本・恋姫無双第二十四話
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---長沙・会議室---

 

冥琳「こうなると分かっていても、厄介ですね…何せ向こうは、劉表殿のご病気を理由に黄巾、反董卓と一兵も使っていないのですから…」

 

 

雨蓮「付け加えて、我らは赴任して20年弱だが、向こうはそれこそ劉表殿の先代からの話だ。差が有って当然だったな。」

 

 

徐庶「更には、水鏡女学園などに積極的に支援していた事も有り、文官には事を欠かない状態です。」

 

 

一刀「ただ、分からないのは…なぜこのタイミング…じゃなくてこの『時機』だったんだ?」

 

 

冥琳「向こうも一枚岩では無いですしね、多分…『黄祖』が大敗して、『蔡瑁』が取り込み形でひとつになれた…といった所でしょう。『劉j』名義と言う事は、後継者争いは『蔡瑁』が勝ったんでしょう。」

 

 

穏「それゆえに厄介と言えます。バラバラならば…そうですね…『江陵』の『黄忠』辺りを…」

 

 

一刀「ちょっと待った!『黄忠』が『江陵』にいるの?」

 

 

穏「そうですけど…何か?」

 

 

一刀(あいた〜、『楽成』に居るとばかり思ってた…)

 

 

睡蓮「じぃぃぃぃ…」

 

 

一刀「そんな目で見ないで…もし俺の知っている『黄忠』…『紫苑』なら搦めと…」

 

 

睡蓮「彼女も『落とす』つもりですか?」

 

 

一刀「強いのは事実だし…『紫苑』ならば『璃々』もいるしね。」

 

 

睡蓮「あんな子供にも手を出すつもりですか!!」

 

 

一刀「どんな想像したんです?…小雪の遊び相手としてだよ?…す・い・れ・ん・さん?」

 

 

睡蓮「ご、ごめんなさい…」

 

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一刀「ただ、今の『黄忠』にはどんな計略も効かないと思う。」

 

 

雨蓮「これじゃな。」と言って、玉璽を手元に掲げる。

 

 

冥琳「大義名分は揃っていますし、例え『黄忠』が出陣拒否をしても『黄祖』達は『璃々』を【使う】でしょうし…」

 

 

一刀「おおぅ…『璃々』ちゃんも居るんだ?」

 

 

雨蓮「劉表殿がご健在のときは交流が有ったのでな。『璃々』が生まれてすぐ…お主らが来る少し前に会っているな。」

 

 

一刀(…てことは多分、星のパターンでは無いかな?…)

 

 

睡蓮「玉璽が邪魔ならば誰かに押し付ければ宜しいのでは?」

 

 

徐庶「そうですね、力無きものが持つものでは無いですしね。」

 

 

雨蓮「天啓かと思ったんじゃがなぁ〜。で、これをどうするって?」

 

 

冥琳「そうですね、『袁術』辺りに押し付けては…援軍をしてもらいつつ…」

 

 

一刀「玉璽渡すから兵よこせってか?…いい手ではあるな。多分『袁術』は玉璽を手にしたとたんに、帝位を宣言しそうだし…」

 

 

雪蓮「あははっ…あり得る〜♪」

 

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冥琳「玉璽に関してはそれでいいとして…この戦の一番の問題は身内にあります。」

 

 

雨蓮「土着の豪族や名家達だな…彼らを動かす名分が無いうえに、相手に同調すれば名分は立つ…か」

 

 

穏「あと半年あれば、完全に力関係で優位に立てたのですが…」

 

 

蓮華「『利』を説いて味方につけては?例えば『味方になれば税を安くします』とか…」

 

 

一刀「負ければ『不渡り』にしかならないような約定では頷かないよ?まぁ、『利』を説くのは有りだね。」

 

 

蓮華「むぅ…では、どうするの?」

 

 

冥琳「あまり気は進まないが、『技術供与』なら有りかと…負けてもそれで、民は飯にありつけますので…」

 

 

百合「渡す『技術』に関して…これなんかどうでしょう?」

 

 

冥琳「どれ…ほう『農具』と『農学』か…これの報告はまだだったが?」

 

 

百合「試作品が出来たのが今朝でしたので…ですが、農地からの収穫量は上がりますし、脱穀などの作業が短縮され、空いた時間で別の仕事に就かせられます。」

 

 

一刀「『唐箕』『千歯扱き』『備中鍬』…色々作ったねぇ。試作品が有るのなら、それで交渉すればいい。味方についた後で、設計図などの情報を渡せばいい。」

 

 

雨蓮「では、それでいこう。穏と百合で豪族と名家を説得、最悪でも『中立』に持ちこめ。」

 

 

穏・百合「御意」

 

 

雨蓮「江陵の『黄忠』は、北郷夫妻と明命で説得に当たれ。」

 

 

一刀「なんで俺ら?」

 

 

雪蓮「頑張りなさい、『マダムキラー』♪」

 

 

一刀「何処で覚えた!?そんな言葉…教えた覚えは無いよ?」

 

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雪蓮「『カタカナ語辞典』ていうのにあったわよ?」

 

 

一刀「なんでそれを選んだの?」

 

 

雪蓮「面白そうっていう勘♪」

 

 

一刀「………やな予感がするけど…あと何を覚えたの?」

 

 

雪蓮「ん?『●ッ●●』とか『●ェ●●●』とか♪」

 

 

一刀「わーわーわーわー!」

 

 

冥琳「あまり上品な言葉で無いのだけ分かったわ。」

 

 

雨蓮「『マダムキラー』とやらは別として、頼んだよ?」

 

 

北郷夫妻・明命「御意」

 

 

雨蓮「徐庶と冥琳は『袁術』の所に行け。玉璽は渡してきて良いから、援軍を寄こさせろ!」

 

 

徐庶・冥琳「御意」

 

 

雨蓮「その他は出陣準備!いつでも動けるようにしておけ!以上解散!!」

 

 

その他「御意!」

 

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そして今、北郷夫妻は江陵に来ている。

 

 

一刀「明命の情報待ちだしな…暇だ…」

 

 

睡蓮「ですね…何しましょうか?」

 

 

一刀「ナニしましょうか?」

 

 

睡蓮「…非常時という認識だけは持っていてください。」

 

 

一刀「分かってるよ……睡蓮。」

 

 

そう言って抱き寄せる。睡蓮も抵抗はしない…

 

 

一刀「チュッ…今はこれだけ。落ち着いたら、またね♪」

 

 

睡蓮「うん………分かった………」

 

 

明命「えっと、見せつけているのでしょうか?」

 

 

睡蓮「うひゃっ!」

 

 

一刀「ご、ごめん明命…で、どうだった?」

 

 

明命「『黄忠』さんですが、『璃々』ちゃんを、人質に取られては、いないみたいですね。」

 

 

睡蓮「その他には?」

 

 

明命「戦自体には反対なのでしょうか…籠城の準備はしていても、行軍の準備はしていませんでしたね。」

 

 

一刀「??、会って話してみないと判らないな。」

 

 

睡蓮「軍使として会って、交渉するしか無いですね。明命みたいに侵入出来ませんからね。」

 

 

一刀「では、行きますか?」

 

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---江陵城・謁見の間---

 

 

一刀「お初にお目に掛ります。孫堅様の参謀補を務めております北郷守息です。」

 

 

睡蓮「同じく、北郷蓮華です。」

 

 

黄忠「お初にお目に掛ります『天の御遣い』殿。江陵太守の黄漢升です。あなた方の噂は耳にしていますよ。」

 

 

一刀「ちなみに…どのような…」

 

 

黄忠「治安が急激に良くなった事でも、その一端は伺えますし、『清酒』や『焼酎』は絶品でしたね。それに…」

 

 

睡蓮「それに…何でしょう?」

 

 

黄忠「対岸からでも確認できる大型の船…あれは、脅威ですわね。いくら『くそ黄祖』が率いていたとしても…一隻で水軍の半分以上が壊滅…と言うのは異常ですわね。」

 

 

一刀「その船の指揮をしていたから人間として訂正させていただくが、一隻では無いよ。十隻は有ったはず。それに『黄祖』は商船も襲撃したんだ。故にその件に関しては『黄祖』の身から出た錆ですよ…そうそう、『黄祖』だが、こんなのを発行していたよ?」

 

 

そう言って『江賊行為を容認する覚書』を見せた。

 

 

黄忠「あの『くそ』がぁ!!劉表様の顔に泥を塗るとは!!」

 

 

『くそ黄祖』から『くそ』に降格…人で無くなったねぇ…

 

 

一刀「話は変わるが、玉璽について…『宣戦布告文』に『私持』と書いてあったがこれも違う。皇帝…劉協様よりお預かりしたものだ。そして、お返しするために袁術殿に相談をし、今は袁術殿がお持ちである。」

 

 

前半は嘘である。だがしかし…

 

 

黄忠「家柄で考えれば適任でしょう…人物としては、評価出来そうもないですが…うーむ」

 

 

考え込んでます…

 

 

一刀「それと『宣戦布告文』の名義が『劉j』殿になっているが、孫堅様より聞いた話では、後継者は『劉g』殿のはず。これは『劉表』殿の死を利用した簒奪と言っていい。さらに言うなら『劉表』殿の死…あまりに早すぎるし、流行り病でもないのに『劉g』殿も併せて体調を崩すのも不自然だ。この二人が亡くなって得をするのは『蔡兄妹』だけだ!」

 

 

ちなみに、『蔡兄妹』というのは、『蔡瑁』と『蔡夫人』の事である。

 

 

黄忠「玉璽の件は気になりますが………ふぅ………あなた方と『上』におられる方にお願いがあります。」

 

 

一刀「ばれてた?…明命、出ておいで。」

 

 

明命「よっと…ばれてしまっては仕方無いですね。」

 

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黄忠「お願いと言うのは、『劉g』様の救出です。『劉表』様の遺言で『劉g』様のことを託されておりますが、『蔡瑁』達に先手を打たれてしまい、『劉g』様は『蔡瑁』達の手中にあります。」

 

 

睡蓮「納得です…それならば江陵が出陣準備ではなく籠城準備をしていたのもうなずけます。どちらにでも味方出来るようにしていたのですね?」

 

 

一刀「で、救出でき次第こちらに加勢してくれると…」

 

 

黄忠「はい…ただし、救出できる場合です。病状次第では報告で構いません。」

 

 

一刀「よし、明命!『劉g』の救出に向かえ、頼むぞ!」

 

 

明命「御意」と言って姿を消した。速いねぇ…

 

 

一刀「睡蓮は、この件を雨蓮さんに報告、俺はここに残る。」

 

 

睡蓮「残ってナニするつもりですか?」

 

 

黄忠「私は良いですわよ?」

 

 

一刀「睡蓮、変に勘ぐらない!黄忠さんも、かき回さないでください!」

 

 

黄忠「睡蓮さんは妹君でしょう?姓が一緒ですし…別に気にしなくても…」

 

 

中国では夫婦別姓が基本です…

 

 

一刀「『天の世界』では…主に嫁の名字が夫の名字に変わるんですが…夫婦同姓が基本なのです。そして、ここにいるのは私の妻です…」

 

 

黄忠「では、北郷漢升にでもなりましょうか?」

 

 

一刀「まだ引っ張りますか…」

 

 

睡蓮「…話を戻しますが、残ってどうなされるのです?」

 

 

一刀「人質はいるでしょう?俺がなるよ。」

 

 

睡蓮「…なぜですか?」

 

 

一刀「『劉g』の救出が遅延した場合、黄忠の裏切りを覚られるかも知れない。その際、『裏切っていない証』がいる。俺なら丁度いい。『御遣い』を捕縛しました…とでも言えばいい。」

 

 

睡蓮「…どうしてもですか?」

 

 

一刀「俺たちが小雪を守りたいように、黄忠さんも『璃々』を守りたい…だからだよ。」

 

 

黄忠「…いえ、お二方ともお帰りくださいな。そこまで言って戴いただけで十分です。『劉g』様にもしもの事がありましたら、そちらを頼ることも出来ますし、益州に友もいますので、そちらに逃げるのも有りですしね。………『璃々』を連れて行ってください。あなた方に守っていただけるなら、何とか持ちこたえて見せます。」

 

 

睡蓮「…良いんですね?」

 

 

黄忠「ただし、私が益州に行った時には『璃々』をそちらに送って頂けますでしょうか。」

 

 

睡蓮「わかりました。責任を持って『璃々』ちゃんを預からせて頂きますし、万が一の時は益州に送らせて頂きます。」

 

 

一刀「睡蓮、約束して良いのか?戦況次第じゃ益州とは分断されるんだぞ?」

 

 

睡蓮「そうならないように頑張ってくださいな、旦那様♪」

 

 

一刀「へいへい…」

 

 

その後の報告で、土着の豪族や名家達は説得に応じて『加勢』してくれる事になり、袁術も兵を出す事を約定した。

 

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---襄陽---

 

一刀「まぁ、すべてが上手くいくわけ無いわな…」

 

 

今の状況を説明すると、孫呉は水軍戦で圧勝し、退却する『劉j軍』に北より来た袁術軍と挟撃…

 

 

なす術なく『蔡瑁』『黄祖』共に討ち取られた。一線級の将が全滅の『劉j軍』…すぐに降伏した。

 

 

雪蓮「『蔡夫人』は何処だ!?」

 

 

文官「多分、洛陽かと…『劉j』様もご一緒でした…」

 

 

蓮華「後を追うぞ!!」

 

 

雪蓮「…追わなくていいわよ…」

 

 

蓮華「姉さま!?」

 

 

一刀「いつもの勘か?」

 

 

雪蓮「そうよ…」

 

 

冥琳「一理はあります。多分曹操ならば、荊州に探りを入れている事でしょう。たとえ『蔡夫人』が面会出来たとしても、『蔡夫人』の言を耳に入れないでしょう。」

 

 

袁術「話は終わったかえ?では事前の交渉どおり、此処より北は頂くぞえ。」

 

 

地名で言うと襄陽、新野、宛の三か所であり、残りは孫呉預かりとなった。

 

 

雨蓮「ああ、そうしてくれ。我らは退くぞ…」

 

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帰る途中…

 

 

雨蓮「劉表殿…すまない…劉g殿を守れなかった……スン」

 

 

祭「雨蓮殿…貴女のせいでは無いですぞ…明命が救出に向かった頃には、既に病状は深刻だったそうですから…」

 

 

そう言って抱き寄せた瞬間…

 

 

雨蓮「うっ……ぁぁああああ……ぁぁああああ…」

 

 

睡蓮「………」

 

 

睡蓮が初めて見る『母親が泣き崩れる光景』だった…

 

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---洛陽---

 

 

曹操「『蔡夫人』ごゆるりと滞在なされよ。」

 

 

蔡夫人「では、荊州牧の件は…」

 

 

曹操「『劉j』殿が成人なされた時考えましょう…退がられよ。」

 

 

蔡夫人「…ははっ」

 

 

蔡夫人退室後…

 

 

曹操「『劉j』は小さくて可愛いらしいのだけども………蔡夫人は役に立たなそうね。桂花、『任せたわよ』」

 

 

荀ケ「…御意」

 

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その後、蔡夫人を見た者は一人もいない…

 

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あとがき

どうも、nakatakです。結構、間があきました。暑さにバテバテです。

栄養つけて乗り切りましょう……

 

それでは、また。

 

説明
とりあえず、対『劉j軍』です。
徐庶の真名は未決定です…すんません。
それでは、どうぞ
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コメント
ルーデルさん、口の汚い紫苑さんって珍しいでしょう?ww(nakatak)
なんか今回は紫苑さんにインパクト全部持ってかれた感が強いですなww(ルーデル)
クラスターさん、紫苑さんについて、劉表への忠誠と、黄祖への憎悪が混ざった結果です。まあ、イメージとはかけ離れますねww若いのも事実?ww(nakatak)
U_1さん、コメントありがとうございます。雪蓮は面白そうな事には敏感なんですwwつ後はなにを引っ張りだすでしょう…ww(nakatak)
320iさん、最近聞いた話で、子供を産んだ女性は、性に積極的になるそうです…そのせいもあるのかな?ww(nakatak)
瓜月さん、現時点で紫苑さんは、厳顔(桔梗)と合流したと思ってください。「黒い華琳」…まあ、黄巾の乱で少し会っただけですからね…影響は皆無でしょうww(nakatak)
よーぜふさん、ここでの紫苑さんは、劉表に篤い忠義を持っていたのと、精神的に少し若いんです。それと、一応未亡人ですので、男(竿)に飢えていますww(nakatak)
hokuhinさん、中学生でいますね…辞書で淫語を調べる人…私は違いましたよww(nakatak)
2828さん、「睡蓮」は真名ですので姓名で言うと北郷蓮華になります。ご指摘は歓迎です(nakatak)
…いやはや、黄忠さんのインパクトが強過ぎ(^^;)。優雅な態度を滅多に崩さないキャラなのに、客人である一刀夫婦の前でさえ激昂を隠さない姿に、他の何もかもがキレイに頭から吹っ飛びました。まだ孫堅ママが生きている時代だし、黄忠さんもこの頃はまだ若k(ドスッ!(クラスター・ジャドウ)
図書館の知識をこんな事から覚えるなんて…雪蓮はやっぱり侮れない!(U_1)
さすが華琳、いらないものは切り捨てる! そして紫苑さん・・・ちょっとお口がわるすぎやしませんか??w まぁ一刀を食べよう?としてるあたりらしいですがw(よーぜふ)
雪蓮さん、あなたは男子中学生ですかw(hokuhin)
6p北郷蓮華→北郷睡蓮じゃないの?(2828)
紫電さん、誤字の指摘感謝です。『紫苑の言葉づかい』…一部分、私の勝手なイメージです…ww(nakatak)
砂のお城さん、紫苑さんは一応、益州に逃げた設定です。曹操さん…怖いっすよ〜ww(nakatak)
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