レベル1なんてもういない 1−3
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「さあ力みなぎる、私が相手だ」

 

ラフォードの台詞と共に戦闘体勢に入る。

男達はこちらが2人と見て明らかにへらへらとしている。

 

勝っているのは頭数だけと思い知るには数秒あれば十分な時間だった。

得物の構え方から素人揃いだ。

だから新ルールを言う。

 

「ラフォード、必殺技で勝って!」

 

チラッとこちらを向いてゆっくりと頷いた。

一応聞いていたんだ。

でも必殺技の意味解っているのかな。

 

「…声を出したものから、斬る…」

 

ラフォードは頷いてそう宣言して目を閉じてしまった。

緊張して周りの空気の温度が上がったように感じる。

 

ラフォードは冗談を言う性格ではない。

あの得物の尺は柄を含めてラフォードの身長と同程度、となると刀身の方は長くても1,5m。

しかも未だ全てが包帯に巻かれたままだ。

ラフォードの戦いとはどんな居合いをみせてくれるのだろうか…

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「気にいらねえ余裕っぷりだな!

 俺らを知りもし……ぐはっ!」

 

場の空気を読まない男1人が口を開いて話をしているその瞬間に、その者は悲鳴を上げて倒れこんだ。

 

「…!」

 

ラフォードは攻撃しに行った…のか?

あの男が声を出して何秒も経っていないし、

斬られた所以外は殆ど空気の流れが無い。

なによりもその男はラフォードから一番はなれた場所にいた。

単純に見積もっても5m以上は離れている。

 

 

「なっ!?」

 

「え?」

 

「へえ…」

 

 

宣言どおり声を出した順から次々と餌食にされていく。

見てる側にしてみたら訳もわからずに倒れ行く男達を見て

その場にいた者たちは驚くばかりだった。

 

「ぎゃあぁ」

 

「単にその場まで斬り込んで戻る」その攻撃方法だとしたら、それはまさに奇跡の速度だ。

人は鍛錬を重ねればこれほどまで速く動く事が出来るのかと問われれば、

こちらに来る前の向こうの世界では無理だ、と大人は言ってこの意見を曲げはしないだろう。

物理学的にもその動きはありえることではないと。

しかしそのありえない出来事が目の前で起きている。

こちらの世界の人は神経が発達しているのか、使役する筋肉の限界を超える事が容易く出来るのか。

いろいろと考察をしている間にも声を発したものから順々に斬られていく。

 

中にはラフォードに斬りかかるものも見えた。

構えた剣を振りかぶる為の力を入れるその寸前を狙って武器を弾いているという有り得ない所で攻撃を捌いている。

そのための反射神経と瞬発力は相当なものだ。

言うなれば後の先、カウンターの極みというところか。

 

「ぐおおっ」

「どわっ」

 

おお、2人同時に攻撃されて倒れた。

 

地面に転がった者達からは血の臭いが漂ってきてそれがやたらと鼻につきすぎる。

男達の血の巡りが悪いのか不衛生なのか、もっと健康的な生活を心がけろと気付いたら後で言ってやりたい。

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この事態を見た頭領らしき男がようやく声を出すなと合図を送り出したため静寂が周囲を包み始めた。

声はやみ一旦攻撃は止んだで、動きが止み砂煙が晴れてきた。

 

立っている男は当初の半数以下になっていた。

さすがにこれだけの速度でこの数の攻撃すれば疲れるだろうと見てみると、あらま。

攻撃を始める前と寸分変わっていない、全く息の乱れも無く次の攻撃に備えて目を閉じている。

これだけの動きをして…防御よりも攻撃を仕掛ける方が体力を消費するはずであるのに、

ラフォードは疲れを知らないのか。

 

声をださないまま近づこうにも思うように近づけていないようでその周囲を取り囲むだけ。

砂には足跡だけが増えていっている。

 

 

 

極めて小声で指示を出している者がいた。

 

「あいつを出して来い。

 あいつにやらせる」

 

「でも今回の収穫っすよ」

 

「全員やられたら奪われちまうだろうが

 あいつに始末してもらってその後でまた捕まえればいいんだ

 このまま馬鹿にされっぱなしでたまるか」

 

「わ、わかりました」

 

…別に馬鹿にした覚えはひとつもないのだが。

 

その会話はこちらが風下なので小声でもその風の流れでその会話は聞き取れたが

ラフォードの耳にはこの会話は届いていないらしく反応していない。

 

どうやら隠し玉を持っているようだ。

 

 

大きな足音を踏み鳴らし幌に向かいだした。

その音はラフォードにも聞き取れたみたいだが

ラフォードの攻撃する基準はあくまで声ということで動くと言う事なのか手を出さずにいる。

 

声を出せない緊張感、とはいうものの。

恐らくは別に声を出さなければ攻撃をしないルールなんていうのは今回限りの自分ルールだろう。

自身の目で相手を捉え、ここにいる全員を斬り伏せる事の方が早く終わるし簡単なはずだ。

 

そうなるとこの遠距離から高速で間合いを詰めた抜刀による斬撃がラフォードの必殺技なのか?

だとしたらすごいけど地味だな…

その動きの正体を知るにはもう少し様子を見ていたいところだ。

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…相変らずも周囲の血の臭いが鼻に付く。

自分自身が戦いをけしかけてしまったとは言え

この血の臭いは、いい気分ではない。

 

 

馬車の幌の中から持ち出した箱らしきものを持ち出した男は鍵を探している。

間抜けにも鍵どこですか?なんて大声で言い出してその刹那にやられている。

 

箱は砂の地面に落ちた。

その箱はゲームでいう宝箱を彷彿とさせる形状で

底面は長方形だが上面は丸まって、それを外周からバンド、それと鍵で固定されているようだ。

その箱から声がする。

動物が中に捕らわれているのだろうか。

その声はラフォードには届いたらしく箱の方向に向けて狙いをつけ始めた。

 

「葵! その箱は駄目…っ! 

 …はっ!」

 

…声を出してから気が付いた。

声を出したら攻撃をする…

そのルールだとこちらにも攻撃してくるんじゃないだろうな。

そう頭をよぎった瞬間、ラフォードは箱から新しい音がしたこちらに狙いを向けている。

集中する為に閉じていた目は照準を定めるように一瞬だけ開き、その目と目が合う。

その目の形相たるや人の成せる視線ではないと言わされるほど凍り付いている。

 

「ウチは…っ」

説明
戦闘シーンのつもりで作っていますが難しい;;
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