真・恋姫†無双〜真・漢ルート〜 第九話:一刀、九死に一生を得る
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一刀「知らない天井だ」

 

 

起き抜けに一言言う一刀。

この世界に来てから知らない天井はおろか天井がないところで寝泊りだってした事はある。

 

上半身を起こす際にわき腹に引きつるような痛みが走る。

腹部を見ると白い包帯が巻かれているのが見える。

 

痛みに耐えながらも上半身を起こす。

周囲を見回せば自分と同じように包帯が巻かれた人間ばかり、どうやら負傷者用の天幕内のようだ。

 

視界の端に服が見える。

旅を始めて少ししか経っていないころに貂蝉たちが選んだ服だ。

旅の工程でところどころ汚れていたが、脇の部分に大きな裂け目と血が固まって赤黒く染まっている。

 

 

一刀「上半身裸よりはマシだな」

 

 

汚れた服を羽織、痛むわき腹を押さえながら一刀は天幕から出て行った。

 

 

 

第九話:一刀、九死に一生を得る

 

 

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天幕を出ると未だに兵士達があわただしく動いている。

流石に走り回っている兵士を止めるのは申し訳ないと思い、華佗たちを探す。

 

 

華佗「むっ、まだ起きちゃ駄目だぞ」

 

一刀「華佗、丁度良かった

   傷は痛むけど何か手伝える事はないか?」

 

 

探すまでもなく華佗を発見する一刀。

 

傷は痛むし、頭はクラクラするが何もしないでいるのは居心地が悪い。

そんな一刀にやれやれと言った風にため息をついて華佗は包帯と傷薬を一刀に渡す。

 

 

華佗「動き回って傷が開いてる奴がいるから包帯を替えてくれ」

 

一刀「分かった、どこにいるんだ?」

 

華佗「お前だ」

 

 

そう言って一刀の腹部を指差す華佗。

目を向けると包帯は赤く染まっていた。

 

 

一刀「……もしかして俺の傷って深い?」

 

華佗「瀕死だったが、俺の鍼である程度は傷は塞いでいる

   分かったら安静にしていろ」

 

一刀「……安静にしています」

 

 

すごすごと天幕に戻る一刀。

 

天幕に戻って包帯を外そうとする一刀。

しかし、外側騒がしくなる。

 

何事かと思い天幕の入り口の方に顔を向けると数名の女性が入ってくる。

その中には一刀が庇った孫権と周泰がいる。

 

女性達は一刀の方に向かってくる。

 

 

??「貴方が蓮華……我が妹、孫権たちを庇ってくれたのね?」

 

一刀「……記憶が確かならそうです」

 

孫策「そう、我が名は孫策、よくぞ我が妹・孫権と忠臣・周泰を救ってくれた

   礼を言うわ、ありがとう」

 

 

そう言って先頭を歩いていた女性・孫策が微笑みながら礼を言う。

彼女の言葉と同時に孫権と周泰も頭を下げる。

 

 

一刀「いえ、ご無事で何よりです」

 

??「……貴方は我が軍の兵ではないわよね?」

 

一刀「……えっと……」

 

周瑜「周瑜だ」

 

 

メガネの女性・周瑜が一刀に訪ねる。

その視線は一刀を鋭く睨んでいるようだった。

 

 

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一刀「そうですよ、周瑜さん

   俺達は仲間の知人からの紹介で来たんです」

 

周瑜「虞翻の紹介状の人物か……しかし、医者だと聞いているが?」

 

一刀「医者として来たんですけど、孫権たちの救出部隊の志願を募っていたので……」

 

 

一刀の言葉に未だ厳しい視線のままである周瑜。

彼女は虞翻の紹介にあった華佗と『天の御遣い』が一緒に行動していることを知っている。

さらに、その『天の御遣い』はつい先日まで魏に居たことも間諜から聞いている。

 

つまり、彼女は一刀が魏の間諜ではないかと疑っているのだ。

 

 

孫策「冥琳、そんなに心配しなくても大丈夫よ」

 

周瑜「雪蓮、この男は『天の御遣い』、魏の間諜の恐れが……」

 

孫策「だから大丈夫だって、私の『勘』が大丈夫だって言ってる」

 

 

一刀を怪しむ周瑜に孫策が自信満々に答える。

孫策の勘は良く当たる。

周瑜もそのことを理解しており、同時に孫策が一度決めると梃子でも動かないことも良く理解している。

 

 

周瑜「わかったわよ……御遣い殿、失礼いたしました」

 

一刀「その『御遣い』って言うのはやめてくれないかな、俺には北郷一刀って名前があるんだよ」

 

周泰「変わったお名前ですね

   あ、命をお救いいただきありがとうございました

   私、『明命』と申します」

 

一刀「なら『一刀』でいいよ、明命ちゃん」

 

明命「分かりました

   それで、一刀様はその手に持っておられるのは……」

 

 

周泰改め明命に言われて自分の包帯を付け替える途中であったことを思い出す一刀。

 

 

一刀「換えの包帯と薬だよ

   さっき動き回ったら血が滲んでしまったんだ」

 

孫策「そうなの……蓮華、手伝ってあげたら?」

 

孫権「ね、姉さま!?」

 

 

明命たちに見えるように包帯と薬を手に持つ一刀。

包帯を換えると聞いて孫策が面白いことを考えたと言う風にニヤニヤと笑いながら妹をつつく。

そんな孫策に孫権は顔を赤くして反応する。

 

しかし、それ以上反論せず顔が赤いまま一刀に近づいていく孫権。

 

 

孫権「その、手伝うわ」

 

孫策「あら、大胆ね」

 

 

冗談のつもりで言った孫策であったが、妹の意外な行動に驚く。

 

 

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一刀としても誰かに手伝ってもらえると楽なので助かる。

 

 

一刀「なら悪いけど包帯を取るのを手伝って貰ってもいいかな」

 

孫権「分かったわ」

 

 

一刀の言葉に頷き、包帯を取る孫権。

解かれた包帯からは一刀が思っていたよりも大きな傷があった。

 

乾燥しかけていた血で傷口に当てられた布をはぐ際に痛みが走る。

しかし、情けない所を見せまいと歯を食いしばって耐える一刀。

 

 

一刀「っ!……よし、薬を…」

 

明命「あの……私がやります」

 

 

布をはがし終わり、薬を塗ろうと手を伸ばす一刀、しかしその手は空を切る。

薬は明命が取り、心配そうな顔で自分が塗るのだと言う。

彼女もまた一刀の身を案じているのだ。

 

 

一刀「ならよろしく」

 

明命「はいっ!」

 

 

明命の意図を察して笑顔で頼む一刀。

明命の顔が笑顔になり、大きな声で反応する。

 

いそいそと容器から軟膏を取り出し、一刀の腹部に塗る。

傷口に触れられ、痛みが走るがやせ我慢をする一刀。

薬を塗るのに真剣な明命は気付いていないが、後ろで見ている孫策たちには一刀が我慢しているのが分かる。

 

薬を塗り終わるのを確認して包帯に手を伸ばす一刀。

しかし、またもその手は空を切る。

 

今度はニヤニヤと笑う孫策が包帯を取ったのだ。

 

 

孫策「次は私がやろうかしら」

 

一刀「お、お手柔らかに」

 

 

孫策の顔に不吉なものを感じながらも頼む一刀。

一刀の後ろに回りこみ包帯を巻き始める孫策。

 

力加減も絶妙で杞憂かと思い、ほっとする一刀。

しかし、その気配を察した孫策の目が光る。

付き合いの長い周瑜がそのことに気付き手を伸ばすがすでに遅く、孫策は巻いている包帯を強く引っ張る。

 

 

一刀「いだっ!」

 

周瑜「こら!怪我人に何をしている!!」

 

 

突然の激痛に声を上げる一刀。

孫策の行動に周瑜の手が孫策の頭に走る。

 

 

孫策「痛ーい」

 

周瑜「全く……北郷、私がやろう」

 

一刀「うぅ、優しく……してくれ」

 

 

頭をはたかれた孫策の手から包帯が落ち、せっかく巻いた包帯が緩む。

ため息を吐きながら周瑜が包帯を巻き始める。

孫策よりも早く、力加減も絶妙であった。

 

 

周瑜「……うちの雪蓮が悪かった」

 

一刀「いや、……痛かったけど大丈夫だよ」

 

 

そういいながらも口の端が引きつったままの一刀。

周瑜も疑うのが馬鹿らしくなってくる。

 

 

一刀「まあ、包帯換えるの手伝ってくれてありがとう」

 

孫策「どういたしまして」

 

周瑜「お前は反省しろ!」

 

 

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その後孫策たちは天幕から出て行き、一刀は安静にするために横になる。

目を瞑ってじっとしていると眠気が来る。

眠気に逆らわずにそのまま眠る一刀。

 

華佗たちが一刀を迎えに行くと一刀が眠っている。

貂蝉と卑弥呼が起すのは忍びないので寝かせたまま運ぼうとするが、その目は私欲で濁っていた。

 

それに気付いた左慈が一刀を軽く揺する。

一刀は寝苦しそうに呻き半覚醒状態になる。

 

 

左慈「起きろ、このままだと色々と不味いぞ」

 

一刀「……あと5分…」

 

左慈「お前が起きる意思を見せないというのなら、貂蝉たちがお前の精神を破壊しつくすことになるぞ」

 

一刀「直ちに、起きます」

 

 

左慈の言葉に眠気が吹き飛び、急いで体を起す一刀。

残念そうな貂蝉たちを見て危機感を感じる一刀。

 

 

一刀「これからどうするんだ?」

 

華佗「孫策から診療所をする為の施設が借りれることになったからそこで休もう」

 

卑弥呼「ご主人様のがんばりは無駄ではなかったと言うことだな」

 

 

そう言って歩き始める華佗たち。

後に続こうとするが、わき腹が痛みよろめく一刀。

そんな一刀を華雄が支える。

 

 

一刀「あ、ごめん」

 

華雄「……気にするな」

 

 

そのまま華雄は一刀に肩を貸したまま歩き始める。

貂蝉たちも空気を読んで何も言わないが、目は口ほどにモノを言うもので、何か言いたげな視線が一刀と華雄に向けられていた。

 

 

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それから数日後、診療所としてそろそろ活動をしようかという時に来客が現れる。

 

 

孫策「華佗はいる?」

 

左慈「……孫策か…華佗!客だ!」

 

 

来客は孫策、護衛もつけずに一人だけで来ていた。

左慈の声に華佗が出てくる。

玄関で立ち話も何なので診療所の中に入ってもらう。

 

孫策の来訪に全員が集まる。

貂蝉が孫策にお茶を出し、話が始まる。

 

 

孫策「実は今日はお願いがあって来たのよ」

 

華佗「俺にか?」

 

孫策「そうよ、貴方は医者なのよね?」

 

華佗「医者に用があるのか……あんたも調子が悪いのか?特に異常はなさそうだが……」

 

 

華佗の言葉に苦笑する孫策。

首を横に振ってから話を続ける。

 

 

孫策「私は至って健康よ

   気になるのは妹…孫権のことよ」

 

一刀「孫権が?」

 

孫策「ええ、どうも様子がおかしいのよね

   妙に張り切ってみたり、突っ走ったりみたり……」

 

華佗「情緒不安定ってことか……」

 

孫策「どうも気になるのよね……私の勘って良く当たるのよ

   病気か何かだったら貴方の力で治せないかしら?」

 

 

孫策の言葉に少し考える華佗。

一刀もこの前会った時に気が付くべきだったと悔やむ。

 

 

華佗「とにかくちゃんと診て見ない事には判断できないな」

 

一刀「俺も行くよ、孫権とはこの間あってるんだ」

 

孫策「ならよろしくね、今からでも大丈夫かしら?」

 

左慈「診療所はまだ再開していないから大丈夫なはずだ」

 

干吉「念のために私が留守番をしましょう」

 

華佗「任せたぜ」

 

 

残ると言う干吉を診療所に残し、一刀たちは城へと向かう。

一刀の服は血が落ちなかった為、聖フランチェスカの服を普段から着るようにしている。

孫策を先頭に歩いていると、城の前に着く門番の兵士も孫策を目にして素通しさせる。

 

 

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孫策「こっちよ、今の時間は庭の方にいるはず」

 

華雄「一刀、大丈夫か?」

 

一刀「ちょっと痛むけど大丈夫」

 

 

誰の肩も借りずに歩いて来た一刀を気遣う華雄。

普通に歩いているはずなのに疲れを感じる一刀、しかし悟られないように強がる。

 

 

孫策「いたわ……蓮華!」

 

 

孫権を見つけた孫策が孫権に呼びかける。

姉の声に反応して孫権がこちらの方を向く。

 

孫権の傍らには天幕で一言も話さなかった目つきの鋭い女性が控えている。

一刀の間諜疑惑を孫策が否定しても鋭い視線を止めなかった女性である。

 

 

孫権「姉さま、それに北郷…」

 

華佗「はああああぁぁぁっ!!!」

 

 

近寄ってくる孫策と一刀を見て驚いたような顔をする孫権。

そんな孫権の前に立ち華佗が気合の雄叫びを上げる。

華佗の行動に武器を構えて孫権を守ろうと目つきの鋭い女性・甘寧が前に出る。

 

一刀も目に意識を集中する。

孫権の周囲に靄が見え始め、彼女の下腹部付近の所だけ色が変わっている。

一刀がそのことに気付いたのと同時に華佗の声が響く。

 

 

華佗「見えた!」

 

孫策「分かったの!?」

 

華佗「安心しろ、ただの気血両虚だ

   最近は目眩やふらつきがあるだろう?後は食欲がなかったり、些細なことで気分を害したり……」

 

孫権「何故それを?」

 

一刀「華佗は医者だよ

   でも今回はあまりやばそうに見えないけど……」

 

 

孫権の言葉に一刀がフォローを入れる。

しかし、一刀の目に映る靄はそれほど脅威を感じない。

 

 

華佗「ああ、今はそれほどたいしたことはないからな

   だが、放っておくと危険だ、早めに治療した方が良いな」

 

孫策「んー、結局どういう病気なの?」

 

華佗「単純に言ってしまえば生……

孫権「わーっ!わーーっ!!」

 

甘寧「れ、蓮華様!?」

 

 

華佗の言葉を遮る様に声を上げる孫権。

頭を抱える一刀に華佗が言おうとしたことに気付いた孫策が口を開く。

 

 

孫策「ああ、月の……

孫権「いやーーーっ!姉さままで言おうとしないでください!!」

 

卑弥呼「だが、元気は有り余っている様子だが?」

 

華佗「んー、俺は病魔は見定められるが、こういった類の原因特定は苦手なんだ」

 

 

そう言ってうなる華佗。

未だ華佗の言う『気血両虚』がなんなのか分かっていない一刀も頭を悩ませる。

 

 

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華雄「しかし、月の…

孫権「だから!!」

 

甘寧「蓮華様、月のものの具合が悪いというのは察していますので気になされなくても良いかと」

 

一刀「ああ、なるほど」

 

 

分かっていなかった一刀は手を叩く。

しかし、同時に気になることがある。

 

 

一刀「華佗、曹s…華琳みたいに鍼で治せないのか?」

 

華佗「曹操の時は血行を促進させて脳内の血管のつまりを流していたんだ

   俺はこういった病気の原因の特定は苦手なんだ……」

 

一刀「なるほどね……まあ、孫権の体調が悪くなったのって何時ぐらいからか分かる?」

 

孫権「それは……」

 

 

孫権が言いよどむ、視線の先には孫策が立っている。

孫権の視線に気が付いた孫策は仕事があったのだと背を向けて歩いていこうとする。

 

 

孫策「蓮華をお願いね」

 

 

一刀とすれ違う際にそっと耳打ちする。

その言葉に一刀はやる気を出す。

 

 

一刀「言いにくいかもしれないけど話してくれると助かる

   少しでも情報がいるんだ」

 

孫権「……体調が悪くなったのは戦が始まる少し前からよ

   それまでは、……特に問題なかったわ」

 

 

顔が赤くなる孫権、恥ずかしそうに体調が悪くなった頃合を教える。

 

 

左慈「……『アレ』が遅れたのが原因で無茶な突出をしたというのか?」

 

甘寧「貴様!!」

 

孫権「……言いのよ、思春

   確かに私が功を焦って突撃をした所為で北郷は怪我を……」

 

一刀「……んー、もしかしたら気負いすぎが原因かな」

 

華佗「気負いすぎ?」

 

 

一刀の言葉に華佗が反応する。

生理不順といえば精神的なもので起こるとクラスの女子が話していたのを小耳に挟んだことがある一刀。

戦争の前に起こり、今の彼女の反応を見れば彼女は責任感が強く、真面目すぎると言う事が分かる。

 

 

一刀「うん、俺の世界で聞いた事があるんだけど、アレが不定期になったり来なかったりするのはストレス……精神的な負担が原因になるらしいんだ」

 

華雄「孫策はこの国の王、王の妹としての責務が負担になっていると?」

 

孫権「そんな事はない!私にとって責務とは誇りに思いこそすれ、負担になど……!」

 

一刀「普段はそうかもしれない

   でも、戦い続きで戦意が高揚して心は先に進もうとするけど、疲れが溜まって体が追いつけなくなってるんだよ」

 

孫権「それは……!」

 

一刀「それに、君は真面目すぎるからね

   孫策さんとまでは行かなくても少し気分転換したほうが良いよ」

 

 

そう言って微笑む一刀。

孫権も顔を赤く染めながらもじもじと頷く。

 

そんな二人に甘寧は一刀の危険性に気が付く。

二人の間に入るように立ち、華佗の方に視線を向ける甘寧。

 

 

華佗「さすが一刀、やはり『女性関係』なら百人力だ!」

 

甘寧「原因は分かったようだがどうするのだ?」

 

華佗「原因さえ分かれば……俺の力で対処できる!」

 

 

そう言って華佗は荷物から一冊の書物を取り出す。

 

 

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貂蝉「それは?」

 

華佗「これは、青嚢書(せいかいしょ)

   五斗米道に伝わる秘薬のすべてが記された秘伝の書だ」

 

左慈「なるほど、薬か……」

 

卑弥呼「それで?どのような薬を使うのだ?」

 

華佗「ああ、一刀が言う通りだとすれば、まず身体を元気な状態にし、心と釣り合いが取れるようにしようと思ってな……」

 

甘寧「秘薬といっていたがすぐに準備できるものなのか?」

 

 

甘寧の言葉に沈黙する華佗。

一刀は幽州に行って手に入れる予定だった材料のことかと思ったが、青嚢書を甘寧に見せて華佗が指を指す。

 

 

華佗「この薬を使うつもりなんだが、そろえられそうなものはあるか?」

 

甘寧「何!?これを……」

 

 

青嚢書を見た甘寧の顔が歪む、明らかにやばいモノを使うようにしか見えない。

好奇心から他の皆も青嚢書を覗き込もうとする。

 

 

華佗「おっと、一刀お前にはまだ早い」

 

華雄「これは……」

 

貂蝉「あらあら……」

 

卑弥呼「なんと!?」

 

左慈「……集めるのは骨が折れるな」

 

孫権「ちょっと!?何を飲ませるつもりなのよ!!?」

 

 

青?書を覗き見た人間は全員孫権に哀れみの視線を向ける。

その反応に孫権が狼狽する。

 

 

甘寧「いくつかは揃えられるが全部は無理だろうな……」

 

華佗「なら、残りは俺達が取ってくるさ」

 

孫権「ちょっと、私にも見せなさい!」

 

 

そういって青嚢書に手を伸ばす孫権。

それを庇うように身を引く華佗。

周りの人間も少し引く。

 

 

貂蝉「見ない方がいいわよ」

 

卑弥呼「そうだ、皆お前の為を思っての行為なのだぞ?」

 

孫権「私が飲むのよ!?」

 

甘寧「蓮華様、知らぬ方がよいこともあります」

 

 

一番の家臣からも言われしぶしぶ下がる孫権。

 

 

華雄「しかし、獲りに行くにしても一刀はどうする?」

 

左慈「怪我人を連れて行けるほど楽な相手ではないと思うが?」

 

一刀「何と戦うつもりなんだよ!?」

 

 

戦うという言葉に一刀が反応する。

今まで華佗から教わって来た薬の材料は薬草などが主で生き物の一部を使うのは少なかった。

 

 

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貂蝉「それは孫権ちゃんのためにも秘密よ」

 

孫権「戦うことは否定しないの!!?」

 

孫策「なら、一刀はうちで預かるわよ?」

 

孫権「姉さま!?」

 

 

先程仕事がどうとか言いながらいなくなったはずの孫策が間に入ってくる。

 

 

一刀「……仕事じゃなかったの?」

 

孫策「嘘よ、面白そうだったから隠れて聞いてたの」

 

孫権「…………」

 

甘寧「私は気付いておりましたが黙っているように合図が出されておりましたので……」

 

華佗「それは良いとして、一刀を預かってもらえるのは助かるが良いのか?」

 

孫策「ええ、一刀の怪我は蓮華が原因と言えなくもないし、あなたたちには世話になるもの」

 

 

こうして一刀は呉の客人として招かれ、華佗たちは秘薬の材料を求めて出て行った。

 

一刀はこれからどうなるのか胸をときめかせながら呉の城に入る。

一方で華佗たちは強大な存在と対峙することになっているとは知らないでいた。

 

 

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あとがき

 

皆様、こんばんは。

 

七乃が落選してちょっとショックな大鷲です。

 

仕方ないですね。祭の人気が高いのは分かっていたこと、これも運命でしょう。

 

今回は漢ルート本編でもあった孫権の病気の話です。

気血両虚って調べると『アレ』が遅れるのよりも不味そうな病気なので焦りました。

 

一刀は怪我で欠場です。

行っても龍が相手では何も出来ずに終わるので……しいて言うなら南蛮勢に気に入られる話にしても良かったんですけどね……

 

 

 

次回予告

 

怪我でお留守番の一刀君

       厄介になることになった城で働くことになる

                    そんな一刀を待ち受けているのは……

 

次回、『一刀、はじめてのおるすばん』にご期待ください

説明
名前がややこしいですが、隠しルートである『漢(かん)ルート』の再構成した『漢(おとこ)ルート』です。

ガチムチな展開は精々ネタ程度にしか出て来ないのでご安心ください。
ただし、漢女成分が多分に含まれるかもしれませんので心臓が弱い方はご注意ください。
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コメント
考えてみると今回のタイトルって一刀の怪我のことよりも、むしろ漢女達からの事・・・なのか?; 私も七乃が拝見したかったです^^;(深緑)
さりげないブロリーネタにワロタ(カナリア)
moki68k様&ZERO様>本編で奴に『ナニ』が有ったと明記されておりますので返って危険だったりw(大鷲)
おやっと?様>その辺は10.5話にご期待ください(大鷲)
hokuhin様>怪我がなくても置いていかれそうですけどねw(大鷲)
はりまえ様>呉での立場は恩人兼客人です( ´∀`)bグッ!(大鷲)
よーぜふ様>いいなぁ、大鷲は工業系の学校ですので圧倒的に男が多いです(大鷲)
一刀を連れて行けばアレを仲間にできるでは?と思っちゃいました。次のタイトルはいやな予感しかしませんね。(ZERO&ファルサ)
いや、しかし、もしもアレが雌だとしたら連れて行った方がいいのか?w にしても次回サブタイトルがやべぇ!w(moki68k)
とりあえず、祭さんに期待w雪蓮と二人で一刀を振り回して欲しいwww(おやっと?)
しかし良かったな一刀、怪我したおかげで一番やばい生物に会わずにすむw(hokuhin)
漢ルートでの呉といえばアレか!?しかしそうあるといろいろとすごいことになりそうだな。ついでに一刀の呉に対する印象が激変するかも(まあ、どのルートも印象に変化なしだったからな)(黄昏☆ハリマエ)
自分は実際にそっち側の学校にいってるので、一瞬やばすぎね?とかおもいましたw とりあえず、ひとりおるすばん=ふりまわされまくりまくるのが目に見えてますねw (よーぜふ)
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真・恋姫†無双 真・漢ルート 北郷一刀 華佗 貂蝉&卑弥呼 左慈&干吉 華雄 

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