恋姫異聞録82 −夏候家の休日〜大人気ないひとたち−
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−新城・夏候邸−

 

 

休日二日目、川から帰った午後

 

夏候邸の庭では男が即席で作った木の板に円を何十も書いて、中心を赤く染めた的を地面にしっかりと埋め

固定していた

 

「りりちゃんにすずかのひとつかしてあげるー」

 

「わぁ、ありがとう!」

 

涼風が手に持つのは男が涼風用に作った小さな弓、子供でも十分に弦を引けるように柔らかい竹で作った

もので、装飾までもしっかりと作りこまれ秋蘭の持つ餓狼爪にそっくりな弓

 

そして璃々に手渡した弓も男の手作りの弓で、此方は餓狼爪に似ているが真っ白に塗装された白弓

同じように子供の手でも十分に引き絞り、飛距離を出せるように作られた弓

 

「凄く綺麗な弓」

 

「うん、おとうさんがすずかのたんじょうびにつくってくれたの」

 

「いいな〜」

 

真っ白く美しい弓を羨ましそうに見詰める璃々に、涼風は少し考えて父の方を見る

父は娘の考えに気が着いた様で笑顔で頷き、涼風はニコニコしながら頷き返す

 

「うんとね、まとあてですずかにかったらそれあげるー」

 

「え、いいのー?」

 

「うん、すずかにかったらあげるよー。おとうさんもいいって」

 

「それじゃ頑張るー!」

 

どうやらタダでは上げる気が無いらしい、そこら辺は秋蘭に似たのだろうか?まさか勝負するとは

それとも午前中にやった魚釣り対決が面白かったのだろうか

 

「おとうさんもやろー、りりちゃんもいいよね?」

 

「良いのか?」

 

「うん、璃々沢山がんばる」

 

そうか、ならば全力でお相手しよう。娘の為に作った弓だ、此処は手を抜かず俺が圧倒的な差で

勝ってやる

 

「やったー!まんなかにあたったよ!」

 

「璃々もあたったー!」

 

だが結果は5発中2発、的の中心を捕らえたのは子供達。肝心の俺は全ての矢が的から外れてかすりもしない

元々武全般に才能が無いのは解っていたが、此処までとは

 

やばい、残り後6発で抜かなければこのままでは娘の弓を璃々ちゃんに取られるどころか父親としての威厳が・・・

こうなったら最終手段だ!

 

男は脚を肩幅に開き息を大きく吐き出す。そして目線は鋭く鷹のように、腕はしなやかに柳の如く

吐く息を氷のように冷たく細く、一直線に的を射抜く静かで揺るがぬ心

 

【演舞外式 鏡花水月 −秋蘭−】

 

呟く男からは冷たい冷気のような気迫が漏れ出す。まるで男は秋蘭をそのまま鏡に写したように

同じ気迫、同じ動作で音も無く矢を放つ

 

ヒュッ、バチッ!

 

放たれた矢は的の中心に当る瞬間、横から放たれた矢が掠めるように当り的を外して地面へと突き刺さる

 

「なっ!」

 

矢の放たれた元を見ればそこには弓を構えて氷のような微笑を称えた秋蘭

その美しく冷たい笑顔に男の背筋はゾクリと冷たいものが伝う

 

「母も参加して良いか涼風?」

 

「うん、りりちゃんもいい?」

 

「いいよー!」

 

「だそうだ、私が勝ったら何をしてもらおうか・・・」

 

・・・・・・勝たなければ俺はどうなるか解らない、だが秋蘭と本気で何かを競うなど久しぶりだ

ゾクゾクと体が粟立つ、どうやら俺は笑っているようだ。子供達とは別で全力でやってやる

 

「なら俺が勝ったらどうしてくれる?」

 

「昭が望むことをしてやろう、なんなら頸に噛み付いても良いぞ」

 

「それは秋蘭がしたいことだろう。まったく、なにか考えておくよ」

 

「ちょっとまったなのーっ!」

 

弓に弦を張りなおし、ユガケを手にはめて本気の準備をしながら秋蘭が男に鋭い視線をぶつけている時

玄関から沙和の元気の良い大きな声が響き渡り、四人は声の聞こえてくる玄関のほうに目を向けると

そこには無駄にやる気を出している凪達三人

 

「なんだ?いきなりどうした?」

 

「どうしたもこうしたもないのー!その勝負に勝てば隊長に何をお願いしても良いなんて、参加するに決まってるの!」

 

コイツラ話しを聞いていたな。昨日賊を捕縛した事は聞いたから、報告書が纏まって此処に来たってところか?

だがコイツらの参加なんて駄目に決まっているだろう、大体俺に何をやらせるつもりだ?

 

「というわけで、ウチらも参加してもエエよな涼風?」

 

「いいよー!みんなでしょうぶなのじゃー!」

 

「あははははっ、なあにそれー!なのじゃー?」

 

腰に手を当てて胸をはり美羽の真似をする涼風を見て、璃々も同じように真似をして笑っていた

 

美羽の真似をする涼風も可愛い・・・じゃない、何だ?話が変な方向に行こうとしている

嫌な予感しかしない、そうだ秋蘭ならばきっと断って

 

「良いぞ、皆で勝負といこうか」

 

「ええっ!?」

 

「私も是非参加させてください隊長」

 

「良いな、昭?」

 

断るどころか全て承諾してしまっていた。これは本気で負けられない、どんな手を使ってでも勝利しなければ

コイツらに何をさせられるか、駄目だ誰が勝っても良い未来が思い浮かばないっ

 

「ならば先に勝負方法についての確認をしておこう、子供たちは先に二本の矢を的中させている。

それを加算させ我等は的中なしから残り五回でどれだけ命中させられるか勝負で良いな?」

 

秋蘭の説明に凪達も子供たちも頷く、男は苦笑いをしながら重々しく頷いていた

 

「涼風が勝てば涼風の好きなお願いを聞く、璃々は賞品として白弓、我等は昭に何かを要求できる」

 

勝利後のご褒美に凪達三人は頸をぶんぶんと振りながら頷き、子供たちはそれを見て笑っていたが

男は顔を青ざめて溜息を吐いていた

 

 

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「昭が勝った時は私の頸を噛み付いても良い」

 

「だからそれは秋蘭がしたいことだろう」

 

「むぅ、仕方ない。好きなことを出来る範囲でしてやろう」

 

どうやら秋蘭が勝った時は朝何時もされるように噛み付かれるらしい、本当に癖になっているようだ

 

などと半ば諦めながら人数分の弓を用意し、始まる的当て勝負。

まずは沙和の番、矢を番え弓を引き絞るその瞳は今まで見たことも無いほど真剣で

 

「服ーっ!服ーっ!秋蘭様と同じ服なのーっ!」

 

自分の欲望をそのまま声に出して矢を放つ、男はその姿になんともいえない情けない気持ちになった

 

そういう事じゃないと本気の眼など出来ないのかよ・・・

 

心の中で嘆く男の声が聞こえるはずも無く、沙和の放った矢は真直ぐに的へと放たれ

 

ヒュッ、バチッ!

 

「あーっ!」

 

男の時と同じように軌道をそらされ地に突き刺さる矢、矢の放たれたほうに目線を向ければやはり秋蘭

先ほどと同じように氷のような微笑を称えて沙和を見ていた

 

「秋蘭様ずるいのーっ!」

 

「そうやで、邪魔するなんて幾ら秋蘭様でも」

 

「何がずるいのだ?私は一言も妨害は駄目だとは言ってはいないぞ」

 

「あ・・・」

 

やられた、そう凪達三人の顔には書いてあった。そして俺はと言えば、なるほどと頷き秋蘭に笑顔を返す

どうやら此処からが勝負らしい、ならば俺もどんな手を使っても良いということだ

 

「く・・・くそっ」

 

何も考えが浮かばないまま真桜は矢を番え弓を引き、的を狙い放つ。しかし横からは男の矢が寸分の狂いも無く

真桜の矢をかすめ、的から外させる。その動きは秋蘭の動きをそのまま写したように

 

「ああーっ!隊長までするいっ!」

 

「悪いな、負けるわけにはいかないんだ」

 

男の矢を皮切りに始まる妨害合戦、凪達三人の放つ矢をことごとく撃ち落す男と秋蘭

逆に秋蘭の番になれば男が同じ動作で放つ矢を撃ち落す。そして男の番には

 

「シッ」

 

「いまなのーッ!」

 

放つ瞬間男の腹に突き刺さる沙和のとび蹴り、しかしその場にいた男はクルリと回転して受け流し

さらに弓を構え、地面に膝を着いて低い位置から弓を引き絞る

 

「まだまだーっ!」

 

「ちっ」

 

今度は真桜が真上から弓目掛け螺旋槍を振り下ろす。男は瞬時に真桜の動きを見切り、膝のバネを利用し

バックステップ、そして着地と同時に矢を

 

「すみません隊長っ!」

 

「謝るなら邪魔すんなっ!!」

 

矢を引き絞る男に待ち構えた凪の水面蹴り、しかしそれさえ男はフワリと軽く膝を浮かせるだけでやり過ごす

 

「はははははっ!お前らの動きは手合わせで十分見たっ!避けるくらいならっ」

 

さらに着地し弓を放つ瞬間に何故か目の前が真っ暗になる

 

「すきありーっ!」

 

「ぶはっ!」

 

凪達の攻撃の最後にあわせて、面白いものを見つけたとばかりに目を爛々と輝かせていた涼風が男の顔目掛けて

ボディプレスを放っていた。直撃を受けた男の矢は全く見当違いの方向へと飛んで行き地面へと突き刺さる

 

「よっしゃ!よくやったで涼風!」

 

「あはははははっ!」

 

両腕を上げて満面の笑みを浮かべる涼風はそのまま父の顔に尻を乗せて喜んでいた

 

「・・・涼風の裏切り者〜」

 

「おとうさん、すきありー!あはははははっ」

 

男はやれやれと娘を抱き上げて頬を擦り付けて恨み言を言うが、娘はただ楽しそうに笑うだけ

凪達三人は攻略法を見つけたとばかりに今度は秋蘭へと視線を向ける

 

「なるほど、風を真名に持つ涼風ならば昭は封じ込められるだろうな。だが私はそうはいかんぞ」

 

「秋蘭様は隊長の矢が撃ち落すだろうけど、安心は出来ない」

 

「ああ、そうやな。何せ魏の雷光は伊達やないで」

 

「隊長の猿真似へっぽこ弓術じゃ直ぐに攻略されちゃうのー!」

 

猿真似、そりゃそうなんだがへッポコとかかなり傷つくぞ。コイツラ俺をなんだと思ってるんだ?

だが沙和の言うとおり、本気で引き絞られた秋蘭の矢は俺の矢如きで軌道をずらせることすら出来ないしな

 

案の定、そこからの勝負は凪達三人の矢を男と秋蘭の矢が妨害し、男を凪達三人と涼風、そして璃々までもが

混ざり封じ込め、秋蘭を凪達三人が武器を振い、ようやく放った矢を男の矢が辛うじてずらすといった状況で

とうとう最後の一射となってしまっていた

 

「うう〜結局ウチラ三人やって凪だけ何とか二本当っただけか」

 

「こうなれば全員で隊長と秋蘭様を外させて涼風ちゃん達と同点に、もう一度凪ちゃんに頑張ってもらって

願いを三人分にするのー!」

 

「なるほど!確かに願いを増やすのは駄目だとは言っていない」

 

なにやら話し合い、まるで戦場のような闘志を燃やす三人。その姿を見ながら男は心底呆れていた

 

【それを仕事に向けろよ】と

 

男の最後の一射となり、凪達三人はじりじりと踏みより男が構える瞬間をまるで合図を待つ走者のように待つ

 

だめだコイツラ、完全に俺を止めるんじゃなくて潰す気だ。とう言うか何で俺だけ子供二人まで狙ってくるんだ?

涼風も璃々ちゃんも完全に新たな遊びだと勘違いしているだろうこれ

 

諦めたように矢を番、引き絞った瞬間に襲い掛かる三人と子供二人。男は為すすべなく倒され、最初と同じように

男の顔には涼風が座り、男の胸には璃々が座り、手と足を凪達三人が押さえ込んでいた

 

「あはははははははっ!すずかとりりちゃんのかちー!」

 

「勝ちーっ!やったね涼風ちゃん!」

 

「ようやったで二人ともっ!」

 

男は諦めついで【がおーっ!】とに勢い良く起き上がり涼風と璃々を抱き上げて走り回っていた

凪達三人は次は秋蘭だとばかりにそれぞれ武器を構える。遊びだというのに完全に本気になっていた

 

「今度は隊長がいないから完全に潰さなきゃ勝てないのー!」

 

「おう、悪いけど観念してもらうで秋蘭様」

 

「申し訳ありません」

 

そんな三人の姿に秋蘭は、スウッとまるで見ているもの全てが凍りつくような美しく冷たい微笑を称えると

腰に携えた矢筒から五本の矢を抜き取った

 

「あっ!」

 

思わず声を漏らす凪を他所に、弓に指の股を使い器用に五本の矢を番え引き絞る姿に凪達三人は一気に顔が青ざめる

 

「フフッ、なにも一回に射る矢の数は決めていない。三本はお前達に、残り二本は的へ当てればよいだけだ」

 

「ああーっ!」

 

驚き逃げ出す三人の脳天に鏃を潰した矢が正確に、少しの狂いも無く命中し、残り二本の矢は綺麗に重なって

中央の的へと突き刺さる

 

それと同時に地面に三人が崩れ落ち、その場は死屍累々と言ったようになっていた

 

「なにをやってるんだか・・・」

 

呟く男の腕から子供達は飛び降り、最後の矢を放つ準備を始めた。すっかり忘れていたが此処まで子供達は

共に的を外しており、と言っても俺に飛びついたりしてちゃんとやっていなかっただけだが

 

此処までで秋蘭と互角の二本を二人とも命中させていた

 

「まけないよー、えいっ!」

 

先に放った涼風の矢は的へ一直線に見事に命中し、両腕を挙げてぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。璃々ちゃんも

矢を番えて構える。どうやら流石は黄忠殿の娘といった所か、何度か矢を放ち感覚を自分のものにしたのだろう

その目からは自信が溢れていた

 

「璃々も負けないよー、えいっ!」

 

璃々ちゃんの放つ矢も涼風の放った矢のように一直線に的目掛けて放たれた

 

が、痛みから回復し立ち上がろうとする沙和がおもむろに的を掴み、標的がずれ璃々ちゃんの放った

矢は外れ地面へと突き刺さる

 

「あ・・・あぁ・・・」

 

確実に当ると思っていたのだろう、そしてよほど白弓が欲しかったのだろう。予想外の事態に璃々ちゃんは

手に持つ白弓を落とし綺麗な瞳に大粒の涙を溜めて今にも泣き出しそうになっていた

 

「沙和・・・林檎が潰れる音って聞いたことあるか?」

 

「あ・・・・・・あはははは・・・ごめんなのーっ!!!」

 

必死に逃げ出そうとする沙和の頭を男は瞬時に捉え、鷲掴みにするとメキメキと手に力を込めて行く

 

「ハァッ」

 

「ああーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

頭を捕まれたまま宙吊りにされた沙和は足をばたつかせ、男の手を掴む。その光景に真桜は合掌し、凪は

痛みを思い出したかのように苦い顔へと変わっていく

 

そんな中、すぐに秋蘭は泣き出しそうな璃々の元へ近づきなだめようとしたが涼風の行動を見て歩みを止める

 

涼風は父の足を小さな手で引っ張り笑顔を向けていた。男は掴んだ沙和を放すとドシンと尻餅をつく沙和に

父に向けたのと同じような笑顔を向けて、璃々の地面に刺さった矢を引き抜いて的へと突き刺した

 

「りりちゃんとすずかはどうてん、だからそのゆみりりちゃんにあげるー」

 

「ふぁ、あう、うぅ・・・え?」

 

泣き出しそうな璃々は涼風の意外な言葉に驚いて目を丸くしてしまう。だが涼風は気にする事無く

璃々の頬を伝う涙を小さな手で拭い、白弓を拾い上げて璃々へと差し出していた

 

「おとうさんがね、すずかがないてるとほっぺたふいてくれるの。それでね、たくさんたくさんしんぱいしてくれ

るの。だからないてるとりりちゃんのおかあさんもしんぱいしちゃうよ」

 

「うん、この弓璃々がもらっても良いの?」

 

「いいよー、こういうときは、えっと・・・どうてんゆうしょうっていうんだよ」

 

「同点優勝?」

 

「うん、どうてんゆうしょう!だからすずかもおねがいしていいおかあさん?」

 

娘の行動を嬉しく思い、思わず顔が緩んで他人が居る時は見せない柔らかい笑顔を涼風に向ける秋蘭

そして優しく頭を撫でて頷く

 

「ああ、三本当てたのならば母達は負けだ。涼風のお願いを何でもきいてやろう」

 

「ほんと?ありがとう、それじゃみんなでおにごっこしよー!」

 

 

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鬼ごっこ、その言葉で秋蘭と男は目線を合わせニヤリと笑い合う。そして指をゴキゴキと鳴らし腕を回す男

矢筒の矢を確認し、弓の弦を硬めに調整し始める秋蘭

 

「鬼ごっこか」

 

「鬼ごっこらしいな、では何時もの通り」

 

「俺が鬼だな」

 

雰囲気のガラリと変わった二人を見て、何が起こるのか全く想像のつかない凪達三人は、何故かこの場に

居たら面倒になると感じ、その場から逃げ出そうとゆっくり後ずさる

 

「何処へ行く?勝利者の願いだ、お前達も参加するのだ」

 

「そうだな、気を抜けば死ぬぞ」

 

「勝負法は簡単だ、鬼の手に触れられれば鬼は交換。簡単だろう?」

 

鏃を潰した矢を矢筒に補充し、素早く三本の矢を抜き取ると逃げ出そうとする三人の足元へ矢を放ち

歩みを止める

 

「いやー、鬼ごっこは遠慮しとこうかなーと」

 

「そうなのー、沙和達はそろそろお暇するのー」

 

「申し訳ありません」

 

たかが鬼ごっこなのにも関わらず、男の口から【死ぬぞ】と言われ三人は機を見て走り出そうと構え

口々に断りの言葉を口にする。その時、沙和の耳に聞こえてきたのはボソボソと数を数える男の声

 

「・・・六、七、八、九、十っ!」

 

気が着いた時には男は襲い掛かるように逃げる子供達に飛び掛る。笑いながら逃げる子供達

だが所詮大人と子供の足、即座に男の手が逃げる涼風に触れる瞬間

 

ヒュ、ドッ!

 

男の手を狙った秋蘭の矢が襲い掛かる

 

秋蘭の動きを見切り、寸でで手を引き避けるそして男の手が璃々や涼風にのびるたびに秋蘭の矢が襲う

いきなり始まった男と秋蘭の攻防に凪達は呆気に取られていた

 

「おらぁっ!そこだぁ!」

 

呆気に取られ止っていた真桜に急に子供から方向を変えた男の手が伸びる

 

「うわぁっ!ちょっ、隊長なにすんねんっ!」

 

咄嗟に避ける真桜、だが男の動きは止まらず近くの凪や沙和を狙い襲い掛かる

 

「わっわっ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください隊長!」

 

男は手だけに留まらず蹴りまでも繰り出し襲い掛かる。子供達から狙いがはずれ秋蘭は即座に子供二人を抱えると

走り出した

 

「いくぞお前達、最後まで鬼だったものは今夜の食事を作ってもらう」

 

「「「ええっ!!」」」

 

急に秋蘭から罰の告知がされ、それはゴメンだと声を上げて走り出す

しかし追いかける男は基礎能力に差が有り徐々に離されていってしまう

 

「隊長が鬼なら楽勝なのー!あうっ!?」

 

後ろを見ながら安心して走る沙和は、急に足元に何かがぶつかり派手に転んでしまう

顔をしかめて転んだ場所を見れば、そこには崩れ落ちた屋根の破片

 

男は沙和が後ろを向く瞬間、拾い上げた石を思い切り投げ屋敷の崩れかけの屋根にぶつけ足元へと

破片を落としていた

 

「沙和っ!」

 

「このっ、やったるで凪!」

 

仲間を見捨てるわけにはいかないと、凪と真桜は止まり拳と武器を構え男に対峙する

流石に凪と真桜には勝てないと誰が見ても明らかだが、男はうろたえず不敵にニヤリと笑う

 

「秋蘭、一日買い物に付き合うってのでどうだ?」

 

「・・・」

 

大きな声で凪達の後ろで子供二人を抱え、止まる秋蘭に話し始めた

いきなり言葉を交わそうとする男の行動に、4凪達は何が起こったのかと二人を交互に見るが

男は気にする事無くさらに話し始める

 

「服屋も付き合う」

 

「・・・」

 

真直ぐ見詰めて離す男の言葉に少しだけ眉をピクリと動かすが、妖艶に笑って男を見詰め返すだけで返事は無い

 

やれやれ、あの顔はもう一声と言ってる。どちらにしろ俺一人じゃ無理だ、解ったよ秋蘭

コイツで力を貸してくれ

 

「仕方ない、恥ずかしいが腕枕もつける」

 

「フフッ交渉成立だな」

 

秋蘭はニッコリ笑うと、涼風を凪の肩に乗せ璃々を真桜の肩に乗せる。そしてつかつかと男の隣に

歩み寄ると凪達に振り向き弓を構えた

 

「あっ、あっ!卑怯なのーっ!」

 

「そうやっ!ズルイで隊長っ!」

 

「敵を引き込むのも戦術の一つだ、更にもう一つ、美羽ーっ!!!」

 

叫ぶ男の声に反応するように屋敷の中から美羽と七乃が飛び出してくる

 

「うははははっ、伏兵もまた戦術の一つなのじゃ!覚悟せよ」

 

「お昼寝から起きてみれば面白いことになってますねー、頑張りましょうお嬢様!」

 

いきなり挟み撃ちにあう凪達は、直ぐ様沙和を立ち上がらせ走り出す。後方からは矢を足元に放つ秋蘭

そして男の背中にしがみ付き笑いながら追い上げてくる美羽。矢筒を大量に担ぐ七乃

 

「ヤバイ!何でこんなことになっとるんや!ウチラ三人、いや五人完全にやられるで!」

 

「矢は任せろ。沙和、涼風ちゃんを頼む」

 

「解ったのー!」

 

走りながら矢を避け涼風を渡そうとするが、涼風は「だいじょうぶだよね、りりちゃん」と言って

子供達二人は後ろを振り向き、手にした弓で追いかける男達に矢を放つ

 

「おおっ!そやった、こっちにも矢はあるんやった!」

 

「ではこのまま二手に分かれるぞ」

 

「だめだよー」

 

涼風に止められ驚く凪達、しかし涼風はニコニコしながら父に容赦なく矢を放つ

 

「このまままっすぐいけばかてるよ」

 

「真直ぐ?何かあったか・・・」

 

「真直ぐいっても兵舎しかないのー」

 

「かずまくんとえいおねえちゃんをなかまにするのー」

 

想像さえつかないことを言い出す涼風に驚く三人、しかもこの流れのまま兵舎で仕事をする二人を

無理矢理仲間に引き込んでしまおうとする無茶な考えに更に驚く

 

「うんとねー、あととうあおじちゃんにたのめばみんなもたすけてくれるよ」

 

「皆って、もしかして警備兵か?」

 

「うん、おしごとだいじょうぶなひとはてつだってくれるよ」

 

凪達は目を丸くし、顔が更に驚きポカンと口を開けていた。どうやらた涼風は警備兵達とも心を通わせており

お願いすれば無条件で仲間になってくれるようになっているらしい、子供だと言うのに人を惹きつける力は

父と母をそのまま足したように大きいようだ

 

「驚いた、良く涼風つれた隊長と警備兵のやつらが遊でたのは知っとったけど」

 

「うん、こんなにとは知らなかったのー」

 

「決まったな、このまま兵舎まで逃げるぞ」

 

真直ぐ兵舎に走り出す三人。その後、詠と一馬、一緒に居た月を無理矢理仲間に引き入れ、更に警備兵を引き連れ逃走

男は警備兵を捕まえ仲間に引き込み新城の城内を激しい攻防をしながら日暮れまで駆け回り

 

最後はたまたま城壁修復の視察に来ていた華琳に男が激突し、一人城門前で正座をさせられこっぴどく

叱られ、鬼は男のまま終了となった

 

「仕事中の兵士や将を引き連れ、城内を暴れまわるとはいい度胸ね」

 

「いや、あのだな」

 

「言い訳する気?」

 

「御免なさい」

 

華琳は小さな体が倍に見えるほどの怒気をぶつけられ、体身体を丸めて謝る男の隣に涼風と璃々がトコトコと近づき

チョコンと座りこんで「ごめんなさい」と一緒に謝り、涼風と璃々はニコリと微笑んだ

 

そんな可愛らしい子供達の姿に華琳は一気に毒気が抜かれつい微笑んでしまう

 

「まったく、無邪気とはこの事ね。邪気の無い行動など怒る事は出来ないわ」

 

「すまん」

 

「良いわ、明日から皆には更に頑張ってもらう事で良しとしましょう」

 

華琳の言葉に子供達二人はさらに笑顔になり「ありがとう」と華琳に抱きついていた

 

「フフッ、可愛いわね」

 

「変な気は起こすなよ」

 

「さぁ?ところで、この子は?」

 

「あー、明日説明する」

 

少し頸をかしげて不思議そうな顔をするが、ここで言うわけにはいかない。華琳が納得するほどの

物を用意してやらなければ、タダで頸を縦に振るわけなど無いのだから

 

「そう、なら楽しみにしておくわ。秋蘭」

 

「は、解散だ。皆ご苦労だった」

 

秋蘭の言葉で姿勢を正した兵士達は口々に「楽しかった」と言って兵舎へと戻っていく

そしてその場に残る将達。秋蘭は男の肩を叩き「食事は頼んだぞ」と呟く

 

「ああ、華琳も来るか?今日は俺が食事当番だ」

 

「ええ、所で休みは楽しかった?」

 

「勿論、最高の褒美だよ。心より感謝いたします我が王よ」

 

休日最後の午後、心底嬉しそうに笑う男の顔を見て、満足げに華琳も笑顔を向けるのだった

 

 

 

説明
前回に続き、休日拠点話しです

休みはこんなことをしています的な話しですので
気楽に読んでください^^

何時も読んでくださる皆様、感謝しております
有り難うございます^^楽しんでいって下さい><
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コメント
なにげに秋蘭が朝寝ている昭の頸に噛み付いてることを昭が知っているのにキュンとした。(クロウ)
2ページ目の24行目真桜のセリフ「隊長までするいっ!」→「隊長までずるいっ!」では?(鎖紅十字)
子供達相手でも全力でって微笑ましいのやら大人気ないのやら・・・まあ子供達の笑顔が全てですけどね^^b 覇王から兵士からと仲間が一杯な涼風って凄い大物になるな、きっとw (深緑)
Ocean 様コメント有り難うございます^^そのサブタイトル良いですねぇ、バッチリですwOcean 様が許可してくださるならこの話しのサヴにつけさせていただきたいですよー><(絶影)
KU− 様コメント有り難うございます^^ええ、仰るとおり涼風の将来が心配ですw果たしてどういった大人に育つのやら・・・そして華琳はw(絶影)
GLIDE 様コメント有り難うございます^^遊びに命がけですよーww大人気ないですw涼風のCVについて全然考えていませんでした、確かに倉田さんはいい声してますからね!バッチリ合ってますよ!!(絶影)
弐異吐 様コメント有り難うございます^^続きも頑張りますので次回も楽しんでいってください><(絶影)
これサヴタイトルつけるなら「夏候家の休日〜大人気ないひとたち〜」って感じだろうなwww(Ocean)
涼風の将来が心配だw(KU−)
遊びが命がけwwそういや涼風のCVだれだろ?倉たろうかなww(GLIDE)
続きもがんばって書いてください(弐異吐)
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