荒野にて
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よう、戦友。

遅くなってすまないな。

お前の好物を持ってきたから許してくれ。

なかなか手に入れるのに苦労した。

よく味わって飲んでくれよ。

 

なあ、戦友。

覚えているか。

馬鹿な上官を持つことは、人間の一番の不幸だと笑った事を。

笑い事じゃなくなっちまったよ。

まったく笑えない状況だ。

 

ああ、戦友。

おれはお前が羨ましい。

何の疑問も持たないままいってしまったお前が。

あの頃が一番良かったんだ。

神も勝利も正義でさえも素直に信じていた。

 

だが、戦友。

おれたちが信じていたものは何だったんだろう。

当たり前だと思っていたものは全て崩れ去ってしまった。

この恐怖が分かるか?

この苦しみが分かるか?

 

さて、戦友。

そろそろ行くよ。

なに、悲しむことはない。

どうせまた近く会うことになるさ。

あの世でな。

 

だから、戦友。

待っていてくれ。

また一緒に酒を飲もう。

そして昔を語り合おう。

あの頃のように。

 

 

 

荒野にて。

粗末な枝十字架の前に、ウィスキーボトルがひとつ。

 

説明
この世界を、未だ数匹の亀と象が支えていた時代。
霧は濃く、森は暗く、神秘と信仰と迷信は絶えず、ただ空だけはどこまでも高かった頃。
忘れられた、彼らの物語。

世界観を共通させた短編連作「死者物語」です。
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コメント
アシェラさま;お久しぶりです、コメントありがとうございます。うん、確かに(笑)。(まめご)
と、いいつつ長生きしそうな(アシェラ)
天ヶ森雀さま:コメントありがとうございます。書いたらぜひぜひ読んでみたいです。(まめご)
詩的で良いですね。自分もまた書きたくなってきました。(天ヶ森雀)
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