METALGEARCROSS〜OUTERHEAVEN〜 第6話 |
成都では未だ激戦が続いていた。
外史から見ると明らかに異形である大型戦車に対し、これまた異形である強化骨格に身を包んだ男二人とサイボーグ一人が交戦していた。
強化骨格を纏うジェームスは城壁からありったけの火薬を撃ち込み、同じ強化骨格でも異形の蛇二匹を従えた一刀は戦術支援バイクWolfに搭乗し最強兵器レールガンを脇に抱え、最強のサイボーグ、ケインは彼の後ろで飛んでくる銃弾や石片を蛇腹剣と鞭剣を使ってはじき飛ばしていた。
その三人の努力を嘲笑うかのように大型戦車は悠々と三人を追い回していた。
『しかしこのデカブツ・・・何なんだ?』
「・・・1974年のCIAが開発した機体に酷似している」
「60年前・・・まさかBIGBOSSの解決した・・・」
『連中め。演出家気取りか!』
60年前とは役者も脚本家も全て違う。
しかしこの60年を知っている誰かが、この戦いを仕組んでいる。そう思わせる"演出"だった。
六話・外 蹂躙 〜Dreadnought〜
もう何度目のミサイルだろうか?
ジェームスがミサイルを数発打ち込んだところで一刀と同じ違和感を感じる。
『・・・効いてない?』
今まで一刀がレールガンを打ち込んでも、ジェームスがいくらミサイルを撃ち込んでも大型戦車はびくともしなかった。
有効打であることは確かだ。
人類最強の弾速を誇るレールガン、はたまた様々な紛争地域で数々のヘリを撃墜した由緒あるミサイル。威力も名声も申し分ない量を打ち込んでいるはずだった。
「おそらくアレは、自分に向けられる銃口の位置、向き、風向きなどを計算して回避する機能が付いている」
『ってことは射撃武器は無意味ってことか?』
「いや、致命的な一撃しか避けないだろうな。それにAPS(※1)である以上システムの欠陥があるはずだ」
上部のミサイル発射口が解放され、再び発射される。
Wolfに搭乗している以上、そう簡単にミサイルに当たることはないが爆風が彼を煽る。
『完璧なシステムだったらどうする?』
「だったら穴を作るまでだ」
「なるほど、いいセンスだ」
かけ声とともにケインが後ろから二脚兵器に飛び移ろうと試みる。
二脚兵器はそれを察知し、取り付かれないように全体を大きく動かす。
「甘いわ!」
ケインは蛇腹剣を伸ばし、ガトリング砲台に巻き付ける。
支点を作り出したケインは、それを利用し機体に取り付く。
『さすが!フォックスの称号は伊達じゃないぜ!』
「ジェームスはそのままミサイルで武装を破壊。ケインはそのまま張り付いてそのやっかいなガトリング砲台を潰していってくれ」
『了解!』
「承知した!!」
* *
「華琳さん、雪蓮さん!」
中央公園では三国の将全員が合流していた。
厳重警戒の上で呉と魏勢を見つけた桃香が呼びかける。
「桃香、無事?」
雪蓮がやや乱暴に桃香を抱きしめる。
住民を避難させていた城を死守していた蜀勢も、数を減らそうと躍起になっていた呉と魏勢もボロボロだった。
「今、馬鹿三人組は東門にいるわ」
「まったく、生きてたと思ったら忙しいったらありゃしない」
桃香が視線をずらした先には黒煙が、時折爆音も鳴り響いている。
それと・・・門よりも大きい何かがちらほらと視界に入る。
「絶対に近づくなってケインが言っていたわ。アレがそれまで言うのだから・・・近づかない方がいいでしょうね」
「ご主人様・・・」
大型戦車がその武装の数を減らし始めていた。
ケインに張り付かれたのが運のつきだ。
直接攻撃でガトリング砲台が数を減らし、門の方向から飛んでくるミサイルと足元を動きまわる蝿から放たれるグレネードは着々と獲物を弱らせていった。
その損傷率が一定に達したとき、突然大型戦車が大きくその巨体を振動させ始める。
その振動に驚いたケインは思わず飛び降り、一刀のWolfに飛び移る。
『殲滅モードに移行』
キャタピラ部分から太股部分が展開し、大きく上体が持ち上がっていく。
「変形・・・だと」
「設計したのはどこの日本人だ!?」
「二脚兵器・・・メタルギアなのか・・・」
メタルギアにふさわしい二脚兵器の姿になった蹂躙兵器が全容を晒す。
全高は30mと言ったところか。さらに巨大となったメタルギアは新たに武装が展開され、機体内部に折りたたまれていた砲塔を右肩に展開する。
『主砲発射準備。目標、敵防衛地点』
「何!?」
警告音と同時に脚部からアンカーが飛び出し機体を固定。折りたたまれていた砲塔から何かを打ち出すようだ。
「Wolf!あれは!?」
『BEAMWEAPON!!』
「ビームだと!?」
「今はビームというのが問題ではない。ビームの発射には数ギガワットという電力を消費する。それだけの電力を供給できるジェネレータといえば一つしかない」
「・・・核か!?」
「一刀!旦那!今はビームを止めるぞ!」
ジェームスの言うとおりだ。どのみち今はビームを打たせてはならない。
一刀はレールガンを、ジェームスはアンチマテリアルライフルをビーム砲に向かって連射する。
「ケイン、今なら張り付けるか?」
「動かない敵に張り付くという簡単なことはしたくないな」
彼のその言葉を聞いた一刀は、バインダーから一本の棒を取り出しケインに渡す。
「仕込み棒だ。好きに使え」
「鬼に金棒、狐に棒ということか?」
ケインがそう叫ぶと、走行中だったWolfを揺らすほどの勢いをつけ一気にメタルギアに飛び移り、そのまま一気にビーム砲に向かって走り出す。
「はいだらぁぁぁ(※2)!!」
そのままビーム兵器の側面に一閃。棒に仕込まれていた刃物が飛び出しビーム砲に突き刺さる。
「ここを狙え!」
その言葉を待つまでもなく、ジェームスと一刀はケインが穿った一点を狙い撃つべく移動を終了していた。
「行けぇ!!」
「当たれぇ!!」
ジェームスと一刀も込めた想いと暴力は一緒だ。
狙撃が得意なジェームスの弾丸は見事なまでにケインの穿った点を狙い撃ち、一刀のレールガンはその地点を面で攻撃した。
おそらくビーム砲の接合部分がやられたのだろう。メタルギアが小さな爆発とともに大きく動く。
「やったか!?」
『いや、まだだ!』
「健全だ。戦闘には一切問題ないといっても過言ではない」
あくまでビームという驚異を退けただけ。
明らかに核動力で動いているメタルギアという驚異は去っていない。
『跳躍体勢』
「なんだと!?」
驚きの声を上げたのはジェームスでもなく一刀でもなく、張り付いていたケインだった。
30mもの巨体が大きく縮まり成都からかなり離れたところまで跳躍する。無論ケインを載せたまま。
地上には粉塵が舞い上がり、地響きが鳴り響く。
―――やばい。
三人の御使いはとっさにそう判断した。
もっとも危険なのは張り付いていたケインだが、彼は最強のサイボーグだ。ひどい話ではあるが他の二人は彼の心配はしない。
一番危険なのはその距離だ。
『脚部駆動モーター、チャージ』
「ジェームス!やつが走り出したらミサイルをありったけぶち込め!ケインは気にするな!」
『ひでえ!?』
「どうせ殺しても死なん!心配するのは遺産相続だけだ!」
一刀はすぐさまレールガンをチャージし、脚部の関節部分を狙撃する。
冷静な判断だった。メタルギアは脚部にそれを受けて再び巨体が大きく動く。
「ケイン!給料分仕事しろ!」
「一刀!弟に見捨てられてお兄さんは悲しい!!」
「っせえ!黙って働け!ロリコン!ペドフェリア!穀潰し!(※ピーピーズキューン)!!」
まあよくあれだけの衝撃を受けてもピンピンしていることだ。
いつもの調子のケインを確認し、一刀はWolfを走らせる。その間も間接部を狙った狙撃は手をやめない。
『しかしこの大質量が成都に突っ込めば被害甚大だぞ!』
「奴の土手っ腹にぶち込む。二人はやつが走り出さないよう時間を稼いでくれ」
「今度は大丈夫なんだろうな?」
ケインの言う前回はアシッド駆るREXの時だろう。
それに対し、一刀は不敵に笑う。
「今度のJokerはAce4枚つきのFive of a Kind(※4)だ。任せろ」
『Loyal Straight Flash(※5)を作らせねえってか。その賭け乗ったぜ!』
「頼むぞ!アトモス・スネーク!」
そんな通信の間にメタルギア後方に装備されているミサイル発射口が展開される。
『ジェームスさん!ロックされたよ!』
『LOCKED』
「なっ!?」
「・・・」
一気に接敵している一刀は構わず突っ込めばいいが、城門の上にいるジェームスは狭い上に退路もない。
「いけるな、ジェームス」
『そこは普通、いけるか?だろ!?逝けるけど行けねえよ!』
「お前本当にアメリカ人か?ともかくさっさと撃つもの撃って退避しろ」
そんな通信をしている端から、ケインがミサイル発射口を一つ潰したらしい。メタルギアが大きく揺らぐ。
「ほら、一発減ったぞ」
『旦那!全部壊して!俺死んじゃう!』
だが確かな隙が生まれた。
冗談めかした泣き言を棒読みで読み上げたジェームスは再びミサイルを構え、メタルギアに向けて発射する。
そんな掛け合いをしている間にも一刀はメタルギアに着実に接敵していた。
ガンポッドから迎撃の弾幕が彼を歓迎するが、もはや当たる気はしない。
メタルギアの懐に潜り込んだ瞬間、一刀はWolfを飛び降りる。Wolfは無人のままケインの回収に走らせた。遠巻きであったがケインがWolfに搭乗するのまで確認できた。
「・・・よし」
そして一刀が飛び降りた地点。それはメタルギアの丁度真下だ。
寝転んだ状態で一刀は、強化外骨格の援護を受け急速充電を開始、レールガンを構えた。
「吹き飛べぇぇ!!」
そう、上に突き上げるようにメタルギアのどてっぱらにレールガンを連射した。一撃ごとにメタルギアが爆音をあげ、どんどん動きが緩慢になっていく。
『機体損傷度90%突破、これ以上の戦闘行動は不可能と判断。自爆準備』
『なっ!?』
「ちぃ!」
ジェームスとケインが驚きの声を上げる。ケインの読みが正しければメタルギアは核動力だ。
自爆されれば大陸全土は焦土と化す。それだけではない。数千年単位で人も動物も植物も生きてはいけなくなる。
しかし一刀はレールガンでメタルギアを突き上げるのをやめなかった。
核爆発を誘発する恐れもあるがそれを気に留めず連射を続ける。
数十発打ち込んだところでトリガーが空を切り弾切れを知らせる。しかし攻撃の手はゆるめない。
すぐさま自分の血圧を上げるように意識を集中する。
「バーサーカー!!」
白目の毛細血管が拡張し、赤く染まっていく。
だが今度はこちらの隙が生じた。メタルギアのミサイル発射口から成都に向けてミサイルが発射される。
『アッー!!』
何か聞こえたが気にしない。
ミサイルはおそらく最後の抵抗だ。迎撃なら声の主が体を張ってくれるだろう。
「最大電力のサンダーボルトだ!」
その掛け声とともに彼の全身から青白い電撃が迸る。電撃はメタルギアを包みこみ、各部位が爆発し始める。
咆哮にも断末魔にもよく似た金属音を上げメタルギアがその形を崩していく。
終演だ。
メタルギア最後の抵抗であったミサイルのほとんどは迎撃されたようだが、残念なことに一撃だけ城門の一部を破壊していた。
もっともあれだけの大質量兵器を相手取って、この程度の被害なのだ。
「見つからんな」
「ああ、ジェームスは星になったのだよ」
完全に棒読みなのは信頼の証か。他のミサイルをきっちり迎撃して、自分をロックしていたミサイルを見逃すのは非常に彼らしい。
肝心の星になったはずの当人が瓦礫の下から華麗に登場する。
「勝手に殺すな!」
「なんだ、無事だったのか?」
「俺をお前らびっくり人間万国博覧会に招待するな!」
「もう会場のステージでスポットライトを浴びている。諦めて踊ってこい、ジェームス」
と、ケインは一方を指差す。
丁度三国の将達がこちらに走ってくるのが見える。
「ははっ、ありがちなシチュエーションだが悪くないな」
そういってジェームスは両手を広げて、ケインはどこか気恥ずかしそうな表情で。
そして一刀は鈴々をはじめとする元気っ娘の突撃を受けて地面に転がられるが満面の笑みだった。
―――ただいま、みんな。
注釈
※1:APS
アクティブ防護システム。平たく言えば戦車などの車両がもつ防御システム。
※2:はいだら
ANUBIS ZONE OF THE ENDERSの登場人物ケン・マリネリスが叫んだ謎のかけ声。何故か字幕もある。
※ピーピーズキューン
自主規制音。代表的なのはピー音だが、フルメタルパニック・ふもっふのピー音は一線を画する。一刀が何を叫んだのは秘密。
※4:Five of a Kind
ポーカーの役の一つで、フォーカード+ワイルドカードというトンでも手。本来ロイヤルストレートフラッシュより劣る役だが、ジェームスの言うとおりAce×4+Wildならロイヤルストレートフラッシュを作れないため実質最強役に成り上がる。(注:通常のポーカーはワイルドカードを使用しない)
※5:Loyal Straight Flash
仮面ライダー剣キングフォームの最終必殺技。一撃の威力は平成ライダーの中でも屈指の威力。
* *
おまけ:本当にあった裏話、三話からの続き
スネーク「司令!ひどいです!」
オタコン「そうだよ、雷電!せめて話しくらい聞いてくれてもいいじゃないか!」
雷電「オタコンに自由にさせると通常より予算が三倍くらいかかるんだぞ」
フォックス「そうだぞ、一刀。予算との兼ね合いが大事なんだぞ」
ジェームス「旦那がまともなこと言ってる!」
フォックス「むしろ予算は挑戦だ!!限られた予算の中でロッド、ボウガン、大剣くらいのフォームチェンジをこなせればいい話だ!」
オタコン「なるほど、それを予算内で済ませるんだね!!」
雷電「ダメだ、こいつら。早く何とかしないと・・・」
(結局キャストオフしか残りませんでした)
説明 | ||
この作品について ・MGSと真・恋姫†無双のクロスオーバー作品です。 ・続きものですので前作一話からどうぞ。http://www.tinami.com/view/99622 ・長え。 執筆について。 ・絵ができました。 http://www.tinami.com/view/151575 ・絵は間に合っていません。 ・やや遅筆気味。ちょっとリアル忙しいです。 |
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コメント | ||
>FALANDIAさん、その前にZOE次回作まーだー。(しがない書き手) ベクターカノンも実装しませんか。(FALANDIA) >jackryさん、しばらくオマケはこのノリで。次々回は少しシリアスなので次回予告入れるかも(しがない書き手) >sink6さん、おまけの最後の台詞ですねw理解完了。この台詞って汎用性ありすぎですよね。オチらせるのがとっても便利。(しがない書き手) >sink6さん、初めまして。うー、そのアニメは存じ上げないですね。ただ御使い三人には比較的死亡フラグ踏みっぱなしの台詞を吐いてもらっています。(しがない書き手) >よーぜふさん、メタルギア的なノリはたぶんこんなノリだと思います。軽くクール皮肉りあいみたいな。(しがない書き手) 最後の某アニメの死亡キャラの言葉に笑ったw(違ったらハズカシ///)(sink6) ・・燃えは? おかしいなぁ・・・熱いはずなのに誰かさんのせいでギャグになってるw(よーぜふ) |
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