八陣・暗無ラスト
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 それから三日後、風間は研究室に呼び出された。

 医療室でなく、研究室に。

 そこには、カプセルに眠る和泉の姿があった。

「・・・・・・すまない。本当に、キナラさんには・・・・・・、」

「顔を上げたまえ。それに、これは私の仕事の範疇だ。死んだ人間を生き返らせるというのは、それなりの心のケアが必要だ。それを怠った私が悪い。」

「しかし・・・・・・、」

「それに、金ならちゃんとカズキに貰った。私は自分の職務を真っ当しただけだよ。」

 それだけ言い残し、キナラは研究室を去って行った。

 それはつまり、気を利かせたということもあるが、今度はちゃんと和泉を繋ぎとめておけというメッセージなのであろう。

 そして、カプセルを開けると、首元に傷一つない和泉がゆっくりと目を覚ました。

「・・・・・・。」

 和泉は、まだ生きている。

 その事実を確認しただけで、風間は幸せだった。

「おはよう、和泉。」

「・・・・・・?」

 自分の現状が分からない和泉は、ゆっくりと、風間の手を握った。

 それは、この前と全く同じ仕草であった。

「ゲームは、まだ続くんだ。」

「・・・・・・っふ、」

 その言葉で、和泉は自嘲した。

「もう一度、コンティニューしよう。」

 まっすぐと見つめ合う二人だが、やがて和泉は呆れたようにため息を吐いた。

「・・・・・・はあ、」

 風間の手を放し、両手で顔をごしごしと擦った。

「馬鹿。」

「ああ、私は馬鹿だ。だが・・・・・・まだ、ピリオドを打つには早いだろう。」

 にっ、と微笑むと、和泉は二回目のため息を吐いた。

「私、夢を見たの。」

 言葉は続く。

「というか、過去の回想だったけど、・・・・・・そういうえば、神海も一回死んでいるんだよね。・・・・・・あ〜、何でそれ想い出さなかったかな?」

「・・・・・・?」

 今回も質問の意図が分からなかったが、その顔はいつもの和泉であった。綺麗ではあるが、どこか計算された様な、あっけらかんと目的の為プライドを平気で捨てる、和泉舞。

「生きるわ。私。」

「・・・・・・は、ははっ!」

 その言葉が、風間にとって嬉しくてしょうがなかった。

「大体・・・・・・そう、そうよ。まず始めに神海が生きている地点で私が死ぬ理由なんて無いじゃない。まずあんたがゲームを違反してるってのに。」

 みんなのためでなく、自分のためにに生きる和泉。

 そう。

 これが風間の恋した和泉舞の姿であった。

「なら・・・・・・和泉、結婚しようか。」

 その言葉に、鼻で笑った。

「結婚指輪はキャネク50年分?」

「・・・・・・高い買い物だ。」

 過去の汚点を洗い、未来への希望も生んだ。

 人を殺す立場の人間が、死んでから再び生を授かるのは理に適っていない。

「なら、いっぱい和泉に貢いでね♪」

「・・・・・・はいはい。」

 多分、和泉はこんな風に考えていたんだろう。

 そう。私もそう思う。

 だが――――――、

 幸せのためなら、好きな人のためなら人なんていくらでも、殺そう。

 それが私、八陣・暗無のポリシーだ。

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