中華の歌姫 愛紗 歌う(キラッ☆)
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兵士「ダメです御遣い様ッ! ドンドン敵が増えていきますッ!」

 

 城門は、今にも破られそうに揺れ動いている。

 城壁を よじ登ろうとする何千人を、守備兵は必死に落とそうとするが、敵の多さに とても手が回らない。

 もう、いつ突破されてもおかしくない状況だった。

 

桃香「ご主人様ッ! このままじゃもうダメだよッ!」

 

鈴々「お兄ちゃん、なんとかするのだッ!」

 

 ……どうしてこうなった。

 完璧な計画のはずだった、大成功を収めた前作の上に、さらなる成功を積み上げ、我々は歴史に名を刻むはずだった。

 なのに何故自分たちは こうして追い詰められている? 

 どこからともなく集まってきた何千何万もの群集に、今にものど笛を噛み千切られんとしている?

 イヤ、答えは わかりきっている。

 北郷一刀は、みずからの唇を血が出んほどに噛んだ。

 自分ともあろうものが、こんな致命的なミスを犯すとは。

 城壁の向こうから、群集の声が聞こえてくる。

 

「出てこいぃ〜ッ! 責任者出てこいぃ〜ッ!」

「説明しろ! 説明しろ! 説明しろぉぉぉーーーッ!」

「なんでだッ! なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……!」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「なんで愛紗の個別シナリオがないんじゃぁぁぁぁぁぁッッ!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

一刀「……クソッ!」

 

 北郷一刀は頭を抱えた。

 

一刀「愛紗のイベントを入れ忘れたがために、このような事態を呼んでしまうとは! ……失敗かッ? オレは失敗したのかッ? このエロゲー戦国乱世に、オレは敗北者として歴史に名を刻むのかッ?」

 

桃香「しっかりして ご主人様! 嘆いている場合じゃないよッ!」

 

星「そうですぞ主ッ! 外には、愛紗欠場に怒る領民たちで溢れ返っておりますが、まだ我々は負けておりません! 主、策を! この状況を切り抜ける策を、主なら考え出せるはず!」

 

一刀「……そうかッ、よし、オレはやるぞ、起死回生の秘策をッ!」

 

 そうして一刀が打った策とは。

 

 

     *

 

 

 

 

 

 恋姫特別企画!

 

   愛紗ソロコンサート!!

 

   皆のアイドル関羽将軍が、歌い踊りの大サービス☆

   来ていただいた領民の皆様には抽選で、愛紗のサイン入り色紙、愛紗プロマイド、

   愛紗抱き枕、愛紗と握手する権、シークレットシートと交換できるクリアしおり

   などが進呈されます!

 

   皆さんふるって参加してくださいね!

 

 

   主催:天の御遣い@北郷一刀

   協賛:魏呉蜀・三国運営委員会

 

 

 

 

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     *

 

 

愛紗「…………なんですか これは?」

 

 愛紗が、執務室に入ってくるなり張り紙を机に叩きつける。どうやら街中で見かけたらしい。

 

一刀「愛紗でコンサートを開くのさ! 君の歌声、期待してるよ!」

 

愛紗「私は何も聞いておりませんがッ!」

 

 愛紗は今にも火を吐きそうなほどに怒り狂っている。

 知らないうちに、自分がアイドルとして歌って踊ることが決定していたら当たり前か。

 

一刀「頼むよ愛紗ッ! 萌将伝に君のイベントがないってことを知った連中が、大挙をなしてブログやら2chを炎上させているんだ! このままじゃオレまで どんな目にあうか わからない。その前に愛紗、君の歌声で彼らを沈静させてくれ! なんかこうホールド波的なモノを出して! アイモ、アイモって!」

 

愛紗「ご主人様……、アナタはムチャを言いすぎです。私は武将ですよ、歌や踊りなどのような芸事は、したためしが……」

 

一刀「それなら問題ない! コーチを呼んだ!」

 

愛紗「こ、こおち?」

 

 そこへ現れる三人の美少女。

 

天和「みんな大好き、天和ちゃん☆」

 

地和「みんなの妹、地和ちゃん☆」

 

人和「とっても可愛い、人和です」

 

 

 

 

天和&地和&人和「「「三人揃って、数え☆役満しすたぁずッッ!!」」です」

 

 

 

 

愛紗「本職キタッ?」

 

一刀「彼女らは、日頃からアイドルとして遠征し、男どもの心をつかむ能力に長けている。彼女らからレッスンを受け、アイドルの極意を掴むのだ愛紗ッ!」

 

地和「なんで商売敵を作るのに協力しなきゃいけないのよッ? って思ったけど、一刀の頼みじゃ しょうがないわね」

 

天和「私はぁー、楽しそうだからいいよー」

 

人和「指導料も納得した額をいただいてますし、報酬分の仕事はさせていただきます」

 

 なんだか前向きだ このアイドルども。

 

愛紗「しかし待ってください ご主人様ッ! 先程も言いましたが私は武将なのです。この青竜偃月刀で屍山血河を作り上げ、主君のために勝利をもぎ取るのが仕事です。このような見世物のようなマネを……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

地和「アイドル舐めんなァーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 地和さまが おキレになられました。愛紗はビックリして言葉を飲み込んでしまう。

 

地和「アンタにとっちゃ見世物でもね、アタシたちは本気で この仕事やってんのよ! 忙しくて三時間も寝れないのに目にクマも作れなかったり、四六時中パパラッチに追い掛け回されたり、スポンサーに枕営業したりするのだって、好きだからこそやれてんの! 将軍だけがエライ仕事だと思うなァッ!」

 

愛紗「ご、ごめんなさい……!」

 

天和「でもぉ、枕営業は お姉ちゃん好きだなー」

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人和「スポンサーって一刀さんのことですからね。他の人には絶対しませんし」

 

 ただ一刀とイチャイチャラブラブしているだけだった。

 

一刀「とにかく、もうプロジェクトは発進してしまったんだ。愛紗には覚悟して、三人からアイドルの指導を受けてほしい」

 

愛紗「な、なんとかなりませんか?」

 

一刀「なりません、チケットもう完売しちゃったし、全席一律¥9,240(税込)」

 

愛紗「高ッ?」

 

一刀「というわけで、早速いってみましょうIDOLM@STER with 恋姫!」

 

 

      *

 

 

 そうして、愛紗をアイドルへと仕立て上げる地獄の猛特訓が始まった。

 コーチ役は現役アイドル張三姉妹。実戦で鍛え上げたアイドルテクが、惜しみなく愛紗へと注ぎ込まれる。

 

地和「コラー、そこ、何恥ずかしがっとるかーッ!」

 

 ステージ衣装を着てみた愛紗に檄が飛ぶ。

 

愛紗「し、しかし、こんな際どい服を着せられては……、ちょっと動くだけで、下着が見えてしまいそうではないか」

 

地和「“見える”んじゃないの! “見せる”のよ! アイドルは見せるのが仕事なのよ! 踊りも 笑顔も おっぱいも パンツも、見せられるものは何でも見せていきなさーいッ!」

 

 

      *

 

 

天和「えっとね、愛紗ちゃん、ここの振り付けは、もっと思いっきり腰をかがめた方がいいと思うな。こう、ガバッと?」

 

愛紗「そ、そうなのか?」

 

天和「その方がー、胸の谷間が、客席まで よく見えるのね?」

 

愛紗「なんとッ?」

 

天和「そういう技はー、地和ちゃんや人和ちゃんは知らないから、私がジャンジャン教えてくねー」

 

地和「ちっ」

 

人和「ちっ」

 

 

      *

 

 

人和「愛紗さん、もっと腰を振って踊ってください。それじゃジジイのファックの方が気合入ってますよ」

 

愛紗「なんか言うことが沙和っぽいッ?」

 

 

      *

 

 

 そしてイベント当日。

 

一刀「会場は満員御礼だな」

 

朱里「来場者さんの数は、七十万人を突破したそうです ご主人様」

 

一刀「コミケ並だな」

 

 仮面ライダーの乗るバイクの最高時速並に無茶な数字だ。

 

朱里「それだけ、愛紗さんの人気が物凄いってことですよー」

 

一刀「皆、愛紗のイベントがない鬱憤を、このライブで晴らしてくれればいいが……。で、当の愛紗は どうなってる?」

 

 開演前の様子を見に、一刀は楽屋へ移動する。

 そこには、この日まで付きっ切りでコーチをしていた張三姉妹と、アイドルらしく綺麗に着飾った愛紗がいた。

 

一刀「おーい、愛紗。どうだい調子は?」

 

愛紗「…………」

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一刀「天和たちから重点指導受けたらしいし、これなら武道館でだって通用するだろ。な、愛紗?」

 

愛紗「…………」

 

一刀「……愛紗?」

 

 

 

 

愛紗「………“恋姫無双”は、ただの言葉です」

 

 

 

 

一刀「なんか悟り開いとるぅーーーーーーーッッ?」

 

愛紗「近づいたら陽炎のように、消えて見えなくなりました」

 

一刀「天和! 地和! 人和! どーなってんだコレッ? 愛紗が悟ってるじゃねーかッ? ゴール地点を見つけちまってるじゃねーかッ? これからライブ始まるってのに どーするんだよ この状態ッ?」

 

天和「にゃははははは……、ちょっと気合入れて指導しすぎちゃった☆」

 

人和「ですが安心してください、我々のアイドル魂は、すべて愛紗さんの中に注入済みです。彼女はもう既に、骨の髄までアイドルとなっています」

 

一刀「ほ、本当かァ〜?」

 

 首を捻る一刀。

 その足元で愛紗は、益体もないことをブツブツと呟いとる。

 

愛紗「逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ…………」

 

AD「会場十分前です、関羽様、スタンバイお願いしまーす!」

 

愛紗「はいッ! 私は蜀軍のアイドル、関羽雲長ですッ!」

 

一刀「なにぃッ?」

 

 勇猛と立ち上がった愛紗に、一刀が驚愕する。

 

地和「ほーら言ったでしょ? この子は既に骨の髄までアイドルなのよ」

 

人和「ここまで改造するのに苦労しました……」

 

一刀「改造ッ? いったい お前ら愛紗に何を施したんだッ?」

 

天和「かってに改造〜ぉ?」

 

人和「パンツじゃないから恥ずかしくないもんキャンペーン」

 

一刀「ボケ倒すなッ!」

 

 三姉妹+一刀が言い争ってる間にも、愛紗はステージへ一直線に向かっていた。

 

 

      *

 

 

 熱気あふれるライブ会場。

 鮨詰め状態の観客席。独特な熱気が、一部の隙間もなく立ち込めている その会場に、天使が光臨した。

 

 

愛紗「皆、今日は来てくれて ありがとう」

 

 

 愛紗が両手でマイク(真桜作)を握って語りかける。

 客席から鳴動のような歓声が上がった。

 

愛紗「私は本当に幸せ者だ。私のために これだけの人が集まってくれる。武将として、これ以上の誉れはない」

 

 おぉー、ちゃんとやってる、と舞台袖から一刀は驚き半分、感心半分。

 その横で、張三姉妹も自分らの仕事のできに誇らしげだ。

 

愛紗「その感謝の気持ちをこめて、歌わせてもらう。…………『ふわふわ時間』」

 

一刀「それ らめェェェェェェーーーーーーーーッッ!?」

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 その曲は、一刀が泣いて止めたために演奏中止となりました。

 気を取り直して もう一曲。

 

愛紗「この曲は、私自身が作詞したものだ」

 

 という語りから始まる。

 

愛紗「私が これまで、ご主人様や皆と駆け抜けてきた時間を想い、詩にしたためた。つたないところもあると思うが聞いてほしい」

 

 愛紗が合図を送ると、バックの演奏者たちが次々と楽器を奏で始めた。

 スローテンポの、静かな曲だった。

 その音調に引き込まれ、観客たちも しばし興奮を忘れる。

 静寂と見まがうようなメロディに誘われて、愛紗の透明な歌声が流れ出す。

 

 

     *

 

 

 何度生まれ変わっても

 

             作詞:関羽雲長

             作・編曲:貂蝉&卑弥呼

 

 

風が塵を運び去る 灰には まだ熱が残ってる

 

戦場を駆けて 私は行く 何処へ? そっと風に問いかけてみた

 

たった一人 進み続ける 欲しいものがあるから 掴みたいものがあるから

 

痛くて 苦しくて それでも進むその道に いつもアナタが待っていた

 

何度も出会う

 

知らないはずなのに私は知ってる アナタの笑顔を

 

無人の荒野 朝の通学路 満開の桃の花

 

そこにゼンブ アナタはいた

 

別れても 別れても

 

また会えるんだって知っている

 

何度生まれ変わっても 必ず アナタに出会えた

 

また会えるよね? アナタが望む限り 夜の眠りに落ちたとしても

 

明日になれば 朝日のように きっと アナタに会えるから

 

何度だって 何度だって

 

何度だってアナタに出会えるから

 

 

    *

 

 

 無音。

 水を打ったような静寂は、会場に集う観客すべてが、愛紗の歌声に心を奪われたから。

 やがて、人々は感動以外の心を思い出し、その感動を外に吐き出すための手段を実行し始める。

 会場が、かつてないほどの歓声に揺れ動いた。

 

観客「愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗! 愛紗!」

 

 割れんばかりの愛紗コール。

 この一事だけでイベントの成功は明らかだった。

 

愛紗「ありがとう! 皆ありがとう!」

 

 大歓声に応える愛紗。

 笑顔を浮かべるまま彼女は、舞台から姿を消した。

 

観客「……アレ?」

 

観客「愛紗ちゃん消えた?」

 

観客「ってか、ライブこれで終わり?」

 

 

 ………………………………。

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観客「一曲だけ くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、たった一曲だけのライブに¥9240(税込)を払わされた観客たちは再び暴動を開始。都は手に負えない大パニックに陥る。

 しかし、このライブのマネジメントで大儲けした一刀は、実にご満悦でしたとさ。

 

 

                      終劇

説明
不遇な愛紗で遊んでみよう企画第二段。
他の人たちが上げている愛紗の作品を見て、インスピレーションが湧いてしまいました。
今回は、前の甘々愛紗と違い、ギャグ中心のブラックユーモアです。
怒らず、広い心で読んでくださいまし。
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コメント
Alice.Magic様>あこぎなプロデューサーなのです(のぼり銚子)
一回のライブで約64億も稼ぎおった・・・ 蜀の種馬はバケモノか・・・(Alice.Magic)
深緑様>指摘されるまで気づきませんでした(汗。修正しておきます。ご指摘ありがとうございました。(のぼり銚子)
鈴々はご主人様ではなくお兄ちゃんではないかと?あと一刀よ暴発を抑えたいのか拡大させたいのかどっちだ?w・・・愛紗がんばれ^^;(深緑)
砂のお城様>返す言葉もありませんorz(のぼり銚子)
鬼間聡様>返してほしいのは時間だけっ?(のぼり銚子)
一刀国主のくせにやることせこいぞ!チケット買うのに並んだ時間と入場の時間を返せ!(鬼間聡)
jackry様>中古で値が落ちるのを待つべきか? とも思っています……。(のぼり銚子)
リョウ流様>今回はかなりブラックなネタなので明るくないとどうしようもないですねw(のぼり銚子)
320i様>ここにも一刀商法の犠牲者がッッ!(のぼり銚子)
ヒトヤ様>人和はさりげなく沙和の影響を受けたようですw(のぼり銚子)
浅井とざし様>こ、ここにも一刀資本主義の犠牲者がっw(のぼり銚子)
はりまえ様>是非、マイク片手にAKBみたいな衣装で踊る愛紗のCGを見たかったものです。(のぼり銚子)
ジジィのファックでくそふいたWWW(ヒトヤ)
その群衆の中に僕も含まれています。今回も爆笑させてもらいましたww(浅井とざし)
やってもいいけどマジで現実(ゲームで)やってほしかった・・・・・・ついでに観客さん・・・・・・乙!!(黄昏☆ハリマエ)
ひっとー様>きっと乙女心あふれるメロディーを考えてくだすったに違いありませんw(のぼり銚子)
ロンギヌス様>華雄さんたちのお話は別の人が書いてくれるでしょう。 あるいは1.暑すぎて全裸で過ごすことにした恋 2.バイト先が一刀の経営する海の家だった華雄 3.夜トイレに行かなかったら朝大変なことになった あわわ …の中で一番リクエストの多かったものが書かれるかどうかは やってみなければわからない。(のぼり銚子)
future様>ありがとうございます、笑ってくれてありがとうございます。(のぼり銚子)
よーぜふ様>すいません今回は悪ノリしました。ってか悪ノリしてない回とかないか(汗(のぼり銚子)
とりあえず、雛里と恋は二の次で、華雄に関しては三の次か・・・(ロンギヌス)
wwwwwww(腹かかえて笑ってる) てか作曲者と編曲者がwww(future)
三姉妹枕営業だと!?って一刀か・・・ちっ。 ギャグテイスト過ぎる上に一刀が悪い子w(よーぜふ)
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真・恋姫†無双 萌将伝 愛紗 天和 地和 人和 アイドル 

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