真・恋姫無双 縁日の夜に・・・。 |
「縁日、ですか?」
一刀の前で首をかしげる四人の少女。
「うん。俺がいた世界で、夏になると各地で行われる、ようはお祭りなんだけど」
そう言って、目の前に立つ少女たち、桃香、華琳、雪連、月の四人を見る一刀。
「お祭りねぇ。・・・まあ、ここのところみんな忙しかったし、息抜きの意味でもいいかもしれないわね」
華琳が腕組みをしながら言う。
「ですね。・・・でも、具体的に何をどうするんですか?」
華琳の言に頷きつつ、月が一刀に問う。
「まずは屋台かな。ちょっとした料理やお菓子を出すお店と、金魚すくいとか射的なんかの遊技場とかさ」
「金魚って何ですか?」
一刀の言葉の中で、聞きなれない言葉に気づいた桃香が尋ねる。
「あ、そうか。金魚ってこの時代にはないのか。・・・まあ、要するに小さな魚のこと。それをこのくらいの紙でできた網ですくうのが、金魚すくいって遊び」
手でその形と大きさを示しながら、一刀が説明する。
「射的はなんとなく判るから良いとして、後は何をするの?」
今度は雪蓮が、一刀に問いかける。
「そうだな。やぐらを組んでその上に太鼓を載せて、その音にあわせて、その周りでみんなで踊ったり、かな。で、最後の閉めはやっぱり花火だな」
うんうん、と一人頷く一刀。
「・・・花火かあ。・・・きれいだろうねえ」
うっとりとする桃香。
「じゃあ、みんな賛成ってことで良いかな?」
「私は良いわよ」
「私も」
「へう。私も賛成です」
「もちろん私もよ。最後の花火、一緒に見ましょうね、一刀」
最後にそんなことを言う雪蓮。
「あー、雪蓮さんずるい!!ご主人様は私と花火を見るんです!!」
「何言ってるのよ、桃香。一刀は私と一緒に見るの。でしょ?」
にっこりと、一刀を見て微笑む華琳。
「へう〜。わたしもご主人様と一緒に見たいです」
控えめに、しかしはっきりと言う月。
全員に詰め寄られた一刀は、
「・・・全員と見るんじゃ、駄目?」
と、むなしい提案をするが、
「「「「駄目です」」」」
あっさり却下されてしまうのであった。
それから数日後の夕刻。
都の一角に設けられた縁日の会場。
そこはまさしく、お祭り騒ぎな状態だった。
ある一角では、紫苑と秋蘭が射的の腕を競い、次々と景品をゲットして屋台の主を蒼白にさせていたり、
またある一角では、華琳と朱里が屋台を巡っては、料理に駄目出しをして技術指導をしていたり、
また別の屋台では、金魚すくい(もどき)をしていた詠が、なぜかたらいの中に落ちておぼれかけ、月と桃香に助け出されていたり、
大食い会場では、季衣と鈴々が恋に負けて、悔しがりながら、さらに残っていた料理を二人で平らげていたり、
踊りの会場では、太鼓を上機嫌で叩く霞がいて、そのそばで張三姉妹が歌を歌い、それにあわせて踊る大勢の元・黄巾党の面々がいたり、
さらには、利き酒の会場でべろんべろんになった雪蓮や祭、桔梗らを、冥琳と蓮華がたしなめようとして逆に酔わされたり、
町の人々も含め、みなこの祭りを心底から楽しんでいた。
そんな様子を、主催者である一刀は、笑顔で見守っていた(逃げていたともいう)。
「よかった、みんな楽しそうで。・・・やってよかったな、うん」
あとはみんなの暴走に巻き込まれないように祈るだけだな、と、そんなことを思う一刀。だが、
「・・・あれ?・・・あそこにいるのって・・・」
少し離れた場所で、何をするでもなく、ただ一人、木にもたれかかっている人物を見つけた。
「なにしてんだろ、あんなとこで」
気になった一刀はその人物のほうへと、歩き出す。
彼女はただ、祭りの様子をじっと見ていた。楽しそうだとは思う。だが、自分が行っても場違いだろうと、一人ここで聞こえてくる喧騒だけを楽しんでいた。
「一人で夕涼み?・・・お邪魔しても良いかな?華雄さん」
ふと聞こえてきた、一人の青年の声。
「・・・好きにすると良いさ」
声の主に、そっけなく答える華雄。
・・・・・・・・・・・・
しばしの沈黙。
「・・・向こうに行かないのかい?」
一刀が華雄に声をかける。
「・・・いい。ああいうのは私の性に会わん」
ぶっきらぼうに答える華雄。
「・・・そっか」
残念そうにうつむく一刀。
「お前こそ良いのか、向こうで皆が探しているだろう」
「・・・どうせ後でもみくちゃにされるのは判ってるからね。今のうちに体力温存しておくよ」
「ふふ。それもそうだな。・・・どうだ、少しぐらい」
そう言って、足元の酒瓶を一刀に差し出す華雄。
「・・・ちょっとだけなら」
そして、しばらく静かな時間が過ぎたころ。
ひゅるるるるるる・・・・・・・どおーーーーん。
夜空に大輪の花が咲き誇る。
「もうそんな時間か。・・・そろそろ行かなきゃな」
木の根元に座り込んでいた一刀が立ち上がる。
「・・・なあ、北郷。一つ聞いて良いか」
「ん?」
杯をもったまま、一刀に問いかける華雄。
「・・・わたしは、ここにいていいのだろうか」
その質問に、一刀は首をかしげる。
「どういう意味?」
「そのままだ。戦もなくなり、賊も殆ど出なくなった。かといって私は政には向かん。・・・斧を振るえぬ私が、ここに、みなと同じ場所にいてもいいものか」
うつむき、そう語る華雄。
「・・・いいんじゃないの?」
間髪いれず答える一刀。
「ちょっと待て!そんなあっさりと・・・!!」
「華雄さんの気持ちは分かるよ。でもさ、他のみんな、もちろん俺も含めて、今まで一緒にいた人が急にいなくなったらさ、寂しいじゃない」
「あ・・・・・・」
一刀の台詞に華雄は気付く。
(私は、自分のことしか考えてなかった。・・・月さまや、詠や、他のみなの事を、考えてなかった)
そしてさらに落ち込む華雄。
ひゅるるるるるる・・・・・どどおーーーーん。
何発目かの花火があがる。
その光が、華雄のほほを伝う雫を光らせる。
「・・・はい」
一刀がハンカチを華雄に手渡す。
「・・・すまん。みっともない所を見せた」
「誰だってそういう一面はあるよ。・・・じゃあ、はい」
そう言って、華雄に手を差し出す一刀。
「?なんだ?」
その意図が分からず、つい聞き返す華雄。
「みんなのところに行こう?・・・華雄さんがいていい場所に」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」
一刀の手をとり、立ち上がる華雄。
ひゅるるるるるる・・・・・どどどおおーーーーーん。
また一発、花火が上がる。
その輝きが照らすのは、多くの仲間に手荒い歓迎を受ける、二人の姿。
その手は、硬く握られたままに。
その心は、強く、永久に、繋がれたままに。
~ END ~
説明 | ||
恋姫夏祭り参加用のネタです。 一刀の都で開かれた縁日。 みなが楽しく騒ぐ中、一刀はふと気づく。 一人、姿の見えない人物に。 では。 |
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コメント | ||
真夏の夜のひとときですね。ナイスです!(深緑) まさかの華雄END(VVV計画の被験者) 関平さま、ありがとうございます。今後も頑張らせて頂きます!!(狭乃 狼) 天覧の傍観者さま、ありがとうございます。刀香譚は二・三日中にはお送りできると思います。のでもう少々お待ちを^^。(狭乃 狼) 綺麗な華雄ssで感無量であります。良い感じにまとまってこういう華雄ルートも良いもんだと感じてしまいました。真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜の方面にも期待をしつつ、次回の投稿をお待ちしております。(天覧の傍観者) kureiさま、ありがとうございます。華雄はここにいるぞー!・・・なんて^^。(狭乃 狼) むしろ此処に居てほしい!><良いSSを感謝です!(kurei) doktolさま、次は華雄メインのルートを生みだs桃香「刀香譚終わってから、でしょ?(ゴゴゴ)」・・・はい。(狭乃 狼) samidareさま、華雄への愛は不滅です!!(狭乃 狼) 宗茂さま、ここだけではなく、あらゆる場所に華雄の居場所をつくりましょう!!(狭乃 狼) よーぜふさま、華雄はみんなのそばにいます!!(狭乃 狼) はりまえさま、どっかで見てました?!・・・あ、華雄。そ、その手の斧の赤いものは・・・(汗)(狭乃 狼) ルーデルさま、汗は心の涙です!どんどん流しましょう!!(え?)(狭乃 狼) おぉっ!萌将伝にいないと思ったらここに…。(doktol) 華雄は愛されてますね〜。ここでは華雄人気者ですね(samidare) TINAMIには華雄さんの居場所がたくさんありますねwww(宗茂) 華雄姐さん・・・よかった・・・貴女はずっといていいんだ。いや、ずっとそばにいてほしいんです。(よーぜふ) そして華雄さんは夜一刀君とにゃんにゃんしてました。・・・・・・・はないよな、すいません卑猥でした。!!!(黄昏☆ハリマエ) あれ?目から汗がとめどなく出てるんだが・・・・(ルーデル) 東方武神さま、手ぬぐいでよければどうぞww(狭乃 狼) 華雄・・・(ToT)オオォォ涙が止まらんぜヨ(東方武神) 砂のお城様、ありがとうございます。・・・乱痴気騒ぎも考えたんですけどね^^。(狭乃 狼) kashinさま、お初でありがとござます^^。華雄はもっともっと目立つべき!!ですよね^^。(狭乃 狼) あぁ 嬉し涙が・・・・ 華雄救済SSも増えてきて俺得です♪(kashin) |
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