名作冒頭改ざん(4つ) |
グレート・ギャッツビー
俺がさぁ、まだ青春真っ只中、将来に夢も希望も(たぶん)持っていた若造のころ、ほんで今よりももっとセンシティブで世の中を憎んでいたころ、俺はロックだー、なんて嘯いていきがっていたころ。
オヤジがこう言うわけよ。
おめぇなぁ、人様の文句ばっか言ってっけどよ。
おめぇなんか幸せな方だよ、こうやって家があって学校行かせてもらってメシ食って寝てられんだから。
俺の若いころなんざ戦争が終わったばっかりで食うや食わずの生活だったんだからな。
ふん、昔話はたくさんだ、時代が違うんだよ、今は。
と、反論してはみたものの、心のどこかには納得できる部分もあって、以後ことあるごとにそのことを思い出していた。
異邦人
本日、おかん死亡。
あー、もしかすっと昨日だったかもしれないけど、俺ぁ知らね。
老人ホームからのメールにはこうあった。
「ご愁傷様です、葬式よろしく」
いやはや、さすがに老人ホームでは死後の面倒まで見てくれないんだわな。
そう、たぶん昨日のこと。
老人ホームは池袋から電車で1時間ちょい、飯能にある。
メシ食ってボーっとして風呂入ってから出かけても日が沈む前には到着するだろう。
したらその場で死体を引き取って葬儀屋呼んで斎場で通夜だ。
翌日には焼いて夕方には帰ってこられる、よし、OK。
会社休みまーす、係長にそう言うと渋々許可してくれた。
このお盆進行で糞忙しいときに、とでも言いたそうだが、忌引きを許可しないわけにはいかないだろう。
お土産買ってきますよ、とは言っておいたが、飯能の土産ってなんじゃろな。
葬式饅頭のひとつでも買って帰ってやるか。
高野聖
あちぃあちぃ。
こう暑いと国土地理院発行の正確無比な地図を広げるのも億劫だねどーも。
でも実際俺はプチ遭難しているわけだから地図を広げないわけにはいかないよな。
リュックサックの口をあけて地図帳を引っ張り出した。
岐阜から長野への山道、駅を降りてちょっとしたハイキング気分で歩き始めたんだけど、なんだここは、本当に日本か?
日差しを避けて休憩しようにも丁度よい木陰のひとつも無い岩山。
どっちを向いても未来、どこまで行っても宇宙、じゃないけれど、見渡す限り岩山to岩山。
とんび一匹飛んじゃいないし、空は雲ひとつ無い晴天、照り付ける太陽。
ノルウェイの森
そんとき僕ぁ33歳で、こだま893号の自由席に座っていた。
喫煙できる車両はここだけ、やたら煙たい。
しかも何故かこだまに乗ってしまって、止まる駅止まる駅で追い越され待ち時間。
動いてない時間の方が多いんじゃねーか、訴えてやる!
しかし訴訟費用も出せない僕は大人しくラッキーストライクをくわえた。
アイポッドのバッテリーもそろそろ切れそうだよ、もう、とほほですよ。
名古屋を過ぎ、関が原を過ぎ、京都を過ぎ、ようやく終点大阪、みんな荷物を網棚から下ろし始めた。
11月の霧雨&鈍色の雲が阪急電鉄の小豆色だとか、梅田の円形ビルとか、阪神百貨店の広告とか、かに道楽の看板とかそんななにもかもをリドリースコットの映画のセットのように見せていた。
やれやれ、また大阪か! と僕は思った、みんなも思った。
説明 | ||
テキストファイルを漁っていたら出てきた。わりと有名作品の冒頭をリライトしたもの。タイムスタンプは2006年1月。なにを思ってこんなの書いてたのか?? | ||
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