忘却の闇 |
また一つ断末魔が上が広がりそして消えてゆく。
これは罪が奏でる地獄の音色…それは者の罪だけ奏でられる。
そう、ここは地獄と呼ばれる罪と罰と悪と魔に満ちた世界…
「救いは償う事」
「救世は死」
「成仏(あがり)たければ贖いたまえ」
「ここで死にし時一つの罪が贖える」
これが我々獄人がここについたとき言われる言葉である。
雪峰は目の前の『闇』を前にして考えていた…。
ここは死後の世界。この地獄を越えなければ肉体は死んでも魂までは死ねない。
それが人が知恵を手に入れた代償だ…そうだ。全ての人はまずここに来る
「ここで死にし時一つの罪が贖える」
それは5つの罪がある人間は5回の処罰を受けて5回死ぬ必要があるという事である。
さらにその一つの罪が重ければ重いほど苦痛の時間は長くなる。
ここ(地獄)では死ぬのは容易くない。罪が贖えし時にしか死ぬ事はできない。
「ならば何もしなければいい」
この考えは通じない。ここでは徐々に光が失われるそして次に『立っている』感覚が無くなる。
そしていつの間にか罪の中に放り出される。それは耐え難い恐怖だ。
だからこそ雪峰は立ちずさんでいた…目の前の『闇』を前に…
ここにはいろいろな恐怖があふれる。
『死の恐怖』
『罪に身を投じる恐怖』
『終わりの見えない恐怖』
・
・
・
しかし、その恐怖の中に足を踏み入れなければ地獄(ここ)は本当の地獄と化す。
罪を犯していなければ何事も無く通れるはずだ…
雪峰は踏み出す。己が罪を犯していないわけが無いのを承知で…
黒いような紫にも似た空間が揺らめき果てなく広がるそれに向かって…
一歩また一歩と近づく…それにつれてものすごい熱気が肌を襲う
それはまるで砂漠の真ん中でその砂に埋まっているかのような感じだ・・・
『罪』の中に入る前に雪峰の意識は飛びそうになる。
己の犯した大きな大きな『罪』の中へと…
罪は小さいものから襲い掛かってくる…それを自らが自覚し真に反省すればよい。
反省すれば『罪』の先に出口(死)が見える。
雪峰の犯した最大の罪…それは忘却である。
雪峰がまだ小学生のころである。一人の少年が行方不明になり帰って来なくなる事件があった。
それは単なる行方不明ではなく誘拐事件であった。雪峰はその現場に偶然居合わせた。
しかし、そのときは大して気にも留めなかった。ただ、あいつが大人の人ともめている。
その程度である。その少年が大人ともめるのは珍しい事でもなかったからである。
少年は万引きの常習犯だった。他にもいろいろと不祥事を起こしていたみたいである。
そして、次の日になって事件を知った。昨日見たのが誘拐の現場だった事を雪峰は知ったのだ。
雪峰は全てを知っていた。
どこでその少年が連れ去られたか。
犯人の人数は何人か。
犯人の顔から大体の年齢。
そして、犯行に使った車。
全てを雪峰は見ていた。…しかしそれを誰かに言う事はなかった。
そのころ雪峰は軽いいじめにあっていた。何をしたわけでもない。
悪い事をする連中から距離を置いていたらその対象になってしまったのだ。
連れ去られた少年はその中のリーダー格の一人だった。
そのため雪峰はこう思った
「僕にいじめをしてくるやつが減る。周りのやつらもこれをきっかけに止めるかもしれない。」
と。思った事はその通りになった。周りの連中は雪峰をいじめるのを止めた。
事件は、犯人は多額の身代金を持って逃走。少年は死体となって発見された。
犯人が捕まったという話は聞かなかった。何一つ情報がない状態で逃げられ見つかるわけがなかった。
そう、これが雪峰が犯した罪。それは『見殺し』である。
もしもあの時情報を提供していれば少年は助かったのかもしれない。
しかし、雪峰が犯した最大の罪は違う。それはこの事を完全に記憶から消し去り
苦悩することなく、反省することなく過ごして来た事にある。
『闇』(『罪』)は己の罪をおぼろげに映し出す。
そう…おぼろげに。闇のかかったもっとも深い罪にきずかなければ
永久の『闇』(『罪』)に苦しみ続けるだけとなる。
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