「何であんたが曹操様の真名を呼んでるの?ああ、汚らわしい。」
「汚らわしいって、真名は許してもらってるが?」
「あんたが曹操様と一緒に居る、寄生虫ね?」
「御使いね。それより兵糧の帳簿は?華琳から持って来いって言われてるんだけど?」
「曹操様からなんでそれを先に言わないの?」
「はぁ。」
俺は帳簿を受け取り中を確認した。
「くすっ・・・なるほどね。君は軍師希望かい?」
「!・・・そうよ。」
「君の名前は?」
「荀ケよ。」
「!」
彼女があの荀ケであると言う事に、俺は驚いた。
―彼女が居れば魏の地盤はより強固なものとなる。
俺は彼女の首根っこを掴み、すぐさま華琳の天幕に戻った。
「華琳。兵糧庫の前で少々大きいが猫を拾った。」
俺はそう言うと、華琳のまえに荀ケをストンと降ろした。
「ねぇ、一刀。」
「どうした?」
「私は帳簿を持ってきてって言ったはずよ。」
「ああ。ついでに使えそうな軍師も持ってきた。」
華琳はため息をつきながらも帳簿に目を通す。次第にその顔が険しいものに変わる。
「これは、どう言う事かしら、指定した半分しか無いけど?」
「はい。必要十分な量は用意したつもりです。・・・なにか問題でも?」
「戦の最中に食糧不足になったらどうするつもり?」
華琳は次第に声を荒げていく。その声に慌てて夏候姉妹が入ってくる。
「どうかなさいました?」
「秋蘭、これを見てどう思う?」
「この量では明らかに不足するでしょう。」
「貴様、華琳様を飢えさせるつもりか?」
「春蘭、落ち着いて。荀ケ、理由の説明をしてくれるね?」
「納得のいく理由なら許してあげるわ。」
一つ目は輸送部隊の進行速度をあげることにより、討伐にかかる時間を短縮する事。
二つ目は自分の提案する作戦を採るということであった。
「貴方の真名は?」
「桂花にございます。」
「この私を試したわね?」
「はい。」
「なっ・・・。よくもいけしゃあしゃあと・・。」
春蘭が大剣を突き付ける。
「まて、春蘭。決めるのは華琳だ。」
「桂花、今までに軍師の経験は?」
「はっ。ここに来るまでは、南皮で軍師をしておりました。」
「なあ、秋蘭。南皮って袁紹の本拠地だよな?」
「ああ、昔から華琳様と腐れ縁でな・・・」
「そうか。」
華琳は大鎌を取り出し、振りかぶった。
「私がこの世で最も腹立たしい事。それは他人に試される事。・・・分っているかしら?」
「はっ。そこをあえて試させてもらいました。」
「そう。」
華琳は一気に刃を振り下ろした。
「わかっていても、やっぱり心臓に悪いな。」
刃は寸止めされていた。
「桂花。もし私がそのまま振り下ろしてたら、どうするつもりだったの?」
「それが天命と、受け入れておりました。」
「嘘は嫌いよ。本当の事を言いなさい。」
「曹操様のご性格からして、試されたなら為し返すと思いましたので、避ける気など毛頭ございませんでした。」
「そう。」
ゆっくり大鎌を降ろした。一呼吸置いた華琳は、
「あはははははは!」
「か、華琳様?」
「最高よ、桂花。この私を二度も試すなんて、その度胸気に入ったわ。貴方の才、私の天下の為に使いなさい。いいわね?」
「はっ。」
「まずは、この討伐を成功させてみなさい。もし失敗したならその身をもって償って貰うわ。」
「御意!」
「しかし袁紹も勿体ない事するな、王佐の才を手放すなんてなぁ。まぁそのおかげで、ようやく魏の地盤が固まったな。」
皆は俺の一言に固まった。とくに桂花が驚いている。
「ん?どうした?」
「私が王佐の才?」
「そうだ。それだけお前には才能があると言う事だ。頼んだぞ軍師殿。」
そう言って俺は天幕を出て言った。
そして俺達は民を助けるために荒野を駆けた
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ちょっとは態度がマシになるかな(ヒトヤ) | ||
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