レベル1なんてもういない 2−1 |
「うわあ〜」
街の名はアムステルダム。
ラフォードはそう言っている。
あの馬車の男が言っていたフリージアから南に進んで来てこの街と言う事は
この世界に来る前の世界ではちょうどオランダに位置する所だ。
地図帳を授業と関係なく見てるのが好きだったし、オランダには行った事があるので記憶にある。
元いた世界のこの場所は壮大な花畑が目立っていたっけ。
今立って見ているこの地にはその花に加えてレンガ造りの建物が数え切れないほど立ち並んでいる。
それと、あの特殊な何かが付いている建物は…あっちにはなかったな。
しかし道理で風も強いわけだ。
あの地域は山らしい山がなく、海からの風が陸地中に吹き荒れる事で有名だと言うし、
海抜の低さから水害も絶え間なかった
なんてことをいつかの授業でやっていたっけ。
その自然に立ち向かうべく人は団結し堤防を築き上げたという。
もっとも今は学校の授業どころの世界でもなくなってしまったのだが。
とにかくゲームやお伽話に出てくるかのような建物がとにかく印象的だ。
でもこれはこの世界では普通の建物で、この空間で生活をしているのだろう。
「すげぇー」
素っ頓狂な声を出しながらも、延々と続いている花とレンガ造りの建物の景色はとても綺麗で、見ているだけでテンションが上がる。
「エル、遠くに行かない」
いつの間にか走り出していた。
踏みしめる地面も懐かしく感じた大地から今度は石畳になっている。
そこいらにいる子供みたいに注意されるも空と建物の景観にはついつい引き寄せられる。
その中でも変なプロペラのようなものが付いた建物が特に気になった。
「なあ葵、川に沿って続いている建物に付いてるあれって何?」
「私ラフォード
あれは風車。
風と川の水の力を利用して回る。
その推進力でさまざまな事が出来る
この地域の象徴」
「へえ風と水だけでか。
電気も使わないなんて星に優しいね」
「でんき?」
思いっきり首を傾げられた。
「ああそっか
この世界にはないのか」
銃があったくらいだから電気も存在していると思っていたらそうでもなかったようだ。
もっとも別の地域では存在している可能性も否定できない。
「電気とは神の稲妻をヒト用に凝縮して利用するものですよ
この辺ではエレキテルとも言います」
「エレキテルなら解る」
「へえ、やっぱり電気がない訳じゃないんだ。
って!アンタは…」
「お久しぶりです、
と、そう言うほどは離れていませんでしたね」
急に横から気配も匂いもなく現れたのでビックリした。
確か砂の大地を歩いている中の馬車の時に会ったフミと言う、
男だか女だかわからない格好をしている変な奴だ。
顔立ちで女か…という程度の認識で
もっともその格好は今この時も変わっていない。
何よりも特徴的なのが腰に緩めに巻かれたホルスターに収められたあの銃だ。
あの時も魔法使いと呼ばれ恐れられる位だから、少なくとも電気同様この地域にはあれは存在していないのだろう。
となると世界中のことを知っているのかもしれない。
「どうしてこの街に来てるのさ
確か別の、もっと遠くの街にあの人たちを送りに行ったんじゃ…」
「送っていきましたよ。
そうしてからこの街に用事があったのを思い出したので戻ってきたのです」
…
あの場でフミと別れてからそうそう時間は経っていない。
本当に送って行ったのだろうか…
何となく流れてくる不気味な雰囲気と眼鏡の奥から見える細い目が少し怖い。
どちらの意味にも取れる言い方…
「そちらの2つの名前のある方は…警戒心がお強い方ですね
フフフ…
それは悪いことではありません」
ラフォードは表情こそ変えていないが距離を置いてジッとフミの動きを見ている。
あいつは猫か…
「葵はこういう性質なんだからさ、あんまり弄らないでやってよ」
「フフフ…
それは失礼しました」
「それで、思い出した用事って言うのは何なの?」
「人との待ち合わせですよ」
意外と教えてくれた。
どうせ秘密だの何だのいってはぐらかされると思っていたが。
「その方も貴方と同じようにこの世界を救うと言っていましてね…」
そこまで聞いてドキッとした。
世界を救う…
この世界に来た日、ラフォードにそう言われた…
そして思い出した。
世界の危機はどこで救えるのか。
そもそも世界の危機って言うのは何がもたらすものなのか。
この世界に来た理由も解っていないままだ。
砂だけの大地から抜け出した解放感や
新しい景色の町並みに心を奪われて
少し思いが異なる方向へ行き過ぎてしまっていた。
この場で問いただしてみるか。
説明 | ||
街の行ってみたいな感を出すのが目標でしたが…ぎゃふん | ||
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