嘘・恋姫無双 第一話 『白き星』 |
ここに来て1年が経とうとしている。
ある山の中、焚火の前に座り、その炎を見つめる青年がいる。炎の光が不気味に赤く染める瞳。その瞳は暗く、何も映してはいない。
首にボロ布を巻き、口まですっぽり隠しているため、その表情を読み取ることは出来ない。しかし、頬に鋭い刀傷があるのははっきりわかる。
このような静かな夜は、その傷がズキズキ疼く。彼は炎に誘われるように過去に意識を向けた。
彼の名前は『白星』。
この世界の住民ではない。彼がそれまで育った世界の記憶はしっかり残っているが、自分の名前だけは全く思い出せない。
彼は現代日本の東京で生を受けた。普通の学生生活を送って、大学に進学。その日も、アルバイトの帰りだったはずだ。急に目眩がして、道路に蹲ったはずだった。
頭が割れるように痛かった。苦痛で悲鳴すら上げそうになったが、喉は何かが詰まったような感じがして、声を出すことが出来なかった。
彼は気付いたら、荒野で気絶していた。
見慣れぬ風景、どう考えても、自分がいた場所とは異なる場所。まだ今に比べて幼かった彼の精神は恐怖に浸食された。
しかし、偶然通りかかった、近くの村の長が彼を拾い、養ってくれた。村長曰く、白い流星が落ち、そこへ行ったところ、彼を発見したらしい。
村人は得体の知れない青年を可愛がってくれた。
まだこの頃、彼には無邪気に笑う事が出来た。純粋無垢なその笑顔が村人たちの心を掴んだのだ。
彼に仕事を与え、暇があれば食べ物を彼に届けた。村長は彼に、白い流星を見た直後に出会ったことに因み『白星』という名前を与えた。
白星は賢い人間だった。この村が徐州の田舎にある村で、最近は近くの村々が黄巾賊に襲われた、という村人の会話から、今自分がいるのは三国時代の中国だという事を判断した。
もちろん、なぜ自分が三国時代に来てしまったのか、理解できなかったし、恐怖は彼を捕らえて離さなかったが、村人の温かい心が徐々に恐怖の闇を打ち払ってくれた。
何よりも白星には、その状況を飲み込んでしまう特別な柔軟さがあった。彼の特異体質だと言ってもいいかもしれない。
今までもどんな困難な状況になっても、一度、全て自分の中で受け入れてしまう事が出来た。流れに身を任せ、物事が好転するのを待つことが出来たのだ。
白星は幼いころから剣道を習っていた。元の世界でも、高校時代に剣道の全国大会に出場するほどの腕だ。
自分がお世話になっている村にも黄巾賊の小集団が襲ってきた事があった。
本物の武器、相手を殺すために作られた凶器を初めて目の当たりして、最初は戸惑ったが、彼には守りたいものがあった。
その想いが、彼を奮い立たせ、見事賊を追い払う事が出来た。元々、単純な腕比べだったら、農民上がりの黄巾賊にまけるはずがないのだ。
彼はまるで英雄のように祭り上げられた。
彼も愛すべき村人から称えられて、とても嬉しかった。その後も、何回か黄巾賊の小集団に襲われる事があったが、彼はその度に何とか賊を撃退する事が出来た。
彼は自分が強いと思ってしまった。自分ならば、この村を守ることが出来るという根拠のない自信のようなものが生まれてしまった。
彼は平穏な世界を望んだ。出来れば、このまま村人たちとずっと暮らしたいとも思った。
しかし、彼の平和は村人たちの絶望に染まった悲鳴によって断ち切られてしまう。
あとがき
初めまして、マスターと申します。
前から趣味で書いていたんですけど、
とりあえず、萌将伝も発売された記念に投稿してみました。
自分の拙い作品を晒すのは、非常に恥ずかしいですが、
一人でもおもしろいと思ってくれたら、非常に嬉しいです。
打たれ弱いので、誹謗中傷は勘弁してください。
試行錯誤しながらやっていくと思うので、文体の変更とかもあるかもしれませんが、
そこら辺は大目に見てくれると嬉しいです。
説明 | ||
処女作品です。 駄作ですので、期待しないでください。 オリジナルキャラクターが多数出てきます。しかも、ストーリーもオリジナル要素を含んでいます。苦手な人は注意してください。 主人公は北郷一刀でありません。 チート仕様になっていますので、そこら辺は温かい目で見てくれると幸いです。 また、ある作品の影響を受けているので、若干似通ってしまってるかもしれませんが、勘弁してください。 |
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