サブストーリー「アリサの葬式」 |
祭壇には、次々と白い花束が置かれていった。
花束を置いて行く人は、どれも顔見知りが多かった。
そんな中、見知らぬ男が入場してきた。
男は細身で髪は短く切りそろえ、服装に乱れはなく、顔を見る限りとても優しそうな男だった。
そして、左手の薬指に指輪がしてあるのが見えた。
その男は祭壇の端に立っているシャムルとメリッサの姿に気付くと、近づいて一礼した。
シャムルとメリッサもそれに続いて一礼する。
そしてその男は祭壇に近づき、献花を終えると、手を合わせて深く一礼をする。
その一礼は他に人より少し長かった。
それを終えると、男はまたシャムルとメリッサの方に近づいた。
「…見ましたか?」
男はそう訪ねた。
「いえ。でも、間違いは無いと思います」
シャムルは少し俯いたまま、そう言った。
「これを…」
そう言って、シャムルは遺品である認識票を男に渡そうとした。
男はシャムルに手のひらを向け、受け取りを丁重に断り、祭壇の方を見た。
「そうですか」
祭壇の上には写真があり、その写真の女性は笑顔であった。
「最後まで、あんな感じで?」
「はい……」
「アイツらしいな」
男は少し笑い、こう言い加えた。
「なんか、死んだって気がしないな」
「はい……」
シャムルの返事に、男は笑い返し、その場を去ろうとした。
「もうお帰りになるので?」
メリッサが男に訪ねる。
「ええ。ここに長くいると本当にアイツが死んだって、考えてしまうので」
そう言って男はメリッサに一礼して去っていった。
男は献花していく人と、祭壇の写真を再び見ては深呼吸をし、去って行った。
「どなた…だったんですか?」
シャムルの少し後で立っていたレミがそう聞くと、シャムルはレミの方を見ずに答えた。
「アリサさんの旦那さんよ…」
「え?」
レミは驚いた。
「でも、別れたんですよね?」
レミの隣りでそれを聞いていたミミが聞き返した。
「そうね、元旦那さんってとこかしら」
シャムルはやはりミミの方を見ないで答えた。
「はっ、どうせアリサのことだから、何しに来たの?って、今思ってんだろうな」
ミミは鼻で笑いながらそう言ってシャムルの表情を確認したが、変わらないのを見ると、すぐに真面目な顔に戻った。
「本当に…ごめんなさい…」
シャムルの声が少し震えているのに気付いたレミとミミはそれ以上、何も言わない様にした。
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オリジナル創作ThreeHeartsのイベントです。 恐らく、物語に組み込まないのでサブストーリーとしてです。 |
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