不思議なおみくじ |
「うっす、なんだ今日は集まり悪いな」
ここにいるのは僕、小毬さん、来ヶ谷さん、真人、
そして恭介の五人だけだった。他のみんなは何やら用
事があるらしい。
「やあ、恭介。その手に持ってるものは何?」
恭介が持つそれは筒状の少し古めかしいデザインの
物体だった。
「今日は面白いものを持ってきたぞ。その名も……」
「……」
しばしの沈黙。
「まあ、名前はないんだがな」
ないのかい!僕は心の中で一人突っ込みを入れる。
「これは不思議なおみくじでな、書かれている内容は
完全ランダム、かつ引いたやつは必ず書かれているこ
とを実行しなくてはならない」
なんだか胡散臭いものを感じる。すると、
「ほう。なかなか面白そうじゃないか恭介氏」
来ヶ谷さんが興味を持ったようだ。小毬さんたちも言葉にしないまでも恭介の話に耳を
傾けているあたり興味はあるらしい。
「で、恭介。これを僕たちに引けと?」
「おお、理樹。よくわかったな。まさかおまえエスパーか?」
いや流れ的にそうなるでしょ……。でもまあ、なんだかんだでちょっと面白そうだ。
「よし。じゃあ、真人。まずおまえから引け。」
「何でオレからなんだよ!」
「まあ、落ちつけよ。誰も知らない未知の領域にいのいちばんに足を踏み入れる、そこに
男気があると思わないか?」
「お、おう……」
「そしてそれを務められるのは真人、おまえしかいないと俺は思っている」
「そ、そこまで言われちゃやらねぇわけにはいかねーな!よし任せろ!」
うまく言いくるめられている……。そしてその様子をニヤニヤしながら眺める来ヶ谷さ
んと感嘆の表情で見つめる小毬さん。
「さすが真人君だな」
「うん!さすがだよ〜」
この二人の言う「さすが」はきっと別々の意味なんだろうな……。
「これを振ればいいんだな?ホイサッサッサのサーっと」
変な掛け声とともに中から何か出てきた。真人はそれを読み上げる。
「えーっと、……二十四時間一人じゃんけん?なんだこりゃ?……じゃんけん、ほい!じ
ゃんけん、ほい!うお、体が勝手に、じゃんけん、ほい!」
真人が一人じゃんけんを始めた。もしかして本当に二十四時間?地味に地獄だ……。
「じゃあ、次は私が引こうか」
これを見た後に颯爽と引きにいける来ヶ谷さんはやっぱすごいな。
「なになに、……隣の人と二人羽織で黒豆を食べる?」
来ヶ谷さんの隣の人って……やっぱり小毬さんか……。
「ふぇ?きゃーなになに!?」
「仕方ないんだ、小毬君!書かれていることは絶対なんだ!さあ!二人で黒豆を食べる作
業に入ろう!ハァ、ハァ!」
「ちょっ、ゆいちゃん、そこ、口とちがう〜、ちゃんと食べさせてよ〜」
来ヶ谷さんにとってはご褒美だろうな……。必ずしも悪いことばかり書かれているわけ
ではないのだろうか?
「次は俺が引くとするか……!?」
恭介が固まったまま動かない。何が書かれていたのだろう。
「恭介、どうしたの?何が書かれて……って妹に一週間口を利いてもらえない?」
「うおおー!こんなの理不尽だー!誰だ!こんなもの持ってきやがったのは!?」
恭介だよ……。っていうかやっぱり悪いことばかり書かれているじゃないか!
「あ、僕用事思い出したから今日はもう帰るね!」
そう言って立ち去ろうとしたが当然恭介が見逃すはずもなく、
「理樹ぃ……待てぇ……おまえも道ずれだぁ……」
生ける屍と化した恭介が迫ってくる。
「絶対に嫌だぁああー!」
叫びながら僕は逃げ続けた。
そうして今日もまた平穏(?)な一日が過ぎていくのだった。
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リトルバスターズ!短編小説コンテストの三作目です。 | ||
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