大好きだから… 〜They who are awkward〜 第3話 |
自分が夢を見ていることに気付いている夢を明晰夢というらしい。
更にこの状態のとき、見ている夢を自分の思い通りにコントロールすることが出来るのだそうだ。
だとすればこれは明晰夢なのだろう。
ただ自分にはこの夢を思い通りになど出来ない。
そんなこと有り得ないが自分はむしろこの夢を見たがっているのか。
ただ、どちらにせよ観客のように悪夢を見続けることしか出来ないのだ。
あれはそう……俺がまだ子供だった時、母が亡くなった。
運転手のわき見運転で、事故死だった。
父はとても深く母を愛していたのだろう。
亡くなってからの父の荒み具合は坂を転がり落ちるかの如くだった。
そこから先は見たくない。
父さん頼むからやめてくれ俺は…おれは………
最悪の目覚めだった。
体中は寝ているときにかいたのか汗で気持ち悪い。
さらに夢の残滓が俺の気分を更に陰鬱にさせる。
神原家に引き取られてからしばらくは毎日のようにうなされていたがそのうち見なくなった。
そう、俺は茉莉子と実の兄弟ではない。
それでもあいつは俺を実の兄みたいに慕ってくれているからすごく嬉しい。
ともかく汗を流すためにシャワーを浴びる。
身体的にはマシになったが精神的な問題はそうはいかない。
でも茉莉子や皆に心配かけたくないし切り替えよう。
「おはよう兄さん、今日は早いんですね」
欠伸をかみ殺し眠そうな目をこすりながら茉莉子が部屋から出てきた。
「今日は目が覚めてさ。朝ごはん用意しなきゃな」
「うん、私作るね」
「いや俺も手伝うからな」
その後俺達は朝食を食べ、待ち合わせの場所に向かった。
「ふーん悠樹がちゃんと起きるなんて珍しいね」
「そんなに私に会いたかったのか悠樹?ほら私の胸に飛び込んできていいんだぞ?」
「俺だってたまには時間通りに起きることだってあるっつーの」
先輩の発言はスルーして美樹に答える。
「あんたはいっつも茉莉子ちゃんに起こされてるからそう思われてもしょうがないでしょ」
「まぁそこは否定しないけど。ん、恭一の姿が見当たらないけどどうしたんだ?」
「あいつが遅刻するのは日常茶飯事でしょ?」
確かに恭一が遅刻するのはいつものことなんだが
だったらあいつの時も罰ゲームを設けるべきじゃないのか?
「別にね、あいつが遅れるのは別にいいのよ。けどあんたの場合は茉莉子ちゃんにも迷惑かけることになるでしょ?だからアウトなのよ」
なるほど、一理ある。
「なぁちなみに罰ゲームの内容はなんだったんだ?」
「放課後コスプレして駅前を4周」
有り得ない、精神的なダメージを狙ってたのか……
「美樹さん、私は別に迷惑なんて思ってませんよ?」
「茉莉子ちゃんは優しいからなあ。でもこいつらは甘やかすと付け上がるからダメよ」
「うーんやっぱり今朝も茉莉子可愛いなぁ。悠樹にはシカトされるし慰めてくれよぉ」
会話の流れを断ち切って澪先輩は茉莉子に近づいて頬ずりする。
「佐久島先輩、くすぐったいですよ」
「む、それにちょっと茉莉子成長してきたんじゃないのか?」
澪先輩が茉莉子の身体をまさぐる。
「ちょ、ちょっと佐久島先輩。あぅぅ、んぅ!?」
くそう、断じてうらやましいなんて思ってないぞ?
「ちょ、ちょっと佐久島先輩何してるんですか!!
私達より年上なんだしもっとちゃんとしてくださいよ」
「年上だからってのは理由にならんだろう。私はやりたいときにしたいことをする。
そう生きるようにしてるんだ。わかったら邪魔をするんじゃない」
「なにわけわかんないこと言ってるんですか。とにかく茉莉子ちゃんから離れてくださいっ!!」
美樹がムリヤリ茉莉子から澪先輩を引き剥がす。
「やーーーーだーーーーー。私は茉莉子に慰めてもらうんだぁー」
なんというかいつもどおりだった。
朝にあんな夢を見たせいで少し不安だったが、俺の日常の風景がそこに広がっていて安堵する。
結局恭一が学校に来たのはお昼が過ぎて午後の体育が始まる直前だった。
「いいか、いつも主役は遅れて登場するのが定石だろ」
「いや誰もあんたのこと待ってないし主役でもないから」
「そんな照れるなよ。っていうかウチの学校はプールやらないのかねぇ」
「さぁ?あんたみたいな変態バカがいるからやらないんじゃないの?」
「いや俺は別にお前らのは見たくはないんだが、下級生の水着が…ぐっ」
はい、美樹さんいいパンチもらいましたー。
「やっぱり変態じゃないの。悠樹そいつ回収しといてね私運動してくるから」
美樹は走っていってしまった。
「なぁマイフレンドお前にはわかるだろこの気持ちが?」
こいつの回復の早さには脱帽する。
「わからないということにしておいてくれ。俺まで被害を被るし」
「ばっかお前なぁ、今のスク水業界は進化してるんだぞ?
なんとファスナー付きなんだぞ!?」
「背中に?」
恭一は有り得ないという顔して俺を見た。
「そんなもん誰が得するんだよ?いや俺は得するけど。
あそこに決まってんだろ言わせんな恥ずかしい」
「なんか変な方向に進化してるな水着業界……」
「ただ水泳用じゃないんだ。だから俺はそのスク水をぜひ水泳用にして学校指定にするべきだと思うね」
水泳用じゃないって……結局そういう用途だったのかよ。
「おい想像してみろ?茉莉子ちゃんがもしだな……」
想像してみる。
「兄さん、あのお願いがあるんですけど…いいですか?」
「ん、どうした茉莉子?」
「今日学校の授業でプールがあって試しに水着を着てみたのはよかったんですけどその…
実はファスナーが上手く下がらなくて……下げるの手伝ってもらってもいいですか?」
…妹が困っているときに助けなくて何が兄貴だ!!俺は茉莉子の兄さんだ!!
「茉莉子、兄さんに任せておけ」
「うん、お願い…」
そういった茉莉子は羞恥心の為か顔が赤い。
俺は慎重にファスナーまで手を伸ばしたうまくつかめず、茉莉子に触れてしまう。
「ひぅっ!!」
くっ、茉莉子そんな艶っぽい声が出せるなんて兄さんも変な気分になっちゃうだろうが。
俺は気にせずなんとかつかもうと悪戦苦闘するがつかめず身体に触れてしまう。
そのたびに茉莉子は、
「気にしないで…あ、んんんん!!!!はぁ…ひぐっ!!いいからぁ……」
触るたびに湿っていた感じが強くなっていくのはこの際気にしない。
ついにこの手ファスナーをつかむ。
「よしっ」
「…に、兄さん、はぁはぁ……恥ずかしいから…い、一気にお願い…」
顔が赤く、潤んだ瞳を俺に向け見つめてくる。
「いくからな」
俺は茉莉子の願いを聞き入れ、ファスナーを一気に下げた。
「んっ、あ、あああああああああぁあ!?」
茉莉子が声を大きく上げるとともにそこには俺らが夢見たヴァルハラが……
「………別に茉莉子じゃくてもいいし趣旨ずれてるし。
というかそれよりもものすごい罪悪感が……」
「わかってねぇなぁ。妹が兄さんに恥ずかしながらっていうシチュがいいんだよ。
これがもしもだ。怒ると変なもん従えるやつにやらせてみろ?俺は萎え度が著しいぞ!?だいたいなぁ…」
俺は熱く語りだした恭一を止められなかった。
というかこれは結局一種のプレイになっているのでは?
そんなことを考えてたら不意に恭一の語りが止まり、どうしたと声をかけようとした時
俺らは悪寒を感じ時を止められたかのようにその場で動けなくなった。
「なぁ恭一」
「ああ」
「俺ら……消えるのか?」
「おかしいなまだ俺は未練がたくさんあるってぇのに」
しかしそんなことは一切関係ないと言わんばかりに、邪悪の化身と化した美樹が立っていた。
「高遠美樹!きさま!(俺らの頭の中を)見ているなッ!」
恭一がそう言った瞬間恭一はKOされていた。
今回ばかりはどうしようもない。こうなったら
「いいか伝統的な戦いの発想法が古来の図書に伝えられていてな…」
俺は一呼吸空け、
「それは!『逃げ
俺が逃げ出そうとした瞬間美樹の一撃をもって俺は沈んだ。
茉莉子ごめん、今回は全面的に妄想したに兄さんが悪かったよ…
放課後美樹に買い物に付き合って欲しいと言われた。
今日は部活が休みらしい。
俺も基本用事が無いし了承した。
恭一は終わったと同時にどこかへ消えてしまった。
「俺のことを異世界のピンクの髪の少女が呼んでる気がするんだ…」
そんなわけで二人で駅前へ行った。
「買い物って何を買いに来たんだ?」
「んー。とりあえず欲しい本買ってからあとはてきとーに」
まずは書店か。
書店についた俺達は各自好きなジャンルの場所へ向かった。
特に欲しい本は無かったから小説のコーナーを覗いてみる。
ざっと見渡してみる。
The wish to the wind
Black star
Birthday
SOA 〜Such occult is not possible〜
いくつか目に付くタイトルがあったが悲しいかな俺の財政状況は厳しいのである。
美樹を探してみると会計に並んでいるのが見えた。
目当ての本はどうやら見つかったようだ。
「何買ったんだ?」
「べ、別になんでもいいでしょ!?」
「言えないほどそんなえっちぃ本買ったのか?」
「そんなわけないでしょ!!ただ…言うとバカにするから言わない」
「別に美樹が何を買おうがバカにしないから」
そんなことした瞬間死が待っているからしないのがベターだ。
まぁおそらく買ったのは少女漫画なのだろう。
昔から好きだったからなぁ。
「わ、わかってるなら聞かないでよね!!」
ちなみにチラッと見た限りだとあれだ。
主人公がなんとなく仲のいい男の子と付き合いそうな流れだったけど、
学年一のイケメンと少しずつ惹かれあって、でもそのイケメンには彼女がいて、
そしたらイケメンの友達が主人公のことを好きになっていってという感じのやつだ。
その後美樹をたしなめつつ書店を後にした。
次に服屋に向かった。
「うーんやっぱり悠樹は女の子の服でも似合うよねぇ」
どうしてこうなった。
ただフラッと寄っただけなのに既に小一時間経過している。
「あ、こっちも可愛いなぁ」
といって俺にフリフリの服を合わせるのはやめろ。
クラシックロリータというのかよくわからないが、こうメルヘンっぽいやつだ。
俺はお前の着せ替え人形か!? どんだけ女物の服をあわせるんだよ!! 第一…
「いいか、俺は男だ。そんなもん似合うなんて言われても正直困る」
「えぇ、でも可愛いのに」
「可愛い可愛くないは関係ないの!!」
でも可愛いのになぁ…と、まだブツブツ言ってる美樹に俺がさっき合わせられていたフリフリの服を美樹に差し出し、
「だったら美樹が着ればいいだろうが!!」
「…あはは、あたしはこういうの似合わないからいいよ」
少しトーンダウンした美樹が言う。
「あたしはやっぱり動きやすいのとかジーパンとかが似合ってると思うし、
皆もそういうし、つまりはそうゆうことだよ」
寂しそうな笑いを浮かべながら俺が差し出した服を見つめている。
ホントは着てみたいって思ってるのバレバレだっつの。
「美樹早く着ろ」
「いやだから私は似合わないからいいってば」
「俺だけ恥ずかしい目にあうのは不公平だ。
合わなかったそん時は笑ってやるから安心しろ」
俺はムリヤリ美樹に服を持たせ試着室に押し込む。
「…私悠樹に合わせただけなのに。着せてないのに……」
ここでもブツブツ何かを言っていたがスルーした。
「おい着たか?開けるぞ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。着替えたらちゃんと見せるから」
少しした後、
「あ、あけるわよ…」
サーっとカーテンが開き美樹の姿が目に飛び込んでくる。
「……早く笑いなさいよ」
笑うことなんて出来なかった。
なんというか、うん言葉にするなら
「可愛い…」
「なっ」
普段意識はしないのだがやっぱり美樹も女の子だったということを再確認した。
「あ、あたし着替えるから!!」
ピシャっとカーテンを閉めてさっさと着替え終えて出てきた。
「あー恥ずかしかった。悠樹も意地が悪いよね」
服屋を出た美樹の第一声がこれである。
「ホンッとに意地が悪い………でもありがと。褒めてくれて嬉しかった」
つぶやくようにいった美樹の顔は夕焼けのせいかわからないが赤く染まっていた。
「べ、別にお礼を言われるようなことじゃないし、ただ思ったこと言っただけだ」
俺は何故か気恥ずかしくなりながらぶっきらぼうに美樹にそう答えた。
*** あとがき ***
まずはここまで私の稚拙な文とベタな展開に我慢してついて来ていただきありがとうございます。
いざ投稿するときになって見直してみたりすると自己嫌悪満載で死にたくなります(笑)
それでも投稿したからにはちゃんと書ききるつもりです。
趣味の範囲ですが上手くなれたらいいなと思ってます。
あ、作品についてですがここから自分が思い描いてる感じに落としていけたらいいなと思っております。
まぁこのままだとベっタベタすぎて読者の人も飽きるのではないかと 汗
それに作者にそんなもん書かせたら技術足り無すぎて自殺します。
まぁ全体的にスキル無いんですが。。。。
どれぐらい無いかって言うとタイトルに3時間弱くらい悩んでたぐらい、いや、もっとだな………
書いてた分はここまでなんで次のはしばしお待ちを。
とりあえずこの辺にして、まだこの作品に付き合ってくれる奇特な方は次回にて。
説明 | ||
悪夢。 それは過去の傷跡を抉る鋭利な刃物 | ||
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コメント | ||
コメントありがとうございます。うーたんさんの作劇手法のやつ拝見させてもらいましたけどタメになります。メモメモ(みーくん) ファスナー付きスクミズのファスナーは股間についているらしい。それはともかく、のんぴりして良い感じです(^^)(うーたん) |
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