極楽幻想郷(紅) その6 |
「ところで魔理沙。貴方今日は地下室へ行ったかしら?」
「いや? まだ行ってないぜ」
「そう。早速行ってしまったみたいね……」
額を押さえて咲夜が溜め息を零すと、魔理沙と美鈴は嫌な予感がして顔を見合わせた。
「おい、中国。私は今とっても嫌な予感がするんだが……」
「き、奇遇ですね魔理沙さん! そ、そんなことはないですよね!?」
しかし、アイツなら……とお互い黙りこみ、その場を立ち上がる。
「おい、咲夜! 急ぐぞ!」
「えぇ! 今なら間に合います!」
「あ、貴方たちがやる気になるなんて……そんなに大切な人なの?」
「「違う(います)! 心配なのはフランだ(妹様です)!!」」
「……え?」
「のぉぉぉぉぉっ!? 死ぬ、死んでしまう!
おい、誰だ! このストーリーで戦闘シーンは無いって言ったのは!?」
「あはははははっ! 避けないと死んじゃうよ? もっと私と遊びましょ!」
「嫌じゃぁぁぁぁぁぁっ!! 命を掛けた鬼ごっこなんてやってられるかぁぁぁぁっ!!」
横島は情けない姿を見せながら、必死になって弾幕を掻い潜る。
金髪の少女は狂ったかのように笑い、無動作で弾幕を作り出し横島へ向かって打ち出す。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!? そ、そこは駄目ー!!」
死角からの一撃をマトリッ●スのような動作でかわし、後頭部を打ち付けその場で悶倒した。
「あぎゃぁぁぁぁぁっ!? どうしてこうなったんやぁぁぁぁぁぁっ!!?」
ゴロゴロと転がる横島に容赦なく降り注ぐ弾幕の嵐をギリギリで回避しながら、横島はこの少女に出会う前の事を思い返していた。
極 楽 幻 想 郷 (紅)
紅魔郷編 リプレイ その6
「……酷い目に遭った……」
魔理沙のクッキーに当たりトイレへと急いで駆け込み、事無き事を得た横島はげっそりと痩せこけた表情で館内を歩いているとふと考えが過った。
「……俺、何処に行けばいいんだ?」
トイレへと案内してもらって颯爽と美鈴に逃げられ、何処へ向かったら良いのか全く分からない。
とりあえず図書館は地下だと言う事を聞いたので地下室への入り口を探しているのであった。
「うーむ……とりあえず、美鈴さんの言った通りに動いてみるか」
もし迷ったら、と教えられたことを思い出そうとするが、先ほど踏ん張った所為かどうやらすっかり抜け落ちたようだ。
仕方ないので鼻を『強化』して美鈴が腕に抱きついた際に微かに付いた残り香を嗅ぎ取り、その場に這い蹲る。
フンフンと犬のように匂いを嗅ぎ取り、その場から犬のように駈け出した。
横島が犬のように紅魔館を走って数分後、立ち上がった横島はドアノブへと手を掛けた。
「ここが図書館か……」
中へ入ってみると、そこは一切本は無く、図書館と言うよりも部屋と言うべきだった。
別にここに図書館への秘密の入り口がある訳でもなく、簡単に言えば美鈴の部屋である。
「ん? 間違ったかなー?(棒読み)」
瞳を妖しく光らせそーっとドアを閉めると横島は音を立てずにタンスへと近づく。
一段一段開けて中を確認し、目的の物を見つけるとそれを静かに取り出す。
「美鈴さんの下着、ゲットだぜ!」
思わず拳を握り、誰も居ないとは思うが声を潜めて高らかに宣言する。
ぐふふ、と妖しく笑いながら尻ポケットに下着を突っ込み横島は美鈴の部屋を後にした。
「いやぁ、迷って辿り着いたのが美鈴さんの部屋ってのはラッキーだったなぁ。お土産も貰ったし」
上機嫌に気配を殺しながら紅魔館内を移動し、カサコソと素早く行動する様はまるでGを彷彿させる。
「さて、真面目に図書館探すか。えーと……地下室、地下室……。
こういうのって何かに触ったら秘密のスイッチで階段が出てくるとかそんなのだよな?」
そんな訳がある……かもしれないので、とりあえず横島は辿り着いた大広間でそれっぽい物を探し始めた。
置物の壺を回してみたり、意味も無く床を叩いてみたりとしてみるが全く反応は無い。
やっぱりそんな訳ないかと頭を掻き、後ろを向いた所で館の見取り図があることを知った。
「……お、俺の苦労って……」
先ほどまで活発に動いて、秘密のスイッチはないかと探していた自分がバカみたいで横島はげんなりとした表情となった。
現在位置から図書館の場所であろう地下室までのルートを確認し、横島はその場を後にする。
だが、ここで横島は失念していた。
図書館と似たような個所に、同じように地下へと続く道があることを。
そして現在、横島は着実に死へと近づいていた。
「なんでそんな際どいとこばかり!? うひっ!? あひーっ!?」
「もーっ! 避けちゃ駄目!」
「避けなきゃ死ぬわーっ! と言うかさっきと言ってる事が違うぞ!?」
「だってつまんないだもん。貴方はさっきから逃げてばっかりだし。飽きたのよ」
「だったら大人しく止めよう? ね、止めよう! 争いは醜いから!」
「だから、せめてボロボロになるまで弄んであげる♪」
「嫌じゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
喋りながらも弾幕を避け続ける横島に業を煮やした少女――「フランドール・スカーレット」は手を振るう。
瞬間的にいくつもの弾幕を生み出し、横島の際どい所を狙うが、寸での所で横島がかわして精々薄皮を斬る程度だ。
「くそっ……何か使える物……!!」
何かないかなー!? と必死になってポケットからパンツの中まで探す姿に、フランドールは少々考える仕草を見せる。
それを好機と捉えた横島は尻ポケットに何か物が詰まっている事を確認し、一存の望みを賭けて取り出した。
「これなら……無理だった!」
取り出したものは盗……もとい拝借した美鈴のパンツ。
即座に全く使えない(現状では)ことに絶望し、目の前に迫った紅い閃光を寸での所でかわす。
しかし横島の手からパンツが弾幕に舞い上がった。
パーンッ!「アーッ!?」
横島の手から離れたパンツは、紅い閃光に触れた瞬間破裂し、横島の表情を更に絶望へと染め上げた。
「お、俺のお宝がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「意外としぶといね。でも、そろそろおしまいにしよっか?」
紅い閃光の正体はフランドールの手元から続いてる杖の様な、剣の様な光であった。
形ははっきりしないが、とにかく触れればヤバいと言う事はパンツが証明してくれた。
何時の間にか端へと追い詰められ、お宝である美鈴の下着を無くし、最早横島の気力は風前の灯火であった。
今更弾幕ごっこで決闘、と言っても通用しないだろう(と言うかできるか! by横島)
どないしよー!? と顔から汗が滝のように流れ、遺書でも残しとけば良かったなぁと辞世の句を詠み始めようとした所で、最後の気力を振り絞り、望みを一投へと託す事にした。
「こ、これが効かなきゃ確実に蒸発しそう……いや、しっかりするんだ、俺!
頑張れ横島、お前がナンバーワンだ! ……なんか、俺が言うのもおかしい気がするけど」
自分を奮い立たせるための言葉に疑問を浮かべつつも、手のひらの珠へと意識を集中する。
「えぇい! これで――どうにかなってくれ!!」
「そんな珠一つで――!」
横島の手を離れた珠が輝き、辺りを閃光が覆い尽くした。
「「フラン(妹様)! 無事(です)か!?」」
慌ただしく鋼鉄でできた扉を物ともせず蹴り飛ばし、魔理沙と美鈴が部屋へと入る。
二人が部屋の中へと入って飛び込んできた光景は――
「……ふにゃ……」
「あー、どうにかなって良かった……ホント、えがったぁ……」
その場でへたりと膝を着くフランドールと、同じくぐったりと疲れた表情床へ転がる傷だらけの横島の姿だった。
「おい横島。フランになんかしてないだろうな?」
「誰がするか! と言うかこっちの方が危なかったわ!!」
「妹様、意識はありますか?」
疑いの眼差しを魔理沙から浴びせられながら、横島はフランドールの方を向く。
駆け寄った美鈴の呼びかけにボーッとしていたフランドールは意識を戻し、横島をジッと見つめる。
「貴方……一体、何をしたの?」
「いや、無我夢中で……気分を落ち着かせようとしただけ……だと思う、うん」
「何だか曖昧だな、おい」
「こっちだって必死で何を込めたか思いだせないんじゃーっ!!」
あの瞬間、横島は『鎮』静の意味を込めて、フランドールへと文殊を投げつけたのであった。
最も横島としては必死で、兎に角落ち着かせようと無い頭を振り絞って込めたので、何が込められていたのか全く分からないのであるが。
ともかく、命を(一方的に)賭けた鬼ごっこは、フランドールが我を取り戻したと言う事で幕を下ろしたのである。
つづく
あ と が き
ここまで読んでくれてありがとうございます。
そろそろ紅魔郷編は終わりますが、妖々夢編は8月中旬の予定で始めたいと思っています。
それまでは番外編などを上げて行きたいと考えています。
元からその予定でしたが。
やっぱEXにまで辿り着けませんねーそもそもノーマルをクリアできないしw
できれば感想お待ちしています!
説明 | ||
フランドールの喋り方ってこれで良かったかなぁ…? なお、紅魔館内部がおかしいかもしれませんができれば気にしないでいただけると助かります。 8/23追記 気が付いたらこんなにも間が空いていた……。 9月上旬までに上げれたらいいなぁ……。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
8057 | 7264 | 19 |
タグ | ||
GS美神 東方 横島忠夫 | ||
てゐがーさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |