それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~十三歩 |
前書き
一成「一体何なんだよ、あの人たち?」
雛里「……」
一成「信じられないよ、あんなんで官軍だっていうの?」
星「正確にはここの太守の娘さんなんだけどな。名前は確か、孫策という…」
一成「!!……あれが孫策…」
雛里「どうしたの、一成ちゃん?知ってるの?」
一成「い、いや、全然…」
百合「それはそうと先のあの眼鏡の女の子、相当できるようね」
星「どういうことだ?」
百合「なんというか……ふっ、あんな人がいるところだったら、私が入っても惜しくはない気がするわ」
一成「何言ってるんだよ、百合お姉さん。あんなのがいるところに行ったら、お姉さんまで悪い人になっちゃうよ!」
百合「まだ若い人たちだからこれから変わる可能性はいくらでもあるわ」
一成「むー…」
色んなことは有りにはありましたけど、私たちは無事に河北まで着くことができました。
「星さん、盧植先生のところまで一緒に来るんですか?」
「まあ、一応そこまでは一緒に行くつもりだが、何か良くないことがあるのなら別にここで別れても構わんぞ?私は」
「そんなこと言わないで一緒に行こうよ。盧植先生のところは水鏡先生のところと違って、凄い人たち沢山あるんだから…あ、いや、百合お姉さんや雛里お姉ちゃんがすごくないって意味じゃなくてね」
一成ちゃんが星さんに一緒に行きたいみたいです。
「まぁ、確かに先生のところは文官専門だからね。盧植先生のところには基本は人の上に立つための学問をしている人たちが多いの。一成ちゃん、あなたもそういう人たちと一緒に学ぶのよ」
「うへぇ…」
一成ちゃんは百合お姉さんの言葉を聞いて緊張したのかちょっと嫌な顔をしました。
こんな時に私が力になってあげないと
「だ、大丈夫だよ。私も一緒にいるから…」
「…うん、そうだね。雛里お姉ちゃんもいるから大丈夫だね」
「うん」
私が見守ってあげる。
これからもずっと、一成ちゃんが苦しい時、淋しい時に一緒にいる。
一成ちゃんの力になってあげる。
その日の昼、私たちはある街に点心を食べに来た。
「ここで向かえの人がきてくれるって約束があったんだけど…」
「うえ?ここご飯食べにきたんじゃなかったの」
「ご飯も食べるけど……その前にあの人を探さないと…」
「うぅぅ…私もうおなかすいたのに…ここ熱いし…」
昼ごはんを期待していた一成ちゃんは落ち込んでしまいました。
確かに、腹も減ったし、それに今日は凄く日差しが強いのに、ちょうど点心時でしかも空には雲ひとつもありません。
私と一成ちゃんは、帽子のつばが広いから直に日差しにあたることはないですけど(その辺りはこの帽子、凄くいいです)、熱いです。
「でも、こんな街の真ん中でちゃんとした約束の場所もないのに、どうやって探すというのだ?」
「なにやら、ここ辺りで店をしているみたいで…」
「お店?ご飯の店だったらいいな…」
「ふむ…そこまで言うのだったら、私が何か買ってあげてもいいのだが」
星さんは一成ちゃんが話すのはかわいそうだったのかそう言いました。
「星さんがそこまでしなくても…」
百合お姉さんがそう言いましたけど、
「構わん。私が買ってあげたいから勝ってあげるだけだからからな。…一成、何か食べたいものはあるか?」
「うーん…ああ」
周りを見ていた一成ちゃんが見つけたのは…
「あそこで桃売ってる!」
「桃か…よし、買ってあげよう」
そこは桃を売っている店、ではなく露店……でもなく、
「桃?」
一成ちゃんが見つけたのは筵を売っている露店……ああ、横で桃も少し売ってました。
「桃くださーい」
一成ちゃんが筵の上で筵や籠を売っている(多分桃はつきものか、多分誰かにまかされて売り物ではないような)人に桃をお願いしました。
「ああ、これは売り物じゃなくて…あ、まぁいっか、はいっ、一つあげる」
日差しが強くて笠を被っていたあの女の人は一成ちゃんに桃一つを手渡しました。
「へっ!いいの?」
「いいよ。違う人たちに上げようと思ったものだけど、どうせ十分あるんだし」
「だが、ただでもらっては悪いのだが」
「大丈夫ですよー」
「やったー!」
「一成ちゃん、ちゃんとありがとうっていいなさい」
「ありがとうございます」
百合お姉さんに言われて頭を下げた一成ちゃんの頭から、私と同じ形の帽子が落ちました。
「あ」
「ああ、私が取ってあげる」
露店の人が帽子を取って一成ちゃんにあげました。
帽子をもらう時に、私たちとあの人の目が合いました。
「…あれ?」
「??」
私たちを見た女の人は、頭を傾げました。
「あの、…もしかして、水鏡先生のところの……?」
「ええ、そう…ですけど…あ、もしかして」
「ああ!」
私たちを誰か確認したあの人はパッと立ち上がって笠を外しました。
バイン
…今見たらこの人、胸凄く大きいです。立ち上がったらバインと揺れました。
……何か嫌な人です。
「こんにちは!私、盧植先生のところの塾生の、劉玄徳と申します!盧植先生に頼まれて、お迎えに来ました」
「あらまぁ…」
店って、露店だったのですね。
てっきり、この街で店を広げているとばかり思っていたのに、場所がちゃんとできていなかったのはそのせいだったみたいです。
「あ、これ、食べてください。熱いですから」
そういいながら玄徳と言ったお姉さんは私たちに桃を一つずつ配りました。
「ありがとうございます」
「頂こう」
「…ありがとうございます」
「うん?私は?」
「あれ?また欲しいの?先もらったのは?」
一成ちゃんは先もらった桃をあっという間に食べちゃって、手にはもう桃の種しかありませんでした。
「食いしん坊さんだね。はい、もう一個あげる」
「わーい」
一成ちゃんにもう一つあげて、自分は空になった籠と売り物の筵たちを片付き始めました。
「ちょっと待ってくださいね。直ぐ整えて案内しますから」
「私たちのせいで直ぐに帰っちゃって、大丈夫なんですか?」
「いいんです。これはついでにだったし。最近家のお母さんはちょっと病気で、街に出られないから私が街に出るついでに持ってきたのですよ」
「はあ…」
店を整理して、筵を全部巻いて大きな籠に入れた玄徳さんはそれを背負って私たちに振り向いた。
「はいっ、じゃあ皆さん、これから盧植先生のところに案内します」
一成side
こ、この人が劉備!?
何か凄くハイテンションな人だ。
編物売っているとか、三国志で出てくるのは同じだけど、この人もやっぱり女の人なんだ。
元男の人たちなはずの人たちが皆こんなに綺麗な女の人だったら、貂蝉とか傾国の美人といった人たちはどうなるの?男の人?
しかもこの人、驚くところが一つや二つじゃないよ。
何より、
バイン
胸が半端ない…
いや、星お姉ちゃんも大きいけど、この人は何?
私がもらった桃よりこの人の胸の方が大きいよ?もしかしてあれって、耳の代わりなの?鏡を見なくて見えたというその大きい耳の代わりに胸が大きくなったの?
「あの、お姉さんて、私のこと知ってるの?」
「うん?ああ、盧植先生に聞いたよ。何か、水鏡先生の親戚なのに、あそこでは男の子は教えられないから、こっちで預かることになったって」
そういう話になったんだ。
「でも大変だね。こんな遠いところまで来てお勉強なんて……お父さんやお母さんは?」
「うん?うん…あ…」
「…あぁ、ごめん…ちょっと考えずに口走っちゃって」
「ううん、大丈夫だよ。劉備お姉さんのお母さんは大丈夫なの?」
「うん、ちょっと最近暑いから調子が悪くなっただけ…あれ?私、名前いったかな」
しまった!
「う、うん!言ったよ!先」
「えっ?私聞いてないけど」
雛里お姉ちゃん、空気読んで?
「いや、確かに言ってたぞ。ところで劉備殿、」
ふぅ、星お姉ちゃんのおかげで助かった。
雛里side
あ、てっきり言っちゃったけど、そういえば一成ちゃんってこの世界の人たちのことを大体知っていたよね。
私のせいでばれちゃうところだったよ。
「姓が劉ということは…家に太守とかをしている人はいないのか?」
「あ、はい、私たち家族は姓は皇族ですけど、それほど力があるわけでもなくて…お父さんが無くなった後は、お母さんと一緒に普通に住んでいます」
「そうか…しかし、劉備殿は盧植殿のところで勉強をした後、漢に仕官するつもりか?」
「そうですね……今はそんなつもりはないです」
「何故だ?」
「今は今の漢王朝に仕えるより、私の力で人たちを助けたいと思っているんです。でも、仕官してどの地域を任されることになったら、そこの人たち以外には干渉できないから、私はそういうのはいやだなぁって思っているんですよ」
「ならどうするのだ?」
「今のところは……まだ良くわかりません。でも、どんな形でも、たくさんの人たちを救いたいと思っている。その心に代わりはありません」
「そうか……なるほどな」
星さんて、もしかしてこの人のことを…
「あ、着きましたよ。あそこです」
玄徳さんと話をしている間、私たちは無事に蘆植先生の私塾に到着することが出来ました。
「…来たかのぉ、桃香」
「はい、ただいま戻りました、盧植先生」
「この人が、盧植先生…」
盧植先生は、水鏡先生よりも年を取っている肩でした。
「盧植先生…」
「子瑜か…随分早かったのぉ、水鏡が随分と焦っていたようじゃ」
「早いうちに済ませたほうが良いと思いまして…あの、実はもう一人連れてくることになりましたけど…」
「うーむ?」
「あわわっ!あ、あの…」
盧植先生の目が私に向かうのを見て私は驚いて一瞬百合お姉さんの後に隠れようとしましたけど、側に一成ちゃんがいることに気づきました。
私が怖がると、一成ちゃんまで不安にさせちゃうから…
「ほ、鳳統と申します。字は士元、真名はひ、雛里でしゅ」
あわわ、最後に噛んじゃった……
「おや、おや、これはまた、かわいいお嬢さまがわが塾に来るようになるとはのぉ……」
盧植先生は私を見て笑いながら仰いました。
「そして…一成といったかの?子瑜から話は聞いておる」
「は、はい」
一成ちゃんも緊張してるように答えました。
「そう緊張することはおらん。二人とも近くに来るが良い」
私と一成ちゃんは、お互いを見てから、盧植先生のところに近づきました。
「二人ともよう来てくれた。私の名前は盧植じゃ。これから盧植先生と呼ぶといい。二人とも歓迎する」
「「…はい!」」
こうして、私たちは無事に盧植先生のところに来ることが出来ました。
水鏡先生side
三人とも無事に盧植さんのところに着いたでしょうか。
予定通りなら今頃はあそこについているはず…
「はわわ!!先生!」
「せんせー」
その時、部屋に朱里と奏が走ってきました。
「どうしたのですか?」
「扉で、都から人が先生のことを探してましゅ!」
「剣を持っている兵たちも一緒に…」
「!」
まさか…
・・・
「これは、水鏡殿」
外に行ってみたら、都から来たという人が居ました。
「あなたは…確か曹嵩」
「儂のことを知っているようだな」
目の前にいる男性は曹嵩。
宦官の曹騰に養子として預かれ、今はその父の官位を継いでいる。
何でこの人がちょくちょくに…!
「なら話は早い。ここに天の御使いという子がいるんだな?」
「…なんのことでしょうか?確かにこの塾に男の子が一人居ましたが、それは手紙にも書いておいた通り、私が一時的に預かっていた子で、今は親たちのところに戻しています」
「その人たちは今どこに?」
「流浪する人たちでしたから、詳しいことは私もよくは解りません」
「ろくに知ってもいない人の子を一時的に預かった、それをわしに信じろというのか?」
「事実を言っているまでです。とにかくここにもうあの子はいません」
「…ふん!先に手を打ったな。流石は歴史に名高き司馬の一人だ」
曹嵩さんはそう言って後を振り向きました。
「見つけたら儂の養子にでも受け入れようかと思ったんだけどよ…天の御使いという面白いものを殺せなどと、朝廷のやつらもどうかしている」
この人は何をいって…!
「水鏡殿、儂にその子がどにいるか教えてくれないか?儂ならあの子を最高の環境で育てることができる。最近うちの娘にいい相手を探してあげようと思っていたところでもあるしな。ほどほどにしないとあの娘は女好きになりそうで心配しかならん」
この人…最初から一成ちゃんを見つけても殺すつもりなんて…
いや、信じてはいけません。
何よりこの人の野望は、私も承知しているつもり。
一成ちゃんがこの人の手に入ったらどんな風に利用されるか……
「先も言ってましたけど、私はあの子がどこにいるかもう知りません」
「そうか…なら仕方ない。でも、一応儂も命令を受けて来た身でな。少し塾の中を調べさせてもらおう」
「……解りました。ただし、生徒たちには指一つも触れさせません」
「安心せい。名高き水鏡塾の生徒に手を出したといえば、この儂がその場で屍してやるからな……全員、塾の中を調べろ!」
「「はっ!!」」
…一成ちゃん、雛里ちゃん…どうか無事で…
説明 | ||
やっと着きました、盧植先生のところ。 後、桃香が桃と編物を一緒に売っているという設定はpixivの http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=4278474 この絵から持ってきました。 曹嵩のことはちょっと惜しかった気がします。 何が惜しいかというと、萌将伝で父だと出ていなければ、口調を華琳と同じくしてあげようと思っていたのに…という惜しさです。 馬騰は無印で父で、真では母に代わったのにな… |
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コメント | ||
8pのちょくちょくに、は「直々に」ですよね?これはじきじきに、だと思いますよ(FALANDIA) ロバ?ああ…まあ、あの話はどっちかというとその息子の聡明さを言うためのお話でしたけどね。確かに子瑜としては嫌な話。でも、結構仲良かったですよね。諸葛瑾と孫権って…(TAPEt) ロバのことを考えると確かに呉にはいってほしくないかも(akieco) |
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