真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第二十話 |
「ご無沙汰してます、丁原さん。お体のほうはもうよろしいようですね」
一刀が主座に座る女性に、拱手して言う。
「劉翔殿も劉備殿も、ご無事で何よりです」
座したまま答える女性。
ここ、荊州は宛城の城主で、荊州刺史である丁原、字を建陽という。
体の治った丁原は、長安太守である櫨植の勧めで、現役復帰。呂布と陳宮を伴い、この地に赴任していたのである。
「改めて御礼を。私たちを保護していただき、感謝いたします」
深々と頭を下げる劉備。
「いえ、お気になさらず。お二人はいわば私の命の恩人。礼には礼を以って尽くすのが、人として当然のことですわ」
「・・・ん」
丁原の言葉に同調し、うなずく恋。
「それにしても、お二人ともよくご無事だったのです。徐州軍は黒い鎧の軍勢に壊滅させられたと、聞きましたのですぞ」
「ねね!!」
陳宮の発言を諌める丁原。
「あ」
陳宮は丁原にしかられ、はたと気づく。
一刀と劉備が、無念の表情でうつむいていることに。
「申し訳ありません、お二人とも」
頭を下げ、謝る丁原。
「・・・いえ。予想は出来ていたことです。・・・ですが」
「私たちは信じています。・・・みんな、無事であると」
顔を上げ、一刀と桃香が言う。
「とりあえず、お仲間のことはこちらで探させます。お二人は、しばらくここでごゆっくりなされませ」
「「ありがとうございます」」
一刀と劉備が丁原に保護され、その客将となってから、瞬く間に時は一月ほど過ぎた。
その間、いくつかの知らせがもたらされた。
洛陽では、元十常待の張譲が乱を起こし、劉弁皇帝、董卓、賈駆の三人が死亡し、劉協は曹操の手で脱出し、陳留へ逃れた。
涼州では、馬騰と一刀たちの恩師である慮植が、匈奴に討たれ、馬超・馬岱の二人も行方不明になった。
冀州では、どういうわけか、袁紹がその勢力を大きく回復し、幽州の公孫賛に宣戦を布告した。
揚州では孫堅が、州全体をその統治下に置き、今度は荊州を狙って動いているという。
また、陳留に逃れた劉協が十四代皇帝への即位を宣し、?州・曹家における一族同士の争いも、曹操が戻ったことであっさりと収まり、曹操は劉協の後ろ盾を得て、勢力拡大に動き始めた。
大陸は、まさに群雄割拠の様相を呈してきたのである。
そんな情勢の中、一刀たちはというと。
「せりゃあああああ!!!」
「・・・!!」
ガキィッッッ!!!
一刀の靖王伝家と、呂布の方天画戟が激しくぶつかる。
一刀は今、宛城の練武場で、呂布と練武の最中だった。
言い出したのは一刀のほうである。
「・・・一刀、すごく強い。でも、恋はもっと強い」
そう言って、戟を次々に繰り出す恋。
一刀は受けるのが精一杯といったところである。
「恋ちゃん、すごい。お兄ちゃんをあんなに圧倒できる人、あたし見たことない」
そう感想を漏らす劉備。
「劉翔どのもなかなかのものですよ。あの子があんなに楽しそうなのは、久々に見ましたわ」
劉備の感想に、そう答える丁原。
「あ!!」
「・・・終わり」
「くっ!!・・・うわっっっ!!」
呂布の戟を靖王で受け止める一刀。だが、そのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。
「おにいちゃん!!」
練武場の中へと入っていく劉備。
「・・・あいててて。・・・やっぱ、恋は強いな」
頭を振りながら言う一刀。
「大丈夫?お兄ちゃん」
手を差し伸べる劉備。
「ああ。・・・よっと」
劉備の手を借り、何とか立ち上がる一刀。
「・・・けが、してない?」
一刀の傍に近寄り、心配そうに言う呂布。
「ああ。大丈夫だよ。ありがとな、恋。稽古に付き合ってくれて」
「・・・ん。じゃあ、恋はセキトたちのご飯の時間だから、行く」
「うん。また頼むね、恋」
にこりと微笑む一刀。
その笑顔を見て、ぼっ!と、一瞬で真っ赤になる恋。
そしてそのまま走り去る。
「どうしたんだ?恋は」
「・・・おにいちゃん。ほんと、ちょっとは自覚もとうよ」
一刀の発言に、嫉妬を通り越して、思わずため息をつく劉備だった。
「ははうえどのー!一刀どのー!よい知らせですぞー!!」
「ねね?」
手を振りながら、一刀たちの下へ走ってくる陳宮。
「どうしました、ねね。よい知らせとは?」
丁原がはあはあと息をする陳宮に問う。
「たった今、この城に流れ着いた一団がいるのですが、聞いて驚くなかれ、それがなんと!愛紗どのたちなのです!!」
「「なんだって!?」」
驚きの声を上げる一刀と劉備。
「今、こっちに案内させているので、もう・・・あ、来たのです!!」
陳宮の示すほうを見る一刀と劉備。
そこにいたのは。
「愛紗!鈴々!星!華雄!輝里!」
「五月さん!藍ちゃん!蘭ちゃん!柊さんに、琥珀さん、翡翠さん!!」
徐州軍、全員の、無事な姿だった。
そしてその夜、全員の無事を祝う宴が催され、一同は再会を喜び合った。
そして、ここにいたるまでの事も聞いた。
関羽と張飛は周倉・陳到と輝里とともに、生き残りの兵たちとともに、揚州方面を抜け、荊州を北上。襄陽で一刀たちの消息を聞き、ここにいたった。
趙雲と華雄は孫乾、糜姉妹を守りながら、洛陽へと一旦は逃れたものの、張譲の反乱劇によって逃亡を余儀なくされ、何とか洛陽を脱出し、現在に至るというわけである。
そして、趙雲たちは、予想外の人物たちを伴っていた。
「よくご無事でした・・・陛下」
「陛下は寄せ。朕・・・いや、妾はもう皇帝ではない。陳留にいる協が今の皇帝じゃ。・・・ゆえに、今ここにいるのはただの死人。・・・劉封と言う名のな」
そう。洛陽で死んだはずの劉弁、いや、いまはその名を変え、劉封と名乗っているその人物と、そして、
「月も詠も本当によかった」
「ありがとうございます。一刀さん」
「・・・あ、ありがと」
劉封とともに死んだとされていた、董卓と、その軍師・賈駆も、無事生きてこの場にいた。
「ところで一刀よ。これからどうする?洛陽の謀反人を討伐するにしても、兵はぜんぜん足りるまい?」
劉封が一刀に問う。
「そうですね。・・・兵もそうですけど、ほかにもうひとつ、手に入れたいものがあるんです」
「ほかに・・・ですか?なんです?」
関羽が問う。
「・・・軍師」
「お兄ちゃん、軍師ならここに輝里ちゃんがいるじゃない?」
劉備がその場にいる徐庶の方を見て言う。
「確かに、輝里は優秀な軍師だよ。戦術家としてね。けど、俺が欲しいと思ってるのは戦術家じゃない。十年、二十年、さらにその先を見据えることの出来る、戦略家、そして、政略家なんだ」
一刀の視線は、はるか遠くを見ていた。
自分と同じ、もしくはそれを超える、大局を見ることの出来る眼を持つ人物。
それこそ、一刀がいま、求めてやまない人材だった。
「・・・あの二人なら、その希望に応えられるかも」
「え?」
ポツリとつぶやく徐庶の言葉に、一刀が反応する。
「いるのか、輝里?そんな人物が、本当に?」
「うん。その二人、あたしと同じ水鏡塾の門弟で」
「伏竜こと、諸葛亮孔明、そして、鳳雛こと、?統士元。だよ」
説明 | ||
第二十話。 恋と再会した一刀と桃香。 彼女に連れられ、訪れた場所は・・・。 真・恋姫無双 刀香譚。 はじまります。 追記。 一部、抜けてた文を追加しました。 (7/14、14:14) |
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コメント | ||
よかったぁ、 月たちがいきてて(qisheng) 燃えるなぁ。(readman ) ようやく伏龍・鳳雛の出番か!?(M.N.F.) 皆無事に合流できてなによりです^^どんな逃避行だったか気になりますね。しかし桃香さん一刀にその辺りの自覚は無理でしょうw(深緑) 西湘カモメさま、悩みも増える、で、オンドゥルも増える、と^^。(狭乃 狼) hokkuhinさま、逃亡手段については、近いうちに書く予定です。(狭乃 狼) リョウ流さま、喜んでいただけて何より。(狭乃 狼) 村主さま、正史とは状況がちょっと違うんで、どういう展開になるやら・・・。(狭乃 狼) 月・詠・劉弁が生きていてよかった〜。次はいよいよ最強軍師コンビの登場ですね。さあ乱世に名乗りを挙げるときがきたぞ。そして桃香の悩みも増えるのか?(一刀に迫る女性関係で)(西湘カモメ) ほう洛陽組もみんな無事でしたか・・・ どうやって張譲の手から逃げれたのか、気になりますね。(hokuhin) 皆無事で何よりでした そして遂にはわわ・あわわコンビの出番・・・復活の狼煙が上がる時ですかね(村主7) 紫電さま、・・・あの、あまり先読みなコメは控えてください。削除まではしませんけど、お願いします。(狭乃 狼) ZEROさま、さあ、どうしているんでしょう?(狭乃 狼) はりまえさま、はい。まだ出てませんでした。(狭乃 狼) 砂のお城さま、蓮華のというか、呉が絡むのはも少し先です。(狭乃 狼) 言われてみればそうだね。あの二人どうしてんだろうね?(ZERO&ファルサ) あ、そういえば今まで全然出番なかったなこの二人てっきりいるけど陰が薄いと思ってた。テヘ?(黄昏☆ハリマエ) |
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