それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~五歩
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塾の朝は、部屋を掃除することから始まります」

 

部屋の掃除と、部屋の外の箒で掃きます。

 

がらり

 

「あ」

 

「!!」

 

今日は少し気分が良くて、他のところも掃こうと思ってちょっと広めに箒で掃いていたんですけど、

 

偶然、その時窓を開けた薄緑髪の女の子、元直さんと目が合ってしまいました。

 

「…お、おはよう…ございます」

 

私が先に挨拶しましたけど、

 

「……」

 

相手は返事してくれません。

 

「……あ、あの、何か今日は機嫌が良くて、他のところも掃除しようかと思って…ですね」

 

「……」

 

「わ、私は鳳統といいます。字は士元です」

 

「……」

 

あわわ、何か言葉が返ってこないからもっと恥ずかしいです。

 

「あ、あの…」

 

がらり

 

元直さんは、結局何も言わずに窓を閉じてしまいました。

 

ああ、ここにいたのが私じゃなくて、朱里ちゃんか一成ちゃんだったら、きっと一言ぐらい返事が返ってくる話をしたはずなのに……

 

 

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「「すごいー!!」」

 

「えっ!?」

 

皆とご飯食べてる時に朝の話を朱里ちゃんと一成ちゃんに言ったら、二人ともそういう反応をしました。

 

「私は偶然通りかかっても、目もやらずにいなくなっちゃうのに!?」

 

「私も」

 

「そ、そうなんだ…」

 

何だか、二人ともすごいノリです。

 

「あの、一成ちゃんはこの前言ってたけど、朱里ちゃんはどうして元直ちゃんのこと気にするの?」

 

「私?私は水鏡先生に、元直ちゃんのこと頼まれちゃって」

 

頼まれたって、私が一成ちゃんのこと任されたみたいに?

 

「でも、何で孔明お姉ちゃんが?」

 

「あ、実はね、一成ちゃん。この塾には特別な仕組みがあるの」

 

「どんな?」

 

「あ、何だ、そういうことなんだね」

 

熟姉妹なんだ。

 

「うん?塾姉妹って?」

 

「この塾に新しく来た子はね、元々この塾にいた生徒の中の誰かに塾での生活の色んなことを教わったりするの。それで、塾生活が終わってからでもその二人は塾姉妹だと言って、年とは関係なく先に来た子はお姉ちゃん、後に来た子は妹になるの」

 

「へぇー」

 

「それで、朱里ちゃんと私ははまだ妹がなかったからね」

 

「そ、そうなんだ…」

 

うん?

 

「はぁ…でも、全然会ってくれないし、偶然通りかかっても顔も合わせてくれないから挨拶もちゃんとできないの。どうすればいいのかなぁ」

 

朱里ちゃんがこんな風に悩むのは滅多にあることじゃないです。

 

「でも顔すらちゃんと見ることができなかったら、どうしようもないよ……一成ちゃんは何かいい方法ない?」

 

「わ、私?うん…そうだね……会う理由がなかったら、作っちゃったらいいんじゃないかな」

 

「どういうこと?」

 

「えっとね……」

 

 

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「それで、始まりましたー。水鏡塾から送る料理番組、「はわあわ料理教室でーす」

 

「はわっ?今のそれって何なの?、一成ちゃん?」

 

「知らない。お父さんがいつも言ってから」

 

「あわわ…」

 

というわけで、とりあえず、何か新入りの元直ちゃんにおいしいお菓子を作ってあげようという案が出ましたので、私たち三人は今厨房にいます。

 

「でも、お姉ちゃんたちって、料理できるんだね。すごい」

 

「百合お姉さんが料理作ってる時に時々手伝ったりするから」

 

「それじゃあ始めようね。一成ちゃんは危ないからちょっと離れて見ててね」

 

「ええ?何で?私も手伝いたいよー」

 

朱里ちゃんの言葉に一成ちゃんは抗議しました。自分の何かしたいみたいですけど、

 

「うーん…でも、包丁とか間違って怪我とかしたら大変だから…」

 

「一成ちゃん、ここは私たちに任せてね。一成ちゃんは後で重要な役割があるから」

 

「重要な役割って?」

 

「味見、」

 

「……いいもん。そんな子供をごまかすような言葉要らないもん」

 

あわわー!逆効果でしたー!

 

「いいよ、私は美食家だからね。そこそこだと級等点やんないんだから」

 

拗ねちゃった一成ちゃんはそう言って厨房のテーブルに座りました。

 

「じゃあ、始めようね」

 

「うん、で、朱里ちゃん何作るの?」

 

「そうだね。この前教えてもらった、ももまんじゅうはどう?」

 

「そうね。一成ちゃんもそれなら納得してくれるだろうし」

 

「いや、一成ちゃんに食べさせてあげるのが目的じゃないから」

 

「あわっ!そ、そうだよね」

 

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「できましたー!」

 

「あわわー!?作る部分は!?」

 

「作者が言語の壁を乗り越えなかったみたい」

 

「あわわ?どういう意味?」

 

とにかく、桃饅、完成です。

 

「それじゃあ、一成ちゃん試食お願い」

 

「饅頭だね。美味しそう…」

 

一成ちゃん、よだれ、よだれ。

 

「はっ!…わ、私は食べ物には目が高いんだからね」

 

「解ってるよ。さ、さ、食べて食べて」

 

「冷めたら美味しくないよ、一成ちゃん」

 

「…じゃあ」

 

パクッ

 

「ハフ…ハフ……」

 

モグモグ

 

「…」

 

「どう?」

 

「……」

 

無言の一成ちゃん。

 

もしかして、口に合わなかった。

 

「……」

 

パクパク

 

「はわ?」

 

一成ちゃんは手に持っていた桃まんを食べ終わって、皿の他の桃まんに手を伸ばせました。

 

「あわ?」

 

パクパク

 

「……」

 

「……!!一成ちゃん、全部食べちゃダメだよ!」

 

「うぐぐぅ!!」

 

その瞬間皿を取って逃げようとする一成ちゃん。

 

「一成ちゃーん」

 

「ひゃはほん、ほひひひははあはひはへんふはへひゃふほん!(やだもん、美味しいから私が全部たべちゃうもん!)」

 

「口に入れたまま言っても解んないよー!」

 

「雛里ちゃん、走っちゃ危ない!」

 

・・・

 

・・

 

 

結局皿を返した一成ちゃん。

 

朱里ちゃんに怒られました。

 

何だかとっても惜しそうです。

 

「…美味しかったです」

 

「良かったね。じゃあ、このまま元直ちゃんのところにいこっか」

 

「うん」

 

それで、私たちは残った桃まんを持って元直ちゃんの部屋に行きました。

 

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コンコン

 

しーん

 

「あ、あの、元直さん、ちょっと開けてください」

 

……

 

がらり

 

「……何?」

 

いつもの顔を俯いた元直さんが部屋を開けて姿を見せました。

 

「あ、あの、これ、桃まん作って見たんだけど、良かったら食べてくれないかなぁって」

 

皿を前に出しながら朱里ちゃんが言いました。

 

「…要らない」

 

「そ、そう言わずに、感想だけでもいいから」

 

「要らないって言ってるでしょ!?」

 

チャン!

 

「はわっ!!」

 

「「あ!!」

 

朱里ちゃんが持っていた皿は、元直さんが振った手によって廊下に落ちました。

 

桃まんも食べられなくなりました。

 

「何なのよ、あなたたちは!」

 

元直さんは廊下に響くほど叫んでいました。

 

「人を勝手にこんなところに連れ込んできて、何のつもりなの?!」

 

「元直さん…」

 

「奏をほっといて。一人にしてー。奏に構わないでよ。何で皆そんな風に見せかけで奏のことを助けたいような振りをしてるの!?」

 

「……」

 

何だか、人の触れてはいけないところを触っちゃったみたいです。

 

 

「ご、ごめ…」

 

「謝れー!!」

 

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びしっ!

 

「っっ!!」

 

「一成ちゃん?!」

 

一成ちゃんのビンタが元直さんの頬を打ったのはその時でした。

 

「何だよ!何一人で悲劇の主人公みたいにしてるのよ!」

 

「一成ちゃん!」

 

「何よ…あなたみたいなチビに奏の何が解るのよ!」

 

「お母さんが死んだ?それでどうしたよ?私はお母さんもお父さんも生きているのに会えないんだよ!ここにいる孔明お姉ちゃんと鳳統お姉ちゃんも皆両親いないんだよ!何で自分一人だけ悲しいようにしてるの!?」

 

「一成ちゃんやめて」

 

私が一成ちゃんを止めようとしましたけど、

 

「せっかく人たちが元気立たせようと準備して来たのに、何で自分しか考えないんだよ。少しは周りのことも考えてよ!」

 

一成ちゃんも一度爆発したようで、止まりませんでした。

 

「…ひくっ…ひくっ」

 

やがて、一成ちゃんはこみあげて泣いてしまいました。

 

「一成ちゃん、大丈夫」

 

私は一成ちゃんを慰めるつもりで話かけましたが、

 

そして、最後の一言で、

 

「食べないのだったら食べなかったらいいじゃない!何で捨てるのよ!残ったら食べようと楽しみにしてたのにー!!」

 

「「そっちー!!?」」

 

「ふ、ふえええ」

 

ええ!?待って?そこでそんな理由で泣いちゃうと誰もフォローできないよ、一成ちゃん。

 

「ご、ごめんなさい、元直さん、私たちもう帰るから。ごめんなさい。雛里ちゃん」

 

「あ、うん、ほら、一成ちゃん、早く」

 

「桃まーん」

 

「後で作ってあげるからー」

 

そして私たちは一成ちゃんを連れて逃げるようにその場から離れました。

 

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「はぁ、せっかくだったのに、一成ちゃんのせいでー」

 

「私のせいじゃないもん…だってあのお姉ちゃんが桃まんを…」

 

いつからか目的が変わっていた一成ちゃんです。

 

どこから変わったのは明らかですけど。

 

「仕方ないよ。明日また新しい策をかんがえようね。私はもう行くから」

 

「「うん」」

 

朱里ちゃんがそう言って、私たちは午後の勉強に入りました。

 

・・・

 

・・

 

 

「終わったー」

 

「これで文字は大分書けるようになったわね。最初は筆を使うだけでも大変だったのに」

 

「だって筆って使いづらいもの。鉛筆とかだったら間違って裾を汚すこともないし。これ一張羅なのに汚したら大変だから…」

 

「そうだね。…あ、この後百合姉さんが街に食料を買いに出かけるんだけど、そこに一緒に連れて行ってもらって、一成ちゃんの服も買ってもらおうか」

 

「いいの?」

 

一成ちゃんの服がすごくキラキラしてます。

 

「うん、この塾の制服の意匠に合わせて、一成ちゃんの服も作ってもらおう?」

 

「うん♪」

 

「それじゃあ、もうお休みにしようか。ちょうどお茶の時間だし」

 

「あ、私、茶菓子は桃まんがいい!」

 

「また?」

 

「…ダメ?」

 

「だ、ダメじゃあないけど…わ、解ったよ。作ってあげるからそんな目しないで」

 

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一成ちゃんの要望によって、私はまた桃まんを作るために厨房に行きました。

 

カラン

 

「あわ?」

 

誰かいるのかな?

 

「!!」

 

「あれ?元直さん?」

 

「っ!!」

 

「あ、元直さん!?」

 

私に見つかった元直さんは、そのまま私を通り抜けて厨房から出て行きました。

 

「…何だったんだろう」

 

 

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「美味しい」

 

「沢山あるからね。今度は持ってどっか行こうとしたらだめだよ?」

 

「わ、解ってるよ」

 

「鳳統お姉ちゃんも食べて」

 

「うん」

 

桃まんを食べながら、先元直さんに会ったことを一成ちゃんに話しました。

 

「そうなんだー」

 

「何で厨房なんかにいたのかな」

 

「え?鳳統お姉ちゃん知らないの?」

 

「え?じゃあ、一成ちゃんは解るの?」

 

「うん!うちのお父さんとお母さんはね。喧嘩するとその後の日、自分が悪かったと思う人が何も言わなくても朝ごはん作るんだよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

「それで、お互い同じ時間に厨房で会ったら、一度笑ってから二人で仲良く料理するの」

 

「で、つまり?」

 

「つまりって?」

 

「それが元直さんの場合とどんなつながりがあるの?」

 

「…え?……ないの?」

 

「ないんじゃないかな」

 

「……あれ?」

 

一成ちゃんは頭を傾げました。

 

私も頭を傾げて見ました。

 

 

解りません。

 

 

 

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「じゃあ、お姉ちゃんたち、お休み」

 

「お休み、一成ちゃん」

 

「お休み」

 

一成ちゃんが自分の部屋に帰った後(一成ちゃんの部屋は水鏡先生のところの直ぐ隣です)、私たちも寝る準備をしていました。

 

そこで

 

コンコン

 

「ん?一成ちゃんかな。まだ何か用があるのかな」

 

私が門を開けたら、

 

「え?元直さん?」

 

「え?!」

 

「……邪魔だった?」

 

皿に桃まんを盛って、元直さんはそこに立ってました。

 

「い、いえ、そんなことは…」

 

「これ、朝のお詫び」

 

「あ、はい、…あ、いえお詫びなんてそんな…」

 

じゃあ、あの時厨房に居たのも?

 

「あの子に、食べさせて」

 

「一成ちゃんにですか?」

 

「……じゃあ、奏は行くから」

 

「あ、待ってください」

 

帰ろうとする奏ちゃんの腕を捕まえたのは朱里ちゃんでした。

 

「良かったら自分であげに行ってくれませんか。」

 

「え?」

 

「一成ちゃん、きっとあまり気にしてませんよ。だから…ほら、雛里ちゃん」

 

「あ、うん」

 

私はもらった皿を元直さんに返しました。

 

「私たちもいっしょに行きますから、ほら」

 

「え、ちょ、ちょっと、待って?」

 

朱里ちゃんが強引に元直さんを押し込んで、私もその後を追いました。

 

 

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コンコン

 

 

 

がらりー

 

「誰ー?」

 

ただ今寝ようとしたみたいで、一成ちゃんは目をもみながら門を開けてきました。

 

「あ」

 

「…元直お姉さん?」

 

「えっとー」

 

「一成ちゃん、元直さんが朝のことお詫びで桃まん作ってきてくれたって」

 

朱里ちゃんがフォローするように言ってくれました。

 

「…桃まん?」

 

「うん」

 

「…あ、朝は、奏が悪かったの。ごめんなさい」

 

元直さんはそう言って皿を差し出しました。

 

「…桃まん…」

 

一成ちゃんは、しばらく皿を見るかと思えば顔を上げて私たちを見ながらこう言いました。

 

 

 

 

「今日はもう桃まんたくさん食べて飽きた」

 

 

 

「「………」」

 

「………」

 

もちろん、三人とも凍りました。

 

「っていうか、もう寝る時間なのに、ダメじゃない、お菓子とか食べたら。虫歯できちゃうじゃない」

 

「……ハ」

 

その時、元直さんの口から何か声が出てきました。

 

「…キャハ」

 

「げ、元直さん?」

 

「キャハハハハハハハハー!」

 

「!!」

 

「元直さん!?」

 

元直さんは凄い勢いで高く笑い始めました。

 

そして、

 

「何が今日は飽きたですか。奏が自ら作って来てあげたんですよ。さっさと食べるがいいのですよー!」

 

「うぐぅっ!!」

 

そして、一成ちゃんを口に持っていた桃まんを突っ込みました。

 

「さー、食べるのです!そして奏をそんなへなちょこな桃まんで懐柔しようとした自分の愚かさに悟るがいいですよー!」

 

「うぶぶっ!!」

 

「元直さん、落ち着いて!一成ちゃんが死んじゃうよ!」

 

「奏の料理と食べて昇天するのなら光栄でしょ?」

 

「はわー、そういうのじゃなくてー!」

 

元直さんこんな本当はこんな性格だったの!?

 

 

 

「誰ですか?こんなに遅い時間に騒いでる人は!」

 

「「「あ」」」

 

「……(ただ今気絶中)」

 

その後、皆で一緒に正座で水鏡先生に怒られちゃいました。

 

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その後、『奏ちゃん』とも普通に話し合うことになりますが、それはもうちょっと後の話です。

 

 

 

説明
桃まんは形が桃なだけですよね?

本当に中身まで桃なわけではないのですね?

2010/8/14 小作業
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3178 2747 21
コメント
よーぜふ さん>>そうなのですか?(TAPEt)
生地とか具に桃が練りこんでたりするのでは?(よーぜふ)
タグ
真・恋姫無双 恋姫 一成 雛里 朱里 元直 韓国人 

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