佐々美という名前
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「えと、ささささささささ?」

「もはや面影もありませんわ!」

「けど半分はあってる」

「……ま、まぁそんなこともありますわね」

ことの始まりはいつだって唐突だ、今回はたまたまこ

の二人が密室で顔突き合わせているだけに過ぎない。

「いい加減名前を呼んで欲しいものですが」

「さささささささみ?」

「さっきよりも一文字は近づきましたわね?」

「……美味しそうな名前だな?」

「誰が鳥肉ですか!」

鈴に友達GET作戦、それを実行しているだけなはず、

なのに鈴は一向に彼女の名前が覚えられず、険悪な雰

囲気がかろうじて緩和されているのは、鈴の頭にひっつ

いている猫のおかげだろう、猫好きに悪い人はいない。

「アドルフも美味しそうだと鳴いている」

「それは私に懐いてきているだけですわ」

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にゃーんとアドルフと呼ばれた白い猫が気持ちよさそうに鳴いた。そう、これだけでこの

密室の空気が清浄化されているのだ。これがなければ早々バトル勃発だろう。

「だいたいさ行が多すぎると思うんだ、だから今日からサヤと名乗ることを勧める」

「……何故サヤですの?響きはいいですがこれでは別人ですわ」

「さが八つでさ八」

「何て渾名を考えますの貴方は!?私には笹瀬川佐々美という立派な名前がありますわ!」

ウガーと佐々美が猫を連れた少女、鈴へと怒鳴りつける。そんな佐々美の怒声にも鈴は全

く意に介さず何やらポケットをまさぐり

「……腹が減っているから怒りっぽくなるんだ。これでも食べろ」

「あら、申し訳ありませんわね。ではありがたく……」

「モンペチは偉大だな」

「何を食べさせようとしているのですか!」

しかしそこは流石というべきか、叩きつけるでもなくそっと缶のふたを開け机に置く。そ

うするとスルスルと鈴の肩から降りたアドルフがもそもそと食べ始めた。何気に佐々美か

ら幸せそうな吐息が漏れてくる。

「全く、貴女といると本当に退屈できませんわ」

「それは良いんじゃないか」

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苦笑しながら佐々美はアドルフを一撫でして瞑目する。目の前にいるのは本当に困った子

だと内心で思いながら、それでもここ数日のやりとりがそこまで不快ではなかったことを

再確認した。幸いにして謙吾への近道でもあるしと言い訳もして。

「全く、世話がかかりますわね」

「……?アドルフはいい子だぞ?」

鈴のどこか抜けている言葉に苦笑を深める。きっとこれがこの子なのだろうと納得した。

相性はそこまで良くはないかもしれない、けれど気の置けない間柄にはなれるだろう。そ

んな確信も得られた、だからこそと佐々美は右手を差し出した。

「これからよろしく、棗鈴」

「ん?あぁ、よろしくだ」

しっかりと握りあった互いの手がどこか心地よくて

「さささささささみ」

「だから私の名前は笹瀬川佐々美!サ・サ・セ・ガ・ワ・サ・サ・ミ!ですわ!」

もはやお約束といわんばかりに佐々美が吼え、鈴が薄らと笑いながら返す。

「ささみ」

「はぁ、えぇ。それでいいですわ」

きっとこれから仲良くなれる、気長にいこうと佐々美は決意するのだった。

 

説明
リハビリ込での習作、折角だからイベント用に初の
リトバスSSに挑戦してみました。
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ct017ngm リトルバスターズEX リトバス  佐々美 

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