一刀の記憶喪失物語〜呉√〜最終回 |
次の日。
今日も会議のため武将たちが集まった。
だが、いつまでたっても、亜莎と穏と一刀が来なかった。迎えに行こうか、と話あっていると、一刀は一人で現れた。
「亜莎と穏は?」
「??知らない」
「知らないって・・・・昨日はどうしたの?」
「昨日はね、3人で一緒に寝たの」
「それで?」
「それで、朝起きたら、亜莎お姉ちゃんと穏お姉ちゃんが裸で凄い汗かいてたよ」
「・・・そ、そぅ」
「それでね?起こしたら「もうらめぇですぅ」って。何がらめぇなのかな?」
「そうねぇ・・・お姉さんも分からないわ」
どう教えればいいか悩んだ挙句、雪蓮は分からない振りをすることにした。
「そう言えば、華陀から連絡があって、明日には呉につくようだ」
「へぇ、思ったより早かったわね。あーあ、何か寂しいような、嬉しいような」
「相変わらずだな、雪蓮は。私は早くいつもの北郷に戻ってほしかったぞ。仕事も溜まっているしな」
「えー、でも、やっぱ寂しいよ。あ、言って置くけど、今日は絶対に私だからね!かじゅとの世話」
「ふむ、よかろう。他もそれでよいな?・・・・蓮華さまもよろしいですか?」
「む・・・・むぅ。わ、私も世話をしてみたいけど・・・・」
「あらあら、蓮華は子供の扱いが下手じゃない。かじゅとを怖がらせたいの?」
「で、ですが・・・!!」
「いいじゃない。普段はいつも一刀を独占してるんだから、かじゅとでいる時ぐらい、私たちに独占させてよ」
「で、でも・・・・うぅ・・・・はい」
しょぼーん、と項垂れる蓮華に、後に控えていた思春の顔が何かを決断したように、真剣な顔になった。しかし、みなが一刀に夢中になっていたため、思春の様子に誰も気がつかなかった。
そして夜、事件は起きた。
一刀は寝る前に厠に行くと言って、雪蓮の部屋を出た。
外は暗くなっていたが、一刀はだいぶ慣れてきたのか、一人で厠に行けるようになっていた。そんな一刀を思春は壁に隠れながら観察し、そして、完全に一人になった時に声をかけた。
「おい。北郷」
「???」
「少しよいか」
「(びく)うぅ(うるうる)」
「あ、いや。怖がらせるつもりはない・・・・そうだ、饅頭をやろう。饅頭、好きだろ?」
「あい」
思春が差し出した饅頭を貰い、それをかじる一刀。でも、まだ思春のことが怖いのか、少し怯えているようだった。
「あ・・そのだなら、北郷。少し来てほしい所があるのだが・・・・」
「???」
「だから来て欲しい所があるのだと・・・・」
「???」
「あー・・・・ごほん!・・・・かじゅと」
「あい♪」
「くぅ・・・・えっとだな。蓮華さまと会ってほしいのだ」
「??でも、雪蓮お姉ちゃんが怒るよ?」
「それは・・・・私がなんとかしよう。だから、蓮華さまに会いに行って欲しいのだ。な、何だったら、饅頭をもっと食うか?」
「うーん・・・・(ちゅぱちゅぱ)」
「・・・・どうだ?」
「・・・おっぱい吸いたい」
「なぁ!?乳を吸いたいのか!?しかし、私はまだ母乳は出ないぞ・・・」
「すーいーたーい!」
「ふ、ふむ。なら仕方がない。ほら、こっちに来い。人の眼のないところでな」
「あい!」
そう言って、物陰に連れていく思春。普段なら、こんなこと出来るか!っと怒るところだが、寂しそうにしている蓮華に、どうにかして一刀を会わせてあげたいと思う思春は、恥を忍んで、その要求を受け入れた。
しかし、それが間違っていた。
もし、もっと祭や亜莎、穏のことを聞いていたならば、少しは抵抗出来たのかもしれないが、思春が後悔した時は、もう遅かった。
「あ、ちょっと。強すぎ・・・・ん・・・・あ、駄目だ。やめろ・・・・あ・・・・あ・・・・らめぇぇぇ!」
コンコン、とドアをノックする音に蓮華は顔をあげた。
こん時間帯に珍しい、と思いながらも、ドアを開けると
「こんばんは。蓮華お姉ちゃん」
「!?か、かじゅと!?どうしたの?」
「遊びに来た」
「遊びに来たって・・・・あら、かじゅと。口に涎がついてるわよ。さては、さっきまで指をちゅぱちゅぱしてたのね?」
「・・・・・ちゅぱちゅぱしてた」
「もぅ、ほら。こっちに来なさい。口を拭いてあげるから」
そう言って、少し強引だが手を引っ張って部屋に招きいれる蓮華。内心では、一刀が自分を慕って部屋に来てくれたことが嬉しい、という気持ちと、怖がらせないように、精いっぱい頑張ろう、と思う二つの気持ちがあった。
一刀の口を布で拭くと、
「そうだ。お茶でも飲む?お菓子もあるわよ」
「んー・・・・眠い」
「あ、あら。もう寝ちゃうの?もう少しお姉ちゃんとお話しないかしら」
「お話なら、お布団の中でも出来るよ」
「へっ?それって、私と一緒に寝てくれるの?」
「あい・・・・らめ(うるうる)?」
「ら、らめぇなもんですか!いいわよ、ほら、こっちに来なさい」
そう言って蓮華は、一刀を急かすようにベッドに招き入れる。一刀も本当に眠いのか、素直に従ってベッドの中へとはいっていく。
蓮華は明かりを消し、一刀の隣へと身を横たえた。
「ねぇ、かじゅと。かじゅとは何か思い出したことある?」
「んとね・・・・ゴマ団子作ったお姉ちゃんと、変態のお姉ちゃんと・・・」
「あ、相変わらずね・・・」
「それとね、お母さんとお父さん」
「!?」
「でもね?とっても変なんだ。とっても懐かしいって思ったの。ねぇ、僕のお父さんとお母さんは?」
「・・・・」
どう答えるべきか、蓮華は悩んだ。
忘れがちになっているが、一刀はもともとこの世界の住人ではない。一刀にも、ここまで成長するまでいた世界があり、そして今の一刀はその世界のすべて、家族、友人を捨ててこの世界に居るのだ。
「・・・お母さんとお父さんに会いたい・・・・」
ぐす、っと一刀は鼻を鳴らした。
それは、初めて聞く一刀の泣きごとだった。
知らない間にこの世界に来てしまい、状況もよく分からない状態で、呉のために働き、そして頑張ってくれた。一刀は絶対に蓮華たちの前では、前の世界への願望や未練を喋ったりはしない。蓮華たちが気にすると思ったからだ
蓮華はそんな一刀のことを、頼もしく思う反面、もう少し自分たちに弱音を吐いて欲しいとも願っていた
だが、今の一刀は幼児化していたためか、それとも、自分が天の使いであることを知らないからなのか、初めて泣きごとを呟いた。
でも蓮華は、どう答えればいいのか分からなかった。
だから、蓮華は素直に自分の気持ちを言うことしかできなかった。
「私は・・・かじゅとと離れたくないわ」
「お姉ちゃん?」
「かじゅと。お母さんとお父さんに会えなくて寂しい?」
「・・・あい」
「でもね?私・・・いいえ、私たちはかじゅとと会えなくなるのがとっても辛いの。寂しいの」
「・・・・・」
「だから、ずっと傍に居て?代わりにはならないかもしれないけど、私はずっとずーっとかじゅとの傍にいる。だから・・・ね?ずっと私たちの傍に居て」
ぎゅう、っと蓮華は自分の胸に一刀の顔を押し付けるように抱きしめた。
自分よりも背の高い一刀をそういう風に抱きしめるのは、少し大変だったが、それでも蓮華はずっとずっと、長い間抱きしめた。
そして一刀は、長い長い沈黙のあと
「・・・あい」
とだけ、呟いた。
自分の胸の中で眠る一刀を見て、蓮華は少し微笑んだ。
いつもは格好よくて頼りになる一刀も、寝る時は子供のように可愛い寝顔なのだ。だけど、今の一刀はいつでも子供。そんな一面を見れたことに、蓮華は大満足だった。
でも・・・・と、蓮華は思った。
今日初めて聞いた一刀の泣きごと。
自分ではどうにも出来ないことを悔しく思っていた。自分たちは、一刀の傍に居たいという気持ちだけを押し付け、一刀の本当の気持ちを蔑ろにしていたのではないか?
「でも・・・ごめんね。一刀。私、あなたのことが大好きなの」
あぁそうだ。
もし一刀が前の世界に帰りたい、と言っても、絶対に帰してなんてやらない。そうだ。絶対だ。だって、私は一刀が好きだから。
強引でも、非情でも、そんなのどうでもいい。
私はこれからも、一刀の傍にいたい。
・・・・蓮華は、一刀の頭をそう撫でながら、心の中で宣言した。
「・・・・蓮華お姉ちゃん」
「くすっ。一体、どんな夢を見ているのかしら」
「蓮華お姉ちゃん・・・・・おっぱい」
「へっ?」
「おっぱい・・・・吸いたい」
「えっ!?ちょ、ちょっと服を脱がさないで!あ、らめ!吸いつかないで!あ、ら、らめなのぉ・・・・・あ、あ、・・・・・・らめぇぇぇ!」
後日談
次の日、呉に華陀がやって来て、無事に一刀を元に戻してくれました。
それを喜ぶ武将たち。
しかし、まだお話は終わってはなかった。
無事に記憶を取り戻した一刀は、とりあえず記憶はないが、迷惑をかけた人たちに謝りに行こうと部屋を訪ねていた。
最初に訪れたのは明命の部屋。
「明命。覚えてないけど、迷惑かけたみたいだな。ごめんな?」
しかし、明命はちらっと一刀を「ふん!」とそっぽを向いた。
「あ、あれ?怒ってる?ごめんな、記憶がなくて何をしたか覚えてないんだ。だから許してくれると助かるんだが・・・・」
「一刀さまは、お胸が大きい人が好きなんですよね。だから私なんていらないんです!」
「そ、そんなわけないだろ!?俺は明命のことが大好きだぞ!?」
「でも、それは自分に嘘をついているのです」
「嘘じゃないって・・・・じゃあ、何をしたら本当だって証明になる?」
「それはもちろん・・・・・失礼します」
「えっ?ちょっと。何するの!?まだ昼間だよ・・・・あ・・・・あ・・・・らめぇぇぇ」
次、祭の部屋。
「ふむ。覚えておらんのか」
「そうなんだよ。だから、どんな迷惑をかけたかも覚えてないんだ」
「ふむ・・・・しかしじゃな、お主にわしはかなり迷惑をかけられた。謝罪はもちろん、してくれるのだろうな?」
「うぅ・・・・いいよ。お酒でも買ってきたらいいの?」
「ふむ、それもいいが・・・・とりあえず、乳を吸え!」
「えっ!ちょっと、やめ、あ・・・・・息が出来ない・・・・あ・・・・あ。らめぇぇぇ」
次、穏と亜莎の部屋。
「ふむふむ、謝罪ですかぁ・・・・そうですねー」
「そ。それはもちろん・・・・」
「えっ?またこのパターン?一体、俺は何をしたんだよ!あ、ちょっと・・・あ、らめぇぇぇ」
次、思春と蓮華の部屋。
「ほぅ・・・・あれだけのことをして、覚えていないの。一刀は」
「うぅ・・・って、そもそも原因は蓮華なんだろ?だったら、責任は二人で取るべきだろ!」
「あーあ、聞こえない」
「むっかーーーー!」
「とりあえず思春!先日の借りを今返すわよ!手伝いなさい!」
「御意」
「た、たのむ。もう無理。体力限界なんだ」
「大丈夫よ一刀。ほら、魏で大人気のお菊ちゃんよ。あなたは天井の染みを数えてたら終わるわ」
「あ、何するんだよ。それ、ちょっと!止めて!私はまだ処女なのよ!あ、あ、らめぇぇぇ」
終わり
みなさん、いつもありがとうございます。
ついに終了しました、一刀の記憶喪失物語!!
僕の初投稿作品シリーズにも関わらず、予想以上に多くの人が見てくれて、感謝感謝です。番外編もわざわざ見てくださった人が多く、本当に申し訳ないと思います・・・・。
みなさんのコメントや応援メッセージが、僕の次回作を作る活力になります。いつもありがとうございます。
さて、次回作品についてのアンケートをとりましたが、みなさんのコメントを集計し、そして自分で色々と考えた結果、
『魔法少女 華琳たん』
に決定しました!!(まだ全く執筆していないので、少し時間がかかるかもしれません)
どんなお話?と、思う方は、前の作品をもう一度見てください。
ですがここで、注意です。
この作品はキャラ崩壊が酷いです。なので、もしかしたら、嫌悪を感じるかもしれません。
でも、悪いのは華琳ではなく、キャラ崩壊させた僕です。だから、嫌うなら僕を嫌ってください。
でも、これだけは分かってください。
僕は華琳が大好きです。他の武将たちも大好きです。恋姫すべてが大好きです。
だから、ちょっとぐらい
やりすぎても
笑って許してくださいね。
ps、これからも、おまけは続けます。ですが、別のシリーズになるかもしれません。(ネタの枯渇のため)
あと、最初から最後までおまけシリーズだけの『戯言使いの おまけが本編( ゚Д゚)』を只今作っております。なので『魔法少女 華琳たん』が少し遅れても、どうか見捨てないでください。
説明 | ||
どーも、戯言使いです。いつもありがとうございます。 ついに一刀の記憶喪失物語が終了しました!! 次回はどの作品になるのか、それは最後のページに書いてますので、見てくださいね。あと、今回はおまけはなしです。 |
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コメント | ||
最後で吹いたw(K-T) 誤字報告:2pあ・・そのだなら→あ・・そのだな ですか? かじゅとのちゅぱテク恐るべしw(深緑) ここまでキャラ崩壊させといて今更そんな注意されても遅いわW(ヒトヤ) 今回はおまけしかないなんて・・・あれっ?(BX2) 腎虚の前にヒ〇ヤ大黒堂を購入するべきかとw(マテ そして「華琳たん」キャラ崩壊?むしろそれがよいwww(村主7) かじゅとくんも面白かったなぁ〜w 華琳タン楽しみだぜ(´∀`*)(みっちー) らめぇぇぇぇぇ過ぎる!!(良い意味で(´・ω・`))次回作はリリカry じゃなかった、華淋たんですかw期待してます!(kurei) 「あい」がお気に入り〜(tomato) 元の一刀がらめぇぇってww似合わねえぇぇぇぇぇww(空良) ・・・ふぅ。 ↓おそらく腎虚が逝き過ぎてハゲ+黒くなるでしょうなw(よーぜふ) ・・・とりあえず一刀は翌日腎虚確実かもなぁ・・・(東方武神) やりすぎではないけど、とりあえず二人きり(もしくは3人きり)のとき何があった?(黄昏☆ハリマエ) |
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