極楽幻想郷(紅) その7
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横島の『鎮』の文殊が効きいて、しばらく経っても暴れる様子の無いフランドールを連れて、横島たちは扉の前に立つ。

 

ゆっくりと扉が開き、目に飛び込んでくるのは玉座に座った館の主――吸血鬼「レミリア・スカーレット」だった。

 

「ようこそ、我が紅魔館へ。私がこの館の主のレミリア・スカーレットよ」

 

「あ、これはご丁寧に。GSの横島忠夫です」

 

慌てて名刺を取り出して渡そうとしたところで、横島は戸惑った。

 

目の前に座っている彼女――レミリアは、どう見ても館の主には見えなかったからだ。

 

まぁ吸血鬼と言えば某ブラドー島の伯爵のようなヤツとか劇場版のヤツとかの印象しかないのもあるのだが……望みを賭けて横島は聞いてみる事にした。

 

「……えーと、失礼ですが……ちょっとお聞きしたい事が」

 

「あら何かしら? それと、普通に喋ってくれても構わないわ」

 

「ではお言葉に甘えて。

……美人なお姉様とか未亡人のお母様とか居ない?」

 

「居ないわね。この館の吸血鬼は私とフランだけよ」

 

真顔で尋ねる横島にナイフより鋭利な言葉がざっくりと突き刺さる。

 

横島は膝から崩れ、地面に手を着き目から涙がどばっと溢れんばかりに流れ始めた。

 

「さ、詐欺やー!! 吸血鬼の館の主が幼女だなんて……! いやCV若本でもキツイけど!

とにかくあんまりやぁ……! 何のためにワイはここまで来たんやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ちょっと咲夜、何よこの人間?」

 

「さぁ? 魔理沙、あの男は何を言っているのかしら?」

 

「私に振るなよ。パチュリー、パス」

 

「パス1。美鈴、頼んだわ」

 

「え、ちょ……!?」

 

床に転がって駄々っ子のように暴れ始めた横島を尻目に紅魔館+αのメンツはヒソヒソと話し始めた。

 

「……えーと、止めなくて良いの?」

 

一人驚くほど落ち着いたフランドールが静かに首を傾げた。

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極 楽 幻 想 郷 (紅)

紅魔郷編 リプレイ7

 

 

 

「さて、落ち着いたかしら?」

 

「……お陰さまで。いきなり水をぶっかけられるとは思わなかったッス」

 

ズブ濡れの格好の横島がポタポタと水滴を床に誑しながらジト目で魔理沙に視線を送る。

 

魔理沙は顔を反らして口笛を吹いて「我関せず」と言わんばかりに視線を合わせないので横島は溜め息を吐いた。

 

「掃除はしてあるけど、客人を床で転がせたなんて言われようは付けられたくないのよ。

 

咲夜、代わりの服を持ってきてあげて」

 

「おいおい。女だらけの紅魔館に男物の服なんてあるのかよ?」

 

「客人用に何着かはあるわ。けれど今まで使用されたことはないわね……まぁ問題は無い筈よ」

 

タオルを受け取り拭いている横島に一度視線を向けて、すぐに魔理沙へと戻した。

 

「それにしても……一体どうしてこの人間を連れて来たのかしら?」

 

「暇そうにしてたし、そろそろ次の本も読みたくなったからな、荷物持ちだ!」

 

「……貴女ねぇ……まぁ今回は貴女の変な思いつきのお陰でフランのこんな穏やかな顔を見れたし良しとしましょう」

 

笑顔でキッパリと答える魔理沙に米神を揉みながら渋い顔をするレミリアだったが、フランドールの顔を見てクスリと笑った。

 

「……? お姉様、私の顔に何か付いてる?」

 

「いえ、何でもないわ、フラン。ただ、こう貴女と落ち着いて話せる日が来るなんて、と思ってね……」

 

着替えを受け取って部屋を出る横島を見送っていたフランドールがレミリアの視線に気づいて問い掛けてくるが、レミリアは正直に思ったことを口にした。

 

「確かに、ここまで機嫌の良いフランを見たのは初めてかもしれないわね。

一体、あの男は何をやったのかしら?」

 

「フランは何か覚えていないか?」

 

「……よく分かんない。何かを投げられたのは覚えてるけど……」

 

「投げる、ねぇ……アイツ投げる物なんて持ってたか?」

 

可能性として思い当たるのは例のクッキーくらいだが、それは無いと魔理沙は首を振った。

 

流石に作ったクッキーに爆発物が混じっていた可能性は無いだろう……多分。

 

「もしかして……魔理沙さんのクッキーじゃ……」

 

「私のクッキーに危険物は含まれていない!」

 

「含まれてたじゃないですか……」

 

ボソッと呟いた美鈴の一言に魔理沙はうっと目を反らした。

 

とにかく危険物は含まれていたが、爆発物の類は混入されていないと釈明し、クッキーから話題が反れた所で着替え終わった横島が戻って来た。

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「なんか妙にでかくも小さくも無いッスけど……落ち着かないッスねー」

 

「濡れたままの服で居る訳にもいかないだろう。と言うか、ホント似合わないな、お前」

 

「分かってる事を掘り返すな」

 

言ってて悲しくなってきた横島は額を押さえて溜め息を吐いた。

 

「……で、横島。一体フランに何を投げつけたんだ?」

 

「……いきなり何を聞いて来るんだお前は……?」

 

唐突な魔理沙の一言に横島は首を傾げた。

 

いや、確かに投げた記憶はあるが、説明……はしていないのであー、と横島は呟いた。

 

「これのことか?」

 

ひょいっと無造作に掌から文珠を取り出し見せると魔理沙たちは驚いた表情を浮かべていた。

 

「……何処から取り出したんだぜ?」

 

「手品だ。これに『鎮』静してくれたらなーと込めて投げたからなぁ……それで落ち着いてるんじゃないか?」

 

「……? 文字を込める? 何処かで聞いた事のあるわね……」

 

パチュリーが一瞬考え込むが横島はあっさりと正体を明かした。

 

「これは文珠と言って、込められたキーワードを解放することで力を発揮する霊具なんスよ」

 

「文珠……! これが学問の神の菅原道真が使うあの宝具だと言うの!?」

 

「知っているのかパチュリー! と言うか誰なんだぜ?」

 

「……何でお前がそのネタ知ってるんだ……? まぁ、あのだかそのだか知りませんけど、多分その文珠です」

 

驚愕の表情を浮かべカップに注がれた紅茶を零したパチュリーに魔理沙はどこぞの超人の台詞で聞き返す。

 

「文珠の力なら、フランの暴走を止める事が出来ても不思議じゃ無いわね……」

 

「パチェ、考え事に集中するのもいいけどいい加減説明してくれないかしら?」

 

「そうね……文珠とは……(中略)

 

……つまり、『鎮』と込めらた文珠の力でフランの自制作用が暴走状態に打ち勝ったのよ!」

 

「あぁ、うん分かった。パチェに説明を頼むとこうなる事はよーく分かったわ」

 

拳を握って高らかに吼えるパチュリーの姿にレミリアは呆れながら首を振る。

 

その周囲にはレミリアの他の面子が説明に飽きた……と言うか疲れてぐったりと机にうつ伏せになっていた。

 

「魔法使いにとって説明・解説は切っても切り離せない縁なのよ」

 

「……いやその理屈はおかしい」

 

胸を張ってドンッと仁王立ちするパチュリーに魔理沙は小さな声でつっこんだ。

 

同調できる部分もあるが、少なくともここまで饒舌にはならない筈……多分。

 

「と言う訳で横島。数があるのなら数個分けて欲しいのだけれど」

 

「あ、これで打ち止めなんで無理ッス」

 

しれっとした表情で横島に文珠を分けてくれないかと頼むパチュリーの頼みを横島は一蹴した。

 

横島としても美人とお付き合いできるのなら喜んで! と言わんばかりに渡しても良いのだが、文珠はそれで打ち止めで、尚且つ、これ以上勝手に使うと上司から未だ嘗て無いお仕置き(フルコース)が確定する気がする。

 

「そう……貴重品だから仕方が無いわね……」

 

酷く残念そうにパチュリーは引き下がり、文珠を横島に返すと椅子に座って再び読書を始めた。

 

実は横島とパチュリーの間で認識の違いがあったのだが、今は関係ない事である。

 

横島は文珠を数秒見つめ、『鎮』の文字を込めるとフランドールに手渡した。

 

「と言う訳で、ホイ」

 

「……え?」

 

突然渡されたフランドールはきょとんとした表情で文珠を受け取り、横島をジッと見つめた。

 

「え、これ……貴重な物なんじゃ……!?」

 

「うーん、そうやけど……まぁアレや。将来有望そうな美少女に先考投資って事で」

 

「将来有望って……吸血鬼の将来なんてずっと先の話よ?」

 

「まぁそん時は死んだ時にでもサービスしてくれないかなーと言う感じで」

 

横島の話に心底呆れた表情で溜め息を吐いたレミリアはフランドールに向き合った。

 

「フラン。ここまでしてもらったからには、ちゃんとお礼をしなきゃならないわよ」

 

「……えーと、どうすれば良いの?」

 

「そうね……その文珠を使わないで暴走しないことが一番のお礼かしら?」

 

「……うん。私、やってみるね……!」

 

拳を握って宣言するフランドールにレミリアは満足したのか笑顔で頷いた。

 

「……貴重な物をあっさり渡すなんて……うー」

 

「そう拗ねるなって。ほら、クッキー食うか?」

 

「……要らないわよ」

 

その裏で打ち止めと言われた文珠をあっさりとフランドールに渡され、不貞腐れるパチュリーと慰める魔理沙の姿が見えたが関係ないことである。

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「横島……フランが本当に世話になったわね……」

 

「いや、ただ文珠を上げただけなんスけどね……」

 

「おい横島。その話題はもう切り上げとけ」

 

紅魔館前。日はすっかり落ちて月と星空が夜空に浮かぶ頃。

 

横島たちを見送りに門前でレミリア達が集合していた。

 

ちなみにパチュリーはあの後ダウンしてしまった為代理として小悪魔が来ていた。

 

「魔理沙、今度は危険物を持ってこないで頂戴」

 

「だから危険物を作った覚えは無いって……聞いてないか」

 

咲夜の突き刺さる様な一言に何か言い返そうとしたが諦めて横島に向き合った。

 

「ほら横島、さっさと乗れ。セクハラは禁止だぜ?」

 

「だから誰がするか! そう言う事はもうちょっと育ってから言ってくれ! 具体的には美鈴さんくらいまで!」

 

「何処を指差して言ってるんですか!?」

 

ビシッと美鈴を指差した横島に美鈴は顔を赤らめ胸を隠しながら横島へと手刀を落とした。

 

ぐふぅと美鈴の手刀を受けながらも魔理沙の箒に跨って肩に手を置く横島にやれやれと魔理沙は首を振った。

 

「これから飛ぶってのに気絶させるなよ……? 私の貞操に関わる」

 

「あ、それは御免なさい」

 

ワイに謝るつもりは無いんですかー!? 横島の叫びを無視し美鈴は魔理沙へと素直に謝った。

 

「あ……あの、ヨコシマ……」

 

「ったく……ん? どーしたの?」

 

おずおずと出てきたフランドールへと横島は顔を向ける。

 

「今日は、その……本当に御免ね……?」

 

「いや、いーって、いーって! 美少女を助けるのは当たり前の事だし、死ぬ様な目なんて毎回慣れてるから!」

 

頭を下げるフランドールに横島は大袈裟に手を振りながら顔を上げる事を促す。

 

横島としても、言葉通り女の子を助けるのは当たり前で将来への先考投資と言う意味もあるのだがまぁそれはともかく。

 

「それにこんな貴重な物をもらっちゃって……」

 

「だから気にしなくていいって! でも一個限りだし、しかも効果は永続じゃないからさ……フランちゃん自身がちゃんと成長しなくちゃならいぞ!」

 

「……うん! もしコレを使わないで自分を制御できたら……その時、私の手で返すね!」

 

「おう、約束だ!」

 

そう言って横島が右手を突き出し小指だけ立てる。

 

横島の意図が分かったのか同じようにフランドールも右手を小指だけ立てて横島の小指に交差するように重ねた。

 

「「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついたーらはーりせーんぼーんのーます、ゆびきった!」」

 

指切りを交わし、手が離れる。

 

魔理沙と横島に手を振りながら見送るフランドールと紅魔館の面子へと振り返り魔理沙たちは紅魔館を離れてゆく。

 

こうして横島を連れた紅魔郷を振り返る珍道中はここに終わりを告げた。

 

魔理沙が背負った大きな袋の存在が異様に目立ちながら。

 

「「「「「……あ」」」」」

 

「……も、持ってかないでー……」

 

息絶え絶えの状態のパチュリーが紅魔館の門を半開け状態で手を伸ばして力尽きていた……。

 

紅魔郷編 リプレイ 完

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あ と が き

 

普通自動車免許取ったぞー!!

 

自車校とか色々あって八月中に更新できなかった……期待していた人御免なさい!(居てくれたらいいなぁ……)

 

現在妖々夢編を誠意執筆中です。

 

できれば感想をお願いします。

説明
免許取った! 苦労が報われた……!
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コメント
>レネスさん さて、どうでしょうねw(てゐがー)
>八限さん 人外だけじゃないですよw(てゐがー)
>ほうとう。さん ありがとうございます。魔理沙は俺の相棒っ(てゐがー)
「幼女×人外=むふふ」ですねw 免許おめでとう^^(ヤマト)
流石横島。人外とのフラグ構築はお手の物(八限)
妹様フラグ立ったw 大真面目に続きまってます。ゆゆこさまは俺の嫁っ(ほうとう。)
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