大好きだから… 〜They who are awkward〜 第1話 |
目が覚めた。
時計を見ると自分がかけたアラームがなる時刻の数分前。
たまにこんなことが起きると少し損した気分になる。
だからといって二度寝をすると起きれないのはわかっている。
わかってはいるのだが三大欲求には敵わないのである。
「―――寝るか」
再び睡魔に身を委ねようとした心中を見透かしたように時計がけたたましく鳴り響く。
……………………………………………………………………
手を伸ばし、時計を止める。
そして今度こそと思った矢先―――
「兄さん、起きてますか?入りますよ」
部屋のドアが開け放たれる。
「兄さん、兄さん早く起きてください。今日も美樹さん達と待ち合わせしているでしょう?」
俺のベッドに近づいて茉莉子が俺の身体をユサユサとゆする。
そういえば、今度待ち合わせの時間に遅刻したら美樹達の考案した罰ゲームと表した俺いじめが……
思い出した俺は急速に覚醒する。
パッと起きて着替えの準備をする。
「ごめん、茉莉子着替えるから。あ、それから」
部屋から出ようとしている背中に声をかける。
「起こしてくれてありがと。それと、おはよう茉莉子」
「ふふ、おはようございます兄さん。でも急がないとご飯食べる時間なくなっちゃいますよ?」
茉莉子は振り返り少し悪戯心を見せた微笑みで答えてくれた。
「「いってきまーす」」
よかった。茉莉子のおかげで普通に歩いて行っても間に合いそうだ。
本当に感謝だ。感謝感謝。そして二人並んで歩き出す。
「そういえば今度遅刻したら危ないって昨日言ってたけど何が危なかったんですか?」
「あぁ、それはな美樹達が次遅刻したら罰ゲームだって言っていてな………」
「罰ゲーム……でも美樹さん達優しいから兄さんにそんなに酷い事はさせないと思います」
茉莉子は素直でいい子だけどね、世の中の人は皆仮面を被っているんだよ。
恭一はまぁアホだが美樹は…あいつは理不尽暴力女だ。
「茉莉子、お前だけはそのままでいてくれ」
「? 言ってる意味がわかりませんけどわかりました」
うん、茉莉子は神原家の天使だよ。それに兄の贔屓目なしで可愛いと思う。
年は一つ下で髪はショートボブで目がクリクリしてて色白でまぁ、
男からすれば守ってあげたいという感じだろうか。
性格もおしとやかで身体のほうは……これからの成長に期待ってとこで。
と、歩きながら俺と横に並んでる茉莉子のことをじっと見ていたら、
「よう、どうしたんだシスコンお兄ちゃん。そんなに舐めるような視線を義妹に向けやがって」
む、この声は…
「いくら茉莉子ちゃんが兄想いで可愛いからってそいつは倫理的にアウトだ」
「あ、恭一さんおはようございます。でも兄さんはそんなことしませんよ?」
「いやいや、こいつはなあ茉莉子ちゃんの知らないところで色々してるんだぜ?たとえば…」
「はいストーップ、茉莉子に嘘を吹き込むのはやめてくれよ」
恭一が根も葉もないこと言う前に割り込む。
「でも、茉莉子ちゃんを性犯罪者のようにギラついた目で見てたのは事実だろうが?」
「いや見てたのは事実だけど俺はそんな目してないからな!?」
茉莉子の方へ視線を移すと少し悲しそうな顔をしていた。
「兄さん…………」
そんな悲しい顔は似合わないよマイシスター、俺はすぐさま茉莉子に弁明しようとしたが
「茉莉子ちゃんを泣かすんじゃねえぇぇぇぇぇ!!」
叫び声と猛烈な勢いで近づいてくる鬼。
あぁ……無常にも奴の飛び蹴りは俺の腹部に突き刺さり、俺は吹き飛ばされながら意識を手放した。
「……………ん」
目を開けると青い空が広がり太陽が自己主張をしていた。
うん今日も快晴だ。夏だしね、暑い。
全身が痛いがそのことはこの際放っておいて身を起こすと澪先輩と目が合った。
「や、ようやくお目覚めか」
澪先輩…… つーかわざわざしゃがみ込んで炎天下の中俺を観察しなくてもいいだろうに。というか起こせ。
「いや、悠樹は見ていて飽きないからね。今までもそうだったし出来る事ならずっと見ていたいよ」
それはなんですか、新手のストーカー宣言ですか。
「さぁ、悠樹も起きたことだし我らが学び舎に行こうじゃないか」
澪先輩はすくっと立ち上がり、俺もそれに習い学校へ向かい始めた。
「ところであの三人はどうしました?」
「悠樹を置いて先に行ったよ。茉莉子も残りたがっていたが二人に連れられて行ったよ。
私は流石に残ることにしたが」
あぁ、澪先輩少し変なところもあるけどやっぱり優しいなぁ
「まぁ悠樹が目覚めるのあと少し遅かったら置いて行っていたがな」
ごめん、前言撤回。
「いや、そこはだから起こせと…………」
「あの二人が考えた罰ゲームで悠樹が困っているの見れると思ったらそれはそれで楽しいだろう?
…………私が」
「俺はまったく楽しくないですからね!?」
「とりあえず起きれたんだからいいじゃないか。ほら着いたぞ」
気づくとすでに校門の前だった。
そこから進み玄関に着くと、
「じゃあ私はこっちだからまた昼にな」
「はい、またお昼に」
俺と澪先輩はそこで別れ、それぞれの教室に向かった。
色々あったけどようやく教室に入り、自分の席に着くと
「お、ずいぶん遅れたがようやくきたか。おはよう」
「…おはよう恭一」
何故かわからないが片方の手を腹に押さえている恭一だった。誰のせいでだと思ってるんだこのスカポンタンめ。
「いや、あれはどう考えても美樹が悪いに決まってるだろ?」
「確かに蹴りをかましたのは美樹だけど直接の原因はお前だろうが!!」
「そうかぁ?……まぁいいや。それより茉莉子ちゃん相変わらず可愛いよなぁ。
お前の妹って時点で勿体無さすぎるよなぁ」
「そう断言されてもな」
確かに茉莉子は可愛いけど、俺は特別運動できるわけでもないし、勉強もそこそこな平凡人間だ。
特別な何か挙げるのならばこの顔だろうか。中性的というかどちらかといえば女っぽいような顔。
だから自分の顔はあまり好きではない。
「つーわけで今すぐチェンジだ。今すぐ俺と立場を交換すべきだ」
「いや、そんなの有り得ないから」
まったくこのアホは何を言い出すんだか。
恭一を一蹴した後、周りを見渡すと用事でもあったのだろうか教室に入ろうとしている美樹と目が合った。
ちなみに俺と、恭一と、美樹は同じクラスである。
「おやー、シスコンお兄ちゃんがいらっしゃるじゃないですか。
私はてっきり道端でくたばってると思ってたわ」
「お前なぁ…あれは完全な濡れ衣だぞ」
「問答無用。茉莉子ちゃんを泣かすやつは許さないから」
「それだったら原因はこっちだから」
恭一を指差す。
「あぁ恭一ももうやったから」
美樹がそう言うと、恭一が親指を立てグッとやってくる。
それで腹を押さえてたのね。
「あんたらがバカすぎて茉莉子ちゃんが可哀想だわ。だいたいね………」
またか、と俺らが美樹の説教にヤレヤレという顔をした時にちょうど担任が来て席に座るように促
す。
美樹は不承不承ながら席に着く。
というか毎回思うが俺は悪くないだろ。理不尽である。
HRが終わり授業に入る。
俺の授業のスタンスは無理をしないなので、休眠活動を取ることもしばしばある。
そこは褒められたことではないと思うが、ほとんど寝てる恭一よかマシだとは思う。
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えーと…とりあえず初めての作品です。生暖かい目で見ていただければ幸いです。 | ||
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