四文字熟語 |
「クー公はいつ見てもちっこいなぁ。俺みたいにガッ
ツリ食わないと筋肉つかねーぞ」
「わふーっ! 痛いのです〜!」
真人の丸太のような指がクドの頭をつついているの
を理樹は見た。まぁ、この二人のコミュニケーション
みたいなものだから、と理樹は思っていたがこの日は
ちょっとばかり勝手が違った。
「ふぁっきん・ばすたーど! えあ・へっど! ごー・
あへっど! めいく・まい・でい!」
クドが胸を反らして、得意げに真人をにらみつけて
いる。
「お、おい、理樹。クー公のヤツ、なんて言ってるん
だ?」
「ひらったく言うと『ばかやろう、このボンクラ。や
れるもんならかかってこい』かな?」
「うおーっ! クー公にまでバカにされたーっ!」
真人は頭を抱え、滂沱の涙に暮れていた。
「クド、そんな言葉使いは良くないよ」
理樹が言うとクドは。
「そーりぃ、リキ。怒ったときに使う英語の『四文字熟語』と習ったものですから」
「いやいや、それ『四文字熟語』じゃないから。『フォー・レター・ワーズ』って言って相
手を罵る言葉だから」
「りありぃ! それはとても良くない言葉なのです。リキ、ごめんなさい。もう使いませ
ん」
「うん、クドはいい子だね」
「わふーっ! リキにほめられたのです!」
「……その前に俺に謝ってくれよう」
真人が涙の海に沈没しかけていた。
しかし、誰がクドにこんな言葉を教えたのだろう。そんなことを理樹が考えていると。
「あら〜、くーちゃんに理樹くん。こんなところで何してるの〜」
穏やかでのんびりとした声が聞こえてきた。
「あ、小毬さん。実はね……」
「おい! 露骨に俺を外すんじゃねぇよ! そんなに筋肉がキライかよ!」
絶叫する真人に、しかし、小毬は。