恋姫のなにか 20 |
久々の投稿で20回目です。切りが良いのか悪いのか。
なお、当方の『半挿し伝』の続きは鋭意製作中であります。期待はしないでください。
キーンコーンとお決まりのあの音色がなって、同じ意匠の制服をきた男女がワイワイと席を立つ。
壁に掛けられた時計は頂点で二つの針が出会ってから少し経っていて、つまり今から昼休み。
机の上に出されていた教科書その他をトントンと揃えて机の中に入れると、ついで鞄の中からお弁当箱を取り出す。
「あ、あの・・・」
「・・・・・・アタシ?」
お団子頭をフリフリさせて、辺りを見回してみた思春は周りの視線が自分に注がれている事に気付いた。
「う、うん!ちょっと、いいかな?」
(気まずい・・・居づらい・・・)「・・・ちょっとだけなら」
見覚えの無い、爽やかそうな青年が頬を染めて、何かを決意している目で思春を真っ直ぐ見ていた。
人見知りの思春としてはガン見されるのはゴメン被りたい所であるのだが、それを正面から請求する度胸もない。
「何・・・」
「あ、あの、屋上まで、いいかな?」
(お弁当食べる時間無くなるじゃない)「・・・なんで?」
「そ、その・・・ここじゃ言い辛いっていうか・・・」
(それだけで内容ダダ漏れって解んないのかコイツ)「まぁ・・・いいけど・・・」
そういうと思春は立ち上がり、人目を成るべく避けたいと言わんばかりに肩を縮こまらせて先に廊下まで歩いていく。
それに気付いた青年はハッとして慌てて付いていく。物見高い思春のクラスメイト数人(全て女子)が後をつけていく。
「あの、俺と付き合ってください!」
「・・・・・・お、お断りします」
迷った訳ではなく、単に口篭る癖で少し間を置くと思春は迷わずにぶった切ると来た道を戻り出した。
扉を開けると、告白してきた青年の友達なのだろう男子が数名愛想笑いと共に出迎えてくれた。
その隙間をビクつきながらもすり抜けて教室に戻ると、自分の机が他の机と連結していた。
(Why?何故?何が起こった?どうしてこうなった?)
「あ、思春さん帰ってきたよ」
「おかえりー」
「た、ただい・・・ま」
クラスだけでなく、学年全体の中心人物といっても過言ではない女子・D沙と、その子と仲の良い女生徒が三名、合計四名が自分の机の周りで座っていた。
机の上にお弁当箱が置いてあるのを見ると、思春と一緒に昼食を取ろうという魂胆なのかもしれない。
(マジ勘弁。そっとしておいてくれ)「な、なに?」
「まーまー。先ずは座りなって」
三名の内の一人――便宜上E子は同じ出身校で、深く関わりこそしなかったものの何度か会話をした事があり、その事実からか思春の後ろに回ると肩を押して席に促す。
「な、なに?」
「あー・・・そんな脅えられるとウチらとしても・・・」
「E子に任せた方が良かったかな・・・」
「まぁまぁ。あのね思春、折り入って相談があるの」
ま、お一つ。とお弁当の蓋に昨日の晩御飯のオカズだったのだろう、揚げシュウマイを一つ置くとツツッと差し出してくるE子。
あ、じゃあ私も。とF世がサクランボを一つ蓋に置いて差し出すと、G絵が無言でからあげを一つ差し出す。
「あ・・・あの・・・」
「まぁまぁウチらの気持ちだと思って?」
D沙はそういうとパックのジュースを差し出すと、ニッコリ微笑んで「ま、食べなさいな?」と促してくる。
(超怖い。つか気まずい)「・・・いただきます」
「「「「いっただっきま〜す」」」」
暫し無言でパクパクと食べていた思春は、四人が目配せし、頷きあったのを見逃さなかった。
(何、何なの。何が起こるの)「・・・・・・」
「ね、思春さん」
(揚げシュウマイうめぇ)「・・・何?」
ベタに喉に食べ物を詰めたり、飲み物を飲んでゲホゴホと咽たりしたくない思春はキッチリと飲み込んでから対応した。
口火を切ったのはやはりD沙で、碌に話もした事がない思春としてはせめてE子に進行役をお願いしたかったのだが。
「さっき告白されてたよね?」
(からあげはレモンだろJK)「う、うん・・・」
「で、OKしたの?」
(卵焼きウマー)「こ、断った」
そう言うと四人はひょえ〜と顔を見合わせる。
思春としても他人の色恋沙汰が楽しいのも分からない話ではないけれど、だからといってそれで弄られるのはゴメン被りたかった。
「え、なんでなんで?けっこーイケメンだったじゃん?」
「え・・・だって・・・全然知らないし・・・」
「思春さんのタイプじゃなかったってこと?」
「だ、だからそうじゃなくて・・・」
「まー思春もう彼氏いるしねー」
何の気無しにそう言ったE子の言葉に、告白の話が出てから周りで聞き耳を立てていた男子一同が揃って顔を上げた。
「か、一刀はそん「あれー?私カズの事だって言ったっけー?」
しまつた。と思春は顔を横に向けるが、D沙に肩を組まれ、振り向くと大変良い笑顔で迎えてくれた。死にたい。
「E子ー、カズってだれー?」
「昔の同級生。思春の幼馴染だっけ?」
「思春さ〜ん、ちょっちお話聞きたいなぁ〜」
「だ、だから、一刀とは別に「あ、もしかしてケータイの待ち受けの男の子?」
G絵は今日体育の着替えの時に拾った思春のケータイの待ち受け画面を思い出して確認すると、F世がすかさず身体検査をしだした。
「ちょ?!やめ「神妙にお縄を頂戴しやがれこの幸せもんがっ!」
「ねぇ、なんでF世あんな殺伐としてんの?」「最近別れたらしいよー」
思春の抵抗虚しくケータイを奪われると、一刀を知っているE子、今日確認したG絵を除いた二人が興味深々で覗き込む。
「・・・・・・」
「あー、ご、ごめんね・・・」「まぁウチら助けると思って」
「・・・け、結局、何?」
『はいよ』
「アンタ来週の土日忙しいわよね?」
『は?』
あれよあれよという間に学校が終わり、帰宅した思春は一刀に電話を掛けていた。
「忙しいでしょ?忙しいわよね?忙しいですって言え!!」
『モチツケ。なんかあったの?』
かくかくしかじか。まるまるうしうし。
『文化祭か、そっちの学校ってこの時期にやんだな』
「何処も似たようなもんでしょ。アンタのトコは?」
『ウチはこないだ終わった』
「呼べよボケナス」
『ぶっ飛ばすぞ引き篭もり。んで、お前等のクラスが【メイドさんの私生活丸見えwktkツアー】ってのやんのな?』
「みたい」
『んで、男連中の夢と希望を打ち砕くべく、メイドさんは全員彼氏持ちで彼氏とのラブラブっぷりを見せ付ける。と』
「なんでこの案が通ったのか小一時間問い詰めたい」
『お前な、そんな真似に俺が加担すると思ってんの?男舐めてんのこのドSどもが。キャバ嬢だって夢は見せてくれんだぞゴラ』
「そうしなきゃパンチラ喫茶になるトコだったんだから仕方ないでしょ煩悩星人」
『それでやれよ!!絶対行くから!!』
「多分今日辺り青い制服来た国家公務員がアンタのトコに押し掛けると思うから、お姉さん達に連絡しとくのよ」
やだなにこのカップルの会話。
『んで、なんで俺がお前の相手なの?』
「よくわからない。きづいたらまきこまれてた」
『やりたくないならいかねーけど、それでお前大丈夫なの?』
暗にハブられたりしないか?と尋ねている事に気付いた思春は、緩むホッペを隠せずにベットを転がって嬉しさを表現する。
「・・・たぶん、大丈夫だと思う。別に、慣れてるし」
『・・・・・・そーだなー、嫌がるお前の顔見るのも一興だし、偶にはかえらねーとねーさん五月蝿いし、邪魔してやるよ』
「ば、ばか!来んなっての!空気読め!」
『当日はご主人様が散々コキ使ってやっから覚悟しとけぃ』
「来たらホントに酷いかんね?!」
『はっはっはっ、良い音色だこと』
じゃ〜な〜。と言って一方的に一刀は電話を切ると、思春はもう!と怒ってケータイを枕に投げつける。
「なんで言う事きかないかな〜アイツは。そ、そりゃあアタシのメイド服見てみたいって気持ちは判らんでもないけどさ?
べ、別に態々文化祭に来なくても、額を床に擦り付けて懇願するなら、まぁ着て見せてあげなくもない訳だし・・・
い、いやどうしてもってお願いすればの話よ?!じゃなきゃなんでアタシが態々・・・」
母がごはんよ〜と声を掛け、返事が無かったので部屋に乗り込んでくるまで、思春は半裸で言い訳を続けていた。
当日。
「おう、出迎えご苦労」
「いらっしゃいませご主人様。本日のオススメは美人メイドの鉄拳フルコンボとなっております」
「何処のドS喫茶に勤めてらっしゃるんですか」
校門で待ち合わせは果てしなく恥ずかしい。という思春の意を汲んで駅で待ち合わせをした思春と一刀。
同伴で登校の方が恥ずかしさ上なんじゃね?と思った一刀だったが、思春の度胸は変な所で発揮されるのを良く知っていたので黙って従った。
「つまんねー。てっきりメイド服で来ると思ったのに」
「なによ、制服フェチなくせに」
「何処情報だコラ」
「秋蘭」
「さーて、早く行かないと遅刻しちまうなー」
「あ、コラ!逃げんな!」
と、仲良しこよしで思春の学校へと向かう二人だったが、学校へ近づくにつれて距離がグングン近づいていく。
段々と思春の顔が強張り、左側を歩いていたので左の服の裾をギュッと摘んで離さない。
「お前さ、普段どうやって登校してんの?」
「・・・・・・俯いて」
「はぁ・・・・・・」
ありありとその光景が目に浮かぶ。一刀は溜息を重く吐くと、頭をクシャクシャと強めに撫でてやる。
思春は何か言いたげに上目遣いで一刀を見るが、多分出てくる言葉は「帰ろ?」なんだろうなぁと予想して、無理矢理引っ張って行った。
「お前何組?」
「・・・・・・」
右手は決して離さぬまま、左手で指を四本立てるのを見て一刀は四組の下駄箱に向かった。
すると、其処にイマドキな制服の着方な女子が居た。この状況を作ったD沙だった。
「あ、思春さん!おはよ〜」
「・・・・・・・」「おはようだって。悪いね、ネクラで」
ほぼ毎日出会っているのだろうに、一刀の背中に隠れてしまった思春をさり気無く腕で庇いながら、変わって一刀が挨拶する。
無表情でケリを入れる思春の様子を見て、ついでに一刀の顔を確認してD沙の目が光る。
「あ、もしかして一刀くん?」
「あれ、俺めっちゃ有名人じゃん。って抓んな」
D沙と会話が弾みそうだったので、思春がヤキモチ交じりに脇を抓る。
その様子を見てD沙は予想を確信に変えると、早く着替えて教室来てね〜。といって何処かに行ってしまった。
「お前さ、わざわざ向こうから「分かってる・・・」・・・なら良いんだけど、さ」
ほら、行くぞ。と一刀は思春の腕を取って下駄箱の前まで誘導すると、自分は来客用のスリッパを求めて来た道を戻る。
そして、一人になった思春に近づく影、先ほど消えた筈のD沙だった。
「思春さん♪」「っ!!?? な、なに・・・?」
「いいな〜思春さんのカレシかっこい〜♪」「だ、だから、そんなんじゃないって」
「まぁまぁ、それより今日は彼氏彼女のイチャイチャっぷりを見せ付けるのが目的なんだから、しっかり男子共に血涙流させて!」
「・・・・・・「おーい、お前着替えるまで俺何してりゃいいの?」
「へ? あ、あの・・・」「あー、んじゃ適当にブラついてるわ。着替えたらケータイ鳴らせよ」
「う、うん・・・」
んじゃソイツ宜しく。と言うと一刀はスポーツバックを背負いなおすとキョロキョロしながらも廊下の先を歩いて行く。
そんな一刀の背中に小さく手を振る思春。心なしか目尻が下がっている。
「ねぇ・・・思春さん・・・」
「・・・・・・な、なに?」
「・・・・・・なんでもない。早く着替えないと」
お前等もう帰れ。帰って存分にイチャついてやがれ。D沙はその言葉を寸前で何とか飲み込めた。
「なぁ、ホントにこんなんでいいのか?」
「・・・良いんじゃない」
メイド服というよりは少しファンキーなウエイトレス姿になった思春。髪は下ろしてキチンと梳かされていた。
一刀の感想はへぇ。というものだけだったが、その声色だけで言外に込められた好印象に気付いた思春は頬を染めて俯いてしまった。
そしてそんな二人を見てめっちゃイラッときた例の女子四人だったが、このドロドロしたモノをクラスのバカ男子共にも味あわせられるという事だけを救いに何とか乗り越えた。
既知だったE子と多少会話をした後、二人は思春のクラスに作られた、かなり大掛かりな部屋に通された。
何せ仕切りが天井まで設けられていたのだ、一刀の目が点になったのも仕方ないだろう。
区切りを作られて計四部屋。一刀達は左奥の個室である。
「つか他の部屋って誰かいんの?」
「わかんない・・・あ、お茶飲む?」
「ん」
待ってて。と部屋に備え付けられたポットからお湯を出すと、市販のティーパックを入れて帰ってくる。
隣り合って座るとかなり密着してしまソファーだったが、付き合いだして間もないカップルならいざしらず、この二人にそんな遠慮はなかった。
「ちょ、零れるだろ」
「もちょっと詰めてよ・・・」
「はいはい。お茶請けねーの?」
「ん・・・」
「無いのな。一応クッキー買ってきてやったぞ」
バッグからガサガサと市販のクッキーを取り出すと、ほれと差し出す。
それを受け取るとペリペリと切り目を剥がして、包装されているクッキーを取り出して―――やりやがった。
「ん」「あーん」
「美味しい?」「歪みねぇな」
半分に齧られたクッキーを、躊躇わずに自分の口に持っていく思春。持っていた指を舐めるのがセクシー。
「今日どこ?」
「一応家に帰るつもりだけど、もしかしたらお邪魔すっかも」
「ん」
完結に二人が何をしているのかを説明すると、いちゃついていた。
身体が固まっているのか、背中を伸ばして両手をぐーっと伸ばす一刀。
ひょいっと何の前触れもなく上げられた腕をかわすと、胸にコテンと頭を預ける思春。
甘える様に頭をグリグリとこすり付けると、伸ばした腕を降ろした一刀は思春の長い髪を弄る。
「くすぐったい」
「おーさらさら」
「もう・・・」
チラチラとマジックミラーを見て、今どれぐらいの人数に見られているのかが気になる思春だったが、それを考え出すとますます一刀に身を埋めてしまう。
それに一刀が自分の髪で遊ぶのは今に始まった事ではないし。と仏心を出して好きにさせていると、ノックと共にドアが開いた。
「思春さ〜・・・・・・ごゆっくり」
一刀と思春は揃ってなんじゃらほい?と不思議そうな顔で、ドアを開けて直ぐに回れ右をして出て行ったG絵を見送った。
「なんだったんだ?」
「さぁ・・・」
そりゃあ男に肩に手を回されてごろにゃん♪な体勢なクラスメイトを見れば、自分が空気読めてない事ぐらいはわかると言うものだろう。
思春はともかく、一刀がいくら頭を悩ませた所で自分達の【いつもの事】がどれだけ一人身の心を傷つけるのかは到底分からない事だった。
まぁいいか。と一刀は箱からまた一つクッキーを出して半分齧った所で、クッキーを摘んでいた手をぐいっと引っ張られて、食べかけのソレを思春が戴いた。
「行儀わりぃなメイドさん」
「・・・・・・べー」
茶化す一刀に、人差し指で目の下を軽く引っ張って、舌をべーっと出す、所謂【あっかんべー】なポーズでそれに応える思春。
本日最初の観客達である、思春のクラスメイトの男子達が最初に心を砕かれた光景だった。
それから直ぐに交代していいと言われ、ならぐるっと見て回ろうと言って校内のいたる所でいちゃつきと言う名の出し物の宣伝を行った思春(と一刀)。
基本的に移動は思春が一刀の腕を抱えて離れないという、傍からみればバカップルそのものの体勢だったのが輪を掛けた。
出し物の屋台で軽く昼食を取りつつ、また先ほどの部屋でダラダラだべり(という名のいちゃつき)を披露し、気が付けば文化祭は終了。明日は振り替え休日である。
普通こういうイベント終わったらテンション高いんじゃないのか?と死んだ目をして帰路につく男子生徒達を見て、思わず自分達を振り返る一刀。
(俺たちの時はもっとこうはっちゃけて―――祭せんせーに捕まってお説教されたな、確か)
自分は兎も角、雪蓮に華琳も捕まってのお説教。于吉たちは見事逃げ出したのだが、果たして華佗と焔耶は仲直り出来たのやら。
ケータイをポチポチ操作しながら思春を待っていると、声を掛ける代わりに体当たりで存在を知らせてきた。
周りには同じように帰路に付いている生徒達もいるなかで、なんて大胆なんでしょう。
「おっせぇ。あといてぇ」
「今日ウチ泊まる?」
周りには同じように帰路に付いている生徒達もいるなかで、なんて大胆なんでしょう。大事な事なので二回言いました。
「さっきのメイドさんの格好で御奉仕してくれんなら泊まる」
「別に、いいけど・・・」
周りには同じように帰路に付いている生徒達もいるなかで、なんて大胆なんでしょう。大事な(ry
ちなみに一刀の言う御奉仕の中身はお茶汲みやら寝床の支度といった内容ですよ、あしからず。
「もしかしたら家誰もいないかもだし、マジで行くかも」
「ん」
袖を摘んでクイクイと引っ張って、早く帰ろうと促す思春。
そんな思春の持っていた通学鞄を何も言わずに手に取って、重いと文句だけ言って歩き出す一刀。なにこのイケメン、死ねばいい。
余談ではあるが、その日文化祭が終わってから制服デートに洒落込んだカップル達の男子の面々は皆、何故か鞄を二つ持って歩いていたとか何とか。
「寄らないの?」
「一応顔だけ出してくるわ。誰かいたら家に泊まっから」
「あの家にアンタの居場所なんてもう無いんじゃない?」
「泣くよ?俺も」
トボトボとゆっくり歩いて自宅に着いた頃には人気はなく、漸く思春のエンジンがかかり出した。
「つーか、自分の家なんだからフツーに寝ればいいじゃん」
「いくら姉弟でも不法侵入はダメだろ」
「掛けてもいいわ、もしアンタが自分の部屋持ってたらお姉さん達皆で入り浸ってる」
「デスヨネー。まぁ寝床は何とかするわ」
「あっそ」
んじゃ。と手を振って自宅へ入ろうとした思春に、声を掛ける一刀。
んーだよ!と思いながらも、ドアから顔だけをひょこっと出して何?と不機嫌そうな顔の思春。
「似合ってたぞ」
「・・・死ねドスケベ」
バタン!とドアを閉めて去ってしまった思春を見送ると、鞄から鍵を取り出してガチャガチャやる一刀。
どうやら鍵は開いているらしい。という事は誰かいるなぁと思ってリビングを覗いてみると―――
ピンポーン
「はいはーい。いま御煎餅食べてますから手短にしてくれないと酷いですよー?」
「よぅ、飯前にオヤツ食べるのはいい加減やめようぜ」
「あ、あら、お姉ちゃん寝不足かしら・・・カズちゃんが見える・・・」
「いやちゃんと居るから。今日泊めてくんね?」
「あら♪あらあらあら♪これはお姉ちゃんの時代が来ちゃったのかしら。時代は妹じゃなくてお姉ちゃんなのかしら」
「ダメなら思春トコ行くけど」
「いいですよー♪お風呂で流しっこしましょうねー♪」
「いや一人で入れますんで」
「・・・・・え?」
「一人で寝れるし飯もちゃんと食えるから手伝わなくていい」
「カズちゃんがお姉ちゃんは要らないという・・・」
そうこうしていると夏侯姉妹のお母堂様が出張ってきて、泊めて欲しいとの一刀の要請を快く快諾してくれた。
一刀自身良く分かってなかったし、秋蘭も春蘭も二人の両親もそんな事は鼻にかけない気さくな良い人であるのだが、夏侯家は所謂セレブである。
一人暮らしを始めてから漸く、此処の食卓にならぶ食材の豪華さを実感した一刀はやっほ〜いと思いながら、秋蘭に対するドッキリメールの内容を考えていた。と、その前に一件送信。
一刀と分かれて、去り際に今日の格好を褒められて。
ドダダダダ!と二階の自室に駆け込むと、ダンッ!とドアを閉めてパソコンが置いてある机まで向かって椅子に腰を降ろす。
「なによ、なんなのよアイツは。わざわざさよならの段階で言う事ないじゃん。もっと言うべきタイミングがあるでしょ普通。そんなんだからいつまで経っても彼女できないのよ。
大体アタシがメイド服着こなせるのなんて当たり前でしょ、ドンだけコスプレ衣装持ってると思ってんのよ。今日のより可愛いのだってあるんだから。
つーか初めて褒めた格好がメイド服ってマジ脳味噌腐ってんじゃないの?ドンだけマニアックなのよ。
ってかさっさと起動しろマイPC!!!」
マウスをカチカチやって、漸く自分が電源ボタンを押していない事に気が付いて。
ああもう!!と憤慨しながら電源ボタンを押すと―――タイミング良くケータイが震えた。
「―――――ばっかじゃないの」
ただ簡潔に『可愛かった』とだけ打たれたメールに、『見物料払え』と内容を入れて返信。
けれどその後なんとなく、本当になんとなく、そのメールを保護してしまう思春だった。
一刀がリビングを覗いたその時、リビング内。
「ふっとべやあああああああ!!!」
「そんな大振りくらうか!!ばーかばーか!!」
シーツに丸まって寝ている恋を挟んで、上に下にリアルス○ブラをやっている桃香と凪。
一刀はその1シーンだけを見て回れ右したので、もうちょっと先まで公開すると。
「じゃっかあしぃんじゃこのボケナス!!」
「止めてください霞姉さん!!それは私の!!アッーーー!!!」
「凪バリアーー!!」
「お前が喰らえ!!」「おうふ!!」
何時まで経っても大乱闘している下の二人に切れた霞が、稟のマグカップを思いっきり投擲した。
ちなみにこのマグカップ。弟が初めて貰ったバイト代で姉妹それぞれにプレゼントを買った時の物で大事な大事な稟の宝物だったのに。
桃香はとっさに凪を後ろから羽交い絞めにして凪にブチ当てようとするが、凪はそんな策なんのそのと思い切り飛び上がって逆上がりの要領で一回点、マグカップは桃香のお腹に当たって、落ちて砕けた。
「桃香!凪!これ以上やるんやったら表出てやってき!!
恋!寝るんやったらシーツ置いて部屋に行く!!
稟!お前もいつまでもメソメソすんな!」
「鬼!悪魔!」
「特っ攻(ぶっこみ)!!スピード狂!!」
「甲斐性無し!!ダメ女!!」
「・・・・・・行き遅れ」
「・・・・・・上等やんけ。覚悟できてるんやろな?ウチはできてんで?」
拳をボキボキと鳴らし、肩をグルングルン回して臨戦態勢OKな霞。
喧嘩(じゃれあい)どころではない稟は欠片を集めながらグスン。と鼻を鳴らして涙を拭っている。
恋は立ち上がってはいるがシーツを身体に纏ったまま、まだ眠いのだろう、右に左に大きく揺れている。
桃香はどうやらったら真っ先に標的を凪に移せるかを検討中。その凪は霞よりも桃香に注意を払っている。
誰か一人でも弟の帰宅に気付いていれば、稟のマグカップは犠牲にならずにすんだのに・・・
「あぁ・・・私の大切なマグカップのマグカルゴ・・・一刀に貰ったマグカルゴ・・・
(裏声で)『泣くなよ稟、どんな存在だって、いつかは朽ち果てるものさ。俺は偶々、今日この時だったってだけの話よ』
そんな悲しいこと言わんで下さい!!
(裏声で)『いいか稟、逆に考えるんだ。壊れちゃった方がいいやと考えるんだ』
どういう意味ですか・・・私は今日の夜からコーヒーを何に淹れれば美味しく召し上がれるんです・・・
(裏声で)『壊れたなら、買いなおせばいい。一刀と一緒にな・・・おっと、俺は・・・ここまでの・・・よう、だ・・・』
まぐかぶごっ!!??」
そこまで小芝居は進められたのだが、恋の回し蹴りの餌食になって稟は朝までリビングで寝る事になった。合掌。
「―――ふむ、一刀は私の部屋に泊まるのか」
慌てず騒がず、現在暮らしているマンションに備え付けられたモニターの一つをポチッと押すと、其処には現在着替え中の一刀の姿。
「おうふ・・・コレはコレは・・・誘っているのか、いけない子だ」
ソレを見た瞬間出た鼻血を抑えながら、空いている手で録画ボタンを押してから鼻にティッシュを詰め込む秋蘭。
ダメだコイツ・・・早く何とかしないと・・・
「あー違う一刀、ソッチじゃない。 うん、そうそう」
タンスの中から恐らくはタオルを探しているのだろうが、間違って下着入れを開けてしまって凄い勢いでタンスを閉める一刀。
「しまったな、もう少し色気のあるヤツを表に出しておくべきだったか」
むーん。と唸りながらも一刀を凝視していると、秋蘭のケータイがなった。
家族用に設定された着信音なので無視する訳にもいかず、ついつい開いてしまうと相手は姉の春蘭。
『カズちゃんがお泊り♪
今日はカズちゃんがお泊りです。折角なので一緒に寝てあげようと思います』
「 」
直ぐに電源ボタンを連打して画面を初期に戻すと、霞に電話を掛けるが繋がらない。
次いで稟、恋を飛ばして凪と掛けるが全く繋がらず、とうとうモニタの画面に姉が映りこんだ。
(よせ、やめろ。私には寝取られ属性なんてついてない)「あ、もしもし桃香さんですか」
『なに〜?』
「一刀の貞操の危機が直ぐ其処に」
『おーい姉さん達きゅうせ〜ん。 詳しく話して〜?』
かくして一刀は自宅に戻った。
霞にお説教と言うヤキモチを妬かれ、恋の熱烈スキンシップを久しぶりに味わい、凪との微妙な距離感を再認識し、桃香のセクハラをかわしてから、リビングで寝ている稟の代わりに彼女の部屋で夜を過ごした。
うっわすげぇマジ稟哀れ。
反省。
お久しぶりです。萌将伝発売以来、初の投稿になりました。忘れ去られた過去の人、なんかカッコイイ響きですね、笑えないけど。
プール編とか冥琳と月の水着選びとかあったような気もしますが、萌将伝での思春のメイドルックがあまりにジャスティスだったので。
この作品でのメイド姿はアレ準拠でお願いします。思春可愛かったよ思春。
皆さんは萌将伝はもうプレイ済みの事と思いますが、ご贔屓のキャラは出張れてたでしょうか?愛紗以外で(´;ω;`)ぶわっ
大人の事情等色々あったのでしょうが、個人としましては妄想や創作じゃない、正規の可愛い愛紗を見てみたかったです。以上、愚痴でした。
私的には色んなシーンのちょっとした所で霞の姉御肌な所が見られて、自分の妄想が後押しされてるみたいで嬉しくもありました。
思春も結構お茶目なシーンとかもあったりで、上記を除けば妄想を刺激される良い作品だったんじゃないかと思います。
あんまりこういう事書くと荒れるかなぁとも思ったのですが、そもそも書いてる内容が内容だし大丈夫だよね・・・?
リハビリ的に全キャラ最登場させたいなぁと思って今回は色々登場して何がなんやら分からなくなりました。
次は(多分)セレブ組ですんで、また内容の無い作品になると思います。今までがどうとかは聞かないで下さい。凹みますんで。
かなり期間を開けての投稿ですが、今まで見続けてくだっている方、これが初めてという方全てに感謝しております。
お礼返信(なにか 19)
Kito様 萌将伝でまさかの祭さんパレオ装備を見た時は脳汁出ました。なんという神読、他の場面で出せよ俺。
Will-Co21様 タグ的に実際のヒロインは祭さんでした。可愛い熟女は最強。異論は無論認める。
masa様 今じゃ、煩悩を熟女組に!!! 順番間違えてね?ww
jackry様 バツイチな熟女がその事を気にして愛を告白できないシチュは至高。私は変態かもわからんね。
t-chan様 月はタイムアップでプールで初お披露目。冥琳はオーダーメイドで作らせるという所までは妄想済みです。
はりまえ様 三桁行ってても不思議は無い。カップ的にはJとか凄そうですよね、良く知らないですけど。
happy envrem様 これだからイケメンは!! 続けて欲しいコール有難う御座います。
よーぜふ様 祭さんは萌将伝で唯一単独いちゃいちゃが無かった・・・何故だ!!
zero様 ここの華琳様は常時リレ○ズかかってます。ケア○ガは一生かかりませんけど。
poyy様 電脳世界に飛び込める機械が、きっと死ぬまでには開発されるよね?!
samidare様 作戦大成功いえー!!
スギサキ様 ストレートな告白、嫌いじゃないぜっ!! ありがとうございます、救われます。
水上桜花様 一刀は文字通り無敵ですよ。敵はいないんです。
落とした子同士が敵対するだけで、それが危ないんですが。
tyoromoko様 プレッシャーは快感だってどこぞの映画で聞きました。
投稿の遅さ以外での期待をなるべく裏切らない様に精進させていただきます。
叢 剣様 めーりん!めーりん!おっぱい!おっぱい! 月、か・・・
弐異吐様 雪蓮は尽くす女、祭は悪女。済んでの所で踏みとどまる技能は随一な二人です。
ちきゅさん様 私はスプレーじゃなく線香派です、あの臭いがたまらない。
Ocean様 華琳様は大人気ですね。萌将伝も可愛かった。
やっぱり元が可愛いと多少崩したぐらいじゃビクともしないですね。
悠なるかな様 作品投稿マダー?(・∀・)っ/凵⌒☆チンチン
風籟様 そこはほら、エロアピール持ちの恋ねーちゃんの教育の賜物ですよ。
武中様 祭さん大人気で嬉しい限り。秋蘭はアレでヤンでなかったら・・・そうなると人気無くなりますが。
景様 良く聞きはしますね<大きいとあうブラが無い。
祭さんは豪快なので、タンクトップを下着代わりに使ってます。無論私の趣味ですよ。
コメント、ありがとうございました。
投稿続けて欲しいというコメがチラホラ見えて嬉しい限りでした。これからもがんばりますので、暇な時に見てやってください。
説明 | ||
久々の投稿。 萌将伝の思春があまりにも可愛かったので急遽作成したので遅れました。 |
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「掛けてもいいわ、もしアンタが自分の部屋持ってたらお姉さん達皆で入り浸ってる」 → 賭けても(JohnDoe) 忙しくて久しぶりに見たら話が一話しか進んでいなかったなにを言ってるか(ry 思春が夏バテを促進させたw 現実からにげたくなったよ あと俺と作者の秋蘭がぶれてなくて安心したまる(武中) 本編20作品目おめでとうございます!!! 何度読んでもこの作品の思春はかわいすぎます。 そして稟ねーちゃん、なんて憐れwww。 でも、そんな稟ねーちゃんが大好きです。 いつか一刀の学校の文化祭の話も見てみたいです。・・・きっと今回並にカオスなんだろうな(笑)(happy envrem) 相変わらず超オモローな展開ご馳走様です。気づいたらなにかシリーズ20作ほぼ全てコレクションにしてました。(種) 思春きゃわええ〜〜♪ だが最後に姉’sと春蘭と秋蘭に持ってかれたwww 秋蘭、いつでも一刀を見ているのかwwwちょっとうらやましい・・・。 所で萌将伝にくらげさんの春蘭と秋蘭が出てこなかったのですが、バグですかね? (mighty) 思春、かわいすぎる。原作より好きかも・・・。(スギサキ) 思春を嫁にくれ…。(ちきゅさん) 思春かわいいね〜。お持ち帰りしたい。 それは良いとして、相変わらず姉達は暴走をしていますね。(tanpopo) やばいwww思春に全部持ってかれたwww反則でしょwwwあの可愛さはwwwそして稟姉ちゃんが哀れ過ぎるwwwここはもう一刀とのデートで新しいのを買ってもらわないとwww後また一刀側の文化祭の話も気になりますねwww十中八九オチは華琳逃げてええええええええええええでしょうけどwwwそして最後に・・・春蘭逃げてえええええええええええええ!!!(zero) 思春可愛い。一刀との自然すぎるイチャツキっぷりが半端無い。ねぇ何あの思春。めっさ可愛いんですけど。(水上桜花) まってましたぁ いつも楽しませて頂いてます そして思春はオレの嫁(asf) なにもかも思春にやられた(´∀`*)(みっちー) なにかシリーズ20作おめでとうございます。ひたすらに待っていました。期待以上の思春をありがとうございます。次回作に期待です。・・・華佗と焔耶さんも見てみたいです。(tyoromoko) 学校の男子は全滅したかな?ww(2828) 思春ぅぅぅん!!(血涙)orz大丈夫だみんなの言いたいことは解っている「一刀もげろ!!」今回はこの一言に尽きますね・・(Will-Co21) なに、この可愛すぎる思春はww可愛すぎて頬が緩々になってしまう。個人的には、うなだれる稟も可愛かった(Ocean) やっぱ稟の妄想は良いね!裏声マグカルゴは堪らんかったっス!(裕) 思春のかわいさに全俺が悶えたwwww(叢 剣) 思春かわいい!かわいすぎ!(風籟) 夫婦漫才ですね、わかります・・・・・(空良) 思春かわいい!思春かわいい!!思春かわいい!!!思春かわいい!!!! 大事なことなので何度でも言います 思春かわいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(悠なるかな) 思春さん可愛すぎる///(poyy) なっなんだこの作品は…何度転がればいいんd(強制切断)(リョウ) やっぱりこの思春は最高です!!かわいさパネェwww(ディケイド) フ・・・クォリティがパネェっすw(弌式) 思春やばいwwかわいすぎるwww(たこまろ) 凛哀れなり・・・しかし思春やばいっす!!(SERAPH) 思春の破壊力マジパネェww(ルーデル) 筆者の感性に脱帽… この勢いまま突っ走ってほしいです。思春可愛いよ、思春www(やくもけい) ああ、もう一刀は思春を嫁に貰っちゃえよ。 翠の次くらいにww(ロンギヌス) 初コメントです!この作品も面白いです。春蘭がどうなったか気になるww(sai) 稟が哀れだ・・・。祭さんはタンクトップが下着代わり・・・良い趣味です。ビバ!タンクトップ!!(景) 思春がマジ可愛い!!ヤヴァイ!!ものすごく抱きしめたい!!(samidare) 思春まんせー! 焔耶もかわいいしれんもかっこよかったけど思春まんせー!! ほんとかわいい、なにこの思春? でもって秋蘭さん大変だw そして稟哀れすぎるww(よーぜふ) 一番乗り!!初めてコメントさせて頂きます。kaguraと申します。いつも面白い作品をありがとうございます。思春サイコー!!(kagura) |
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恋姫のなにか 恋姫†無双 思春の姿は萌将伝参照 またおまえか | ||
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