それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~十四.五歩
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ここに来てまだそんなに経ってないある日、私たちはすごい話を聞きました。

 

「試験?!!!」

 

「うん、だから二人が助けてー」

 

玄徳さんが半泣きになって尋ねてきて私たちに言ったことは、私たちを動揺に陥るに十分でした。

 

試験ってあるの!?

 

「水鏡先生のところじゃ試験なかったよね。鳳統お姉ちゃん」

 

「う、うん。一応弁論大会とか、象棋大会とか、そういうものはあったけど、筆記試験とかそういうものは、全然…」

 

「へっ!いいな。私もそこにいきたーい!」

 

考えることは人によって違う。それを紙に書いて点数をつけるというのは、人の考えを枠にはまらせてしまう。

 

だから口では言っても今の時にはまだ紙に書くという段階はいらない、というのが、水鏡先生の考えでしたので、筆記試験とかはありませんでした。

 

「それで、その試験って…もしかして私と雛里おねえちゃんも…するの?」

 

「うえ?…うん、多分」

 

「雛里お姉ちゃん!!」

 

「鳳統ちゃーん!」

 

「「助けてー!」」

 

子が独り増えました……

 

 

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というわけで勉強会が始まりました。

 

試験科目は、大学と…九章算術?

 

「何で九章算術(数学)がいるんですか?」

 

大学と九章算術じゃ全然噛み合わないんですけど。

 

「私はこの前それ赤点だからって追試……」

 

「あわわ……」

 

「九章算術って、そんなに難しかったっけ?」

 

「(一成ちゃんはもう少し難しがってもよかったよ)」

 

一成ちゃん、ほかのものはともかく、九章算術だけは得意でした。

 

(※九章算術には二次・連立方程式やら、分配算やら出てきます)

 

「じゃあ、大学より、まず九章算術をしたほうがいいでしょうか?」

 

「ううん、大学もヤバいの!」

 

やばいのはあなた自身だと思います!

 

「玄徳お姉ちゃん、今まで何してたの?勉強しなかったの?」

 

「したよぉー。でも、一人で勉強しても解んないもーん」

 

「盧植先生にとか、他の生徒さんたちに聞いたら、」

 

「だって、白連ちゃんも自分ひとりの身で出来るくらいで、人に教えるほどにはならないし、他の人たちも自分ので忙しくて教えてくれないし…」

 

「玄徳お姉ちゃんって、もしかしてここで友たちなかったりする?」

 

「ちがうってばーー」

 

これはどうにも重症のようです。

 

「私、ちょっと盧植先生のところに行ってきます」

 

「え?行ってどうするの?」

 

「ちょっと……あ、一成ちゃん?良かったら、私がいない間、玄徳さんに九章算術教えてくれる?」

 

「私が?大丈夫かな」

 

「一成ちゃんなら大丈夫だと思うよ。お願いするね」

 

「…うん!私がんばる!」

 

 

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コンコン

 

「あのー、盧植先生?」

 

「うーむ?雛里か」

 

「はい、あの、少しお尋ねしたいことが…」

 

「入ってくると良い」

 

「はい」

 

盧植先生の部屋に入ったら、先客がいました。

 

「あ」

 

「うん?ああ、今度新しく来た子?」

 

「あ、はい」

 

「へぇ……あなたが水鏡先生の…」

 

あの人は興味深そうに私を見ました。

 

実際、今の私と一成ちゃんはかなり目立っている立場なんですけど…

 

でも、

 

「うぅぅ…」

 

「ほれ、白連。あまりその子を脅かすでない」

 

盧植先生があの人に叱るように言いました。

 

あ、あの人が先玄徳さんが言った…

 

「なっ、別に脅かすとかしていませんよ」

 

「相手によって接し方も違ってくるもんじゃ。あの子は人にあまり見られることに慣れておらん。あまりジロジロみると失礼になるぞよ」

 

「は、はい…」

 

「あの、私は大丈夫です。……いつまでもこんな風にしているわけにも、いきませんから」

 

私がちょっと悪い気がしてそういうと、

 

「無理はせんで良いぞ。……白連、すまぬが、席を外してくれるか」

 

「あ、はい」

 

女の人が外に出て、盧植先生は私に席を勧めました。

 

「公孫賛という者じゃ。それなりにはできるものじゃが…人への接し方がなっておらん」

 

「わ、私が人見知りなだけですから…」

 

「いや、今回に限っての話ではない……はぁ…桃香の半の半分でもついていってくれたら良いのじゃがのぉ」

 

「あ、あの、実は、玄徳さんのことで来たんですけど」

 

「うん?何じゃ?」

 

私は先生に、玄徳さんとあった話をしました。

 

「ああ、あれは儂がわざとそうしたものじゃ」

 

「わざと、ですか?」

 

「あの子は素は良いが、直ぐに人に頼ろうとする癖がおる。じゃから今回は、他の生徒たちにも、玄徳のことを助けないようにいっておいたのじゃよ」

 

「でも、勉強は寧ろたくさんの人たちと一緒にしたほうがいいんじゃあ…」

 

「…あの娘の場合、それは少し度が過ぎての…ほおっておくと、他のものたちがあの娘の仕事まで全部やっつけてしまうんじゃ」

 

「はい?」

 

「あの娘の魅力にはこの塾の誰もがはまっておる。じゃから、この娘が何かをしているのを見ると、誰もがそれを助けてあげたいと思う。それはあの娘が持っている恐ろしい

 

ぐらいの能じゃ」」

 

確かに、…あの人に頼まれると、断ることができない。

 

「だから、他の生徒たちにそうしないように先にいっておいたのですか?」

 

「………あの娘の能力は儂も疑っているわけではおらんが、それでもあのままじゃ一人じゃ何もできない子になってしまうのではないかと、少し不安になってのぉ…」

 

「あの、それじゃあ私たちも手伝ってあげないほうがいいのですか?」

 

「できればそうお願いしてよいかの。あの娘一人で克服できるようにしたいんじゃ」

 

「…はい」

 

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「ふえ?助けちゃダメ?」

 

盧植先生のところから戻ってきて、一成ちゃんと二人きりになって一成ちゃんに盧植先生のところでの出来事を話しました。

 

「うん、だから玄徳さんを今手伝っちゃダメだって」

 

「うぅん……でも、私もう大体教えちゃったよ」

 

「え?」

 

「えっと、どんなところが出てくるだろうか、後、どの辺りは本にあるのよりこっちの方が解け易いよ、とか………いけなかった?」

 

その短い間に、全部教えたって…

 

「玄徳お姉ちゃん、お勉強あまりできないみたいだからコツとか色々…不正はなかったよ」

 

「……し、仕方ないよ。もう教えてあげたのは」

 

「うん…でも助けちゃダメなんて、ちょっと酷くない?」

 

「うぅん、でもいつまでも誰かに助けてもらっていると自分の成長がないからね。きっと盧植先生もそれを心配しているのだと思う」

 

「だからって試験に限ってなんて……ねぇ、雛里お姉ちゃんやっぱちょっとおかしいよ」

 

うぅん、一成ちゃん納得してないみたいだし…私も正直あのまま玄徳さんをほおっておくのは少しかわいそうな気がするんだけど。

 

でも盧植先生が…

 

「…ここまでは言わないようとしたのに」

 

「うん?」

 

私が迷っていたら、一成ちゃんが真剣な顔で私を見ながらこう言いました。

 

「雛里お姉ちゃん、あの人はね」

 

 

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一成side

 

「勉強しましょう!」

 

「うわっ!」

 

よしっ、雛里お姉ちゃんがやる気出した。

 

「い、いきなりどうしたの、鳳統ちゃん」

 

「試験は三日後、そのうちに大学を全部教えるって不可能に近いんです。だから、『私はその不可能を可能にしてみせます』」

 

燃えてるよ。

 

雛里お姉ちゃんがらしくなく燃えてる。

 

「…か、一成ちゃん?」

 

「うん?なぁに、玄徳お姉ちゃん?」

 

「どうして…こう、鳳統ちゃんがああなっちゃったの?」

 

「玄徳お姉ちゃん助けてあげないと、私試験で白紙に出すって言ったから」

 

「何てこといったの!?」

 

でもちょっとごめんなさい、雛里お姉ちゃん。

 

ここまでする気はなかったんだけど…

 

でも劉備を助けてあげない鳳統ってダメだと思ったんだ、私。

 

「わ、私のためにそこまでしてくれなくても」

 

「玄徳お姉ちゃん…自分の立場がわかってないね」

 

「へっ?」

 

「玄徳お姉ちゃんは、『こうでもしないと試験で赤点確定』なの」

 

「………!!」

 

がくっ

 

玄徳お姉ちゃんの首が落ちる音だった。

 

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その後、三人で頑張って勉強しました。

 

雛里お姉ちゃんは、玄徳お姉ちゃんのため(もとい、私を赤点にしないため)頑張って玄徳お姉ちゃんに勉強を教えてくれました。

 

もちろん、側で私も一緒に聞いています。

 

ちなみに言うと私はまだ大学は学んでないと盧植先生に言ったら小学に科目が変更されました。

 

しかし、どう見ても、

 

「寝ないでください」

 

「うはっ!ね、寝てないよ!」

 

玄徳お姉ちゃんは勉強に向いていない気がします。

 

こんな劉備でいいんでしょうか、この世界は。

 

でも、側に居ると確かに何かほおっておけない何かがあります。

 

盧植先生が言っていた玄徳お姉ちゃんの能力というのはきっとこれでしょうね。

 

何かこう…「逆」カリスマというか、そういうものがある人です。玄徳お姉ちゃんは。

 

雛里お姉ちゃん、ちょっと休んでからしようよ。もう随分時間経ったし」

 

何か玄徳お姉ちゃんがかわいそうだったので、私は雛里お姉ちゃんにそういいました。

 

「うん、そうしようっか。じゃあ、ちょっと休憩にしましょう」

 

「ふえぇ…助かった」

 

休憩と聞いたら、玄徳お姉ちゃんはそのままテーブルの上に頭を伏せました。

 

「お茶と菓子持ってきますから、少し待ってくださいね」

 

「へっ?お菓子?!」

 

お菓子に反応する玄徳お姉ちゃん。

 

「ふえっ?今から作るの?」

 

「作る!?」

 

また反応する玄徳お姉ちゃん。

 

「この前作っておいたのまだあるよね?」

 

「あ、それまだあるの?」

 

「うん、食べる人があまりないから…」

 

そう言って雛里お姉ちゃんは厨房においといたお菓子を取りに行きました。

 

「ねぇ、一成ちゃん、鳳統ちゃんってお菓子も作れるの?」

 

「うん、すごくおいしいよ、雛里お姉ちゃんのお菓子」

 

「そうなんだ…すごいね。鳳統ちゃんって何でもできちゃうんだね。羨ましいなぁ」

 

確かに、何でもできちゃうね、雛里お姉ちゃんって。

 

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そして、試験当日

 

「雛里お姉ちゃん、どうだった?」

 

「うん、それなりに……一成ちゃんは?」

 

「盧植先生が問題易く出してくれたみたい。答案は全部書けたよ。合ってるかは解らないけど」

 

「そう、よかったね」

 

少なくとも赤点はない、と思うよ。

 

「玄徳お姉ちゃんはどうなったかな」

 

「そうね…最後の日まで頑張って勉強したみたいだから、きっと大丈夫だよ」

 

あ、

 

「……」

 

「?どうしたの、一成ちゃん?」

 

「雛里お姉ちゃん、フラグ立てちゃったよ」

 

「あわ?」

 

あ、あっちから玄徳お姉ちゃん出てくる。

 

聞いてみよう。

 

 

 

「玄徳お姉ちゃん、試験どうだった?」

 

「うぅぅ……」

 

「玄徳さん?」

 

これは真っ白だね。漫画だったらトン付け忘れたかと思っちゃうよ。

 

せめてここで口から何か出てきていたらよかったんだけどね。

 

「試験、ダメだった?」

 

「…わかんない。何と書いてたかも覚えてないよぉ」

 

ダメじゃん。

 

「だ、大丈夫ですよ。きっとちゃんと書けましたよ」

 

だから、雛里お姉ちゃんフラグやめてぇ、玄徳お姉ちゃんのライフがオーバーキルされるよ。

 

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雛里side

 

「雛里お姉ちゃん、前に見た試験の結果出たよ?」

 

「えっ!?公開式!?」

 

 

・・・

 

 

 

結果発表

 

 

 

一位 鳳統

二位 劉備

三位 ハム

  ・

  ・

  ・

 

「おおお!!」

 

わ、私一位…というか、

 

「玄徳さん?」

 

「………(ぱくぱく)」

 

本人が固まってます。

 

本人があまりにも恐ろしさに固まってます。

 

これは異変です。私が教えたから言えます。これは異変です。乱世なんか問題にならないほどの大異変なんです。

 

「玄徳お姉ちゃん?」

 

「…はっ!何これ!」

 

気を取り戻しました。

 

「鳳統ちゃんありがとう!!」

 

「あわっ!い、いえ、これは、玄徳さん本人が頑張ってくださったおかげで、私はあまりしたことは…」

 

「ううん、いい先生がいるからこそなの。本当にありがとう」

 

それは盧植先生に言ったらきっと怒りそうです。

 

「ねぇ、何で私は上がってないの?」

 

「一成ちゃんは、科目違ったからじゃない?」

 

「そっか…じゃあ後で先生に聞いてみようかな」

 

「あ、一成ちゃんもありがとう。一成ちゃんが教えてくれたの、全部試験に出たよ」

 

玄徳さんが今度は一成ちゃんの手を掴まえて言いました。

 

「あ、そういえばそうだったね。でも、玄徳お姉ちゃんってすごいね。教えたまま全部覚えたの?」

 

「三日間なんとか丸覚えしたんだけでお、何とかなったよ。ありがとー」

 

「……」

 

一成ちゃんはその話を聞いて手を離して私のところに来ました。

 

そして玄徳さんに聞こえないように私の耳元で話ました。

 

「雛里お姉ちゃん、玄徳お姉ちゃんって思ったより…」

 

「うん、そうみたいね。私が教えたのも、正直三日で覚える量じゃなかったんだけど」

 

暗記には自身あるとか。

 

「でもああいう人って試験終わったら脳にあるの全部噴出すんだよね」

 

「あはは……」

 

「ねぇ、ねぇ、二人とも」

 

そんな話していたら玄徳さんが私たちのところに来ました。

 

「あのね、二人にお礼で、私の真名を預けたいの」

 

「えっ?」

 

「あわわ……」

 

「私の真名は桃香だよ。これからは桃香お姉ちゃんって呼んでね」

 

玄徳さんは笑いながら、私たちにそうやって自分の真名を預けるのでありました。

 

 

 

 

説明
試験、……あはは…(何があった)

ってか桃香は白連と一緒に盧植先生のところで勉強したのに、何で政治ダメなんでしょうか
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