おとなりの嵐さん 4話 |
「地味やなーぁ自分ー」
そんな台詞が初対面の、しかも店員に言われるとは思わなかった。
「言ってやるなよ進(すすむ)、コイツも色々あるんだよ」
嵐さんがフォローしてくれた
「まぁ地味だけどな」
「そこは否定しないのかよ」
有情なのか無情なのかよくわからないフォローを受けながらも電器屋の店員は俺に対して笑顔で自己紹介をした。
「オレがここ「Gyoshin」のオーナー、行道 進(ゆきみち すすむ)や、今後ともごひいきに頼むで」
「あ・・俺は凡田平一です、よろしくお願いします」
「名前も地味やなぁ自分」
決めた、絶対ひいきにしない。
軽い挨拶を済ませ、今回の目的「クーラー」について聞くことにした。
「そうだ進、今日は扇風機じゃなくてクーラーを・・」
「こちら手のひらサイズでありながら通常サイズと同様の風力を持つ今年新作の扇風機でございます」
「なにッ それはすごい一ついただ・・」
「お兄ちゃん、それ以上買ったら屋上に張り付けにするから」
「こうと思ったが今日はクーラーを買いに来たんだな、うん」
旋風ちゃんの念がこもった一言が嵐さんを思い留まらせる、何か物騒な台詞が聞こえたが知らない俺は何も聞こえていないそう信じたい。
「とりあえず電化製品のコーナーにあるクーラー・・」
「とはまた違う涼しさを体感できる除湿機能搭載のスーパー扇風機が今日入荷いたしました」
「おぉっそれは・・」
「進さんも御一緒に干乾びます?」
「「「ごめんなさい」」」
何故か俺も謝ってしまった。
雑談をしながらも電化製品コーナーに案内してもらった。
「じゃあオレは接客があるからまた後でな、何買うか決まったら呼んでくれたらええわ」
と言って進さんは辺りにいる客に話しかけに行った。
聞こえるのは扇風機を進める台詞しか聞こえないけど・・
「買うとすればやっぱり高性能がいいよなー」
「値段も高すぎないのが良いですよね」
「大きさも部屋に合った物じゃないと・・」
縦横にいくつも並ぶクーラーに驚きつつも値段が手頃なものを探す。
「そういえば嵐さん、今はいくら持ってるんですか?」
何気なく予算を確認しようと思って嵐さんに聞いた。
「1万だ」
「帰ろうか旋風ちゃん」
「そうですね」
「待て待て待て!何が気に食わないんだお兄さんに教えてくれ あ、アレか!俺が福沢が1人じゃなくて野口が10人財布に詰まってるからか!」
「肝臓売ってよお兄ちゃん」
「脳もついでに売ってきてくださいよ」
「恐ろしいこと言うなよ!」
電化製品を買うと言うからある程度持っていると思ったのにこの男は、扇風機しか見てないからこんなことになるんだろうな・・。
まぁ予感してなかったわけでもないので・・
「まったく・・大丈夫ですよ、今回は僕が出しますよ・・」
「えっ お前そんなに持ってt・・ 福沢がいっぱいいるっ!!!」
「ほんとだ!お札で扇げるくらい入ってる!平一さんすごいです!!」
実は家を出るときに叔父や姉から多少のお金はもらっていた。
俺もバイトをしているがそこまでの稼ぎはないので月に一度は仕送りをもらっている。
数少ない理解者から・・
・・・
叔父さんと姉さんはどうしているだろうか・・
「どうしたんですか平一さん?」
気がついたら心配しながらも期待で目を光らせてる旋風ちゃんが見つめていた。
「あ?いやなんでもないよ、ちょっと考え事・・」
家のことは今考えても仕方がない、そう・・今は・・
「とりあえず早く買って家に取り付けよっか、俺はこの除湿付きの・・」
「スーパー扇風機ですね、2万8千円になります」
「買わないからね!?」
いつの間にか進さんが背後で扇風機を抱えてニヤけていた。危ない、買うところだった。
「まったく・・ んで、嵐さんは何買うか決まりました?」
「じゃあこの一番高いやつ と扇風機」
「やっぱ肝臓売れ」
進さんと旋風ちゃんが止めに入らなければ俺は嵐さんの肝臓を引きずり出していただろう。
帰宅する頃には手続きや取り付け作業があってか夕方になっていた。
進さんのおかげで面倒な作業は向こうでやってくれた。
しかし流石は高級クーラーと言うべきか、とても快適な空間になった。
結局一番高いクーラーを買ってもらって笑顔が止まる気配がない嵐さんと旋風ちゃん。
高い買い物だったが旋風ちゃんの笑顔が見れたからいいやと自己完結する。
「平一さん、今日はありがとうございます!」
笑顔でお礼を言われる、照れるじゃないか。 かわいい
「大丈夫だよ、まだ貯金はある程度あるし仕送りももう少ししたら来るし」
仕送りという発言に反応したのか、嵐さんがすごい笑顔で振り向いてきた。
「平一のとこはいわゆる金持ちの家系なのか?」
「いえ、普通の家系ですよ・・仕送りは姉さんとかが送ってくれるんですよ」
「普通と言われてもどんな感じなんだ?うまく想像できないな・・」
「とにかく普通ですって、父は普通の会社のサラリーマンで母は普通の専業主婦で・・」
「ふぅん・・」
何だかつまらなさそうに納得する嵐さん、ほんとに普通なのだから仕方がない。
そう・・
「普通じゃないくらい・・」
「え?」
二人は聞き返してきたけど俺は他の話題を持ち上げ、はぐらかした。
その後、自分の部屋に戻ってクーラーのきいた快適な空間でぐっすり寝た。
思い出したくないから。
説明 | ||
電器屋の店員に出会い頭に地味呼ばわりされる平一、夏を越すためにクーラーを買いに来た3人だったが・・? | ||
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