それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~十一歩 |
前書きー仲間入りしました。
星「少し予定が変わってな。子瑜殿と一緒に行けるようになった。良ければ護衛を任されよう」
百合「あらあらあら…」
雛里「…(何で一晩で急に態度が変わったの?)一成ちゃん、何か知らない?」
一成「……うん?…鳳統お姉ちゃん、今私に声かけないで……」
雛里「へっ?どうしたの?具合悪いの?」
一成「ちょっと……頭がすっごく大きい鐘がゴーンって…う゛うぅうぅ…」
雛里「…??」
何があったかは良くわかりませんけど、結局趙雲さんが私たちを守りながら河北まで一緒に行ってくれると行ってくれましたので、わたしたちは遅い商団から離れて、馬を二匹借りて、四人だけの旅へ向かいました。
私と一成ちゃんは馬が乗れないので、私は百合お姉さんと、一成ちゃんは趙雲さんと一緒に乗ることになりました。
「ああ、私のことは星でいい」
「へっ!?」
「あらあら、よろしいのですか?」
「うむ、これから長く旅をすることになるだろうからな」
「でしたら、私のことももう百合と呼んでくださっても宜しいですわ」
これって私も譲らなきゃいけない空気みたいです。
っていうか真名許されたのにこっちが許さないとなんだし…
「は、あ、あの、雛里でしゅ」
「えっと…えっと…あ、私、真名ってないんだけど……」
私ほどにあわあわしている一成ちゃんでした。
「まぁ、それでは私もこれからお主のことは一成と呼ぼうとしよう。それでいいか?」
「あ、うん、星お姉ちゃん」
「!!」
はっ、
そういえば、
私もまだ真名で呼ばされたことないのに…!
それはまだ一成ちゃんが水鏡先生の塾に来てあまり経っていない頃でした。
「前からずっとおかしかったんだけどね」
「「うん??」」
朱里ちゃんと三人でお茶をしている時に、一成ちゃんがふと言いました。
「何で鳳統お姉ちゃんと孔明お姉ちゃんはお互い呼び方が字か名前じゃないの?別名(ニックネーム)なの?」
「肉?」
「寝意無?」
「うん??」
あの時はまだ、微妙なところで話がかみ合わなかったりしました。
「あの、これは真名って言ってね?その人を示す真の名前なの」
「名前と別なの?」
「別だよ」
「そっか…」
でも、それだけ聞いて一成ちゃんはそれ以上、私も真名で呼ばせてとか、そんなことは言いませんでした。
私たちも、子供だといっても男の子に真名を許すことに少し変な感じがありましたので、こっちから一成ちゃんに真名を許そうとしたことはありませんでした。
それがこうなってしまうとは。
「あのね、星お姉ちゃん」
「うん?何だ、一成?」
「……ううん、呼んでみただけ」
「ふっ、そうか」
「………」
あわわ…何か、凄く悔しいです。
「あわわ…」
夜になって到着したある城に入りました。
「今ひ~らりひらひら羽広げ~♪」
「うん?何だ、その歌は?」
「先町でお姉さんたち三人が歌ってた歌」
「そういうものもあったか?にぎやかなところだから気づかなかったな」
「……」
何でずっと星さんとばかり……
「あまりやきもちしないでー、雛里ちゃん」
側で百合お姉さんが急にそんなことを言いました。
「あわっ?べ、別に妬いてなんて…」
「あら、違ったのかしら。でも、今まで見たことのない怖い顔になってるわよ?雛里ちゃんって」
「あ、あわわ……」
それは、ちょっと悔しくないと言ったら嘘なわけですし。
っていうか、私一成ちゃんのせいでここまで来たところもあるのに、今になってこんな扱いなんて、何か酷いじゃないですか。
いくら星さんが私より体が女らしいとは言っても、私もまだまだ成長するんですし、こればかりは一成ちゃんにも察してくれて欲しいところなんですが私はまだ一成ちゃんを見た日々はそれほど長いとは言えなくても、この世界の中では一番一成ちゃんのことを良く知っていると自負していますし、一成ちゃんだって私と過ごした時間が一番長いのですからもっと私に頼ってもらうべきなのです。それより何ですかやっぱり一成ちゃんもアレなのでしょうか。胸なのでしょうか。やっぱり男の子なんて皆女の体ばかり見るのでしょうか。不潔です、理不尽です。私たちは体じゃなくて頭で勝負する人たちなのです。そんな扱いはただのセクハラです。
「私だってまだまだ成長してるんだから!!」
…って、
あれ?
皆どこに…??
一成side
趙雲と言ったら、蜀漢の猛者。
若い時は劉備の息子を抱いて、何千の敵を斬りながら敵の包囲網を抜け出してその息子を助けて、老いても劉、関、張を失った蜀で、諸葛亮と共に多くの戦場で活躍した。
五虎将軍の中でも義弟の関羽と張飛を除いたら、誰よりも劉備のお側で長くその覇道を支えた者。
この人をここで出会ったことはある意味幸運だよね。
孔明お姉ちゃんや鳳統お姉ちゃんに元直お姉ちゃんのこともそうだったけど、どうやら私は蜀の人たちと縁が多くなりそうでしょ?
しかも、星お姉ちゃんがこのたびを一緒に行くと言ってくれたのは、あくまで私に興味を持ったから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「待て、ならお主がその天の御使いというのか!?」
「うん」
「……いや、待て、少し……いや」
それは酔っていたし、星お姉ちゃんもかなり驚いたようで一方、この子が酔って変なこと言っているのではないのかって顔もしていた。
「し、しかし、何故こんなところに居るんだ?」
「えっと、私が居るってことがばれて、朝廷から私を捕まえに来るって」
「なっ!…ということは」
「私、捕まったら殺されかねないっしょ?だから、他のところに逃げてる途中って話」
「な…なんと…朝廷がいくら腐ったとは言え、まさかこんな子供にまで手を出そうとするほどになっているとは…」
「仕方ないよ。あちらから見たら、私ちょー危険人物だから」
「いや、だからといって……お主は大丈夫なのか?」
「私は、私が苦労するとか殺されるとかそんなのは別にいいよ。でも、鳳統お姉ちゃんが苦しむことは見たくない」
「鳳統…あの小娘さんのことか」
「うん、だから、趙雲さんにお願いしたいの。私のことも、鳳統お姉ちゃんの事も。天の御使いの護衛だよ。メンマなんかより、ずっと興味深くない?」
「む…むむむ……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と、言った流れでその夜散々悩んだ挙句こうして私たちと一緒に来てくれている星お姉ちゃんなんですが、
実はかなりメンマのことを気にしているそうで、後悔するとかの暇を与えないようにこうしてずっと側で話かけたりしているわけです。
って私誰に説明しているの?
「…あれ?」
「どうした、一成」
ふと振り向いたら、
「百合お姉さん、鳳統お姉ちゃんは?」
「へっ?…あ、あら?先までは側にいたのに、どこかで逸れちゃったのかしら」
「不味いな。こんなにぎやかなところで見失ったら、探すのに大変だぞ」
「あ…」
どうしよう、鳳統お姉ちゃん。
もう直ぐ暗くなるのに。
鳳統お姉ちゃん探さないと。
「皆で探しましょう。三人で散って探せば…」
「待って、一成ちゃんは危ないから宿屋に戻っていて」
「え?」
「そうだ。下手してお前まで道を失ったらいけないからな」
百合お姉さんと星お姉ちゃんは私に鳳統お姉ちゃんを探せる気はないらしい。
気持ちは解るけど、でも、早く探さないと……
「大丈夫だ。私が何としても雛里のことは探してあげよう。一成は帰って休んでいるといい」
星お姉ちゃんが私の肩を掴んで言った。
「…鳳統お姉ちゃんは私のせいでここまで連れてきてくれたよ。私も探す義務があるよ」
「しかし…」
「大丈夫だよ。道覚えたし。道迷っても周りの人たちに聞いたらいいから。うん??私にも探させて」
「……いいわよ、一成ちゃん」
百合お姉さん!
「百合殿、いいのか?」
「でも、暗くなるまで探せなかったらあなたは直に宿屋に戻ってきなさい。いいわよね?」
「うん!解った」
雛里side
一人でぶつぶつ考えているうちに皆とはぐれちゃいました。
あわわ、これって罰あたりなんですか?私が変なやきもち妬いちゃって、天からばちあたったのですか?
もう直ぐで日も暮れそうなのに、こんな誰も知らないところで一人で……
「あわー、一成ちゃーん、百合お姉さーん…星さーん」
でも、どう見ても近くに皆さんがいる様子はありません。
これって、もしかして私、
本当に迷子に…
「おやおや、お譲ちゃん、お一人さんかなぁ?」
「!!?」
その時、男の人一人が、私の前に立っていました。
「だ、誰ですか?」
「いやー、どうやらお困りのようでな。お母さんを探しているのか?」
こ、こんな場合って、きっとこの人、私を皆がいるところまで案内してくれると誘って、人がいないところに連れてってそのまま…
「あ……」
に、逃げないと…
「おっと」
「あ」
後ろに逃げようとしたら、また一人が居ました。
「!!」
こ、これって、本当に…
「さあ、お嬢ちゃん、大人しく付いてきてくれるかな。お母さんが探していたぞ」
「い、いや……」
誰か、助けて…
「てやああああ!!!」
ぶっ!
「ぐおぉぉっ!」
「あっ!」
前の人が急に倒れた。
「急所にキック命中!効果は抜群だ!四倍ダメージ!…(にしっ)」
「一成ちゃん!」
「鳳統お姉ちゃん!早く逃げるよ」
一成ちゃんが私の手を掴まって走り出しました。
「くふっ」
「大丈夫か、兄貴?」
「くううぅ…あのガキが!追うぞ!」
「う、うん!」
後ろであの二人もついてきています。
大人たちに本気でさせられたら、逃げる術が……
「ああ!助けて!!誘拐犯だあ!!」
「!」
走りながら一成ちゃんは街中に止まっていきなりそう叫びました。
「何だ?」
「誘拐犯?」
「どこだ?!」
「あ、兄貴、まずいよ」
「ち、ちくしょー、このガキが…」
「ベーだ」
一成ちゃん、あまり挑発したら…
「この野郎が…!!」
兄貴と呼ばれた男の人はヤケで一成ちゃんを捕まえようとしました
「一成ちゃん!」
ダメ、危ない!
「…お姉ちゃん!!」
「はぁあああっ!!」
「ぐあっ!」
そしたら、急に空から星さんが飛んできて男の人をぶっ飛ばしました。
「兄貴」
「おやおや、こんな子供に切れる誘拐犯って、どうなんだろうか」
「やっぱり、近くにいたね、星お姉ちゃん」
「無論だ。一成一人で行かせるなど、不安でできるものか」
「ありがとう、星お姉ちゃん、おかげで助かった」
「ふっ、礼を言われることはない。そのつもりでお主についていくと言ったんだからな。しかし、あまり無茶ぶりすると、お姉ちゃんも怒るぞ?」
「うっ、……気をつけます」
「宜しい」
星さんは一成ちゃんに向かって笑って、男の人たちの方を向きました。
「いくら世が末とは言えども、貴様らみたいなやつらが立つ所はこの世にあってはならん。この常山の趙子竜、その腐った心構えをコテンパンにしてやる!」
「うっ!兄貴!もう逃げよう」
「そ、そうだな」
「ふっ、立ち向かう勇気さえもいないのか。だが、もう遅いぞ。回りを見よ」
「「!!」」
男の人たちの周りには、星さん以外にも街の人たちが二人を囲めるように道を塞げていました」
「貴様ら、こんなところで子たちを誘拐しようとするなんて」
「ただで済むとは思うなよ」
「ひ、ひぃぃ!!」
一成side
なんだかんだで、うまくなったようみたいで良かった。
「鳳統お姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん…ありがとう、一成ちゃん」
鳳統お姉ちゃんは、まだ怖いように少し震えています。
「ごめんね、鳳統お姉ちゃん」
「えっ?…なんで、一成ちゃんが私に謝るの?」
「だって、私のせいじゃない。元考えたら、私のせいでこんなに遠いところまで来ることになったんだからね。それに…」
私がもっとしっかり鳳統お姉ちゃんのこと見守っていたら、こんなことにならなかっただろうに、
星お姉ちゃんのことばかり気にしていて、大切な鳳統お姉ちゃんがなくなるのも知らなかったから。
「…あ、あのね、一成ちゃん」
「うん?な、何?」
鳳統お姉ちゃんが何か真剣そうな顔をしましたので、私はもしかして鳳統お姉ちゃんも無茶ぶりしたって怒るのかなって覚悟して答えました。
「えっとね…」
・・・
・・
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今まで鳳統お姉ちゃんって呼んでいたのを自分からも気にしていたのですが、やっとこうすることができました。 というか真名軽いよ、星さん |
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