雲の向こう、君に会いに-魏伝- 二十五章 |
〜辛かった
悲しかった
苦しかった
それらを全部、『アイツ』は・・・たった一人で背負い込んでいた
大切な人の為に、たった一人で
そして、おとずれた最期
気づいてしまったんだと思う
『俺は・・・後悔しているんだと思う』
自分の気持ちに
本当に伝えたかったことに
『もっと他に伝えたいことがあったんだ』
だから・・・
『俺のかわりに、伝えてほしい
俺の想いを・・・この風にのせて』
〜大好きな、彼女達のもとへ・・・〜
《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》
二十五章 繋げる為の覚悟
「御遣い殿・・・君にいったい、何があったんだ?」
目の前に座るのは、名医として名高い【華佗】
その彼のあまりにストレートな物言いに、俺は思わず苦笑を漏らした
それは早朝・・・朝起きて少し経ったころ
会議を翌日に控えた今日
朝早くから俺の部屋へとやってきた華琳
その彼女に連れられやってきたのが彼・・・ 華佗だった
俺を心配してくれたのかな〜なんて思いながら、彼の診察を受けた
華佗はしばらくしてから、ただの風邪だと華琳へと告げる
それを聞いた華琳は先ほど、俺に今日は休むよう言うと足早に部屋から出て行った
その後のことだった
華佗が俺の目を見つめながら、静かにそう聞いてきたのは・・・
「ハッキリと言わせてもらう・・・君のそれは、明らかに普通じゃない」
苦笑したままの俺を尻目に、彼は続ける
心なしか、先ほどよりも口調が重い
「そんなに、普通じゃなくみえるの?」
「外見はそう変わらないだろうが、その内側・・・君の体を流れる『氣』を見ると、俺にはわかるんだ」
氣・・・か
俺はチラリと祭さんを見る
祭さんは少しだけ躊躇った後に、首を横に振った
どうやら、祭さんにはわからないらしい
そういえば、凪も気づいてなかったし・・・華佗がすごいだけか?
「それで、俺の氣はどういう風におかしいのかな?」
俺は華佗にそうたずねる
彼はその言葉に一度何か考えるような素振りを見せた後・・・大きく溜め息を吐き出した
「色・・・だよ」
「・・・は?」
色・・・?
「それって、いったい・・・」
「塗りつぶされていく、という表現がしっくりくるかもしれないな
君の元々持つ氣・・・その色を白としよう
その白い氣が少しずつ、黒く塗りつぶされていっているんだ」
「あ・・・」
なるほどな・・・と、俺はまた苦笑する
『作り変えられていく』
『塗りつぶされていく』
こうやって、俺は少しずつ・・・この世界から離れていくのだろう
「元々あったはずの氣が、全くの別物に変わっていくなど見たことがない
ここまでになったのならば、普通なら体にも影響が出ていると思うが・・・」
言いながら、ジッと俺を見据える 華佗
嘘はつけそうもない、か
「ああ、華佗の言うとおりだ
けっこう辛いかな」
「辛いとは・・・?」
「味覚と嗅覚と触覚・・・この三つはもう、完全にダメだ
残ってる二つも、もうそろそろかな
それと・・・もう足が、ね」
「・・・なっ!?」
ガタンと、勢いよく立ち上がる華佗
その表情が、険しく歪む
「何故だ・・・」
「華佗?」
「なんで・・・なんでもっと早く言わなかったんだ!!!!!!」
「っ!?」
部屋の中、彼の叫びが響いた
怒りやら憤り・・・様々な感情が込められたその叫びに、俺は目を細める
ああ、やっぱ良い奴なんだなぁ
彼の顔を見ればわかる
あれは、俺に対して怒っているだけじゃない
このことに気づけなかった、自分すらに怒りを感じている顔だ
ほんと、良い奴だよ
けど・・・
「華佗・・・君ならわかってるはずだ
これは、そんな生易しいものじゃない」
「だが・・・!!」
「いいんだ、君は悪くない」
ニッと笑い、俺は華佗に言う
そうだ、これは・・・そんな簡単なものじゃない
あの祭さんが、凪が気づけないほど些細な・・・けれど、恐ろしいほどの変化
華佗の言葉を聞けばわかる
彼にも・・・完全には見えてなかったのだろう
まさかここまで酷いなどと、思っても見なかったっていう表情だったもんな
それほどまでに、俺の体は・・・もう
だけど、構うもんか
これは、俺が選んだ道だ
「俺は、知っていたんだ
こうなることが、わかっていたんだ
だけど・・・俺は【こっち】を選んだ
だから、後悔なんてしてないよ」
「御遣い殿・・・」
こうやって、少しずつ背負っていくんだって思ったら・・・むしろ、笑みさえこぼれてしまう
ああ、俺はちゃんと背負えてるんだって
そう、実感できる
「だから・・・俺は、消えなくちゃいけないんだ」
だから俺は・・・この世界の【全て】を引き受けて、どこまでも飛んでいけるんだ
「それまで、せめて・・・」
俺が口を開いた瞬間だった
いきなり祭さんが俺のすぐ前に庇うよう立ったのだ・・・
「待て北郷、こやつ・・・何者じゃ!?」
「あっ・・・!」
それから、勢いよく部屋の扉を開け放つ
直後、俺は・・・言葉を失った
「真桜・・・?」
そこにいた、真桜の姿を見て
彼女のすぐ後ろには、俺の頼んだ車椅子だろうか
そのように見えるが・・・
だとしたら恐らく彼女は、これを俺に見せにきたのだろう
そして・・・聞いてしまった
流れる、重苦しい沈黙
そんな中、真桜が・・・スッと、俺の目を見つめた
その瞳の奥、何か大きな決意のようなものが見えたような気がした
だからこそ、わかったんだ
真桜が次に言うであろう言葉が・・・
「隊長・・・今の話、いったいどういうことや?」
「真桜・・・」
サァと・・・開け放たれた窓から、風が吹き抜ける
俺と真桜はお互いに見つめ合ったまま、未だに言葉を発せないでいた
そんな俺達のことを、 華佗と祭さんは固唾をのんで見守っているのだろうか
さて、どうしたもんかな
いつまでも、こうしているわけにもいかないし・・・
「あ〜、真桜・・・あのさ、それ俺が頼んだやつだろ?
いや流石だ、良くできてるよ」
「隊長、ごまかさんといてや
ウチ、ずっと聞いてたんやで?」
「う・・・」
とりあえず、真桜が持ってきた車椅子を褒める
が、あえなく失敗
真桜の言葉が、若干どころかかなりキツイ
この様子だと、結構前から俺達の話を聞いていたんだろう
参った・・・
「隊長、教えてくれへんか?
消えるって、どういうことなんか・・・」
再び、部屋に響いた真桜の声
俺は・・・深く息を吐き出した
それから、真桜のことを見つめ・・・ゆっくり、言葉を紡いだ
「言葉の通りだよ・・・俺はもうすぐ、消えてしまうんだ」
「っ・・・!!」
俺の言葉に、真桜は表情を歪める
小さく体が震えているのが見えた
だけど、俺は言葉を止めない
「皆の前から、この世界から・・・俺は消えてしまうんだ」
「たい・・・ちょ・・・な、なに言ってんねんな
嘘、やろ?」
「嘘じゃない
もう、歩くのも難しいんだ」
「っ・・・嘘やっ!!!!」
ガンと・・・鈍い音が響いた
真桜が思い切り、壁を殴りつけたのだ
ポタリと、彼女の手から血が落ちていく
「真桜・・・」
「嘘や!!隊長は消えへん!!
これからも、ずっと・・・ずっとウチらの傍におんねん!!!!」
「真桜っ!!」
そのまま、勢い良く部屋から飛び出していく彼女
俺の声は、届かなかったようだ
伸ばした手が、虚しく空を泳ぐ
「北郷・・・」
そんな俺の手を、祭さんがそっと握ってくれた
大丈夫だよ、と笑顔をかえす
「真桜には悪いけど・・・今はまだ、皆には言えないから
これは、俺だけの想いじゃないからね
なんか、すごい誤解されちゃったみたいだけど」
「そうか・・・」
頷く祭さん
そんな彼女に笑いかけながら、俺は『それに』と言葉を続ける
「それに、真桜なら大丈夫さ
アイツは、俺の自慢の部下だから
だから、きっと大丈夫」
信じてる
俺も『アイツ』も、彼女達のことを
だからこそ、俺は・・・『俺達』は諦めない
「華佗」
「む・・・なんだ?」
若干空気になりかけていた華佗へと声をかけた
すると彼は、ようやくかといったような表情で俺のことを見る
俺はそんな彼の手をとり、力強く頷く
「お願いがあるんだ」
「お願い・・・」
「ああ」
お願い
俺が・・・『俺達』がうつ、最後の一手
消える為なんかじゃない
『繋げる為』の覚悟
未来へと繋げるための・・・最期の一手
「君の力を、貸して欲しいんだ」
さぁ、始めよう・・・
〜俺達で・・・こじ開けてやるんだ
この世界の、何もかもを背負って・・・【俺達】の想いで〜
★あとがき★
二十五・・・ですな
多分、次回で『一刀編』は終了です
長かった彼の頑張り物語も、次回でひとまず閉幕
舞台は再び、彼女達の場面へと戻ります
『くどい』とか『こんな暗めなの無理』とかわざわざお気に入り登録されたあとに言われた僕ですが、ようやっとここまでこれましたww
あとはひたすら、ED目指してひた走ります
気づいている御方はいらっしゃるかもしれませんが、この『一刀編』にはいくつもの『想い』が隠されています
一刀はもちろん
祭さん、それにチョウセン(!?)
そして・・・『アイツ』の想い
ここを省いてしまっては、話がわけわからなくなってしまう
というわけでクドイと言われようが、ここのとこを省くことはしませんでした
結果、ここまで長くなってしまったわけですが
次回は、ハッキリ言ってかなり長くなるでしょう
それゆえ、時間もかかるかと思います
気長に待っていただければ嬉しいです
プロフにも書いたとおり、ガチで完結間近ですw
彼女達に迫る選択
眠る彼の秘めたる想い
託された、尊い約束
チョウセンのs・・・
新たなる漢j・・・
終わりに託す、彼の・・・彼等の願い
そして・・・
『さぁ、貴方の望む結末・・・その先へと続く扉を開きましょう』
終わりの始まり・・・新しい始まり
終わりの先に続く、新たなる物語
物語の幕が、ゆっくりとおりてくる・・・
説明 | ||
二十五章、公開します ここまでついて来てくれた皆様、本当にありがとうございますw 次回で『一刀編』終了予定です 彼の頑張り物語・・・終わりはまもなくとなります |
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コメント | ||
ドキドキする(readman ) 未来へ繋げるため・・・ですか・・・眩しいですね。次回楽しみです。(深緑) poyyさん<ですねww(月千一夜) 天覧の傍観者さん<すごく・・・広いですw(月千一夜) カズさん<あざっすw(月千一夜) よーぜふさん<漢、j・・・(月千一夜) 次回で終わりですか〜期待して待っておりますので、頑張って下さい♪(南 祐二) あきらめないのは一刀の専売特許ですからねぇ。(poyy) key人物が華佗!?すっごいびっくりです。でもあいつのことだからすっごい熱血的に快く受け入れるんだろうなぁと思いつつ、次回の一刀編物語の最後を銀河よりも広大な期待をしてお待ちしております。(天覧の傍観者) 未来のためにあがき続ける・・・あきらめない強さ、一刀アンタ・・・漢だ!(よーぜふ) 後少しか〜・・・ 頑張って下さいm(_ _)m(カズ) 摩天楼銀河さん<まぁ、落ち着いてくださいwよっぽど酷いアレじゃない限りは、皆様の想いをぶちまけちゃってくださいwww(月千一夜) 水上桜花さん<最期の可能性・・・僅かの可能性だとしても、一刀は諦めないでしょう(月千一夜) KU−さん<どうなるかは、これから明らかに・・・w(月千一夜) samidareさん<はい、お楽しみにww見てよかったって思えるような作品にしますwwwww(月千一夜) ジョージさん<投げられた賽、それが示すものは・・・(月千一夜) tomatoさん<増えちゃったwテヘ♪(月千一夜) 悠なるかなさん<終端に向かう物語、その先をご覧にいれましょうw(月千一夜) scotchさん<ありがとうございますw残すところ僅か・・・どうかお付き合いください(月千一夜) 達さん<お久し振りですw華琳なんかは確実に・・・w(月千一夜) 砂のお城さん<あざっすwチョウセンのs・・・ではなくて、一刀の打った手。想いの果てをご覧下さいww(月千一夜) kashinさん<それはww知ったらもう、戻れなくなっちゃいますよww(月千一夜) FALANDIAさん<突っ走りますw(月千一夜) 宗茂さん<大変じゃないっすかwwラストは二人の漢女に囲まれてアッーーーーーーーー(月千一夜) shimonさん<そうですね、ある程度のピースはもう揃っています(月千一夜) ↓こういうのは心の中で思って下さい。(摩天楼銀河) 終焉が近づく。もう、それは目の前に。手を伸ばせば届く所に。別離が迫る。その情景は見えている。もう、避ける事は出来ないところに。だから、別の足掻き方を。手を伸ばせば届く?なら、手を伸ばさない。避けられない?なら、踏みとどまる。最後の可能性を信じて。(水上桜花) う〜ん、最後に大どんでん返しがありそうな感じですね(KU−) いよいよ最終回が近づいてきましたね。とても楽しみにしてますよ(samidare) いよいよ終幕の時。明かされてゆく舞台裏に観客だった者達は息を呑み、過去を悔い、涙を流す。放たれた一手。招くのは彼女達の最善か、それとも最悪か。その瞳を離す事無かれ。賽は、投げられた。(峠崎丈二) うぉーい!?増えてる!!!次回の一刀の思いを楽しみにしています(tomato) 青年が最後の覚悟 その先にあるはずの希望に向けての一手 静かにしかし確実に近づく終わり(別れ) 青年の決意の物語は終端を迎える・・・(悠なるかな) ここまでみんなの心情を丁寧に描写しているこの作品はすばらしいと思います。自分は何よりこの作品の雰囲気が大好きなので、完結目指して頑張ってください!(scotch) 一刀が漢女として再臨するんですねwww どうせなら貂蝉の3Sも知りたいwwww(kashin) 楽しみにしています!このまま突っ走ってください!(FALANDIA) 最後の チョウセンのs・・・ と 新たなる漢j・・・で全部吹き飛ぶところだったぜwww(宗茂) まさか、最後の結末に華佗がかかわってくるとは・・・ただ、これでようやくピースがほとんど揃ってきたのかなぁ(shimon) |
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