真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第二十二話 |
荊州の牧、劉表は死の床にいた。
悪化していた病状がさらに進行し、もはや、意識を保っているのが精一杯の状態だった。
「一刀どの、沙耶を、美弥を、そして荊州を、お願いいたす。どうか、どうか」
それが劉表の最後の言葉だった。
娘二人に看取られながら、劉表は黄泉路へと旅立った。
父にすがり、泣きじゃくる劉gと劉宗。
「景升さま、安心してお眠り下さい。必ず、お二人は私がお守りします」
安らかな顔で眠る劉表に、そうつぶやく一刀。
その翌日。
長女劉gを喪主として、劉表の葬儀が執り行われた。
雨の降りしきる中の葬儀であったが、多くの襄陽の民が葬列を見送った。劉表が牧として、民に愛されていた証明だった。
三日間喪に服した後、劉gを荊州の新しい牧として、許昌の劉協に奏上した。劉協は快くこれを認め、その勅書が荊州に届けられたのが、その三日後。
正式に荊州の牧に就任した劉gは、蔡瑁とその兄弟を江陵の太守に任じ、その補佐に自身の幕僚である、伊籍・韓嵩をつけた(ようするに監視役だが)。
一刀は新野の城主を務める傍ら、劉gの後見として、その相談役としても、多忙な日々を過ごし始めた。
そんなある日。
「長沙の袁術が?」
「はい。南郡の諸城を落とすため、戦力を動かしています」
先の水・虎狼関戦において、反西涼連合に加わり、そして長沙の城主に格下げとなっていた袁術が、荊州の南部にある、四つの郡を攻撃し始めたという報せが、襄陽に来ていた一刀たちの下にもたらされた。
「昔日の栄光をもう一度、といったところでしょうか?」
劉gが一刀に問う。
「・・・正直、わからないな。袁術はともかく、その腹心の張勲は何を考えてるか判らないところはあるけど」
「細策、放つ?」
劉備が一刀に問う。
「そうだな。朱里、頼めるかい?」
「はい。それと、もうひとつご報告があります。江陵の兵が、その動きに同調しているらしいそうです」
「は?」
唖然とする劉g。
「間違いないの?朱里ちゃん」
「はい。・・・伊籍さんと韓嵩さんは、周囲の鎮撫のために兵を動かしているだけと、蔡瑁さんから説明を受けたそうですが・・・」
「・・・あの二人、まさかそれを信じてないよね?」
諸葛亮にそう聞く、一刀。
「まさかですよ。お二人には、江陵の軍の動きには、十分に注意するよう、伝えてあります」
「ならいいけど。沙耶、丁原さんに使者を出しておいてくれるかい?もしものときは、恋たちにこっちに出張ってもらうかもしれないって」
「はいです、おじさま。・・・けほっ、けほっ」
一刀に答えながら、咳をする劉g。
「・・・大丈夫?沙耶ちゃん?」
劉備が心配そうな表情で、劉gの顔を覗き込む。
「・・・大丈夫です、桃香おばさ「む?!」・・・お姉さま」
おば様、といいかけた劉gを、すごい形相でにらむ劉備。そしてあわてて言い直す劉gだった。
「申し上げます!武陵城、陥落いたしました!!」
「そうか、報告ご苦労。下がってよい」
「はっ!」
報告に来た兵士が天幕を出る。
「・・・これで、後は珪陽だけか。・・・すまんな、黄忠どの。このような無意味な戦に巻き込んでしまって」
大刀を背に背負った女性が、対面に座る妙齢の女性に頭を下げる。
「お気になさらないでください、紀霊将軍。・・・大事な娘のためですもの。お互いに、ね」
にこりと微笑む黄忠。
「お互い・・・?」
「あら。美羽ちゃんも七乃ちゃんも、あなたにとって娘さんも同然でしょう?八年以上も、二人を育てて来られたんですから」
「娘・・・。美羽さまと七乃が・・・。そう。そうですね。二人は私にとって何物にも変えがたいもの。先の戦とて、私が留守にしていなければ、参戦などさせなかったものを」
こぶしを握り締め、悔恨の表情を浮かべる紀霊。
「・・・過ぎたことを悔やんでも、仕方ありませんわ。今度こそ、お二人を守ればいいのですよ。ね?」
「うむ。・・・口惜しいが、今はあやつのいうとおりに動くしかない。三人の命を救うために」
「はい。・・・璃々、待っててね。おかあさん、必ずあなたを助けてあげるからね」
「美羽さま、七乃。この紀霊、必ずお二人を無事に助け出して差し上げます。もう少し、ご辛抱くだされ」
決意の表情で、天幕を出る二人だった。
「ほう。袁術がな」
「はい。荊州南郡の諸城を次々落とし、勢力を拡げています」
眼鏡をかけた褐色の肌の女性から、そう報告を聞く孫堅。
「劉表の後継・・・g君はどうしている?動きは?」
「どうやら江陵の蔡瑁が、叛旗を翻す動きがあるようで。そちらの対処に、かかりきりになっているようです」
「そうか。・・・雪蓮、予定より早いが、動くよ」
地面にしりもちをつき、肩で息をしている自分の娘、孫策に声をかける孫堅。
「・・・わかったわ、かあさま」
何とか立ち上がりながら、孫堅に答える孫策。
「冥琳。抹陵の蓮華に使者を。援軍として一万、こっちへ送るように」
「は。・・・蓮華さまが来られた場合は?」
孫堅に問う、眼鏡の女性、周瑜。
「・・・追い返しなさい」
「・・・御意」
「かあさま、いい加減、蓮華にも初陣させていい頃じゃ」
孫堅に、孫策が言を呈する。
「・・・あれは戦場に向かないわ。シャオと同じでね。・・・でも」
「でも?」
「私や雪蓮になにかあってからでは遅いし・・・。冥琳」
「はい」
天幕を出ようとしていた、周瑜を引き止める孫堅。
「先の命はなし。もし蓮華が来たら、そのまま参戦させなさい」
「「!!」」
「・・・王の血脈にあるものは、いずれは命を背負わねばならないものね。自身以外の、兵や民草の命を」
「かあさま・・・」
「文台さま・・・」
孫堅の横顔をみる、孫策と周瑜。
「さ、出陣の支度をするよ。出立は十日後。ほら、動いた、動いた!!」
「「御意!!」」
「ち、仲達!!これは何のまねじゃ!!」
自身を取り囲む兵を指揮する男に、怒声を浴びせる老人。
「お前の役目はもう終わったのだ。”死んでいた”貴様を拾ったのは、この外史を破壊するための人形とするため」
「外史・・・?な、何のことじゃ!!それに、わしが”死んでいた”とはどういう・・・!!」
「文字通りさね」
男のそばに立つ一人の女が言う。
「あんたはあたしたちが見つけたときには、とっくに死んでいたのさ。それを仲達さまが今まで動かしていたんだ。ただの人形として、ね」
「な、ならばわしは、わしが大陸の王になると言うのは・・・」
「なれるわけないでしょう?あんたはただの死人なんだから。それが証拠に・・・」
女が手の中の琴を、ピン、と爪弾く。
「!!」
その瞬間、老人はその場に塵と化して崩れ落ちた。
「クス。ほうら、一瞬で塵になっちゃった」
けらけらと笑う女。
「仲達さま、これからどうされますか?」
もう一人、別の女が男、仲達に問いかける。
「・・・流れは正史に傾きつつある。われらは正史のとおり、”魏”に食い込む」
きびすを返し、その場から歩き出す仲達。
それに二人の女と、兵士たちも続く。
無人となった玉座の間に、一陣の風が吹く。
舞い上がる、塵となった、かつて張譲と呼ばれたモノ。
この数日後、洛陽は曹操の支配下となる。
洛陽に入った曹操と家臣たち。
その中に、一人の新しい女性の将がいた。
漆黒の髪と、漆黒の装束に身を包んだその女性の名は、
姓を司馬、名を懿。字を仲達といった。
説明 | ||
伏竜・鳳雛の二人を迎えた一刀たち。 そして、もたらされる訃報。 荊州に嵐が巻き起こります。 では。 |
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コメント | ||
年ぱ・・・ゲフゲフ・・・妙齢なお二方が何やらこき使われてるようですが、はたして無事三人は救出できるんだろうか心配です。(深緑) 実は左慈とかだったりしてw(M.N.F.) 仲達の性別が分からん(zendoukou) 更新ご苦労様です!!これからも頑張ってください!!(東方武神) 砂のお城さま、お年頃ですから^^。(狭乃 狼) hokuhinさま、年齢の話はSTOP!!・・・紀霊さんが睨んでますよww(狭乃 狼) 西湘カモメさま、さあ、華琳たち魏軍メンバーの運命は?!(狭乃 狼) なんと紀霊さんがでてくるとは・・・ 話から推測すると、紀霊さんも紫苑と年齢変わらず?(hokuhin) おおう。司馬仲達が管理者として表舞台に登場!華琳さんが危なーい!(西湘カモメ) 村主様、NGワードではないですよー。くすくす。(狭乃 狼) 意味深な笑みを返される・・・この真意は一体?まさかNGワード踏んだとか!? はわわ、あわわ(焦々)(村主7) 紫電さま、あちこちで動きがあるんで、整理が大変ですなの。こんがらないよう、書いていきたいと思ってます。(狭乃 狼) 村主さま、・・・くす。<(意味深な笑み)(狭乃 狼) 仲達さん女性だったとわwてっきり月刊マ〇ジンの破鳳さんか本家無双のフハハ軍師のどちらかと思ってたので (村主7) はりまえさま、ありがとうございます。直しました。(狭乃 狼) 4P冥琳の名が違いますよ。(黄昏☆ハリマエ) |
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