真・恋姫†無双 魏の怪談話 |
俺こと、北郷一刀がこの世界……三国志の時代、魏に天の御使いとして降り立ちけっこうな年月が流れた
出会ったばかりの頃は一刺史だった華琳が飛躍を果たし、大戦を経て、大陸でも一二を争う大国の王になって……それだけの月日が流れれば、いろんな出来事もあるものである
楽しかった事、辛かった事、嬉しかった事……そして、怖かった事、不思議な出来事
今は夏、と言うこともあり皆様には七不思議……というわけではないのだが、俺が体験した、七つの体験をお話したいと思う
それではまず、一つ目の体験からお話させてもらおう
Episode,1 「墓穴を掘る女」
ある寝苦しい夜の事
俺は不快な汗のせいで目を覚ましてしまった
今は何時くらいだろうと窓から外を見てみると、真っ暗な空に月だけが眩く光っていた
まあ、正確にはわからないが、深夜といえば間違いは無いだろう
そう思い寝なおそうとしたのだが、如何せん暑い為、全く寝付けない
だから俺は、気分転換でもしたほうがいいと思い、中庭の方へと向かっていったのだった
中庭に出ると、外は思いのほか風が涼しく、暑さで火照った体をいい感じに冷ましてくれた
その風が気持ちよかったため、暫く中庭を散歩する事にしたのだが……
ザクッ……ザクッ……
何処からともなく、そんな音が聞こえたのだった
時間は深夜ということもあり、静まっていた中に、ザクッ、ザクッ、という音だけが響いていたのだ
その音を不審に思った俺は、音のする方へ近づいていった
すると、ザクッ、ザクッ、という音の他に、奇妙な声まで聞こえてくるようになったんだ
ザクッ……ザクッ……
「……ふふっ、これが……墓穴に……!!」
ザクッ……ザクッ……
その、地の底から聞こえてくるような声に、恐怖を覚えた俺は物陰に隠れ、声のするほうを覗きみてみた
すると、そこにいたのは……
「ふふふっ!!今度こそあの精液男を落とし穴に落として、ここを奴の墓にしてやるわ!!」
……そういって愉悦に浸った顔をして、落とし穴を掘っている桂花だった
その様子に一気に脱力した俺は、寝なおすために部屋へと戻るのだった
……途中、後方から「きゃー!!な、なんなのよー!!」と、まるで自分の掘った穴が崩れてきて、頭以外生き埋めになってしまったんじゃないかというような悲鳴が聞こえてきた気がしたが、気のせいだろう
……そして翌朝、軍議の時に桂花がいなかったのも、多分寝坊のせいだと信じたい
Episode,2 「消えるお金」
これは、恐怖体験というよりも、俺の身に降りかかった不思議な体験である
というのも、題名の通り何故か気付くとお金がなくなっているのだ
俺は警備隊長という役柄もあり、政務も担当、アイドルのマネージャー業も兼任しているので、言ってはなんだが普通の兵達に比べればかなりの給金を貰っている
その上、特に趣味というものは持ち合わせていない為、お金を散財することも全く無いはずなのだが(華琳達の為に作る衣服代は除く)月末になると給金は全くといっていいほどに残らないのだった
俺はその謎を解く為、家計簿をつけてみる事にした
すると、驚きの結果がでたのだった
それは……
自分の食事代……全体の10%
衣服代……20%
雑費……10%
警備隊、三羽烏に奢る食事代……30%
三姉妹の打ち上げ代……30%
……うん、何で自分じゃない所にかかっているお金の方が全体の過半数を超えているんだろう
全くもって不思議な話である
……何より不思議なのは、それらのお金が、経費で全く落ちないことであった……
Episode,3 「皿を数える声」
ある日の事だ
俺は自分の部屋で仕事をしていたのだが、昼になり食事を摂る事にした
本当なら気分転換も兼ねて、街にでも出て飯を食おうとも思ったのだが例の財政難もあり城内の厨房で済ませる事にしたんだ
そうして俺が厨房へと向かっていくと、何処からともなく声が聞こえてきたのだ
「……一枚、二枚、三枚……」
その声はどこかで聞いた事がある気もしたが、何処となく暗い、恨めしいといった感情がこちらに伝わってきそうな声だった
その得体の知れない声に軽く恐怖を感じつつ、それでも腹が減っていた俺はその声を無視するように早足で歩く
しかし、そのとき気付いてしまったんだ
「……四枚、五枚、六枚……」
その声が、俺の向かっている厨房から聞こえてきていたという事に
「……七枚、八枚、九枚……」
厨房に近づくににつれ、よりはっきりと聞こえてくる声
……今思えば、あの時大人しく昼飯を諦め、自室に帰るべきだったと思う
でも俺は、空腹感と、その声がなんなのかを知りたいという好奇心に負けて、厨房を覗き込んでしまったんだ
そこで、俺が目にした光景とは……
「十枚……!!もう、季衣!!一体何皿食べる気なのよ!!兄様のために作った料理まで食べちゃったじゃない!!」
「そんなの知らないよ〜。流々の作った料理が目の前にあるのがいけないんだ」
「もう!!季衣には今後一切料理作ってあげないんだから!!」
「なに〜!!そんなの許さないぞ!!」
……親衛隊の二人が、武器を振り回して本気の喧嘩をしている光景だった
ちなみに次の瞬間、二人の振り回す武器が俺のいた入り口の壁を大破させ、それに巻き込まれた俺は全治三週間の大怪我を負ったのだった……
Episode,4 「猫女」
この話は、警備の兵達から挙がってきた報告から始まった
その報告曰く、最近城壁に怪しい影を見かける事があるらしい
それだけならば、不審者がいるか、もしくは魏国の誰かが夜中で歩いているだけなのだろうが、その報告には続きがあるのだ
曰く、その影には動物のような耳と尾があった、と
その報告をうけた俺は真相を確かめる為、目撃報告のあった付近に潜伏する事になった
潜伏を始めて数刻後
日が暮れ、辺りが暗くなり、月明かりだけになった頃……その影は現れた
ふらふらと揺れ、足音もなく動くその影に一瞬怯んでしまう俺
だが、俺は何とか勇気を出して、その影の前へと飛び出した
その、影の正体とは……
「うん?なんや一刀やん。どないしたん、こんな時間に」
猫の耳と、尻尾のついている……霞だった
ちなみに、俺がいきなり出てきたことについて霞に説明すると、
「あ〜、ほんま?そりゃ迷惑かけたなぁ。これからは出歩くん自重するさかい、堪忍したってや」
そういって飄々と、まるで本物の猫のように走り去ってしまったのだった
……いや、それよりも、本当にあの耳と尻尾はどうなっているんだろうか?本物にしか見えないんだが
それが、何よりの謎である
Episode,5 「薄笑い声が響く部屋」
ある夜の事
俺は寝る前に水をがぶ飲みしたのが祟ったのか、深夜、尿意に目が覚めてしまった
まあ、朝まで我慢が出来るはずもなく、蝋燭を手に厠へと向かう事にしたんだ
ひっそりと静まった夜の廊下を、蝋燭のやや頼りない明かりだけで進むのは正直心細いものがあったが、背に腹は変えられない
そんな事を思いながら廊下を歩いていると……何処からともなく、女性の、笑い声が聞こえてきたんだ
「……ふふふっ……ふふふふ……」
声を抑えているような、でも喜悦に染まっているような、そんな笑い声だった
現状のシチュエーションもあって、その声に薄気味悪いものを感じた俺は早足で厠へと向かう事にしたのだが、それでもその声は続いていた
そうしていると、厠に行く道にある一室の戸が薄く開いており、そこから光がもれているのに気がついてしまったのだ
そして、その声が、その部屋から聞こえてきている事にも……
厠に行くにはその部屋の前を通り抜けないといけない
その現実を突きつけられた俺は、いっその事、その声の正体を確かめてやろうと、恐る恐るその部屋へと近づき、部屋の中を覗きこむことにした
そこで、俺が目にしたのは……
「ふふふふっ……ああ、今日も姉者は可愛かったなぁ」
そういって、手にしていた写真―真桜が以前発明した―に写っている、春蘭の姿を見て悦に浸っている……姉馬鹿の姿だった
……これはこれで、幽霊よりも怖い
俺は、何よりも恐ろしいものの片鱗を見てしまった気分になり、悦に浸っている姉馬鹿に気付かれないうちに、その場を後にしたのだった……
Episode,6 「血まみれの女」
これは先ほどの続きになるのだが、例の光景を見てしまいげんなりとしてしまった俺は、用を済ませて帰り道を進んでいた
ちなみに、万が一にも姉馬鹿に気付かれてしまわないように遠回りで帰っていた
そんなこんなで廊下を歩いていると、足元に、何かぬめっとした感触があったんだ
その感触に、疑問を持った俺はしゃがんで足元を照らしてみた
すると、その感触の正体は……血、だった それも、大量の
突然の出来事に驚いて尻餅をついてしまう俺
……すると、そんな俺の耳に、何かのうめき声が聞こえてきた
「……うう、……いや……」
その声は、血溜まりの、元のほうから聞こえてきていた
俺は錯乱しながらも、その声の主に何かあったんじゃないかと、蝋燭を手にその声の元へと向かっていった
の、だが……
「……いや、華琳様。そんなところを……ブハッ!!」
……そこにいたのは鼻血を出して(現在進行形で被害は更に拡大)倒れる稟がいた
大方、風がいないタイミングで華琳にでもからかわれたんだろう
先ほどの出来事とあわせて、どっと疲れてしまった俺は、稟を無視して、部屋へと戻っていったのだった
……次の日、稟を見なかった気がするが、何にも知らないし、何にも知りたくない
ここまで、六個のエピソードを語らせてもらったわけだが、いかがだっただろうか?
……いや、いいたい事はわかる
怪談でも何でも無いじゃないかっていいたいんだろう?
でも、実際に体験したほうから言わせて貰えば、どれもかなり怖かったし、不思議でもあったんだぞ?
……まあ、それはいいとして、最後のエピソードに入らせてもらいたいと思う
他にも、「夜な夜な剣を振り回すお馬鹿な隻眼剣鬼」とか「太陽を仰ぐ少女の頭に乗っている人形の謎」とか色々あるが、最後はこの方で締めるべきだろう
それは……
「それは、……で、……っと」
「一刀?こんな時間になにをやっているの?」
「え、……ええ!?華琳がなんで此処に!?」
俺が最後の話を執筆していると、いつの間に来たのか、華琳が後ろに立っていた
「別に理由なんて無いわ。たまたま通りがかったから覗いてみたら、貴方が何かやっているのが見えたから話しかけただけよ。……で?何をやっているの?」
「いや、別に何って訳じゃないよ!!たまたま時間があったから手慰み程度に文字を書いてただけで!!」
そうやって慌てる俺に、華琳は獲物を見つけた猛獣のような喜悦に染まった目でこちらを見てくる
「へぇ、私に隠し事?いい度胸じゃない」
そういって一瞬、華琳の姿が見えなくなったかと思うと、次の瞬間には机の上においてあった書簡を手にしていた
「あ、いや!!それはホントに不味い!!」
そういって何とか取り返そうとする俺を軽くあしらいつつ、中身を読み始める華琳
……終わった……
読み始めたときこそ愉悦の表情をしていた華琳だったが、読み進めるにつれ表情が乏しくなっていき、最後には表情から感情を窺えないほどの無表情になっていた
「……一刀?これは、何かしら?」
そう華琳が問いかけてくるのだが、対する俺はといえば、無言のプレッシャーに圧され、ただただ震えるばかりだった
「まあ、百歩譲って、他の将の話はいいでしょう。でも、最後だけはいただけないわねぇ……言い残す事はあるかしら?」
そういって絶を構える華琳を前にして、本気で命の危機を感じた俺は飛び跳ねるように部屋から脱出を図る
「待ちなさーーい!!逃がさないわよ!!」
「いや、御免!!マジで勘弁……って、ぎゃあーーーーー!!!」
最後のエピソードは、この一件をもって変更、そして自分の中で決定した
有名な故事成語をもって、こう記す事にする
Episode,7 「曹操の話をすると、曹操が現れる」
これは、死んだ人間なんかより生きている人間の方が何倍も怖い、という
そんな、お話
説明 | ||
恋姫†夏祭り用の作品です 今回は魏編エンド前、一刀君が普通にいる時のお話です 蜀はほのぼの、呉は少ししんみりだったので魏はギャグ(ともいえるか分からないなにか)にしました 怪談といっておきながら全く怪談ではありませんがご了承くださいw 誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けると有難いです |
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コメント | ||
深緑様 返信遅れました 魏は今日も平常運行ですw ……なるほど、UMAに関わるとそうなってしまう訳ですかうわなにするやめ――・・・・・・(アボリア) あー、つまり魏は平和な訳ですね?どれも日常で普通におきていそうですし^^;因みに某太陽の人形様は未知のUMAって事でそれ以上の突っ込みはキャトルmy・・・うゎ!なにをすr・・・あーーー・・・・・・・(深緑) きたさん様 はっはっは、あのお方の話をしていると本当にでてきま〔ザシュゥッッ!!〕 ……返事が無い、ただの屍のようだ(アボリア) 最後のエピソードがメインなのか!内緒で一刀の書いた中身が知りたいんですけど えっ・ああっそんな待って・・グフゥ(きたさん) ちくわの神様 ……そのお話はまだ一刀君でも解明できていないという事で見送らせていただきましたw(アボリア) 瓜月様 今回はニヤニヤ成分少なめでお送りしましたw ……ええ、霊なんかより生きている人が本当に怖いですw(アボリア) 一番謎だと思うのはやはり宝慧の存在のような気がwww(ちくわの神) リョウ流様 ええ、魏は平和です!!なんと言おうと平和なんです!!(キリッ!!)(アボリア) けいわ様 銅鑼の音が鳴ったら要注意ですねw(アボリア) say様 へーわですww(アボリア) EP7の似た話は、「げぇ、関羽」でしたっけ?(朱月 ケイワ) へーわだwww(狭乃 狼) ほわちゃーなマリア様 オチを気に入っていただき光栄ですw EP5は……本当に、夜な夜な笑い声が聞こえてきそうですよねw(アボリア) よーぜふ様 最後のエピソードは覇王様の検閲により削除されましたw(アボリア) 村主様 平和なんですよ、誰がなんと言おうと(物凄く遠い目) そうですね、人間関係が円滑になるなら安いものです ……ただし、一刀君の給料が三十万円位と仮定した場合、片方九万、両方で十八万円になる計算ですけどねw育ち盛りの娘さん六人を養うのは大変ですw (アボリア) いやー、オチがめっさ面白いですwエピソード5は、本気でありそうで魏城内で問題になりそうです。(ほわちゃーなマリア) くっ、最後が見たかったw(よーぜふ) いやぁ、魏って平和なんですねぇ(遠い目) エピソード2は・・・まあそれ位で信頼関係築けるのなら安いものでは?ケチって見下されるよりはマシでしょうしw(村主7) |
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