鬼ヶ島の鬼〜血染めの刃〜 第一話 |
「あれはうちが賊共を殲滅するために砦に乗り込もうとした時や」
天水の執務室、そこで自らが見た事実を説明するために過去を振り返る張遼―――――霞―――――。
その前にはここ天水の主である董卓―――――月―――――と、その軍師である賈駆―――――詠―――――がいる。
「せやけどな、うちらが砦に近付いても抵抗なんてまるでなかったんや。そこに行くまで誰とも闘わんかったし、砦からは矢どころか、人の気配もなかった」
「そんなわけないじゃない。報告によると賊は一万はいたはずよ。気配がないわけが」
「そうや。そんなことあるわけない。せやけどそれが起きたんや。しゃーないからうちだけで砦に乗り込んだら……」
「何があったんです?」
「……地獄絵図やった。」
張遼の一言に場は静まり返っていた。
「賊どもはひとり残さず殺されとった。あるものは真っ二つに、あるものは首を折られ、あるものは腸を引きずり出され。ありとあらゆる、考え付くすべての方法でもって殺されとったんや。」
月も詠も、言葉を発することができなかった。
「道も真っ赤に染まって、死臭がただよっとった。ウチやなかったら間違いなくはいとったと思う。」
なぜならばそれをさせないほどに、張遼の言葉には力があったからだ。
「そんな中でひときわ目立ったのが……」
「目立ったのは、なんだったんですか?」
「砦の一番奥に首をはねられた賊の首領と、壁に血でしたためられた一文字」
「なんて書いてあったのよ?」
「鬼」
「たった一文字、鬼や」
「血にまみれた手で書いたみたいに荒々しい書体やった。それと近くの村のおっちゃんがゆうとったんやけど、さらわれた人たちみーんな、鬼の面付けた奴が送り届けてくれたらしい。それ聞いたウチの隊のやつら、鬼ヶ島の鬼が出たゆうとる」
「そう……わざわざありがと。下がって休んでていいわ」
張遼がその場を去った後、月と詠はその鬼について話し合っていた。
「どう思う、月?」
「霞さんが言うなら間違いないと思うけど……」
「いくらなんでも突拍子もなさすぎるのよね」
「今のところは注意を促すくらいかな」
「だね」
その時、執務室の扉が開いた。
「月、詠」
入ってきたのは董卓軍の誇る一番槍、呂布―――――恋―――――である。
「噂、きいた」
「噂っていうと鬼ヶ島の鬼のこと?」
恋は頷く。そして月と詠は続く言葉に絶句した。
「恋、鬼ヶ島の鬼を知ってる」
その一言に。
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一話です。 張遼がみた鬼とは……? |
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