それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~七歩 |
前書きー奏の戦い方:
「……」
ちくっ
「キャハー」
ちくっ
……
「………」
「…ねぇ、鳳統お姉ちゃん」
「何、一成ちゃん?」
「孔明お姉ちゃんと元直お姉ちゃん、何してるの?」
「象棋という戦略を争う遊びだよ」
「しょうぎ……囲碁とかそういうの?」
ちくっ
「うん、でもこれは囲碁とかよりもっと難しいよ。兵装や地形、実戦で考えなければならない沢山の要素を一緒に考えなきゃいけないから」
「そうなんだ…でも、孔明お姉ちゃんって頭良いでしょ?元直お姉ちゃんって孔明お姉ちゃんに勝てるの?」
「一成ちゃんはあまり奏ちゃんを過少評価したらダメだよ。奏ちゃんも私や朱里ちゃんぐらいだから」
ちくっ
「でも知力90じゃん」
「へ?どういうこと?」
「あ、言っちゃった。今のは聞いてないことにして」
「そ、そう…」
「でも、そろそろ終わらないの?元直お姉ちゃんの駒なくなり続けてるんだけど、降伏とか無し?」
「そうね。もう手を上げてもいい頃、というかもう前に終わってる頃だけど」
ちくっ
「キャハー」
「キャハーじゃないよ、奏ちゃん。そろそろ手上げて?」
「やだもーん、奏は最後の駒が死ぬまで戦うの」
ちくっ
「私はあんな軍師が率いる部隊には入りたくない」
「あはは……」
ちくっ
「キャハー、面白かった」
最後の君主の駒まで取られた奏ちゃんの顔はとっても爽やかでした。
「奏ちゃんは戦い方が汚いからやりにくいよ」
逆に勝った朱里ちゃんの顔は疲れが目に見えます。
「汚くないもーん、しつこいだけー」
「泥の中だという意味では一緒じゃん」
「一成ちゃん」
「あう……」
私に怒られそうだから一成ちゃんは俯きました。
「キャハー、何なら一成ちゃんが奏としてみる?」
「ルール…やり方知らないから」
「奏が教えてあげる」
「知ってても元直お姉ちゃんとはしない。からかわれそうだから」
「ヤーだなー、奏そんなに意地悪じゃないよ」
「「その言葉には異議があるよ」」
「朱里ちゃんまでー!?(かぴーん)」
最近の朱里ちゃん、ずっと奏ちゃんに振り回されて心の余裕がなくなったようです。
「どうせなら、鳳統お姉ちゃんに教えてもらうのがいい」
「あ、ごめんね、一成ちゃん。私、今日は蔵のお掃除があるの」
「え?じゃあ、無理だね…そうだ!私も手伝うよ、お掃除!」
「え?でもそんな悪いのに…」
一成ちゃんは今日はお休みだから…
「いいよ、いいよ。ほら、行こう」
「あ、うん、じゃあ、朱里ちゃん、奏ちゃん私たちは行くから」
「うん」
「キャハー、いってらっしゃい」
・・・
・・
・
朱里ちゃんたちと別れて、私たちは学院の蔵を掃除しに来ました。
ここには水鏡先生が集めた山に普通にある薬草から、遠く南蛮まで行かなければ得ることができない貴重な薬草まで数々の薬剤たちがあります。
「何か変なにおいする」
「薬草の匂いだよ」
「鳳統お姉ちゃんは大丈夫なの?」
「匂いは大丈夫だけど…」
蔵の中は暗いから苦手。
「先ずは換気とかしたらいいの?」
「そうね。蔵の扉完全に開けて」
「うん」
ギギギィィ
扉を半端に開いておかないと、掃除中だと知らない誰かが蔵を閉めてしまう時もあります。
そんなことになったら、中からは外に出られないので、扉を全開して、中に誰か居るってことをはっきりしなければいけません。
「床を掃いて、薬剤の箱にほこりが積もっていたらそれも綺麗にするの」
「うへぇ、大変そう…」
「一成ちゃんは箒で床をお願い、私は雑巾使うから」
「うん」
そして、私たち二人で掃除を始めました。
「ごめんね、手伝ってもらっちゃって」
「いいよ、私が手伝うって言ったのだし。それに鳳統お姉ちゃんと一緒にいた方いいもん」
「ありがとう」
最近は一人ずついると一成ちゃんと私を見間違える子も多いです。
帽子が一緒で遠くからは区別つかないから、一成ちゃんがちょんちょんと走っているところを誰か「士元さん」とか呼んでたら、それを聞いて一成ちゃんは「え?鳳統お姉ちゃんどこ?」ときょろきょろ見回してるって、前に朱里ちゃんが笑いながら言いました。
「一成ちゃん、その帽子、見る時に邪魔じゃない?」
「え?」
「お掃除してる時は、外した方がいいよ」
私は帽子の代わりに頭巾をしていましたけど、一成ちゃんはいつもの私たちの帽子のまんまでした。
「ううん、私はこれがいい」
「ほんと?邪魔にならない?」
「大丈夫だよ。下見てるだけだから」
「下だけ見たらダメー
ガン!
「があぁあ゛あ゛あ゛」
「あわわ!大丈夫?」
下を向いて箒で床を掃いていた一成ちゃんは、ちょうどそこに突き出ている棚に額を打ってしまいました。
一成ちゃんはそのまま箒を落として額を覆って座り込みました。
「大丈夫?こぶとかできてない」
「い、痛いぃ」
「もう、ちゃんと周り見ないから…ちょっと見せて」
私は一成ちゃんの帽子を外して打たれた額を見ました。
小さくこぶが出来てしまいました。
「あわわ…」
「大丈夫、鳳統お姉ちゃん?」
「だ、大丈夫だよ」
ここでは嘘でも大丈夫だと言った方がよさそうです。
「あうぅ…」
「まだ痛い?」
「う、ううん、もう大丈夫……」
口ではそう言いますけど、今にでも涙が落ちそうな目をしています。
困ったな…
一成side
うぅぅ…凄く痛い。
あたったところ熱いし、これって実はこぶになったんじゃないかな。
鳳統お姉ちゃんの前だから泣いたらかっこわるいし我慢してるけど、凄く痛い。
ちゅ
「!?」
えっ!?
鳳統お姉ちゃん、今私のおでこに……!
「鳳統お姉ちゃん?!」
「え?あわっ、ご、ごめん、えと、つい…ちょっと落ち着くかなって…」
「だからって、おでこにき、キス…」
「嫌だった?」
「いやじゃない!むしろ…!?」
「むしろ?」
寧ろもっかいして…とは口には言えないけど……
「ほ、ほら、もう大丈夫だよ!は、早くお掃除終わらせよう、鳳統お姉ちゃん」
「うん、…あの、一成ちゃん大丈夫?まだ痛かったらお薬でも…」
「ううん、全然平気。さ、さ、鳳統お姉ちゃんも早くお掃除しよう?」
「あ、うん」
……
「水鏡先生、蔵のお掃除終わりました」
お掃除が終わった後、鳳統お姉ちゃんと一緒に水鏡先生に報告に行きました。
「ご苦労さまです。雛里。一成君もありがとう」
「は、はい」
「あら?一成君、そのこぶはどうしたのです?」
「あ、あぁ…その、ちょっと棚に打っちゃって…」
「あら、それは大変ね。ちょっと待ってくださいね。お薬を持ってきますから」
「だ、大丈夫ですよ」
「いいえ、ほおっておいたら直るってものではないのですよ?」
「うぅ……」
「雛里、蔵に行って薬の材料を持ってきてくれるかしら。何々かは知ってますよね?」
「はい」
そして、鳳統お姉ちゃんはちゃんは水鏡先生の部屋から出て行きました。
「……」
「?」
鳳統お姉ちゃんを出させた後、水鏡先生は深刻な顔になった。
「…水鏡先生?」
「一成君、あなたに話さなきゃいけないことがありあす」
「??」
いつもは優しい顔をしている水鏡先生の真剣な顔を見ていたら、何か良くない話が出てくるだろうと予想できた。
「あなたのことが漢室に知らされたみたいです」
「?」
雛里side
「えっと…これと、これと…」
色々集めていたら、何か量が多くなっていた。
でも、見た目ではただのこぶでも、実は中は血がたくさん出ていたりするかも知れないし、
「あ、だったらこれもいるかな」
ドーン!
「!?」
何、この音?
「へっ?もしかして」
蔵の扉、誰か閉めちゃったの?
一成side
「それって、どういう事ですか?」
状況が理解できなかった。
かんしつで私を知った?
それが何だっていうのだ?
「流れ星と共に舞い降りるといわれた天の御使い。あなたが現れたあの日にここ荊州落ちてきた流星。そして女学院のはずのここにいる一人の男の子。この二つの不思議さが、あなたが天の御使いではないのかという噂を荊州に広げているのです」
「そんな…」
「あなたが本当に天の御使いなのかに関わらず、民たちが一度それを信じ始めると、その波及力はすごいものです。そしてこの乱世であるからこそ、あなたの存在は漢皇室を脅威しています」
「……つまり、それはどういうことなのですか?」
「…」
「私、まだ子供だし、ここで勉強教えてもらってあまり立ってないし、難しいことは解りませんけど、私が理解したままに話してみます…
漢皇室で私を反逆者と見て殺しに来る。そういうことなのですか?」
「……」
水鏡先生は返事はなかった。
返事して欲しかった。
否定して欲しかった。
もし私が考えているのが合っているのなら、
私は生きるためこの学院を、鳳統お姉ちゃんの側から離れなければならないから。
雛里side
ガタンガタン!
ドンドンドン!
「誰かいませんかー!?中に人いますよぉー」
……
大変。
この蔵は普段誰も通らないところにいるから、一度こんな風になったらいつ助けてもらえるか解らない。
私が遅れると水鏡先生や一成ちゃんが探しに来てくれるだろうけど…
「…暗い」
暗い。
怖い。
暗いのは…嫌。
「嫌……」
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話が急変しそうです。 2010/8/14 小作業 |
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