雲の向こう、君に会いに-魏伝- 最終章【誓い-終-】
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〜何度も・・・何度も迷った〜

〜何度も・・・何度も迷った〜

 

 

〜そのたびに決意して、また迷って〜

〜そのたびに決意して、また迷って〜

 

 

〜そうやって、俺はここまで歩いてきた〜

〜そうやって、私はここまで歩いてきた〜

 

 

〜長い・・・本当に長い道のりを、何度も迷い怯えながら〜

〜長い・・・本当に長い道のりを、何度も迷い怯えながら〜

 

 

〜俺は、此処まで来たんだ〜

〜私は、此処まで来たのね〜

 

 

〜だから、俺は笑えるんだ〜

〜だから、私は笑えるのよ〜

 

 

〜歩んだ先、今この時に・・・君の笑顔が見れたから〜

〜歩んだ先、今この時に・・・貴方の笑顔が見れたから〜

 

 

〜君の想いに、こうして触れられるから〜

〜貴方の想いに、こうして触れられるから〜

 

 

〜君の温もりを、感じられるから〜

〜貴方の温もりを、感じられるから〜

 

 

〜だから・・・少しだけ話をしようか〜

〜だから・・・少しだけ話をしましょうか〜

 

 

 

「ねぇ・・・一刀」

 

「なにかな、華琳」

 

 

 

〜この青空の下、太陽の光に包まれながら〜

〜この青空の下、太陽の光に照らされながら〜

 

 

 

「今日は、良い天気ね」

 

「ああ・・・すごく、気持ちのいい空だ」

 

 

 

 

 

〜最後に・・・話をしよう〜

〜最後に・・・話をしましょう〜

 

 

 

 

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〜これは俺が・・・北郷一刀が消えるまでの物語〜

 

 

 

 

〜これは・・・私が、大切なモノを失うまでの物語〜

 

 

 

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

最終章〜誓い-終-〜

 

 

 

†雲の向こう、君に会いに† 

 

 

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「一刀・・・」

 

城壁の上

そこに立ち、いつものように笑う彼

 

北郷一刀

 

その姿に、私も頬が緩む

その笑顔に、私も笑顔になる

 

「早いのね・・・」

 

「なんか、目が覚めちゃってね」

 

「そう」

 

 

聞いてみれば、本当に平穏な・・・本当に普段どおりの会話に聞こえるのだろう

 

とても、最期の会話には聞こえないだろう

 

 

だけど、これでいいのだ

それが、私たちなのだから

 

 

 

「さて、聞かせてちょうだい

貴方の言う、覚悟の行く末を・・・その想いを」

 

「はは、覚悟の行く末・・・か

そんな大層なものじゃないんだよ?」

 

「それでも、よ」

 

 

『そっか』と、一刀は微笑む

それから見上げた空・・・彼は目を細めた

 

 

 

「最初は・・・皆の為に、俺は消えていくんだって

そう思ってたんだ

恐くって泣きそうになったって、それでも必死にそう思ってたんだ」

 

 

それは、一刀が決めた【最初の覚悟】

私たちの為に決めた、大きな決意

 

 

「恐くても、皆の為だって思ったら・・・頑張れた

そこから祭さんと出会って、その想いがもっと強くなった

ああ、今なら大丈夫って・・・相変わらず震える体で、馬鹿みたいにそう思えたんだ」

 

 

『けど・・・』と、一刀は空から視線をはずす

その瞳は、私たちを見つめていた

 

 

「それじゃ、駄目なんだって・・・気づいた」

 

 

そう言って、一刀は笑う

いつものように、太陽のような・・・暖かな笑顔

 

その笑顔が教えてくれた

彼の、温かな想いを

彼の、本当の気持ちを

 

 

「わかったんだ・・・俺に必要なのは、【消える為の覚悟】なんかじゃない

それじゃ、駄目なんだ」

 

「へぇ・・・なら、貴方に必要なのはどんな覚悟だったのかしら?」

 

 

私の言葉に、一刀は再び空を見上げる

それから、手を伸ばしたのだ

 

青く澄んだ空に向って・・・その手に、ありったけの想いを込めて

 

温かな笑顔のまま、彼は言った

 

 

 

 

 

 

「俺に必要だったのは・・・【繋げる為の覚悟】だった

これからも、この先もずっと・・・いつまでも、この大切な想いを繋げていく為の覚悟だったんだ」

 

 

 

 

 

 

伸ばしたてが・・・強く握り締められる

その手の中、彼は何か大切なモノを掴んだのかもしれない

 

 

「繋げる為の覚悟・・・ね」

 

「ああ、それが俺の答えだ

悩んで恐がって泣きそうになって、それでも前を見続けようとして・・・そんなことを繰り返しながら見つけた、俺の覚悟だ」

 

 

なんて・・・彼らしい答えなのだろう

悩んで、怯えて、泣きそうになって

そんなことを繰り返し、きっと辛かったハズだ

 

それでも彼は、私たちのことを想っていた

 

いつだって、今だって・・・ずっと

 

 

「だから華琳、俺からも聞いてもいいかな?」

 

「何かしら?」

 

 

一刀の眼差しに、私は目を細めこたえる

真っ直ぐな、眩しい視線に・・・胸が温かくなった気がした

 

 

 

「もしかしたら、チョウセンから聞いたかもしれないけどさ

俺の答えってさ、可能性は限りなく0に近いんだ

実際、無いようなもんだよ

だけど、それでも・・・君は、『君達』は俺を信じてくれるのかな?」

 

 

 

彼の口から出た言葉

 

その瞳が映すのは、私たちの姿

 

差し出されたのは・・・【最期の選択】

 

私は、私たちの答えは・・・決まっている

 

 

 

 

「私は、貴方を信じる

馬鹿で、どうしようもないくらいに種馬で・・・けれど愛しい、貴方のことを信じているわ」

 

 

 

真っ直ぐに、彼の瞳を見つめながら・・・言った言葉

彼は照れくさそうに頬を掻き、『そっか』と頷いていた

 

 

 

「けど、ちょっと酷くない?」

 

「馬鹿者、貴様にはこれくらいが丁度いいのだ!」

 

「しゅ、春蘭・・・」

 

「全身精液男にはお似合いだと思うわ」

 

「桂花まで・・・いや、桂花はいつも通りか?」

 

「そこで、風のことを見られましても〜」

 

 

笑顔が広がる

あっという間に、広がっていく

たった一人の・・・だけど、世界で唯一人の彼によって

私たちの想いは、広がっていく

 

 

そんな彼だからこそ、私たちは・・・信じようと思えたのだ

 

 

可能性は、限りなくゼロに近いのかもしれない

 

 

けれど・・・

 

 

 

 

「「ゼロじゃない」」

 

 

 

重なる声

交わる視線

愛しい・・・彼の笑顔

 

 

「だから、俺は・・・この【想い】に、全てを賭けるよ」

 

 

笑顔のまま、彼は言った

その視線が向けられたのは・・・どこまでも蒼い空

 

再度伸ばされた手は、淡く・・・温かな光を放っていた

 

 

 

「これが俺の・・・【天の御遣い】の、最期の仕事だ

この想いを、この覚悟を・・・」

 

 

-4ページ-

 

 

 

 

〜絶対に・・・繋げてみせる!!〜

 

 

 

 

-5ページ-

 

 

放たれた言葉

同時に広がるのは、眩いばかりの光

その光は、空へと・・・空へと、遥か彼方までも伸びていく

 

 

 

「こ、これはっ!?」

 

「光!?」

 

 

目を庇いながら、秋蘭と稟が驚き声をあげる

他の者も同様に、あまりの眩しさに身構えていた

 

 

「この光は・・・」

 

「これは、御主人様の存在そのもの・・・想いの光よん」

 

「っ・・・!」

 

 

ふいに、聞こえてきた声

慌てて隣に目をやると、そこには見覚えのある姿が見えた

 

 

「チョウセン・・・貴方、いつの間に」

 

「どぅふふふふ♪

御主人様のいるところ、この私ありよん」

 

「できれば、勘弁してもらいたいわね」

 

「んもう、冷たいんだからん」

 

クネクネとする隣の筋肉から、私は視線をそらす

途端、再び眩い光が視界を奪う

 

これが・・・一刀の想い

 

 

「御主人様の曹操ちゃん達を想う【心】が・・・ここまでの光を生み出しているのよん」

 

「この光が・・・一刀の想いなのね」

 

 

呟き、ゆっくりと目を開く

天に昇るその光は、まだ強く光り輝きを放っている

 

なんて、温かくて優しい光なんだろう

 

 

この光に、私達への想いが・・・

 

 

 

「華佗ちゃんの鍼によって、爆発的に活性化した氣

それを使って、御主人様は・・・こじ開けようとしているのよ」

 

「こじ開ける・・・?」

 

「ええ、この世界と御主人様の世界を繋ぐ・・・その扉をねん」

 

「一刀の世界へと続く扉・・・ですって?」

 

 

『そうよん』と、チョウセンはニッコリと笑い頷く

その視線は、天へと続く光に向けられている

 

 

「この世界にいる限り、御主人様が受け止めた【拒絶】が消える事はないわん

それに・・・いくら華佗ちゃんの力でこうして動けるようになったとしても、それはあくまで一時的なものに過ぎない

この状態は、消える前の炎のようなものなのだから

残念だけども・・・もう御主人様の体では、この世界で生きていく為の術はないの」

 

「そう、なのね」

 

「だからこそ、御主人様は・・・帰らなくちゃいけない

この世界の【苦しみ】を背負って、元の世界へと

御主人様の世界に行けば、御主人様の体に入った【拒絶】も消えるはずだから

けれど・・・」

 

「わかってるわ・・・わかってるの」

 

 

チョウセンの言葉を、私は止めた

そうだ、私はわかっている

 

きっと・・・一刀も、わかっている

 

それでも、一刀は信じているのだろう

 

この光の先にある、可能性を

 

 

 

「一刀っ!!」

 

 

だったら、私に・・・私達にできる事なんて、決まっている

今だって、これからだってずっと

 

私は彼を、一刀を信じている

 

だから・・・

 

 

 

 

 

「そんな薄っぺらな壁、さっさとブチ開けてしまいなさいっ!!」

 

 

 

 

 

彼の想いに、私の想いを・・・【覚悟】を、全てのせよう

 

 

 

 

 

「貴方は、天の御遣いなのでしょう!?」

 

 

 

 

 

さぁ、一刀・・・見せてあげましょう

この世界にむかって、見せつけてあげましょう

 

 

 

 

「貴方なら、絶対にやれるわ・・・だって」

 

 

 

 

貴方の物語・・・

 

私の物語・・・

 

 

 

 

 

 

「だって貴方は、この曹孟徳が唯一愛した男なのだから!!」

 

 

 

 

 

 

その行く末を・・・望む未来を

 

 

 

-6ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

温かい

胸の奥が、心の中が・・・とても温かい

 

 

「は、はは・・・」

 

 

自然と零れた笑い

 

小さく震える体

だけど、大丈夫だ・・・これは、『恐怖』からくるものじゃない

 

これは、きっと・・・【歓喜】

想いによって満たされた心が謳う、歓喜の歌

 

 

 

「伝わってくる

華琳の・・・そして、皆の想いが

全部、伝わってくるよ」

 

 

光が強くなった

温かな、太陽のような光が・・・強くなる

同時に、俺の体を包み込むように・・・空色の光が、溢れ出してきた

 

 

 

 

これが、想いの力

 

はは・・・なんて、頼もしいんだろう

 

 

「大丈夫だよ、もう・・・大丈夫だ」

 

 

 

大丈夫

今なら・・・わかるよ

繋がるってことの、本当の意味が

 

だから、もう大丈夫

 

 

 

「さぁ、見せてやろうぜ・・・俺の、【俺達】の想いを」

 

 

 

光は、まだまだ強くなっていく

空色の光が、先ほどの光と混ざり合い・・・さらに、強く輝いていく

 

 

繋がっていく

想いが、繋がっていく

 

いつまでも、きっと・・・どこまでも、繋がっていくんだ

 

 

 

「今なら、飛んでいける

この空の果て、雲の向こう・・・世界をもこえて、きっとどこまでも飛んでいける」

 

 

 

俺を包み込む光が、弾けていく

俺の声に、応えてくれる

 

 

「そうだろ・・・皆」

 

 

伸ばしていた手が・・・何かを、掴んだ気がした

それはとても温かく、俺は思わず頬を緩ませてしまう

 

これが・・・【答え】なんだな

 

 

そして、気づいたんだ

 

 

 

 

「あぁ・・・そうか」

 

 

 

掴んだ【答え】

温かな想い

これは、きっと・・・

 

 

 

「華琳・・・俺、見つけたよ」

 

 

 

口にした、愛しい人の名前

瞬間・・・辺りを照らしていた光は、溶けるように消えていった

 

 

 

 

 

 

-7ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「ぁ・・・」

 

 

思わず零れた声

光が収まった直後に待っていた光景に、目を奪われてしまったために出た・・・間の抜けた声

 

 

天より降り注ぐそれを見つめたまま、その場から動けなくなってしまう

 

 

 

「これは・・・雪?」

 

 

いや、違う

これは、雪じゃない

 

これは・・・光だ

 

空から降り注ぐ、雪のような光だ

 

 

「綺麗・・・」

 

 

呟き、降り注ぐ光にそっと触れてみる

すると光は・・・僅かな温もりを残し、溶けるように消えてしまった

 

本当に、雪のようだ

 

そんなことを考えながら、移した視線の先

降り注ぐ光を見つめ、立ち尽くす一刀の姿が目に入った

 

 

「一刀・・・届いたの?」

 

「さぁ・・・どうだろ?」

 

 

そう言って、彼は無邪気に笑う

つられ、同じように私も笑った

 

その時だった

 

 

 

「一刀・・・体が・・・」

 

「うん・・・もう、時間みたいだ」

 

「そう・・・」

 

 

言いながら、彼は自身の体を見つめる

降り注ぐ光のように、うっすらと透けていくその体を

 

終わりが、もう目の前まで来ている

だけど、彼は・・・笑っていた

 

 

 

「さて、これからどうなるんだろうな」

 

「さぁ?

どうなるのかしらね」

 

「冷たいなぁ」

 

「あら、そうかしら?」

 

「ま・・・いいさ

きっと、大丈夫だから」

 

「ふふ、すごい自信ね」

 

「ああ、だって俺は・・・天の御遣いだからね」

 

 

 

笑いながら、彼は視線をうつした

その先には、消え行く彼の体を見つめ震える・・・魏の仲間達の姿

 

彼はそんな彼女達の様子に、苦笑していた

それから、空を見上げる

 

 

「今でも・・・昨日の事のように、思い出せるよ

今日までのこと全部・・・思い出せる」

 

 

降り注ぐ光に目を細め、彼は深く息を吐いた

 

 

 

「春蘭と秋蘭とは、この世界に来たときからの付き合いだったよな」

 

「ああ、そうだな・・・」

 

 

秋蘭の返事に、一刀は笑顔のまま・・・春蘭と秋蘭を見つめた

 

 

「いっつも理不尽にキレる春蘭に、俺が追っかけられてさ

危うく、本当に殺されそうになったり

そんな俺達のことを、秋蘭が笑って見ててさ」

 

「アレは、貴様が悪かったのだ!」

 

「だ、そうですが?」

 

「どうみても、姉者が悪かったな」

 

「秋蘭!?」

 

 

クスリと、彼は笑う

それから、そっと・・・二人のことを抱きしめたのだ

 

 

「春蘭、秋蘭・・・華琳のことを、頼んだよ」

 

 

そう言って、彼はまた笑った

その言葉に、秋蘭は無言で首を縦にふり

春蘭は・・・同じように笑い、一刀の体を抱き返した

 

 

「不思議だな」

 

「何が?」

 

「今の言葉・・・前に見た夢と同じような言葉なんだ

だけど、あの夢みたいに怖くない

きっと大丈夫だと・・・そう思えるのだ」

 

「そっか・・・」

 

「流石は、我が国が誇る種馬だな」

 

「あれ、種馬関係ないよね?」

 

 

 

二人はお互いに笑い、そっと離れた

それから、次に一刀が見たのは・・・三人の少女

 

凪、真桜、沙和

 

北郷隊・・・一刀にとって、初めての部下の三人だった

 

 

 

「三人は俺にとって初めての部下でさ

本当に緊張したのを覚えてるよ」

 

「隊長・・・」

 

「凪はいつも一生懸命で、仕事も真面目にする・・・少し、照れ屋な女の子で

真桜はカラクリばっかいじって、仕事をよくサボってたな

沙和も一緒になってサボってさ・・・そんで、凪に怒られてたよな」

 

「んなっ・・・何も、こんな時に言わんでもええやん」

 

「そうなの、酷いの〜」

 

「ははは、自業自得だ・・・なぁ、凪」

 

「そうですね」

 

凪がそう言って頷くと、二人はバツの悪そうな顔で俯く

そんな二人の頭を、一刀はポンと優しく撫でた

 

 

「これからは、ちゃんとやってくれよ?

三人で力を合わせて、この街を守ってくれ」

 

「「「っ・・・はい!」」」

 

「うん、良い返事だ」

 

 

 

笑い、一刀は三人から離れていく

 

その視線が、向けられたのは・・・霞だ

彼女は、その視線に気づくとフッと微笑んだ

 

 

「約束、破るんやな」

 

「ごめんな」

 

「嘘や、全然気にしとらんわ」

 

 

霞がそう言うと、一刀は『そっか』と呟き苦笑する

そんな彼のことを、霞は・・・力強く抱きしめる

その行動に一瞬、一刀は呆気にとられてしまったようだが・・・すぐに、彼女のことを抱きしめ返した

 

 

「あんな、一刀

あの時にウチが言ったこと、覚えとるか?」

 

「ああ、覚えてるよ

だけどさ、もう一度・・・聞いてもいいかな?」

 

「ふふ・・・ええよ」

 

 

霞の言葉に、一刀は微笑み空を見上げる

未だ降り注ぐ光に目を細め、一刀はゆっくりと口を開いた

 

 

 

「霞・・・俺は、ちゃんと【此処】にいるかな?」

 

 

 

霞の体を抱きしめながら言った言葉

霞はその一言に、頬を緩ませる

 

 

 

「おるよ・・・ウチらの【ココ】に、ずっとおる

今も、きっとこれからも

一刀は、ずっとウチらと一緒やで」

 

 

 

 

「ははっ・・・そっか

うん、俺は【ココ】にいるんだよな」

 

「そや、当たり前やん」

 

 

頷き、二人は離れた

そして・・・一刀は、霞に向ってニッと笑みを向けた

 

 

「ありがと、霞」

 

「気にせんでええよ

それよりも・・・他の娘んとこいったりーな」

 

 

霞に言われ、一刀は苦笑しながらその場から離れていく

 

 

 

続いて向かったのは、季衣と流琉のもとだ

二人は手を繋いだまま、ジッと一刀のことを見つめていた

 

 

「兄ちゃん・・・いっちゃうんだね」

 

「ああ・・・」

 

 

季衣の言葉に、一刀は静かに頷く

そんな彼のことを見つめたまま・・・二人は、フッと笑顔を浮べた

 

「ならボク、またいつでも兄ちゃんにご飯を作って上げられるように・・・一生懸命練習するよ」

 

「そっか、それは楽しみだな」

 

「私も、手伝いますから」

 

「ああ、流琉と一緒ならきっと上手になれるよ」

 

 

言って、二人の頭を撫でる

ソレに対し、二人は嬉しそうに頬を綻ばせていた

 

悲しいはずだ

不安なはずだ

 

それでも幼い二人は、信じているのだろう

 

目の前にいる彼の、この温かな笑顔を・・・信じているのだ

 

 

 

「二人とも、これからも仲良く力を合わせて・・・華琳のことを守ってやってくれ」

 

「うん、任せてよ兄ちゃん!」

 

「お任せください!」

 

「うん、頼りにしてるよ」

 

 

 

笑い、何度か二人の頭を撫で・・・一刀は、歩き出す

 

体は・・・どんどんと、薄くなっていく

 

存在が、ゆっくりと消えていく

 

それでも、笑顔は消えない

 

 

 

 

「やぁ・・・待たせてごめんな」

 

「別に、待ってないわよ」

 

「おやおや、桂花ちゃん

そんな、照れなくてもいいじゃないですか〜」

 

「まったくです

こんな時にまで、意地をはる必要などないでしょうに」

 

「なっ・・・何言ってるのよ!?

べ、別にそんなんじゃ・・・って、アンタもなに笑ってるのよ!!?」

 

「あはは、ごめんごめん

桂花が可愛かったから、ついね」

 

「なっ!!?」

 

「おお、流石は魏の種馬ですね〜

早速、口説きにいきましたよ」

 

「ふっ、まぁね」

 

「一刀殿、別に褒めたわけではありませんよ?」

 

「・・・ですよね」

 

 

大げさに項垂れ、一刀が言う

ソレを見て、風と稟はクスリと笑っていた

 

 

「全く・・・アンタはやっぱり、最期の最期まで変態だったわけね」

 

「うっ、反論できないのが辛い」

 

「自業自得ね」

 

 

 

そう言って・・・桂花は笑った

あの、冷めたような笑みじゃない

 

本当に・・・心から笑っているとわかる、優しげな表情でだ

その笑顔を見て、一刀もつられて笑っていた

 

 

「あ・・・ちょっとアンタ」

 

「どうしたんだ?」

 

「髪の毛にゴミがついてるわよ

だらしないわね」

 

「嘘、マジで?」

 

「マジよ・・・仕方ないから、私がとってあげるわ

さっさと、かがみなさい」

 

「ありがと、桂花」

 

 

言いながら、一刀は桂花の傍で少しだけ屈んだ

 

 

その瞬間・・・私たちの目にうつった光景を、私たちは忘れる事はないだろう

 

 

「ん・・・」

 

「っ・・・!?」

 

 

 

 

あの桂花が自分から一刀の唇を奪った、その時のことを・・・

 

 

 

 

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「・・・っふぅ」

 

 

そっと唇を離し、桂花は深く息を吸った

微かに、頬を赤く染めたままだ

 

一刀も同じように、赤くなっていた

口をパクパクとさせ、何も言えないでいるようだった

 

そんな彼のことなど気にせず、桂花は足早にその場から離れていく

 

 

 

 

「信じてやったんだから・・・もし裏切ったりしたら、アンタのその自慢の愛刀引きちぎるわよ!!」

 

「ああ、絶対に裏切らない・・・約束するよ」

 

「ふん・・・とっとと消えてしまえばいいのよ」

 

 

 

いつものように、切れ味鋭い毒舌を残して・・・

 

 

 

「一刀っ!」

 

「一刀さんっ!」

 

「一刀!」

 

「っ・・・うわっと!?」

 

 

それからすぐに・・・残された一刀に向って、飛び込んでいった三人の少女がいた

天和、地和、人和の三人だ

 

三人は僅かに瞳を揺らし、必死に・・・もう離すまいと、一刀のことを抱きしめる

そんな三人の行動に、一刀は笑いながら頭を撫でていた

 

 

「よかったな三人とも・・・夢が叶ってさ」

 

「うん、これも・・・一刀がいてくれたからだよ?」

 

「俺は何もしてないよ

三人が力を合わせて頑張った結果なんだ」

 

「でも・・・」

 

「でも、じゃないよ

本当に俺は、何もしてないんだから」

 

「ちょっと、一刀・・・」

 

「無駄よ姉さん・・・こういうときの一刀さんは、無駄に頑固だから」

 

「「あぁ〜・・・」」

 

「ちょっと待て、なんだその『あるある』って顔は」

 

「だって、ねぇ?」

 

「うん・・・言われてみれば、確かにそうかも」

 

 

『頑固なのかな〜』と、少し悩んだような表情で呟く一刀

その腕を、天和はぎゅっと抱きしめた

 

 

「気にしなくってもいいんだよ

そんな一刀が、私達は大好きなんだから♪」

 

『ね?』という天和の言葉に、地和と人和は笑顔で頷く

そのまま、二人も天和と同じように一刀の腕に抱きついた

 

 

「一刀・・・私、信じてみるよ

一刀の言ってた、繋がりっていうの」

 

「ああ、ありがとう」

 

「ちぃだって信じてるんだから!」

 

「はは、ありがとうな」

 

「一刀さん、その・・・私も、信じてますから」

 

「うん・・・ありがと」

 

 

彼の体が・・・淡く、光を帯び始めた

そのことに気づいたのか、三人は静かに一刀から離れていく

 

その視線が、私に向けられているのがわかる

 

まったく、この娘達は・・・でも

 

 

「ありがとう・・・」

 

 

小さくお礼を言い、私は歩み始める

その先には、消え行く彼の姿

 

光に包まれていく、愛しい人の姿

 

 

 

「もうすぐ・・・時間みたいね」

 

「ああ、でも・・・恐くないよ」

 

「そう・・・」

 

 

 

『本当だよ?』と、笑う一刀

私はクスリと笑い、彼の体に触れた

 

いや、触れようとしたのだ

 

だが・・・それは、叶わなかった

 

 

 

「ありゃ、もうホントに・・・限界っぽいな」

 

「そうみたいね」

 

 

笑い、私は手を引いた

彼の体をすり抜けた、その手を・・・だ

 

 

その手を見つめたまま、私はゆっくりと口を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳・・・俺さ」

 

「一刀・・・私ね」

 

 

 

 

〜君に、伝えたいことがあるんだ〜

 

 

 

〜貴方に、伝えたい事があるの〜

 

 

 

-9ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

そうだ・・・今なら、わかるよ

 

あの日みた、あの夢の意味が

 

 

 

美しい月に照らされた小川で

 

俺が・・・彼女の前から消えてしまう夢

 

この世界から、消え去ってしまう夢

 

 

 

そう・・・あれはきっと、【そうなったかもしれない未来】

 

 

俺の・・・一つの、可能性の世界だったんだ

 

もしかしたら

 

あの胸が張り裂けてしまいそうな程の後悔を・・・俺は、背負っていたのかもしれない

 

 

皆を、悲しませていたかもしれない

 

 

それを・・・あの夢は、そして【アイツ】は教えてくれた

 

 

 

 

 

うん、今なら・・・言えるよ

 

 

俺の、伝えたい事

 

あの時、本当に伝えたかった事が

 

 

 

 

「華琳・・・」

 

 

 

-10ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

そう・・・今なら、わかるわ

 

あの日みた、あの夢の意味が

 

 

 

美しい月に照らされた小川で

 

私の前から・・・愛しい人が消えてしまう夢

 

この世界から、消え去ってしまう夢

 

 

 

そう・・・あれはきっと、【そうなったかもしれない未来】

 

 

私の・・・一つの、可能性の世界だったのね

 

 

もしかしたら

 

あの胸が張り裂けてしまいそうな程の後悔を・・・私は、背負っていたのかもしれない

 

 

月の下、ただ一人泣きじゃくっていたのかもしれない

 

 

それを・・・あの夢は、そして【彼】は教えてくれた

 

 

 

 

 

えぇ、今なら・・・言えるわ

 

 

私の、伝えたい事

 

あの時、本当に伝えたかったことが

 

 

 

 

「一刀・・・」

 

 

 

-11ページ-

 

 

「愛してるわ・・・一刀」

 

 

「愛してるよ・・・華琳」

 

 

 

重なる言葉

 

交わる視線

 

繋がる・・・想い

 

温かな想いが、私の胸を満たしていく

 

それは彼も同じようで、私のことを見つめたまま笑っていた

 

消えていく彼の存在

だけど、想いは・・・【ココ】にある

 

そうでしょ・・・一刀

 

 

だから、約束をしましょう

 

 

最期に・・・私たちだけの約束を

 

 

 

 

 

 

「たとえ、世界が違ったとしても・・・」

 

 

「たとえ、世界が違ったとしても・・・」

 

 

 

 

 

この約束を・・・架け橋にしましょう

 

 

いつか来る、【再開】へと続く・・・架け橋に

 

 

 

 

 

 

 

「会いに行くわ・・・絶対に」

 

 

「ああ・・・待ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ここに・・・一つの物語が、終焉を迎えた〜

 

 

 

 

 

-12ページ-

 

降りしきる雪のような光は、その日・・・夜が訪れるまで降り続けた

 

 

 

 

「いったか・・・北郷よ」

 

 

 

 

 

その幻想的な光景は、見る人の心を魅了し

大切な思い出へと変わっていくのだろう

 

 

 

 

「見て、冥琳・・・これ」

 

「ああ・・・まるで、天が泣いているようだ」

 

「一刀様・・・」

 

 

 

 

勿論、私たちの心の中にも・・・残っている

大切な想いが、たくさん残っている

 

 

 

 

「愛紗ちゃん、見てみてっ!

雪みたいだよ!」

 

「ええ、これはいったい・・・」

 

 

 

 

だから、私は笑えるのだろう

私たちは、歩いていけるのだろう

これからも、きっと・・・いつまでも

 

 

 

この胸の奥底・・・いつだって、彼の想いがあるのだから

 

いつか来る再開の日まで、ここに・・・居続けてくれるだろう

 

 

 

「そうでしょ・・・一刀」

 

 

 

こぼれた声

それに応えるよう、優しげな風が・・・私の頬を撫でていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜それから・・・一年の月日が流れる〜

 

 

 

-13ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

「参ったな・・・」

 

 

城内の廊下

溜め息を吐き出し、歩くのは一人の女性

 

かの弓の夏侯淵こと、秋蘭だ

 

彼女は、長くなった青い髪を靡かせひたすら歩く

キョロキョロと辺りを見渡しながら、足早に廊下を進んでいく

 

その様子から、彼女が何かを探している事がわかる

 

 

「全く・・・華琳様は、いったいどこにいってしまったのだ」

 

 

 

溜め息と共に零れた言葉

そう・・・彼女は今、自身の主である【華琳】のことを探していたのだ

 

彼女が部屋に行った時にはその姿は無く、こうして探すこと数時間

それでもまだ、彼女は主である華琳のことを見つけられないでいた

 

 

「困ったな

なるべく早く見てもらいたい案件があるのだが・・・」

 

 

言いながら、彼女はさらに足を早める

すると見えてきたのは中庭

彼女はそこに、誰かの姿があるのに気づいた

 

黒く長い髪に、片目に眼帯をした女性・・・秋蘭は彼女のことをよく知っている

 

 

 

「姉者!」

 

 

手を振り、秋蘭は大きく声をあげる

すると眼帯をした女性・・・秋蘭の双子の姉である春蘭はその声に気づいたのか、手を振り返してきた

 

 

「姉者・・・こんなところで、いったいなにをやっているのだ?」

 

「これだ!」

 

 

秋蘭の質問に対し、ビッと指を差し答える春蘭

その指の先には、大きな玉が転がっていた

 

 

「玉乗りの練習をしていたんだが・・・中々上手くいかなくてな

どうしたものかと、考えていたところだ」

 

「そ、そうか・・・」

 

む〜と唸りながら言うところを見ると、どうやら彼女は本気で考えているのだろう

そんな姉の姿に、秋蘭は頭が痛くなったのを必死でこらえていた

 

 

「むぅ・・・【じゃぐりんぐ】とやらは出来るようになったのだがなぁ」

 

 

そう呟きながら、彼女は懐から書簡を取り出し真剣な表情で見つめる

その書簡には【正しい道化になる為に〜巻の壱〜】という、何ともいえないタイトルがついていた

 

 

(まったく・・・【アイツ】は、いったい何を残してるのだ)

 

 

 

「ふぅむ・・・他の技から先に覚えた方がいいのだろうか?」

 

「それを私に聞かれても困るのだが・・・」

 

「それもそうか

仕方ない・・・もう少しだけ、練習するとしよう」

 

 

そう言って、転がっていた玉に器用に乗る春蘭

そこからグラグラとしながらも、必死にバランスをとっているようだった

どうやら普通に玉に乗ることはできるらしいが、そこから動くことができないようだ

先ほどからずっと、グラグラとその場で持ち堪えているだけだった

 

 

(真剣だな・・・これでは、話しかけられないではないか)

 

 

「仕方ない・・・か」

 

 

息を吐き出し、彼女は足を進める

本当は主の所在について聞こうと思っていたのだが、あの調子だ・・・恐らく、まともに聞いてはもらえまいと思ったからだ

 

まぁ、愛する姉の邪魔をしたくなかったというのが最もな理由だったのだが・・・

 

 

「あら、秋蘭じゃない」

 

「桂花、か」

 

 

そんな折、偶然にも魏の筆頭軍師である桂花と出会った

彼女は腕に一杯の書簡を抱え、どこかへと向かう途中だったようだ

 

 

「どうかしたの?

なんだか、落ち着かないようだけど」

 

「ん、あぁ・・・少し華琳様に用があったのだが、どこにもいらっしゃらないんだ」

 

「華琳様が?」

 

「うむ」

 

 

秋蘭の言葉に、桂花も僅かに驚いたように声をあげる

だがそれも僅かで、すぐに何か考えるように真剣な表情になった

 

 

「ごめん、心当たりはないわね」

 

「そうか」

 

「風辺りなら、知ってそうなものだけど・・・」

 

「なるほど、風か・・・うむ、ありがとう桂花

風にも、聞いてみるとするよ」

 

「ええ、風ならさっき書庫の方で見かけたわ」

 

「すまんな、それでは」

 

 

そう言って、秋蘭はその場から足早に歩き出した

その背中を、桂花は軽く手を振って見送る

 

 

「さて、と・・・早く部屋に帰って、続きでも読みましょう」

 

 

呟き、彼女は持っていた書簡のうちの一つを見つめ笑う

 

 

 

 

 

【ツンな君の変わり方】と書かれた書簡を・・・

 

 

-14ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

「さてと、風は・・・」

 

 

書庫についてすぐ、彼女は風のことを探すべく中を見回した

よく整理されたその部屋の中、少しずつ進んでいく

 

そして、彼女は部屋の奥・・・いくつもの本に囲まれ、尚も本を読み続ける二人の女性の姿を見つけた

 

 

「いた・・・風、稟

ちょっといいか?」

 

 

秋蘭の声に反応し、本を読んでいた二人の女性・・・風と稟が顔をあげる

それから持っていた本を置き、彼女のもとへと歩み寄った

 

「おや・・・秋蘭殿ではないですか」

 

「いったいどうしたのですか〜?」

 

 

「なに、少し聞きたいことがあってな

華琳様がどこにいったか知らないか?

今朝からずっと探しているのだが、全く見当たらないんだ」

 

 

そう言って、少しだけ大げさに溜め息をつく秋蘭

その言葉に風と稟は一度だけ顔を見合わせると、クスリと笑った

 

 

「華琳様ならば、あそこにいますよ・・・ねぇ、風」

 

「はい〜、今朝早くからお出かけになりましたよ〜」

 

 

笑いながら話す二人

そんな二人の会話についていけず、秋蘭は眉をひそめる

 

 

「あそこ、とは?」

 

「わかりませんか?」

 

「うむ・・・」

 

 

申し訳なさそうに頷く秋蘭

その様子にまた風は笑い、視線を窓へとむけた

 

 

 

「今日は、良い天気ですから

空もほら・・・こんなに澄んだ青色です」

 

「あっ・・・なるほど、な」

 

 

窓を見つめ、秋蘭はフッと微笑んだ

その視線の先には、澄み渡った青が広がっている

 

 

その景色に、彼女は思い出す

 

 

一年前・・・この空の向こうに旅立った、一人の男のことを

自分達が愛した、唯一の男のことを

 

 

「すまなかったな・・・それでは、私はもう行くとするよ」

 

「いえいえ〜、それでは〜」

 

「うむ、それではな」

 

 

そう言って、秋蘭は足早に書庫から出て行った

その姿を笑顔のまま見送り、二人は再び本を読み始める

 

 

「稟ちゃん」

 

「何ですか、風」

 

「良い天気、ですね〜」

 

「ふふ・・・そうですね」

 

 

窓から差し込む温かな光に照らされながら、二人は笑いあった

 

その光に、心地の良い懐かしさを感じながら・・・

 

 

 

 

-15ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

「待たんか、二人とも!!

今日という今日は、もう許さんぞーーー!!」

 

「アカン、凪のやつマジやーーーー!!?」

 

「早く逃げるの〜〜〜〜!!」

 

「待てーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

城下を進んでいた秋蘭の耳に入ったのは・・・聞き覚えのある声

秋蘭は軽く溜め息をつき、足を進めていく

 

 

「全く・・・あの三人は、相変わらずだな」

 

あの三人とは・・・北郷隊の三人

凪、真桜、沙和の三人のことだ

 

彼女達は【彼】がいなくなってからは、凪を隊長代理に・・・その補佐として、沙和と真桜がつくといった形で機能していた

三人で力を合わせ、この街の平和を守っているのだ

まぁ・・・たまに今のように偶然にもサボっていたところを見られ、凪に追いかけられる二人の姿も見かけるが

 

 

 

 

「あれ、秋蘭様?」

 

「ん・・・」

 

 

ふと、そんなことを考えながら歩いていると誰かから声をかけられた

彼女は腕を組んだまま、その声の主の方へと視線をやった

 

そこにいたのは、二人の少女

両手一杯に荷物を抱えた、二人の少女だった

抱えた荷物からは、様々な食材が見える

 

それを見て、秋蘭は苦笑いを浮べていた

 

 

「季衣、流琉・・・流石に、これは買いすぎじゃないか?」

 

「そうかな〜?」

 

「そうでしょうか?」

 

「うん、いや・・・まぁ、別にいいんだがな」

 

 

『ですよね』と、流琉は笑っていた

二人はあれから、料理の猛練習を続けている

最近ようやく、季衣の料理は【なんとか食べられるレベル】に上がった

その為、この勢いにのるっきゃないといったテンションになっていたのだろう

 

だから、食材を大量に買い込んでいたのだ

 

 

「まぁ、頑張るのだぞ季衣」

 

「はい!頑張りますっ!

よっし、行くよ流琉!!」

 

「あ、待ってよ季衣」

 

 

笑顔で駆けて行く二人を見つめ、秋蘭はあることを思い出していた

 

それは・・・天和、地和、人和

そして・・・霞のことだった

 

あれから三姉妹はすぐに全国ツアーのようなものを開始した

その護衛として、霞がついていったのだ

 

霞自身も、望んでいたこと

ゆっくりと、この天下を見て回りたいといった・・・彼女の想いを考慮してのことだった

 

 

「元気でやってるかな・・・」

 

 

そう呟きを残し、彼女は歩き出す

向かうは・・・あの場所

 

 

 

変わらない景色の広がる・・・思い出の場所だった

 

 

-16ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

「いた・・・」

 

 

城壁の上

秋蘭はすぐに、その姿を見つけることができた

 

心地良い風に髪を靡かせ、ただ黙って空を見上げるその姿を・・・

 

 

「華琳様・・・」

 

「その声は・・・秋蘭ね」

 

「はい」

 

 

秋蘭がこたえると、目の前にいる彼女は・・・華琳はすっと、空から視線を下ろした

それから、秋蘭を見つめフッと微笑む

 

 

「どうかしたのかしら?」

 

「はい、実は早くに見てもらいたい案件がいくつか出てきまして・・・それらに、目を通してもらいたかったのです」

 

「あら、そうだったの」

 

 

そう言って、華琳は微笑む

どこか大人びたその笑みに、秋蘭もまた笑みをかえした

 

 

「今日は・・・良い天気ですね」

 

「ええ、そうね」

 

 

二人で見上げる空

 

 

 

青く果てしない空

 

白く柔らかな雲

 

その全てが・・・彼女達にとっては、たまらなく愛しかった

 

 

「秋蘭・・・先に、戻っていてもらってもいいかしら?

私も、すぐに部屋に戻るわ」

 

「御意」

 

 

一礼し、その場を後にする秋蘭

その背中に軽く手を振り、彼女は再び空を見上げた

 

青く澄んだ、果てしない空を

 

 

「綺麗な空ね」

 

 

呟き、彼女は目を細めた

伸ばした手が、日の光によって温かくなる

 

 

 

 

 

「『春想い、秋焦がれ・・・過ぎ行く季節に目を細め

 

 

三羽の鳥は日を目指し、君を探しに飛んでいく

 

 

約束はこの空へとのせて、風を友にどこまでも

 

 

繋いだ手、想いを込めて・・・繋がる想いに、夢をのせた

 

 

日が昇ろうとも、空はいつでも・・・君を見守り、歌を謳う』」

 

 

手を伸ばしたまま謳うのは・・・【詩】

 

彼が彼女に残した、想いの欠片

 

彼女はその詩を口ずさみ、空に向って微笑んだ

 

 

「ここまでが、貴方の考えた詩だったわね

全く・・・まだまだ、詰めが甘いわ」

 

 

呟いたあと、彼女はゆっくりと瞳を閉じた

 

 

「『さぁ、始めよう』」

 

 

 

そして、再び口ずさむ

彼の残した詩の・・・その先を

 

 

 

「『夕闇明け、暁を眺め・・・私は行こう』」

 

 

 

静かに・・・謳っていく

 

 

 

「『この大地を越え、空をも飛んで』」

 

 

 

それはきっと・・・終わりなんかじゃなかった

開いた目の先、広がる青空

見つめたまま、彼女は思った

 

 

 

 

 

〜そう・・・これは、終わりなんかじゃない〜

 

 

 

 

 

「『私は行こう・・・君を迎えに

 

この空の果て・・・』」

 

 

 

 

 

 

〜これはきっと・・・始まりだったんだ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-17ページ-

 

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに》

 

 

 

-18ページ-

 

 

 

 

これは・・・私が、大切なモノを取り戻すまでの物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     † fin †

 

 

 

-19ページ-

 

 

 

 

《ボクの声が・・・聴こえますか?》

 

 

 

 

-20ページ-

 

さて、と・・・これにて、この物語はお終い

 

 

 

彼が、消えるまでの物語は

 

彼女が、大切なモノを失うまでの物語は

 

 

 

ここに、ようやくの終わりを迎えたのです

 

 

 

 

 

さて、ここで一つ皆様にお聞きしたい事があります

 

 

 

貴方のお部屋に・・・《鏡》は、ありますか?

 

いいえ、お部屋でなくともいいのです

洗面所でも、玄関のでも構いません

 

 

あるのなら・・・その鏡を、よく見てください

 

 

淡く、光を放ってはいませんか?

 

 

 

もし光が見えたのならば、貴方には・・・資格があるということでしょう

 

え? なんの資格かって?

 

そんなもの、決まっているじゃないですか

 

 

 

貴方には・・・【終わりという名の始まりの外史】

 

 

 

《エピローグ》へと続く扉を開く資格がある・・・ということですよ♪

 

 

 

これがボクが・・・この外史を見守るボクができる、精一杯の恩返しです

 

 

 

 

これが・・・本当の【最期の選択】

 

 

 

さぁ、選んでください

 

 

 

 

 

 

彼女が、大切なモノを失うまでの物語は終わりました

 

 

 

 

それと同時に・・・始まる

 

 

 

 

彼女の・・・新たなる物語が、始まりを告げたのです

 

 

 

 

 

さぁ・・・

 

 

 

 

 

-21ページ-

 

 

 

 

〜貴方は・・・《外史-エピローグ-》への扉を、開きますか?〜

 

 

 

 

T、開く

 

 

U、開かない

 

 

 

 

 

説明
今回はあとがきは、【ちょっとした理由】で使えない為前書きにて色々だべります
といっても、あんま話すこともありませんがww

まずは、ここまで読んでくださった皆様
本当にありがとうございましたw

皆様が今まで読んでてよかったと思える作品になるよう、頑張ったつもりですw
どうか、読んでやってくださいwwwww


あと、ごめんなさいw
女の子書くとかいっときながら、一枚しか書けなかったorz

悔しいけど、画力がないのよね<死亡フラグ








I for you / LUNA SEA
Letter song / 実谷 なな
雪恋華 / DaizyStripper
瞳の住人 / ラルク
涙の温度 / シド
My Life / alan
ain`t afraid to die / Dir en grey
ナルキッソス / ナルキッソス主題歌


上の楽曲を聴きながら読むと、また違った見方ができると思うので
気が向いたら、聴いてみてくださいねww
ガチなのばっかですからw


さて、この物語
最後に、皆様にも・・・選択が迫られる事となります

その先にいったいどのような世界が広がっているのか・・・

どのような結末がまっているのか・・・




さぁ・・・外史への扉を開きましょう
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コメント
T以外の選択肢はどこにもないですね。(天空)
|以外、あり得ませんな。(urukiaga)
T以外の選択は有り得ませんね。(紫天の支配者)
T以外の選択は僕にはありません。お願いします。(U160)
Tでお願いします!「雲の向こう、君に会いに」感動しました。出来ればこの話の続編書いて下さい!!お願いします!!!!!!(迷い猫@翔)
『ここまでの物語』を読ませていただきました。 選択は当然の如くTです。 『これから始まる物語』が楽しみです。(Takuma)
Tで! と投稿後二年と半年たった後に書き込みます。 2013年だからこそこの曲があるからいえますが『song 4 u』も聞きながら見るのに合ってるかと、少しアップテンポ過ぎますが涙が止まりません。(゜゜ (Д ))
うむ、T(ミクボン)
T(織)
感動しました。勿論Tです。Suaraのキミガタメという曲も結構合っていると思うのでよかったら試してみてください。これからもがんばってください。(芋名月)
I(頭翅(トーマ))
T、開く(氷柱)
初コメです。いっぱい泣かせてもらいました。もちろんTですよ♪(アーモンド)
今、読みました(終わりじゃないですよ) だって これからが『始まり』ですからね♪  選択は勿論Tで(スレイプニル)
T以外に選択の余地無し!!(ダービー)
1 良かったです!(readman )
T!私も・・・いや皆も信じていますよ^^b(深緑)
T このコメント数に愛を読者の感じたw(rikuto)
T 一択ですね。開きましょう外史への扉を(こいひめ)
T以外にないでしょ(からす)
Tですね。蛇足ですがPCゲームカタハネのED「memories are here」も合うと思います。よろしければお試しください。(FURY0419)
T以外に考えられない(からす)
Tでしょ!(タケダム)
Tでしょうどう考えても。(Crasher)
T以外ないっす(とっちー)
Tしかないでしょう。 さぁ、新たな外史への扉を開きましょう(猫螺舞)
T以外に選べないですよ。こんないい物語を見ちゃったら。さぁ、開きましょう。(でぃえす・いれ)
Tっすね(VVV計画の被験者)
Tで決まりでしょう!!(HIRO)
Tしかない(tosi)
T(mad猫)
Tだろうともさ(katyu)
どうして2を選ぶ必要がある!いや、ない!(btbam)
当然Tですね(ニャグモン)
最後の絵がとてもいいですね〜。Tでお願いします。(よしお)
T以外ねえな(tenkai)
想い想われ繋がる道は混沌とした心を繋げ 『喜び』『悲しみ』『願い』に『怒り』 遠く遠くの空の果てに 空を超え、天を超え、遥か遠くのその先へ トゥルーエンドの果てまでも。    (T希望。頑張って下さい!)(水上桜花)
T以外ありませんとも!さぁ、開きましょう…(キサラ)
ここは、1以外の選択は不要だ!!(haruakihito)
涙で画面がよく見えませんwww もちろんTでお願いします!!!(happy envrem)
Tですねー(renya)
Tしかないですよね〜期待しています(珠さん)
もちろん1です!(ours)
絶対1でお願いします(banana)
Tに決まってる!!!!!(空良)
Tしかないしょ (桂花かわいい〜)(アレン★ゼロ)
UはBADENDでしょw Tしかないでしょw(アーチャ子)
・・・・1・・・。(萌香)
ひたすら1でお願いします。(きたさん)
選択の余地なし!Tで決まりでしょう!!つうかUなんてどこにあるのですか?Tしか見当たらないですが。(mokiti1976-2010)
1以外ないだろ常識的に考えて(ACE)
ごめんなさい、T以外の選択肢が見えないのですよ〜(十狼佐)
完結?なにそれ?Tでしょ!続編希望でしょ!!(ue)
・゜゜・(/□\*)・゜゜・わ〜ん 涙が止まらない・・・・いい話でした。選択?そんなもの、Tに決まってるじゃないかッ!!(シュレディンガーの猫)
もちろんTで!!!(t-chan)
桂花かわいすぎ 選択はもちろんTで(neko)
完結おめでとうございます!!もちろんTで!!(きりせき)
U?なにそれ?もちろんTです!(mebius)
1しかない!!!!(崩拳)
Tでおねがいします(BASARA)
普通に・確実にTで♪(雪蓮様)
Tで(天覧の傍観者)
もちろんTで! セーブします。(ZERO&ファルサ)
スゴイ面白かったです。グッド!!(1+1=11)
あえてU・・・・ドカバキボコスカグシャ(ボロボロになって・・・→も、もちろんTで・・・>┼○バタッ・・・・(トウガ・S・ローゼン)
楽しませてもらいました。T以外ありませんな!(HIMMEL)
T以外に答えがあるかいな!(平成あるまじろ)
開きます(ブラックサレナ)
もちろん開きます!!(中原)
1でFA余裕です!!異論は認めません!!(ジオニックフロント)
0FでT余裕でした!(kashin)
原作の終わりも好きですが、この終わり方もいい! 選択はTで! 外史は開かねば(pore)
初コメントです。涙が止まりません。Tでお願いします。(sai)
当然Tで(米野陸広)
Tでしょ(鬼龍)
あっはっは、ここでUを選ぶ奴ぁここにいる全員にボコられてそれこそあの世逝きですわなw(闇羽)
やっぱTでしょ!(COMBAT02)
Tで・・・・・答えは聞いてない!!(アラトリ)
お願いします!!!Tで!!!(Ryusou)
ここでUはあり得ないっしぉぉ。Tです!!!(nakatak)
1@一壱ONE!それ以外はありえないです!(リバー)
涙がーーー;; Tで!!!(sk)
お疲れ様です・・というのはまだ早いですね!ここまできたら1を見なければ終われません!桂花のシーンは不意打ち過ぎでした(うДT)桂花が最後に持ってた書簡、誰が著書か知りませんがGJ!w(kurei)
呉伝を待ち望んでるんですけど、ここは当然1を選びます。(アライバ)
完結おめでとうございます。お疲れ様でした。これからも頑張って下さい。応援しています。選択はもちろんTで!!できるなら続編もお願いします。(musou)
もう涙で前が見えない。1以外の選択肢が見えないよ・・・(mighty)
何を言ってるんだ、Tの一択以外にはありえないだろう(KU−)
1 以外にない(空理空論)
俺には選択肢が一つしか見えないんだが俺の眼がおかしいのか? って事で1でお願います(カズ)
1しかないですね(Peace)
T以外の選択はない!!(jack)
T、開くに決まっているじゃないですか!!(samidare)
おかしいな?選択肢はTしかないような?じゃTを選ぶしかないよね(おやっと?)
Tです。開かなくても、こじ開けます。(P天使)
1しかねーだろ!(ルルーシュ)
Tしかありませんな!新たな外史の扉を開きましょうw(サイト)
全力でT(kururu)
T以外、考えられないだろう。 もし、Uを選ぶなら、まずはその選択(幻想)を(以下略(ロンギヌス)
あたりきしゃかりきT(カノ)
是非1で(弌式)
な、涙が。Tに決まってるじゃないですか。(ryu)
選択Iで 一刀が繋げることを願った外史(物語)、開かなければ無理やりにでも開けましょう。(朱月 ケイワ)
感動という言葉が1番合う作品でした。完結おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。選択はもちろんTで!(scotch)
俺の目にはT以外の選択肢が見えないんだが(shimon)
1きゃ無い!!(ポセン)
Tです!!もちろん!!!(たこまろ)
もちのロンでT(M2)
今だとT以外の数字は見えません。(凰嘩)
もういろいろと感動とかいいたいことはありますがとりあえず・・・MVPは桂花!君だ!! え? T開く U開く 開く一択に決まってるではないですか(よーぜふ)
《外史-エピローグ-》を開くのでTを選択します。(大ちゃん)
幕が下りた舞台 其れは終端の証 そして新たな物語の始まりの合図 幕を開けるは人の『想い』 絆は空を越え彼方へと届く さぁ、始めよう 絆を結び 想いを紡ぎ 再び出会う温もりを信じて 雲の向こう、君に会う物語を                             (勿論Tでお願いします)(悠なるかな)
ひたすらTの位置をクリックしてひらかへんなぁと首かしげてました・・・恥ずかしい。もちろんTで。(shirou)
もちろんT(宗茂)
雲の向こう、君に会いに 完結おめでとうございます。選択ですがもちろんT、開くで!(E.B)
もち!Tで!!(zendoukou)
全力で開くぞー!!!!!!!!(リンドウ)
1しかない!(スーシャン)
1だろJK(2828)
余裕でT(かもくん)
Tでお願いします(南風)
感動って言葉しか出てこない…。そして私はTを選択する。(poyy)
開くべきでしょう1歩でも道が続くように。(霧咲猫)
Tを選択しますね〜(ラピス)
ぜひ、1をお願いします。(taka)
涙が止まらない……。こんなに感動したのも久しぶりです。素敵な物語をありがとうございます。続編を希望します。(マスター)
フフフ、分かりきった事じゃないですか。Tを選ばずして、何を選ぶと?(クラスター・ジャドウ)
開きましょう外史の扉。番人立つなら切り捨ててでも、先を夢見て進むのみ。立ちはだかるなら好きにせよ。ことごとくを切り捨てる!!(紫炎)
ゲームよりはいい結末だった。お疲れ様でした(黄昏☆ハリマエ)
桂花の絵に悶えたw続編希望でT選択w(miroku)
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